大塚家具の身売り問題に見る「客商売は8割は客」問題

大塚家具の身売りの問題が話題になっている。
お家騒動をきっかけに大塚久美子社長の一強体制になってからというもの!
元々は高級家具店として強かった大塚家具が、から利益拡大と時代にあった経営を目指して、経営方針を大転換!

かくして、庶民的なお店を目指したわけだが…既存の顧客たちの支持を失い、ニトリの牙城を崩せず、身売りする始末とあいなった。

この記事では「なんでこんな事になったか」を客商売/商人(あきんど)の目線と、投資家/企画目線で語っていく。

一番売れるものが偉いならコーラとハンバーガーが最も優れている。

まず、企画や投資家の目線で語っていくわけだが…それを的確に表したのが、Q.E.Dというマンガの有名に出てくる有名な画像。

コストパフォーマンスや知名度で考えたら…この結論は否定できない。

どんな業界でも、大衆に根ざした庶民的なサービスこそが業界の中で売上ナンバーワンになる。

例えば、マクドナルドや吉野家やすき家/はなまるうどんのゼンショーよりも高くて美味しいモノはいくらでもある。
しかし、業績や知名度としては、幅広く店舗展開できた彼らこそが飲食業のトップランナー!

一方で、単価が高いお店は専門性が必要になるため、多店舗展開は難しくなる。
もちろん、高級店や専門性にもメリットがあるが、投資する上で急成長を期待できるような会社にはなりづらいのよね。…専門的な仕事をできる人ってすぐに育たないし。

 

だから、大きな売上を叩き出したり、投資の銘柄として人々の興味を引こうと思うと…大衆的なサービス、庶民に根ざした商品で勝負する方がいい…というのが、株主や財務的な観点から来る発想になる。(それも、三流の財務担当者や株主が陥りがちな発想)

なんで、財務的なことを先に言ってるか?
それは大塚久美子社長がゴリゴリの金融畑・企画畑出身の方だからだ。

一橋大学を出て、富士銀行(のちのみずほ銀行)に就職。
三年後、大塚家具に入ると、経営者一族としていきなり総合企画室長兼営業管理部長に。
四年間で営業管理部長はやめてしまった後も、七年間総合企画部長は続けている。
さらに、商品本部長や広報部長も二年ほど経験して、集客アップや経費削減を行うコンサルティング会社の社長、経営支援の会社の役員を歴任。
2009年に大塚家具の社長兼本営業部長になるも、2014年に一度解任。
2015年に社長と本営業部長に復帰。

…営業管理部長とか営業本部長という肩書がたくさん出てくるけど、本人の興味は企画やコンサルティング。
また、営業部の一社員から営業マンの苦労をたくさんしてきたような人でもなく、入った時から部長で、あくまでも人間の管理をし続けた人…ここが大きな弱点。
結果的に、大塚家具の強みである充実した顧客層や、専門知識がないと扱えないような高級な商品を扱えるところを、あんまり強みだと思えていなかったのよね。

どのぐらい酷いことになっているのかは…このこの図を見てもらうのがちょうどいい。


NewsPicks-株式会社大塚家具

びっくりするようなジェットコースターで業績も利益も落ち込んでる。
投資っぽく「ジェットコースター」ではなく、「ナイアガラの滝」とかの方が良いのかな?

とにかく、競合であるニトリや島忠ホームズと同じ土俵にたった途端に横綱相撲どころか、回しを取られて会社ごと土俵の外に売り飛ばされる結果になった。

客商売は客が8割。いいお客がつけば、客商売はすごく楽!!

ここからは、社長になんてなったことのないぼくの体験談だが…ぼくは、一橋大学のエリートみたいに、大学時代からITベンチャーやどこかのオフィスで働いたりできなかった。

だから、普通通り、大衆的な飲食店やスーパー・コンビニでアルバイトをして、ブラック企業にいた時には、果物の移動販売もやった。

 

当初は、川崎で飲食店とコンビニでアルバイトしたあと、家族から一人暮らしの許可が出て品川区のスーパーでバイトした。

発達障害のぼくは、テキパキした仕事が苦手だったため、川崎ではコンビニの店長から「クレーム来てるよ」的なことをけっこう言われた。
しかし、品川区のスーパーでは…クレームもなくはなかったが、古くから住んでるお金にも育ちにも余裕のある人達が多かったから良くしてもらってそれなりに続いた。

移動販売の経験では客層の違いが各駅で鮮明に異なることを、身にしみてわかる経験をした。

例えば、都会の繁華街の駅では、ぼくみたいにトロいやつは、人混みの中でものを売るのが苦手。逆に、ガッツリした人のほうが、うまく売りさばくことができた。
一方で、育ちがよくおっとりしている性格が幸いして、郊外や富裕層の多い地域では、ぼくみたいな「いいやつ」がにじみ出てる人の方がうまく行った。

 

