千年興亡史 蟹丹

※すいません。カテゴリ分けでは「同人誌」なんですが、1枚の絵です。惚れ惚れするほどうまい人を見つけたのですが、保存しにくい形態で悩んだ挙句、妥協して1枚だけ買うという中途半端なことをしてしまいました。

僕が買った絵だけ作者に公開していいかと聞いたら「pixivでもブログでも使って」と言ってくれたので、紹介していこうと思います。

お品書き

  1. 絵の感想「うまい・キレイ・ゾクゾクする」
  2. 俺「何!?こんな売り方があったのか!!」
  3. 作者「ファイルに入れて持ち歩いてくれたら泣いて喜ぶ」

  • 一枚だけ買い上げるという贅沢!!

…うん!俺は少なくともそう思うね。同人誌を買いあさったことがある人ならわかると思うけど、本の厚さってついつい意識しちゃうんだよね。選びに失敗しても、それが分厚かったら許せちゃうし、薄いだけで「なんでこんな薄いの買ったんだ?」と後々葛藤することになるから。(※よほどクオリティーのいいものでもそう。)

そして、絵が一枚で100円ともなれば、イラスト集の相場で考えると、若干値が張る。張るのだが、上手い!そして、これが自信をもって勧めたい僕が買ったイラスト。(1枚しかないから、大きめのサイズで貼ります!)

そして、イラストには裏に文章がこう続く。

「いつか旅人から聞いた話。千年の行進を止めぬ巨神の御輿があるという。踏みしめた大地に白い血を流し、踏み越えた大地に赤い命を落とす。私もいずれ、この行軍の一部となるのだろう。」

さあ、解釈をしていこう。僕は美術の知識がない(むしろ1を取ったことがある)から、技術論はわかんない。わかんないから、独自に絵を見る時の基準を作って、それに基づいて語っている。

絵を見るときは「see(目に入る)、look(止まったものをじっくり見る)、watch(動いてるものを見る)」の3つの英語表現に習って見る。

seeとは第一印象。つまり、【パッと見】の印象だけど、重量感があるね。仰々しい感じの何かが前に飛び込んでくる感じ。

lookは観察した時の感想。絵を細部まで見たときに見えるもの。この場合は光の使い方やキャラクターが重要なポイントだと思われる。光の演出については昨日つくしあきひとさんのイラスト集を語る際に「光が明るい部分が作者の見て欲しい(見る人の目がはじめに行く)ところだ」と言ったが、今回もこの法則を守ってる。

明るい部分ではイラスト下方の白粒・みこしの周りの燃えるようなオレンジがポイントになってくる。

オレンジはwatchのパートで話すが、白の部分の演出が面白い。群衆が歩く事でできていく足音やホコリなのか、イラストの下方の粒があるために賑やかな印象を与えている。澄まして歩く女の子と犬にも目が行きますが、その周りのモヤッとした「塊」がまたなんとも言えない雑踏感を出している。

文章によれば、中央部の大きな顔達は「巨神の御輿」だという。お御輿は「神輿」とも書く。理由は神が乗っているからなのですが、御輿と言えば、もう一つ連想するものがある。

それはお祭りだ!

文章には更にこうある。「千年の行進」。ここに出てくる犬と女の子はもとよりこのモヤモヤとした塊も含めて、実は「神様」もしくは「妖怪」の類なのではないのか?お御輿に居るのが「巨神」なのだから、もっと低位の神様や永遠に近い命を持つ者達なのではないのか?

また、イラスト上部のナウシカの「火の七日間」に出てくる槍を持った巨神兵を彷彿させる暗い塊はなんだろう?これも神様なのかもしれないが、こっちの神様はいささか威圧的な雰囲気に満ちている。

watchの方も見ていこう
アニメなら動画作業なのだが、イラストの場合は「連想」だ。描かれていない空間や、描かれていない次のコマに起こるであろう事を絵から想像する。

連想する内容だが、これは文章があるかないかによってちがう。まず、無い場合だが、呆然と前進してくる感じだ。イラストの真ん中のオレンジにあるように後ろが燃えているのもポイントだろう。イラスト上部の黒い影や御輿が通るたびに災いをもたらす。そういうものなのかなぁ…と。

そして、文章をもう一回読むと少し印象が変わる。

「いつか旅人から聞いた話。千年の行進を止めぬ巨神の御輿があるという。踏みしめた大地に白い血を流し、踏み越えた大地に赤い命を落とす。私もいずれ、この行軍の一部となるのだろう。」

