Extra in out  黒江文庫/マーニ

同人作品の紹介もかれこれ7回目に来た。今回は僕の専門外の分野である「イラスト集」だ。

絵が描けないがゆえに、イラスト集は大好きなんです。大好きだけど、自分で作れないから技術論が語れない。僕が感覚的に「スゲー」と思ったものはだいたいヒットするのだが、それをどうやって語るか?

その悩みから避けてきたのだが、この作品の筆者がオドオドと「初めての参加なんです」と言って僕に渡してくれたのを見て、「ああ、僕も「初めてですから」で頑張ってやろう」と思い、この同人誌を選ばせてもらった。

お品書き

  1. 開いた次の瞬間に元気になれるような圧倒的躍動感
  2. 同人誌即売会で欲しいものは「ギョッ」とする作品

  • カメラで撮るとブレるような瞬間を細かく再現。

ちなみに、同人誌の表紙はこちら。


この絵が本の表と裏で繋がってる構図になってます。(※ちなみに、なかにもこの絵が入ってる。)

…お品書きに「開いた次の瞬間に元気になれる圧倒的躍動感」と書いたけど、これは僕が即売会の会場で見せてもらった時の感想です。…本当に「ブラリ」だったから、買うかどうかも決めてない(むしろどちらかというと買わない気でいた)のですが、2度見返して、最終的には買ってしまった。

この作者の良いところは2つ。
1つは「情報量の多さ」。重ね重ね細部まで描いているため、どの絵も情報量が多い。おまけにモノが飛び交っている背景も考えられたもので、見返す度に発見がある。
表紙の絵で言えば、冊子の中に入っている2枚の別の絵の切れ端が分けて散りばめてあったり火を付けたり、良く燃やしたりするものだけでも色々なものを組み合わせて配置してあったり…。

初めて見たときは「これ、どんな状況?」って思うのだけど、次の瞬間にはどうなってるかを探してあちこちくまなく目を動かしてる。それがこの絵師の面白さ。(※女の子一人だけの絵もあるんだけど、その絵はその絵でや大有り、背景・配色に工夫が凝らされてる。)


2つ目は配色。
モノが飛び交ってるだけでも動きがあるように感じて面白いのだが、この同人誌、加えて作者のピクシブをみて、共通していたことは、基調としている色が他の絵師に比べて随分と明るい色を選んでる。

特に水色がどの絵にも多くの部分に使われてる。暗い色がメインだと明るいところに向かって焦点が絞られていくけど、明るい色メインだと全体的に目に「入って」来る。「見る」という言葉を英語で表現するときにsee、look、watchとある。seeは見る気が無くても入ってくる感じ、lookは止まってるものをじっと眺める、watchは動いているものをぼんやりと目で追いかける。

このイラスト集の場合seeの段階で「なんだこれ!?」と言わせてくれる工夫が散りばめられているから面白い。
lookしてみると様々な事が描いてある。look「どうして絵が広く、あるいは動いて見えるのかなぁ?」と考えてみると、絵の中には半分しか書かず、ワザとぶち破って描いているモノの存在が出てくる。

絵が切れてもまだまだ横や正面に空間が続いていくような想像力も掻き立てられる。

そして、面白いのはギャップ。背景や絵の中にある演出がダイナミックな反面で、人物は最近見かけるも控えめな作りになってること。目が小さく、体の肉質を過剰に表現することもなく、人間っぽく描いてる。「オタクっぽい絵」というのかな?それとは違う、普通の人が見てもアニメや漫画の絵とは思わない感じ。

それが不思議な味を出してる。

…私は「描けない」から絵の話はこれだけしかできない。続きは最後にリンクとしてピクシブを貼るのでそっちを見て欲しい。個人的には魔理沙の帽子をお花畑にした絵を見てもらえると、色の使い方がちょっと変わってるのがわかってもらえると思う。(※東方みたいに色んな人が書いてる題材も入っていると違いが説明しやすいけど、)

  • おまけ話「即売会で欲しいモノと、本屋で欲しいモノの違い」

「枚数もさほど多くないし、有名な作品でもない。でも、本を手に取り、めくって良いと思えば買ってしまう。」

前章でも言ったそれはコミケ・コミティア含め、即売会とはそういうものだ。
自戒を込めて言うが、作り手はプロがつくる綺麗でダイナミックな作品に憧れる。憧れるのだが、それを高い再現度で作れる人も限られるし、値段や量も同人誌でやると少なくなる。

だから、マスコミがコスプレが見られること、各分野プロが参加してることを使ってコミケを宣伝してるが、それは詐欺広告に近いと思う

コスプレ会場なんてコミケのごく一部だし、プロが参加してるからといって、必ずしも値段に見合う良いものを作ってくれるわけではない。

じゃあ、同人誌即売会で何を見てるか?それは「ギョッ」とするものが見たくて見てる。

もちろん、好きなサークルもある。完成度が高くてリピートしたいサークルには必ず行ってる。だが、その一方で、地図も把握せずぶらぶらと回って「なにこれ!?」と言うものが買いたいという願望こそが即売会の醍醐味だと思ってる。

全く写真を使わない料理本、集中戦を書くためだけに使う定規、獅子舞がメインテーマの漫画…「遊べる本屋」を名乗るヴィレッジ・ヴァンガードというお店があるが、即売会はそれに近い。そこに屋台まで来ているのだから、もはや「お祭り」である。(※ひとパック500円の焼きそばが売れちゃうような場所だからなぁ…。それだけ混沌とした場所でもみんながマナーを守って冷静に並んだり、歩いたりしてるのだからコミティアには驚かされた。)

今流行りの「作風」を意識せずに、自分のやりたいことをぶつけてきてくれる作品がいっぱいある。それがこれからのトレンドを作る可能性だってある。僕がこの同人誌を買ったのは「新人でこんなにできるのかよ!」と度肝を抜かれて、ピクシブも次の作品も見てみたいと思ったからにほかならない。

実際ピクシブでは、それなりの評価を受けている方だった。おまけにその人の書いた東方もバッファローベルもすごく良くできていた。

僕が過去に東方のマンガで無作為に「良い」と思ってるものを買ったら、悠々買えたその時とは違って半年後には行列ができていたという事があった。イラスト集という相場はそこまで混み合わないけど、本当に化けるんじゃないかなぁと楽しみにしている。その期待からコミティアから帰って2作目に、この作品をやらせてもらった。

・リンク(作者紹介)
ピクシブ
https://www.pixiv.net/member_illust.php?id=2049457

同人誌
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これが「目」で語る戦いだ
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