高橋由伸を評価するなら「平成の真田幸村」とでも言うべきかと

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2016年から巨人の監督をしていた高橋由伸が辞めてしまうそうだ。

ぼくは「そこまで悪い監督でもなかった」と思うのだが…優勝争いに絡めなかったことを理由に3年契約を満了して辞めることを明言している。
なり方もグダグダ、辞め方もグダグダ、ベンチでもムスッとしているため巨人ファンからは不評と同情を買ってる。

でも、由伸的なことって日本の
「誰も幸せにならない意思決定」
で起こることだからちょっと語ってみたい。

高橋由伸と真田幸村

ぼくは真田幸村を悲劇の将みたいに言う人がどうも苦手なんだよ。

確かに真田丸を使って徳川軍と退治したり、突撃して家康本陣までもう少しのところまで行くのはすごいと思うけど…そういう人を持ち上げる傾向があんまり好きじゃない。

というのも…真田幸村が提案した作戦・戦略の部類はことごとく(大坂の陣の前後に豊臣家を仕切っていた)大野治長に反対され、なし崩し的に敗北にまで来てしまっているから…
これ、真田幸村ではなく、真田昌幸だったら大野治長を幽閉してでも戦いに勝つか、自分で交渉に出かけてうまく豊臣を存続させたり、大坂城を落とせない状態を維持するよね?
って大坂の陣について聞く度に思うから。

実際問題、竹中半兵衛であったり、松永久秀であったり、武田晴信(武田信玄)であったりは、本当に乗っ取りをしてて、本当に名将と呼ばれる人は無能のトップを追放したり、暗殺したりして野望を成し遂げている。

 

巨人軍のフロントが強い権限を持っていることももちろん分かる。
ただ、80年代に巨人を常勝軍団に押し上げた藤田元司監督は今よりもずっと強権的な正力松太郎に殴り込みの直談判をかけて主導権を勝ち取っている。

よその球団でも、西本幸雄監督はフロントの内輪もめが現場に悪影響を及ぼすと信任投票をやってボイコットをして、フロント側に
「西本以外に阪急の再生はない」
と社長直々の鶴の一声を頂いた上で阪急の再生をやってる。

超一流と一流の差でしかないから、無茶な要求なのはもちろんわかっている。
ただ、歴史に名を残すような名将達は野球の世界であれ、戦国時代であれ、主従関係を取り返して現場でいい結果を残すように持っていってるのも事実だ。

ところが、日本だとそういう人の方が変わり者扱いされたり、トップにモノを言ってまで結果を出すエピソードは省かれた上で紹介されがちだから…そこにとてもモヤモヤする。

挙げ句、トップのグズグズな決定に突き合わせれて、いい結果が出せないと「悲劇の将」なんて呼ぶ。
悲劇でもなんでもなく、超一流なら指揮権を取り返していただけでは?と思ってしまうが…。

 

もちろん、高橋由伸にも逆らえない理由はある。
由伸が巨人に入団した原因は親の借金を読売グループが肩代わりしてくれるという契約があって、それが理由で本当はヤクルトに行きたかったのに巨人に入団してる
だから、由伸が言いなりに徹したことを悪く言いにくいところもある。

ところが、由伸政権でのフロントの動きはとにかくおかしなモノが多かったので「監督を引き受けた以上、もっと提案したり言うべきだったのでは?」ということは多い。

有名なところで言うと
・2017年のドラフトで、レギュラーがほぼ決まっていた捕手ばかりを獲得
・菅野や田口など投手力の高いチームにもかかわらず、西武から野上を獲得する。(マイコラスが頑張ってるときに山口俊を取ったのもほんまは微妙なんだよなぁ…2018年はかなりいい仕事をしているから悪く言いにくいけど)
・どう見ても性格的にも戦略的にも巨人向けではないゲレーロを獲得し、不発。(陽岱鋼だって微妙だったし)
と、巨人の野球を知っている監督なら絶対やらないであろう不発っぷりを連発し、現場を混乱させた。

混乱の中でも、若い選手をどうにか育て上げて、チームの世代交代を加速させた高橋監督は、決して無能だと思わない。少なくとも現場特化でとして、補強された選手を使う技量はともかく、若手をうまく使う能力は高いと思うのよね…。
ただ…フロントの迷走を止められなかったという意味ではそこまでやる気がなかったのか、それとも調整する能力がなかったのか…すごく悔やまれる形になっている。