【ここからは独自解釈】
かなり極大解釈を含むが、この絵は「歴史そのもの」なのだと思う。神様が時間という道を、「死」という御輿を持って歩いている。歴史というのは最もシンプルにすれば、【生死の連鎖】だ。文中の「白い血」というのは赤ん坊の柔肌の事で、その御輿が踏み越えた先には死がある。

自分が生きていること自体が歴史の間の短い部分で、それはお祭りのように騒々しい。最後の「私もいずれ、この行軍の一部になる」という台詞は「死ぬ」という意味。日本人の宗教観には「死んだら仏になる」というものがあるが、おそらくはそれに近い価値観でこの絵は形成されているとされる。死んだ人は白い「生みの神様」か、後ろの「死の神様」になっていくのだろう。

他の宗教にはない価値観であるが、*1私はこの絵の価値観を気に入ってる。

前を歩く女の子について?2通り解釈がある。1つは生みの神様だという説。もう1つは死んで行軍の一部になったという説。どっちにしても、真剣に見るとこれだけ禍々しい感じがする絵の真ん中に美少女を持ってきて落ち着いてしまうのは私のオタク気質なのかなぁ…なんて思いながら見てました。

  • 1枚からイラストを売るお店の魅力

コミティア・コミケを見ていてすごいのは大企業の頭でっかちなそれよりもずっと洗礼された販売戦術を思いつく人がいること。

僕が思うに、これもその1つだ。良い紙質で冊子よりも大きめなサイズでイラストが楽しめて、買い手は一枚からイラストが楽しめる。売り手は買い手がイラストを見ているのを見て、その時間に合わせてじっくりとプレゼンができる。

…ん〜血の通った魅力的な売り方だ。絵を楽しんでもらいたい人のこだわりも感じられる。

だが、僕からすると、この売り方には改良点があると思った。pixivを見ているに、僕の知ってる絵師の中でもトップクラスの想像力と表現力を持っている。なんとなく美少女が描けるだけの奴・面白いことを考えつくだけのヤツは全体のレベルが上がっているためゴロゴロいる。だが、オリジナリティーと画力が両方素晴らしくて、更にこのように売り方にまで凝った人となれば、そうそういるものではない!

率直に、【このサークルを儲けさせて、もっと絵を作らせてあげたい】というのが私の本音だ。(※人から「文がうまい」とチヤホヤされる段階まで来た僕だが、「もっと文章を書いて欲しい」と言われたことはない。ナルシストな言い方で申し訳ないが、同人誌収集暦4年と、自宅に300近い漫画を持つ私にここまで言わせた作者はこの僕にここまで言わせたことを誇っていい!!

だが、この問題は難しい。いたずらに冊子を作ってしまえば、この絵の質が担保できないし、薄利多売で列を作れば、イラストをじっくり選ぶ良さが無くなる。

昨今の商業というのは「客に媚びること」ばかりを商売と呼んでいる所があるが、その手法を主張するなら僕は「経済が語れるオタク」なんて辞める。

そこで提案したいことは「1500円以上の厚めの良質な冊子を(ちゃんと採算があう範囲で)少量作ったら良い」という事。10種類のイラストを置く机にまだまだスペースが余ってたので、理論上はできる。

1つ目の提案についてはこうだ。この売り場の問題点は「冊子がない」事。同人「誌」即売会なので、いくらイラストが良くても、そこが心の壁になる。初めは「サークル側がクリアファイル用意したら?」と言おうと思っていたのですが、そうすると費用対効果が悪すぎる。

500〜1000ぐらいの相場並の冊子では、これだけ良いイラストがペラペラのモノにまとめられてしまうばかりか、横に並べてある一枚一枚のイラストが「品質保証」となって、冊子がバカ売れし、イラストを一枚一枚吟味する良さが失われる。

そこで、1500円以上(できれば2000円)の冊子を作ればいい。絵の備蓄はpixivにあれだけ投稿しているのだから、沢山あるだろうし、質のいいものでそれなりの厚さで提供すれば、それだけ取れるし、取る権利がある!(だって、僕がそれでも買いたい!)

