ラミレス監督の新著「change!」は野球ファン必読!野球の見方を面白くしてくれる!!

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マンガばっかり読むぼくだが…ラミレスの新著だけは例外!
本が出たのを知って、今回はKindleで購入して読んだ。

普通ね、現役監督が著書を出したりしない。
そんなことをするのは、監督最後の年の、それもシーズン終盤に落合博満がだした「采配」と、ラミレスぐらい。

 

奇しくもこの二人は似たような実績を持っていて、
・色んなチームを渡り歩いたり、
・巨人以外の出身者で、巨人の4番を長期間勤めたり(歴代の外様で1位・2位)
・選手として精神的支柱でありながら、誰かがスランプになるとコーチ的な役割もこなして、チームを支える
・打点王に輝いた数が、歴代でトップクラスの二人。(この二人よりも多いのはONと野村克也ぐらい)
と、共通点が多い。

そのため、監督就任時点からで
みんなラミレスのことを陽気な味付け煮玉子みたいに思ってるけど、アレは落合だからね?メディアは落合が就任した時のように扱ってないけど、落合と戦うつもりでやらないチームは間違いなく痛い目にあう
と言い続けてきた。

結果、1年目で万年最下位の横浜を初のCS進出、2年目にはCSを勝ち抜き日本シリーズ進出という結果に。

そして、早くからラミレスならやってくれると信じたぼくは、2年目のシーズンの途中で先回りしてブログでラミレスの著書「ラミ流」を紹介して、ラミレスが日本シリーズ進出を決めた時にラミレスのおかげで、ちょっと儲けさせてもらった。

 

儲かる儲からないうんぬんは別にしても、前作のラミ流が面白かったので、「監督として書いた本はもっと面白いだろう」と期待して購入。
案の定、期待を裏切らないいい本だった。

 

どこが面白いかと言うと、
・3カ国の野球(ベネゼエラ、アメリカ、日本)の野球を知ってるからこそ、日本の野球/日本人の考え方を根本的な部分から、見直している。
・日本の野球や、日本人的な組織論、精神論に抜け落ちがちな「メンタルの強さ」をラミレスなりに明確的に答えを持っているため、人間の捉え方がとても参考になる。
・野球の捉え方がとても論理的でかつシーズン単位で見るため、プロ野球を見ながら「このチームは強い・弱い・勝っても気にしなくていい」といった部分が鮮明になる。
といった部分がとても面白かった。

今、日本の指導者で最も色んな野球を知ってるのはラミレスか工藤公康

2017年の日本シリーズでぶつかった2チームは…正直言って、監督だけを見るなら妥当な組み合わせ。
両監督とも選手時代に経験したことがダントツ多いから、野球についての引き出しが圧倒的に多いから。

ソフトバンクの工藤公康監督は、実働29年の間に4チームを渡り歩いてる。
実働期間だけでも歴代有数の長さだが、現役末期に在籍した横浜と西武以外では優勝しているため、「優勝請負人」と呼ばれてる。
セパ2チームづつ、強いチーム・弱いチーム両方を知り、自分自身もイケイケの時と頭脳派のプレイヤー時代を経験しているから、多彩な引き出しと経験を持ち合わせている。

 

ラミレスも、ベネゼエラで野球を始めた後、アメリカに渡ってメジャーやAAAを経験してから、日本でも3チームを渡り歩いてそのうち2チームを優勝に導いている。
全部セ・リーグではあるが、その後オリックスの巡回コーチも経験しているからパ・リーグにも明るい。

しかも、日本で最初にプレーしたヤクルトは、当時「球界の頭脳」と呼ばれる古田敦也がいて、監督は「小さな大打者」と呼ばれた若松監督。
古田敦也から日本の野球についての疑問を聞き、キャッチャーを研究する重要性を学び、若松監督から逆方向への打撃の重要性を学んで「日本の野球」の最も濃ゆい部分を学んでいる。

その上で、巨人に渡って原辰徳監督から「勝てる監督」のあり方を学んだという。

そのため、ラミレスが監督としてやっていることは「野球はこういうものだから」という固定観念のようなものは少なく、日本で1から学んできた日本の野球に、日本人が何となくメジャーの真似事をしてきたところをもっと深く理由を理解した上でメジャーらしい部分を取り入れてのことだ。

 

「メジャーらしい部分」という言い方だとふわふわしているので、本で触れられている一例を出すと、クオリティ・スタートに対する考え方を例に挙げよう。

ラミレス監督になってからの横浜DeNAは、とにかくピッチャーに完投させないチームだ。
ラミレス自身「6回まで全力で投げきってくれたらいい。いや、5回まで持ちこたえてくれたら合格」と言ってるほどクオリティ・スタートに近い理論を実践している。

