灼熱の小早川さん 田中ロミオ

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久々に書評と行きましょうか。すごく面白いものが読めたので。(批評家と言われても文句の言えない当ブログ管理人が珍しく絶賛します)

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)

お品書き

  1. あらすじ
  2. 小早川千尋は間違いなく俺の過去・現在
  3. 人間の真価は「集団心理」の中で試される
  4. 最近の青春モノに足りないモノがいっぱい

  • あらすじ

気難しい上に、規律にうるさい委員長『小早川千尋』の暴走を止めるべく、小早川千尋に違反を指摘された被害者の会(というかクラス全員)は飯島直幸を派遣。飯島直幸は小早川千尋になんとか取り入り、今まで一人でやっていた委員長の仕事を副委員長として一部譲り受けた。が、これは飯島自身小早川を止めるという目的のためだけでもなかった。というのも、飯島は小早川のファンなのだ。(「のことが好き」ではなく「ファン」という言葉を使うあたりがこの話のミソです。読んだ人にはわかると思います。)

  • これ?なんて俺?

正直言って、読めば読むほど他人とは思えない親近感…いや、同調…むしろ俺自身ではないかというほどの「一体感」を感じた。

というのも僕自身が高校2年のあたりで小早川さんみたいな境遇にあったことがあるんですよ。そんで、おまけに小早川さんもブロガーで僕も文章書き始めたのが高校1年。あ、その当時は日記と言いながら小説風味で躍動感を付けながらその日のことを不定期で書く日記だったから小早川さんの書くそれとは違います。(小早川さんが書くものに近かったのは大学1年生ぐらいかな?ひねった解釈を考えず、自分の思ったまま時事問題を時に感情的、時に論理で斬ってたのは。)

そんで、体験が似てるから発想もすごく似るんですよ。全然違うところを言えば、僕は人を啓蒙しようなんて気はさらさらないんですよ。僕自身はね、いつも考え方の1つとして、少ない時間の一つに「とある青二才」を選んでいただければ、それでいいと思ってるんですよ。僕はうちの中に持ってるとか、ウェブ上のブックマーク・履歴の中に名前があるとか、その人の行動原則や答弁で引用する時に使われてこそ製品・サイト・言葉は勝ったと言えると思ってます。

その瞬間にどれだけたくさんの偉人の言葉にふさわしいモノがあっても、青二才の斜方前進で書いた言葉を引用してくれるとこれほど嬉しいことはないんですよ。ブログをもしも「生活の一部」にしてくださるなら、それは会話における引用でしょうね。知識は別に他のところから手に入るけど、言葉の力を僕の書いたそれから得てくれたらそれほど幸せなことはないんです。(考え方…ですか?それも使ってもらえるのは嬉しいですが、僕だって元ネタがあるから完全なオリジナルじゃないんですよね。僕はカードを揃えて役を作ってるだけ。ポーカーや麻雀みたいなものです。その時にキレイに決まりそうな役を、その時に入ってきたネタ似合わせてチョイスするだけ。)

…話戻します。
そういう意味じゃ僕よりも小早川さんは強い人…もしくは青二才なのかも。人から見捨てられてもなお人を自分の意思に従わそうなんて僕には思えない。「馬鹿にはわかんない」って決めてそのバカをとことんいじめ倒す。ただそれだけ。いじめる気力もない、必要もないときは無視。

僕も以前ブログに冷かしに来たやつをそいつのブログまで行って「俺をネタにしてるけど、決して俺にどうこう言えるレベルじゃないよね?」って追い詰めましたよ。kanoseさん見たく俺より明らかにレベルが上の人が俺にどうこう言うのと違って、そうじゃない人がネタにし始めたときは初めての経験で我慢ならなかったので、ついつい大人げないことをしてしまいましたよ。そいつがギャーギャーわめいてくれたおかげでいい見せしめになりました。「TM2501を嘲笑おうというならブログを隠してくるか、TMよりも良いものを書いているものだけが立ち向かってこい!」とパフォーマンスする上でのね。(あ、そいつ以外には何もしてないのですよ?だって、時間の無駄じゃないですか(笑))

そういう意味じゃ、僕なんかが「時間の無駄」って思ってることを必死で考え込む子どもなんです。彼女。でも、自分も若くて有り余ってた体力で無駄だと悟るまでやり込んだように、バカな奴に一言・二言言って曲がった根性をどうにかしてやりたいんですよね。