冊子の内容なのだが、これが2通りある。一つはごく普通のイラスト集にするというパターン。(この場合は大きな冊子で、良い紙を使うことが大前提)
もう一つは文章付きでストーリー性を付けてもいいのではないかというパターン。(こっちは冊子やイラストのサイズはさほど重要じゃなくなる。)何かしらのコンセプトを決めてやってもいいし、イラストを書いた後に誰かに付けさせてもいい。ノベルを描いて挿絵を多めにしてもいいし、もしくは絵本の方式にしてもいい。既に綿密に設定があるならば、それを書いてもいい。(筆者が付けるのが一番良いが、めんどくさいというなら僕みたいな文字だけは書ける奴が書いてもいい。)

重要なのは「じっくり見て、良いと分かった人が作者への評価に応じて最大限投資するシステムを作る」事

冊子で売れば何千円と1つのサークルに払う人が居る場所で、単価の低いものしか置かないのはもったいない。(この方法なら冊子で人を引きつけながら、イラストを売ることができる。「売り物じゃありません」ではもめるから「高くつくから、そっちから良いもの選んで頂戴」という手法ならいいかなぁ…と。例え名のしれたサークルでも「高い」と避けられる。だが、少ない人しかさばけない「イラストの1枚売り」にはそのわずかな人で十分)

そりゃ、売り手にも「流儀」があるだろうから僭越な話であることは間違いないが、経済を知った人間はどうしても「機会費用」という概念でモノを考えてしまう。即売会の椅子も、時間もタダじゃない。そこにいる時間を有効に活用しないと「損」だと思ってしまう。もちろん、楽しむことが一番だよ?でも、「損」が方法一つで変わると知れば、提案の一つもしてみたくなる。…合わなければ、受け流してもらっていいのだが、だからといって無関心でいられるほど僕はスルースキルがない。そういうお話です。

  • コミティアの魅力は「話しながら売り物を選べる」市場の感覚。

コミケ批判というわけじゃないけど、アレは「コミックマーケット」じゃなくて、「コミックバーゲン」に改名したほうがいいよ。市場であんなにひしめき合って人は歩かないから。

例大祭とコミケは人と話ながら、じっくりと吟味して買うなんて…無理!!

無理を承知でやってるけど、あの人ごみを見ながら、僕が上記のように細かく絵を解析する脳みそで絵を見るなんて無理!!本気を出せば、pixivやとらのあなで大化けする人のものばかりを買うこともできますが、そういうもんだけが即売会の魅力じゃないから無理!!

ほかの即売会行ってみたらいい。何かのオンリーイベントでもいいし、コミティアでもいいけど、コミケで入門した俺がすごく世界が変わった。コミケはコミケで楽しいけど、コミケの楽しい部分をもっと気楽に味わえるから「ほかの即売会の方が良い」という考え方だってある。

何が良かったかというと【同人誌紹介】を手がける僕にとって、サークルさんとの人脈ができたこと、話しながらじっくりと作品を選べたことが大きい。

このサークルのイラスト1枚から選ぶだとか、某オカルト系同人誌のサークルの魔術から神話までの20冊を全部読んで「これ!」と決めたりとコミケ特有の「消費動物」みたいな状態から離れて吟味できるのが嬉しい。(※それゆえに、すごく疲れるんですけどね。)

僕はこの「イラストを1枚からプレゼンしながら売る」という手法は度肝を抜かれたし、このサークルでかなりの時間を粘っただけに楽しかった。コミケの時は「出展したい」と思ったことはなかったのだが、コミティアに来て初めて「ブログで書いてる評論をマニアックに再構築して、本にしちゃおうかなぁ?」と半ば本気で検討し始めた。(応募期間は二月末まであるので、経済状況を見ながら決めます。)

それはともかく、すごくこのサークルには勉強をさせてもらった。それだけは本当に感謝したい。

■作者紹介
・イラストはpixivから拝借しました。
https://www.pixiv.net/member.php?id=201008

・ホームページもあるそうです。
https://b-create.asablo.jp/blog/

*1:特に中国人は死人でも生前の事を悪く言う傾向がある。(※次の王朝が、前の治世を論じる習慣があり、その時には「前の国のほうがよかった」と言われないために歴史書を事実と改ざんする、政治的発言で申し訳ないが、靖国問題とはこの「死ねば仏になる」の日本人と、中国共産党の「日本人の治世が我々に勝ってるなどとは絶対に言われたくないから改ざんする」という価値観の衝突で、そんなものは足払いしてやったらいい。「この絵のように黄泉の世界では、浮世の千年興亡史など関係ございません。黄泉の世界の人間を論じて、今が変わるというのでしょうか?」と言ってやればいい!!私だって、恨みつらみを申し上げたい奴がいるが、それが死ねばもう追うだけ無駄だというもの。

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これが「目」で語る戦いだ
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