これには2つ理由を述べていて、
1、完投・完封して次の登板に弊害が出るぐらいなら、6回を投げきって1年間戦ってくれる方がシーズン単位では、いい結果を出す。
2、ペース配分することで序盤に点を取られて試合を崩されるぐらいなら、短いイニングでも試合を全力で投げきって試合を作ってバトンタッチしてくれる方が素晴らしい。
という考えに基づいている。

1については…古い野球ファンほど先発完投型の投手を称賛する傾向が強い。これは、先発完投型の投手を表彰する「沢村賞」などを見ても明らかで、クオリティスタートはどこか男らしくないというか…タフじゃないと考えて、逆に投手酷使時代の完投はもちろん、腕が痛くてもマウンドに登る根性のあるピッチャーこそがいいという考えが未だに根強い。

2についても…タフじゃないといえばそれに尽きるのだが…実際にはタフじゃない投手もたくさんいる以上、試合の流れを作る上でも序盤での失点を避けられるように監督が選手のパワーを出し切れるような決断をしたほうが結果が出る…というのが、現実的だろう。

 

ラミレスのすごいところは、データや戦術に対してちゃんと具体的な解釈を持っていて、それに基づいてのデータ野球というところ
ラミレス自身は「9割はデータに基づいて采配している」というが、データに対する具体性や、流れに基づいた計算が、他の監督・野球関係者に比べてとても洗練されてる。

日本の野球の中でついつい「昔から決まってることだから」「こういう風に教えられてきたから」でやりがち・信じがちな迷信や古い常識を、ラミレスなりに再解釈できているというところが話を聞いていて、実際の野球に落とし込まれていて面白い。

 

色んなチーム・国を渡り歩いている人でないとついつい囚われがちなことも、逆に「これは正しいけど、これは違う」という部分を整理されている面白さがある。

日本人は「メンタル」の定義が雑すぎる

ラミレスは「野球の7割はメンタルで、3割がフィジカル」と言ってる。

ただ…このフレーズだけなら誤解を招く。
だって、日本人が言う「メンタル」とは強気と根性で、ラミレスの言う「メンタル」はポジティブと準備(研究)だから。

 

ダメな意味で日本的だと感じる精神論で、象徴的なのはこういうのね。

ラミレスの本をTwitterで読書会方式で紹介している時に目についたツイートなんだけど…サッカー協会やその根回しをしているスポンサーがダメなプロセスで決めたことに「総力戦だから応援しろ」っていうのが…戦時中の「欲しがりません勝つまでは」と構造が一緒ですごく嫌な気分になった。

 

アメリカにだってハングリー精神みたいなことはあるけど、それはもっと個人の問題じゃん?
「いい生活したいならマイナーリーグではなく、メジャーリーグの選手になるしかない」という感じのこと。

でも、
「欲しがりません勝つまでは」
「サッカーは総力戦」
といった言葉って、トップが決めたから下の人は我慢して根性で応援しろっていう精神論でしょ?

ラミレスが言ってるメンタルの話とはまるっきり逆。
根拠のない自信とか、虚勢とか、勇気という名の蛮行とか…そういうことじゃないのよ。

 

ラミレスが言ってるメンタルは
根っこが臆病で弱気な人であっても、何が怖くてそうなってしまうかを徹底的に研究して、準備して克服することが大事
ということであって、その準備やポジティブさを保つルーティーンや、準備、環境作りが大事…というお話。

「欲しがりません勝つまでは」と言って戦争した日本はジリ貧になった。
一方、試合前に陽気な音楽をかけて、試合後に負けても【今日と明日は違う日。終わったことだから音楽かけて盛り上がろう】とロッカールームに音楽流してるラミレスはチームを日本シリーズに導いた。

 

ねちっこい言い回しになるかもしれないけど、横浜ベイスターズの戦力で「欲しがりません勝つまでは」とか言ってたらあと20年は勝てなかったと思うよ?
足りないところだらけのチームに「5回でいいから全力で投げろ」「いい気分で試合してくれるように音楽をかけよう」とチームが今できることをきちっと見つけて、一番いい状態で送り出し続けたから、2年で日本シリーズに行けた。

 

スポーツは総力戦?
いやいや、準備の積み重ねだよ。
野球選手が夜からの試合でも12時には球場入りしてルーティーンをこなしているのはそれだけの準備が必要だから。誤解してもらっちゃ困る。

 

