野球オタクが考えるハリルホジッチ問題

最近、「監督の歴史シリーズ」というプロ野球の監督達の歴史をたどって、球団がどのように発展/衰退したかという歴史を検証し、書き続けている。

監督の歴史シリーズ

そんな最中、サッカーの世界ではハリルホジッチ監督がサッカー日本代表から解任されるという問題が話題がでてきた。(それもワールドカップ2ヶ月前に)

 

サッカーは一般レベルの知識がないが…ちょうど「監督の歴史シリーズ」を書き続けていたため、
「野球の歴史で言えば、最悪の人選でかつ、最悪の切り方じゃないか!」
「サッカーも野球もない。こんなフロントが強いチームなんか作れるわけないんだ」
と思うところがあったため、門外漢ながらこの題材で記事を書くことにした。

たとえ名監督/名選手であっても、チームカラーと合わない監督はうまくいかない

これは、トルシエ監督が指摘していることなのだが…そもそも、ハリルホジッチの「守り勝つサッカー」は日本のサッカーと合わないらしい。

ヴァイッドは優れた守備を主軸に置いた哲学的な戦略をチームに植え付けるタイプの監督だ。

(略)

一方、日本は攻撃的なサッカーを展開する国だ。アジア諸国との試合では80%近い時間、ボールを支配できる。つまり、(そんな国で彼の哲学を植え付けようとするのは)言い換えるならバルセロナで『守備をしろ、デュエルで勝てるグループを作れ!』と言っているようなものだ。スペインの選手たちはこの指示を理解できない。だがヴァイッドは守備に固執する。日本もスペインの選手たちと近い。
トルシエ監督が読み解くハリルホジッチ解任劇(GOAL)

その点、前任のザッケローニ監督は、攻撃的なサッカーを展開する監督だったから、日本人の気質にあっていたそうだ。
だから、ワールドカップこそ散々だったけど…ワールドカップ以外ではちょいちょいいい結果を出していて、ワールドカップについても「南米では欧州の国々でも苦戦している。優勝こそドイツだったが、他はよくなかった」というようにサッカーファンの中には言っている人もいる。

 

つまり、前任者とスタイルが反対でかつ、日本人向きでもないサッカーが得意な人だから…結果が出ない覚悟で自分達を大きく変えるために監督と心中するか、あるいは気長に結果を待つぐらいの気持ちでやらないと…うまくいくわけがないんだよね。

 

野球の世界でも、監督のスタイルが真逆だったために、名監督/名選手にもかかわらず失敗した人は何人かいて

鈴木啓示…近鉄の監督を務めた元300勝投手。一流選手の調整は個々に任せて、二流以下の選手はデータを活用して適材適所に当てはめる前任者の仰木彬のスタイルとは逆に、自分流の采配や調整法を押し付けて…失敗。
最新の調整方法を教えていたトレーニング系のコーチが監督就任1年で辞めてしまうほど確執が生まれてしまう。

石毛宏典…オリックスで仰木監督の後任を務めた監督。現役時代にはミスターレオの異名を取り、管理野球全盛期の西武で活躍。
私生活の管理どころか、門限もミーティングもない仰木政権とは真逆のスタイルだったばかりか、失言の多い人物だったため、宮内オーナーからの信用を失って、監督から降ろされてしまう。

森祇晶…巨人軍V9時代の捕手にして、西武黄金時代に管理野球で成功した監督。横浜ベイスターズの監督就任時、前任の放任主義な権藤監督とは真逆のスタイル、加えて正捕手谷繁元信との確執を引き起こし、記録的な連敗を喫する。2年目の途中で解任。

野村克也…言わずとしれた球界のご意見番。南海・ヤクルトで優勝経験のある名監督だが、阪神ではOBの体質や、ヤクルトや南海の選手のように言うことを聞かないこと、過剰までに補強を渋る球団フロントにチーム改革を妨害されて、就任時3年連続で最下位。
解任ではなく、妻であるサッチーの脱税による逮捕が辞任の原因だが、野村克也が監督としてこんなに結果を出せなかったのは、体質がまるで合わない/サポートもしてもらえなかった阪神だけ。

