カネがない時に、人に会うことになったと思ったら、そいつからキラキラした声で
「今、(俺たちの愛する)ガイ・リッチー作品の最新作が出ているんだ!」
と猛アピールするもんだから有楽町のレトロ調の映画館に見に行ってきました。
・あらすじ
ソ連のスパイ(脳筋)とアメリカのスパイ(二枚目)と東ドイツ西ドイツに拉致してきた整備士の女性(運転が桁違いにウマい・やたら機転が利く)が国際テロに立ち向かう話。
女性はテロリストの幹部と親戚関係・核技術の開発者の娘…という設定。
公式サイトはこんな感じ
ガイ・リッチー作品の魅力はムダ「が」面白いこと
ジャンルとしてはスパイ映画ですが、スパイ映画としてトリックや捜査官の段取りを見てると頭が悪すぎて違和感がある作品だ。
この映画について、誰が言ったかは知らないけど「スパイアクションというよりも水曜どうでしょう」と言い放った人もいるそうで、それは実際に正しい。
そもそも、ガイ・リッチー作品自体がロックンローラ然りロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ然り…派手なアクションと群像劇が終盤でピタッとハマる感覚を描くものである!
ゆえに、あまりリアリティやキャラクター自体の格好良さを描いた作品ではない。むしろ、キャラは基本的にクズが多く、カッコ悪いぐらいの人が多い。
コードネームもまた例外ではなく、キャラクターはどっちもあまり頭が良くない。
頭が良くないからこそ、スパイとしてはすっとんきょうな発言が飛び出す。
明らかに不効率な議論を始めてしまい、みすみすチャンスを逃す。
ヘタすると、仲間割れを優先するからこそ予想外の展開が生じる。
だから、この映画は一見、ムダだらけだ!
でも、そのムダが面白く、ムダをやるために本編をいかに素早く、シンプルに進めるかが考えぬかれているため、映像作品として高度なこともたくさんしている。
並大抵の人では思いつかないテンポの良い展開を実現したうえで、空けた尺でバカバカしいほど気合の入った演出や、コントや、映像重視のアクションシーンをおっぱじめる。
特に、象徴的なのは「この映画一番の長台詞がなんと脇役が自分の生い立ちを縛り付けられた主人公の前で長々と語るシーン」であることではなかろうか?
別に、作品のテーマからも本筋からも関係あるシーンではなく、中盤のワンシーンで完全な独りよがりを演出するために、作品で一番の長いセリフとそれに合わせた映像ショーを作りこんでいる!
…こうした、ムダの連続が面白い。
「スパイアクションというよりも水曜どうでしょう」
と言った人が正しいと感じるのは、ガイ・リッチー作品特有の「ムダを優先する態度」があるからだろう。
特に、水曜どうでしょうで顕著なのは「四国八十八ヶ所めぐり」だろう。
「お遍路をするぞ」と言いだして四国を回っているのに、主役がうどん屋めぐりや怪奇現象、パンを取ったのとらないのといった旅の最中に起こったやり取りや、映像に映るかどうかも疑わしい「来る前から楽しみだった遊び」が優先されている。
他にも「腹を割って話そう」然り、アラスカでの「ビストロ大泉」然り、明らかに旅の本筋と関係のないワンシーンの方に面白いシーンや名言が集中している!!
しかもだ!
水曜どうでしょうならば、常に「日程との相談で、日程に余裕があるうちに面白いアクシデントを集中する」が、ガイ・リッチー映画の場合はスリルあふれるシーンからいきなり「ムダな笑いのシーン」に飛ぶ予想のつかなさが加わって、面白い。
映画の終わり方も独特で、話の面白さやテーマ性について主役格の登場人物が長セリフでまとめるようなことはほぼなく、むしろアクションやギャグ、本編でのトリックに散々振り回された後に「ふぅ…」と余韻を楽しむような終わり方をする。
当たり前だ!
ムダなシーンにも力を入れ、ややこしい群像劇は映像や演出の技術を駆使して早巻に進めているのだから、情報量がとても多く、「キレイな映像をぼんやりと見るシーン」が他の映画と比べると少ないから、最後からスタッフロールぐらいにかけてはまったりと余韻を楽しみたくなるのだ!!
このように、独特の作風やテンポを駆使して進んでいく映画だ。
それゆえに、事前の予習?心づもり?があった方が見やすい作品であり、同時に「創作をやる人やオタク的に様々なコンテンツやネタを追いかけている人」にこそ見ていただきたい映画だ。
映画館を出るやいなや僕をキラキラした声で誘った人と僕が興奮冷めやらぬまま、有楽町から東京駅まで映画の話をマシンガントークして「やっぱガイ・リッチーはすごい」という話になったぐらいには好きな人にはたまらない一作であることをご報告の上、このレビューを閉めさせていただきます。
DVDも出てるよ〜
・関連記事 (僕が書いた映画記事)
アイドル映画としてはけっこう好き。主役の女の子が好きになる映画。
地味だけど、役者が豪華すぎて安心してみていられる映画。
躁うつ病患者なので、ぜひとも多くの人に見て欲しい。