人間関係・労働環境に難があるブラック企業ではあったが、気質を見抜いてぼくと相性がいい場所に送り込んでくれたこと、仕事としては比較的やりやすくさせてもらったことはとても感謝している。

 

その後、うつを患って、ブログを書く日々を送る。
そんなある時、ベテランの営業マンから
「ブログの人気を活かして、対面式でブログを教えるサービスをしてはどうか?」
という提案をしてもらい2年前から「ブログ教えるからメシおごって」と題して、希望者に川崎駅まで来てもらって、川崎観光や、ブログレッスンを始めた。

 

「ぼくのブログ・SNSから直接依頼する」という敷居の高さが客層と客単価を押し上げたため、貧乏生活でありながらスペイン料理のコース、ふぐのコース、焼き肉などをおごってもらう機会に恵まれ、同時に、ガツガツしたお客が来ないから非常にやりやすかった。

絶対数が少ないから、ぼくの生活を支えるまでにはなってない。
しかし、たまにいいものを食べられるイベント、出会いの少ない生活の中でめかし込んだ女性が来てくれるのは、非常に楽しく、今もぼくは依頼が来るのを楽しみにしている。

 

このように、客層によって商売は天国にも地獄にもなる経験をしてきた。
だからこそ、大塚家具のように高級店が大衆店になろうとするのは愚策の極みだと思う。

 

大衆店になってしまうと、ガツガツと成果を求められたり、すぐクレームを言われたり、専門性について理解や敬意をもらえなかったり…とにかく、プロとしてがんばることより、テキパキやるマシーンぐらいにしか思ってもらえない。

高級店なら、他のことにもお金や時間を投資している裕福な人が来るから専門性にも信用と熱意を持って接してくれるし、業者を人間扱いしてくれるからこそ、やっていて、素直な楽しさ・勉強意欲が湧く。

 

もうお気づきかと思うけど…大塚家具の社長がやったことの中で、最も罪なのは
「会員制で囲い込んでいた高給取りの顧客を取り逃がしたこと」
だけじゃない。

上客を相手にすることで仕事にやりがいや楽しさを感じていた社員や周囲の業者まで腐してしまうような戦略を打ち出してしまったからこそ、2年で身売りするほどの大怪我を負ってしまったのだ!

そのことは大塚家具の従業員数を見ても明らかだろう。

大塚家具の従業員数(stockclip)

高所得層向けのビジネスが全部いいわけではない。
不動産は不動産で生臭いところがある。外車についても車オタクと、車にいかつい改造を施したがるヤンキーにお客が二極化してそれはそれでめんどくさい…という話を、知り合いのライターから聞いたこともある。

 

それでも、高所得層向けのビジネスの方が、専門性に敬意を払ってくれたり、支払いがよかったり、通常の生活水準が高いから身なりに気を使ってる美人だったり…いいことが多いのよ。
美人じゃなくても機嫌が良かったり、熱心に聞いてくれたりするから、やっててよかったという気持ちはとても湧いてくる。

お客が少ないし、解決してしまうとごっそりとお客と売上が抜け落ちるから、数や収入の安定性をキープして仕組みとして回していくのは大変だよ?
でも、人間らしいリズムとお付き合いの中で商売をする方が…結局は儲かるし、結局は楽しい。

 

自分に専門性がなくて、どうしても大変で大衆的な客商売をやることになるにしてもだ!
東横線を選ぶのか、南武線を選ぶのか、京浜東北を選ぶのか…それだけで客層はすごく変わってくるから客商売は客が8割。客の質を上げたかったら、自分の質を上げろ。すぐにあげられないなら、育ててくれるいいお客さんを相手に誠実な商売をしろ!」と肝に銘じて精進することをおすすめしたい。

 

ちなみに、「三流の株主・企画畑は、机上の空論で売上が上がりそうな大衆路線を支持する」と言ったが、一流の人はもちろん、二流でもちゃんと成り立ってる人は、この辺のことをわかってるので、投資目線や企画畑目線だからダメという気はない。

ただ、数字を見るからには世間的に目立つ会社周りを認めさせるレトリックなんかよりも本質的な利益を上げられているか、上げるための仕組みや値段付けができているかどうかを、数字ばかり見ている人でもちゃんと見てる人は見てる。

ただ、数字しか見てない人・見る数字を間違えている人が経営者になってしまうと…ただただ、幸福の連鎖、手堅いビジネスモデルを壊す人になってしまうから、頭を抱えるばかりだよ。

あの時、マスコミ各社は大塚久美子社長を推してたけど、その当時から疑問があったのよね…。
お家騒動なんてくそみたいな理由で継承した社長で、その人が現場経験の薄いエリートの財務畑…という点にめちゃくちゃ疑問があった。

ぼくが疑問を抱いたことがたった2年半で、答えが出て、しかもぼくの経験から逆算できる答え通りに出たからすごく、嬉しい。「いい経験してきたんだなぁ〜」と。

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