ラミレス・高橋由伸・金本知憲…どこで差がついたか

誰も彼もに藤田監督や西本監督のような大胆過ぎる行動を求めるのは無謀なので、ここからはもうちょっと現実的な話をしたい。

2016年〜2018年まで広島がダントツ1位でいつも横浜DeNA・巨人・阪神の3チームはクライマックスシリーズを争っている状態になった。

この3チームのうち、ラミレスは監督として評価され始め、金本知憲はチームがダメでもなぜか監督が責められることは少ない。
野球が好きな人からすると金本の無能っぷり、伸びた選手よりも潰した選手が多いところはもっと責められるべきだが…無能呼ばわりを受けるのは由伸ばっかり。

どこで差がついたのかを考える時、ぼくはラミレスの著書を読むことをおすすめしたい。

ラミレスはフロントともマスコミとも良好な関係を築くことに成功している。

本によると
「ネガティブなことを書くために近づいてくるマスコミとはそもそも関係を持たない」
「DeNAの南場オーナーとは、月1で食事してる」
「監督就任に当たって、自分のプランをデータに基づいて丁寧に説明して、ご理解していただいている」
など、マスコミやフロントへの対応のウマさを節々に見せている。野球の監督の本なのに、かなりの部分を周囲との根回し・関係性を整えるプロセスについて書いていて、経済小説を読むような面白さをラミレスの本に感じた。

 

実際に成功しているかどうかは別として、DeNAの補強はウィークポイントを補って現場が混乱しにくいいい補強が多い
有名なのは大和の加入。2017年にショートの倉本の守備力が問題視され、セカンドは固定できない中での大和加入。これはかなりアツい。
さらに、シーズン中には中継ぎ要因としてアメリカ帰りの中後や、オリックスとのトレードで赤間も獲得。
他にも戦力外やトレード、途中加入をうまく使って選手を集めて、ベテラン野手やとてもエース級ではない投手も、うまくピンポイントや数合わせで使いこなしてる。

 

もちろん、横浜ファンにもラミレスアンチがいて
「あんなに中継ぎを酷使するなんて酷い監督だ」
「”tomorrow is another day.”とか言うけど、野球ファンは毎日見に来るわけじゃないんだ。負け試合をあっさり捨てるラミレスはファンをないがしろにしている」
「自分の理論を説明するばかりで、一向に非を認めようとしない」
と、グズグズ言ってる人もいる。

一方、ぼくはラミレスが就任した瞬間から
「落合クラスの監督が弱小横浜の就任してしまった」
「これは横浜勝つわ」
と応援してきたラミレス信者だし、事実横浜ではありえないほど勝ってるから、かなり評価してる。

 

金本知憲監督については…実際の能力には疑問があるが、メディアや球団に
「どういう選手がほしい」
「この選手にはこういうふうに活躍してほしい」
といった要望や願望を出し、周囲の期待や注目を煽るのがうまい。

実際にはその場での采配や、アメとムチの使い方など監督としてセンスを感じないし、事実金本政権になってから堕ちた選手・伸びきれない選手の方が多い見える。
ところが、監督がメディアやフロントに要望を出している分だけ、ファンには「期待に答えられない選手が悪い」ように見える

阪神ファンって、メディアもファンも、若い選手を話の種に
「何してんねん」
「まあまあ、がんばっとるねんから」
といいたいだけのところがあるから、話題を提示できる金本って無能には見えないんだよ。戦術ベースで考えない人は。

一方で、野村監督みたいにそういう説明が少ない人やベンチでムスッとしてる人は阪神ファンは嫌いだし、じれったいきもちになる。

高橋由伸にも「説明しないところ」「ベンチでの雰囲気が良さそうには見えないところ」があるからファンをうまく味方につけきれなかったところはあるだろう。
本人は「相手に顔色を読まれないためにやってる」と言ってるが、巨人ファンには辛気臭く見えたのだろう。