 

…つまりですね、野球の監督では、前任者とカラーが違いすぎたり、フロントのバックアップ体制がダメダメだと…いかに名監督でも負ける。
日本のスポーツ報道は、監督に責任を押し付けがちだけど、選手や監督を呼ぶのはフロントやオーナー企業なので…そこが腐っていれば、いくらいい監督呼んでもうまくいかない。

代表チームで最強チームを作るのは難しい理由

とはいえ、ハリルホジッチ監督は代表監督だから、こんな事を言う人もいるだろう。

「代表監督なんだから招聘する選手を変えて、監督のサッカーを浸透させれば、クラブチームほど難しくないのでは?」
それが、ハリルホジッチの言う「政治はしない」ということなんだろうけど…そうも行かないから、代表監督は難しいわけで…。

 

野球でもサッカーでも日本代表となれば、大半はスター選手で固めないといけなくなるわけ。
スター選手ということは、実績があって、攻撃的な選手ということになり、結果攻撃偏重でかつ平均年齢が上がってしまうわけだが…野球で勝負に拘ると守備力の高いチームになるし、サッカーは運動量が多くて5~10数キロゲーム中に走り続けないといけないから…動きのキレがある若手を呼ばないと…勝てないのよね。

ましてや、今の日本代表(のイメージが強い)のスター選手…本田、香川、岡崎、長友は全員アラサーで、テクニックや経験はともかく、動きの面で一番いいかと言われると…それはちょっと違うよね。

 

結果的に、戦術的に使いやすい選手や、若さや小技がある選手は、隅っこにサプライズとして呼ぶことしか代表では難しい。
野球で言う「スモールベースボール」みたいなチームが作りにくく、豪打のチームに偏ってしまうし、打率も膝もよろしくない中田翔のような選手を呼ぶことになってしまう。
※中田翔がダメというわけではなく、3割30本打てるスター選手が3人はいるチームであれば、小技が使える無名選手を呼ぶ選択肢だって、本当は用意されるべきと言う話。

 

2016年のWBCでは、政治的な要素が強くなりすぎたため、中田翔然り、野球ファンの間で捕手としての資質に疑問のあった小林誠司を正捕手にする結果となったわけだが…スポンサーやマスコミウケを考えないなら、もっと勝ちに行くチームを作ることはできたわけで…。
※結果的には中田翔・小林誠司は両方とも打撃好調だったけど…守りや打線のつながりを考えたら「本当にこれでいいのか?」と疑問が残り、WBCが始まる前は野球ファンの間で、小久保監督の疑う声がたくさん出た。

 

野球だろうがサッカーだろうが、代表チーム・監督を選ぶ側である「スポンサー企業」及び「協会」に相当するところはメディアから批判されにくいのだが…プロ野球チームならフロント・オーナー企業に相当するところが野球の勝ち負けを左右しているわけだから…「協会批判したら出禁」「ドリームチームで勝つ」は本当はありえないのよね。

野球の歴史でそんなことやって成功したのは、圧倒的な政治力・資金力・獲得工作がそろってた巨人軍だけで…普通は有能な監督を簡単に切ったり、政治的な切ったチームは…続かないんだよ。

ただ、代表チームの場合は政治・資金・獲得工作は関係なくて…いかに優秀な監督を選び、腰を据えるかだから…曲がりなりにも、ワールドカップに出場できてる監督を、ワールドカップの前に斬るのは…悪手極まりないわなぁ…。

 

ロッテが金田正一以降リーグ優勝していない理由

野球の世界にも、「優勝したのに、オーナー企業の以降を無視したがために、クビになった人」は実はいる。

それが、大毎時代の「西本幸雄」さん。
今でこそ、阪急と近鉄を再生した名監督として知られているけど、大毎(現在のロッテ)時代にはリーグ優勝したのに、日本シリーズでの采配で当時のオーナーであった永田雅一と喧嘩別れ同然で大毎から去っている。

 