ちなみに、ラミレスは自分より1時間早く球場入りしてルーティーンをこなす小笠原道大(今の中日の二軍監督)に感銘を受けたそうだ。
そして、一流の選手はそういうルーティーンを持っているらしい。ラミレスの言うメンタルとはそういう話で、一流の人は日本人でもちゃんと理解しているけど、蔓延しているものはまた違うもののようだ。

ルーティーンやクオリティ・スタートの話に限らず、ラミレスが捉えている日本の野球は、結果的に日本の社会や日本人が持ってる固定観念につながっていて面白い

ラミレスのおかげで野球の見方が変わってきた

面白いことにラミレスの話を聞いていると、野球ファンとして野球を見る目線が変わってくる。

野球ファンの中には1年単位ではなく、その時の調子や試合の結果で一喜一憂する人が多すぎる。

特にFacebookの巨人ファンのグループはその日に打ったの打たないだので愚痴ってる人がすごく多い。…巨人ファンの人がグループに誘ってくれたから見てるけど…一回たりともポジティブな書き込みを見たことがない。

インターネットの掲示板を見ても「誰が干された」という書き込みが多くて…監督の意図よりも感情で動いているように考えている人がとにかく多い。

 

ところが、ラミレスの野球についての考えは少し違っていて、
1年単位でどう戦っていくか、
不調に陥った時でも使い続けるべき選手・もっと根っこが深いから2軍で改善したほうがいい選手は誰か、
打線として機能するような打順とはどういう形か…
という戦術的・メンタル面まで見て、ちゃんと采配をしている。

 

打順については9番に倉本(野手)を置いたことが話題になったが…これは、下位打線でも点が取れる野球を考えてこうなったのだという。

強いチームは下位打線でも点が取れるように、打順を組むチームがある。有名所としてはこの2つ。
まず、2016年の日本ハムでは、4番の中田翔と、影の4番として7番にホームラン王のレアードを配置することで2回転できる打順を組んでいる。
次に、2005年のロッテでは、サブローをつなぎの4番として組むことで、3番の福浦と、5~7番の外国人助っ人の両方で点数が取れる点が取れる打順を組んでいる。

前者は栗山監督、後者はボビー・バレンタイン監督で両方共知将と呼ばれる監督が考えた打順だけど…これの変則バージョンがラミレスの9番に倉本という打順。
…元ネタが原巨人だとしたら…前半で小笠原道大・ラミレスで点を取り、6番の阿部を軸に点を取る2011年の巨人の戦術なんかも近いものがある。

 

ラミレスが9番倉本という打順を採用してから、打順や点のとり方を見ながら「このチームは考え抜かれた戦術で点をとってる」というチームだと、すごくわくわくするようになった。
逆に、ここ数年の巨人阪神のように単に乗ってるから打てているだけのチームは…「これは続かないだろうなぁ~」と気づいた途端に先行きが暗く思えたし、ファンではない球団だから「これはすぐ落ちるわ」と思ってそんなに焦らずに見るようになった。

だから、野球を見ながら、勝ち負けで一喜一憂すると言うよりは、戦術のある勝ち方にはワクワクするようになって、逆に戦術が感じられないライバルチームの勝ち・推してるチームの負けには心配になるようになった。
また、意図を読んでいるうちに理由もなくヒステリーを起こすことが減ったし、意図を読むのが楽しくなった。

 

意図を読むというと…今年横浜で2軍に落ちた去年までのレギュラー、戸柱と倉本についても触れておく必要があるだろう。
戸柱が二軍落ちした理由は単純にラミレスがして欲しいリードをしないし、そのことで結果が出てないから。ラミレスは2016年の就任当時からインコース攻めにこだわってきたが、戸柱は外角を軸にリードするキャッチャーだから。

倉本は試合に出てリズムを作るタイプだから2017年までは重用されてきたが、2018年にはセカンドの守備がよくないこと…それも、手抜きプレーと取られるようなものがあったため落ちている。本来なら、「周囲の士気を上げてくれるメンタルの強い選手」と著書では倉本を絶賛し、野球ファンから叩かれていた時でさえ、持ち上げ続けてきたラミレスだったが、一向に倉本の守備が改善しないため「技術的に問題がある」という理由で落とした。

ネットでは「干した」と話題の二人だが、ラミレスの本を読む限り恣意的に干したと言うよりはむしろ、監督のやりたい野球と合わないばかりかそのことで結果が出ないから「技術的にパワーアップしなまま試合に出続けても、誰も幸せにならない」という結論に至ったと思われる。

 

このように、考えながら野球を見る面白さと深さを教えてくれた本。
だからこそ、野球ファン必読。DeNAファンだけでなく巨人ファンにも他を見る面白さがいまいちわからないファンにも読んで欲しい本だよ。

 

 

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