実際問題、名監督の中には選手がのびのびプレイできるように顔色を変えないようにしている監督は何人かいるので由伸自体が間違ってるとも言えない。

それどころか、金本監督みたいにあからさまに制裁じみた采配や練習を課す方が、監督としては無能なのだが…話題性としては評価されてしまうのが悩ましい。
ラミレスも戸柱や倉本に限界が来た時には干すような対応をしてたし、苦言を呈する場面もないことはなかったが…極力言わないようにしていたり、救いのある言い回しを模索しているが…金本にそれがあったかと言うとないし、由伸に関してはそういう意味で目立つことは少なかったように記憶している。

動員や配置と、戦略・戦術は違う。

歴史の番組を見ていると、
関ヶ原の戦いで、石田三成や大谷吉継がやっていたことは動員であって、実際に現場で戦って兵をさばいていくこととは違う。
こんなことが、NHKの歴史番組「英雄たちの選択」で指摘されていた。

これは、巨人軍の昨今のフロントの動きにも同じことが言えるし、真田幸村を大坂の陣に呼び寄せた大野治長にも同じことが言える。

「優秀な人と必要な人数を配置すれば、動く」
というのはあくまでも官僚の発想。

石田三成や大野治長、巨人軍のフロントは官僚としてはそれなりに大人数を動かす優秀さを持っていたのかもしれない。
だから、結果的には酷いものだけども、無能かと言うと「いいところがないほどでもない」というぐらいのものだろう。

同時に、そういう人の下についてしまった時には、強く抗議したり、粘り強く意見をすり合わせて、権限を取ってこないと負けた時の責任や犠牲を払うことになってしまう。

 

官僚=ダメというわけではない。
日本ハムみたいにフロントが大きく口を挟んで年俸や選手の入れ替えをしているチームで成功しているチームはないわけじゃない。

広島だって、緒方監督がすごい名将というよりかは、先代の野村監督から準備してきたことが成功しているため、監督一人ではできないほどの中長期的な計画が大当たりしている。

 

「官僚主義的に人を配置するなら、徹底的に深いところまでデータを分析してぐうの音も出ないほどの理屈を並び立ててみろ」
「監督一人ではできないほどの長期計画に基づいて勝利を作ってみろ」
ってだけのこと。
巨人がグズグズになっているのはフロントが強い、現場が従うだけ…という構造ができあがってるから、ちゃんと意思決定できていないだけのこと。

頭でっかちについてしまった時には、うまくメディアを味方につけたり、自分のプランを説明してすり合わせてやるしかないんだけど…由伸はフロントにも生え抜き選手にも都合がいいだけで、優勝を狙う上で有能な監督ではなかった…ということ。

プロ野球はフロントやオーナーのパワプロじゃないんだけど、どうもダメな官僚主義は現場をパワプロ感覚で動かしたがる傾向があって、ほとほと嫌になる。
選手の性格とか細かいデータとか、弱点や将来性まで考えた補強ができない癖に、権限だけはもっていて、口も挟む…そういう人達から身を護るには自分のプランややり方を発信してうまく巻き込んでいかないといけないわけだが…そこがちゃんと野球ファンの間で語られてないこと、ダメなチームほどむしろいいなり前提でフロントが人を選んで、言うとおりにやってできない時だけいいなりになった監督に責任が押しつけられる一連の流れにうんざりする。

今回は由伸の話だけども…デーブ大久保が監督だった頃の楽天だってフロントの失態またはフロントに逆らえないデーブ大久保を据えたことの失態が大きいからね?

 

そう考えると、野球の監督って分析していくと、ビジネスや政治といった大人の根回しの話にたどり着くよねぇ…。
大人になってからは野球のビジネスっぽさが好きで、野球の動向をチェックし続けてる所あるし。

本当におすすめの本だからもう一度推しておく。
ラミレスの行動は選手としても、指導者としても、コーチングとしても、ビジネスを回していく大人としても面白い。勉強になる。

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ラミレス監督の新著「Change!」は野球ファン必読!野球の見方を面白くしてくれる!!
散々良さを語ったけど…紹介しとく。

ロッテの監督、球団創設以来ずっと呪われてる問題
チームが勝てないのはフロントが悪いんです。勝てる監督が寄り付かないようなチームを作ったフロントが悪いんです。…その最も顕著な例がロッテだと思うんです。あそこ勝てるチームでもオーナーの好みに合わなかったり、確執があるとすぐ追い出すもん…。

 

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