大毎・大映・ロッテと名前やホーム、親会社が変わってもロッテは監督に責任をかぶせたり、意見する主力選手を干す文化は変わってなくて、こういう事件を山のように起こしている。
・優秀だけど、没収試合を起こした監督のクビを切ったり、
・前年度2位だった大沢啓二監督が、5位と低迷した時に途中で解任したり
・選手に無理な練習をさせないボビー・バレンタイン監督の許可も得ず、試合が休みの日に練習させたGMとの確執から、2位になったのにわずか1年で解任したり
・ボビー・バレンタイン、西村徳文、伊東勤などプレーオフに進出した監督には、翌年以降主力選手を売り払った状態で戦わせて、2位・3位になったのに半ば責任を取らせる形で辞任させたり…

本当はここに書ききれないほど、球団の70年近い歴史のなかでずっとこういうことをしている。

 

だから、プレーオフを勝ち抜いて優勝・日本一になったことはたくさんあるけど、通常のシーズンで最後に優勝したのは40年以上前に金田正一がやってから1度もない。

だから…ロッテには国内の名監督もいつかなくなって、さらに生え抜きのスター選手も次々と干してしまったり、小粒な人ばかりだから…今一番監督に困っているのは、ロッテか、ここ10年で監督を任期途中で解任させまくったオリックスじゃないかな?

オリックスも…福良監督が就任する前は…4人連続で任期途中で解任している。
任期途中で解任するもんだから、チームが底上げされない暗黒時代に…。

 

減点法で実績にかかわらず任期途中での解任も、
行き当たりばったりで名監督を呼び込もうとするのも、
ダメな球団がやることなんだよ…。

それは「目の前の勝負に勝つ」ためにもダメだし、「将来的に素晴らしい監督に就任して欲しい」という観点から考えてもダメ。

 

弱いチームが優勝する時には、何年もかけて同じ監督の野球に染めていくし、そのことをオーナーが全力でサポートする。
阪急や近鉄で西本幸雄がうまく行ったのも、解任騒動の際に阪急のオーナーが「チーム再生には西本しかない」と鶴の一声を飛ばして守り切ったり、近鉄の歴史では類のない長い時間を西本に託したりしたからこそ。

 

ハリルホジッチというカラーが逆の人を呼んだ時点で、サッカー協会の能力はかなり疑わしいが、もっと高いレベルの相手と戦うためにスタイルを変えようと言うなら、腰を据えてやり続けるためのサポートをすべきだった。

 

基本的に野球ファンだから、サッカーが当分強くなりそうもないのは「サッカーに人気を奪われる心配がなくて安心」とも思う。
でも、同時にリーダー選びがダメダメな人がナショナルチームの人選やスポンサーをしていることは、野球でもサッカーでも「日本のスポーツは選手や現場の監督よりも、マネージャーがダメすぎて世界には及ばないんだなぁ~」と共通した課題が浮き彫りになって落胆している

自分達の利益にしか興味がないのは大いにけっこう。
だけど、「利益のために必要なリーダー論やスポーツチームのメカニズムぐらい勉強しろ」って心底思いますわ!

 

サッカーマンガで、この記事に近いことを言ったり、検証しているのがこのマンガ。
金に物を言わせてカラーの違う監督を呼んで失敗しているチームを批判する描写も出てくるのだが…僕は当時「オリックスのことか!!」と思ったけど…サッカー協会のことでしたか…。

 

◆関連記事:監督の歴史シリーズとか

ロッテの監督、球団創設以来ずっと呪われてる問題
70年近い球団の歴史が、一貫してグズグズなロッテ。あまりにもずっとグズグズだから、年表方式で紹介。

近鉄の歴史をたどると西本・仰木のすごさを再認識してしまう…
逆に「監督選びは間違ってないのに、あまりにも資金力と本拠地が酷すぎて強くなれなかった」のが近鉄。これもなかなか面白い

2018年のプロ野球を勝手に順位予想する(セ・リーグ編)
シーズン開幕前にこんな記事も書きました。ちなみに、DeNA1位予想に、巨人が伸び切らないという予想が今の所的中してる。(※ヤクルトが意外と強かったのが、今の所予想外だが…経験の少ない投手陣が後々失速してくるところまで計算して予想してるから…多分当たると思う)

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