それで「灼熱」に燃え盛る小早川さんの気持ち分かりすぎちゃって、この作品は「ああ、俺なんだなぁ…」という気持ちで読みましたよ。細かいところが女の子らしくされてるから「てめーのブログの読者だが、おめー絶対自己評価を間違えてる」と言われるかもしれんが、本質は一緒よ?好きこんで猫耳かぶるような茶目っ気はないけどさ。

  • 集団心理の話

僕の青春時代もそうだし、小早川さんも本編中で悩まされた話なんだけども、個々人に悪い人であるわけじゃないけど、集団になると平気で悪事をなせるって空気について話をしようか。

僕も含め、僕は友達に「いわゆる空気の読める奴」を入れないようにしてるのよ。そういう奴って周りの評判のために相手のことを平気で切り捨てることができるから。驚くほどいとも容易に。

ぼくさ、本文中で飯島直幸クンが「みんな悪い子じゃないのに」って事を言うのがすごく腹が立ってまして…といいますのも、嫌々空気を読むやつってもうその時点でそういう資質あるんですよ。「空気」優先で交友関係を平然と変えたり、自分の意思をねじ曲げたりする「奴隷の資質」が。

「奴隷の資質」っていうのは僕の造語だけどさ、空気とか立場とかメンツとか…中長期で見たらそんな何にもならないモノのために自分の信用をどぶに捨てることのできる「見えないものに操られた人」だから奴隷。自分の医師で動かない奴隷。

僕とこの作者の差はここだと思うんだよね。「空気を読「ま」ないヤツこそ正義」っていう僕の考え方と、「気持ちを考慮して言い分を変えてあげる人こそ正しい」って考え方の作者。この違いがあったから、この作品ができてなおかつ面白く読めたんだなぁ…と感心してますよ。

けっこう、頭の中で考えている事がプロセスが同じでも結論が違うところにもって行かれるから楽しい。文章は会話だからね。その会話を久々に楽しんだ。目の前に作者の心を、姿を見たような本だったよ。

  • こんな面白い「ラノベ」は初めてだ!

ハルヒやキノやはがないで続編が読みたくて中毒になったが、小早川さんの場合もそういう気分だった。1巻モノゆえ続編はないのだが、続きが気になって読んでいないときにもぞもぞしたのをよく覚えてる。

オカルトとか作り物設定なく、本当にリアリティーとギャグ要素だけでつないでこれだけの面白さが実現できるのだから、すごいと思う。

そして、所々の表現力、作者の語彙力や物の見方だわな。特に語彙については自分が使わない語が少し出てきたのでメモって辞書を引いて勉強させてもらった。

物の見方でも「空気」ってモノに着目したのが非常に良かった。僕はそういう人間自体が嫌いで弱いと思ってるから絶対に書かないんだけども、結局空気なんだなぁ…と思うことはけっこうある。

例えば、自分のヒットさせたソニーの記事何かでも書いたことだけど、ソニーぐらいならすごい人が居るはず(採用してるはず)なのに、どうして社長があんな凡庸なコメントしか出来なかったのか?って事を考えると16万人みんなが集まると優秀な個々人ではなく、もっと凡庸な空気を纏うんだろうなぁ。

国鉄がJRに移行する頃の話を読んだことがあるが、赤字になってるときは何がダメだか薄々わかってたけど「大きすぎてやったってできない。」「国や利用者に国鉄が交渉なんか出きっこない」ってある種開き直ってたんだよね。(これはJR東海の会長さんが自分の著書で言ってる話)

だから、これって学校であれ、企業であれ同じ事が言える真理で、読んでいて「他人事じゃないんだ」と少しでも空気から距離を置く強さを持ってる人には共感できる作品であるはずなんだな。

そういう人にこそ読んで欲しい。そんな作品だよ。僕は気に入ったからこの人が書いたノベルをもっと読んでみたいし、できればゲームもやりたい。…あとで調べてから知ったんだけど、この人ってエロゲのシナリオライターとしての方が有名な人らしい。ラノベの作家としても十分有名な人だけどさ。

…なぜ今まで読まなかったか?なんでだろうね?むしろ、読みたいとは思ってたんだけど「いつか」をずっと続けていたら、「いまさら」になっちゃったみたい。

灼熱の小早川さん

灼熱の小早川さん
著者:田中ロミオ
価格:600円(税込、送料込)

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ラノベ
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これが「目」で語る戦いだ
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