イチローが言う「頭を使わなくてもできてしまう野球」とは?

イチローが言う「頭を使わなくてもできてしまう野球」とは?

ぼくが子どもの頃からのヒーローだった、イチロー選手が引退した。
引退したからには「記念として記事を書きたい」と考えたが、ずいぶん経過した。

最初は記録のことを書こうかと思っていたけど、引退会見でイチローはこう言ってる。

いろいろな記録に立ち向かってきたんですけど、そういうものはたいしたことではない。自分にとって、それを目指してやってきたんですけど。いずれそれは僕ら後輩が先輩たちの記録を抜いていくのはしなくてはいけないことだと思う。そのことにそれほど大きな意味はない。今日の瞬間を体験すると、小さく見えてしまう。分かりやすい10年200本続けてきたとかは本当に小さいことだと思います。

だから、記録のことについての記事は書きたくない。

 

記録について書かない代わりに、イチローのこの言葉について記事を書きたい。

2001年に僕がアメリカに来たが、2019年現在の野球は全く別の違う野球になりました。まぁ、頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような……。選手、現場にいる人たちはみんな感じていることだと思うんですけど、これがどうやって変化していくのか。次の5年、10年。しばらくはこの流れは止まらないと思うんですけど。

本来は野球というのは……これダメだな。これ言うとなんか問題になりそうだな。問題になりそうだな。頭を使わなきゃできない競技なんですよ、本来は。でもそうじゃなくなってきているのがどうも気持ち悪くて。ベースボール、野球の発祥はアメリカですから。その野球がそうなってきているということに危機感を持っている人って結構いると思うんですよね

報道では黙殺されているが、実はイチローなりの最後の置き土産だとぼくは考えている。

イチロークラスの選手の発言はもはや1選手の発言を超えている。
なぜなら、イチローは過去にも野球界の分岐点を、自身のチャレンジや発言で野球界をいい方向に導いてきた。

イチローの発言が変えてきた野球

例えば、メジャーリーグに渡る日本人選手が増えたのは野茂英雄以降というよりはイチロー以降。
野茂の活躍ももちろん大きかったが、野茂の活躍後すぐにはメジャー進出は増えなかった。
一方、イチローが渡った翌年からは松井・新庄・佐々木…など大物選手が次々と海を渡り、今に至る。

マリナーズの球団経営にほぼ介入してない任天堂の山内溥氏も、唯一の介入は「イチローはなんとしても取れ」だった。
そこからマリナーズは日本人選手がまっさきに検討するチームになり、マリナーズもマリナーズで日本人選手を長く在籍させてメジャー進出のレールができあがった。

他にも、2009年のWBCの前には、北京五輪の監督だった星野仙一で行こうとしていたNPB側に
「WBCは北京のリベンジの場ではない」
と、監督人事に活!!慌てて軌道修正して原ジャパンに。

原監督はイチロー中心のチーム作りを考えて、コーチ人事はイチローに配慮。
伊東勤バッテリーコーチは日本時代のイチローに立ちはだかった当時のナンバーワン捕手。
投手コーチではあるものの阪急のレジェンド山田久志も呼ぶ。

そして、最大の目玉は打撃コーチの篠塚さん。
この人はイチローに打撃で影響を与えた人物。

実際、イチローのバットは篠塚モデルが原型であるばかりか、野球のマニアックな技術をプロが解説する番組「球辞苑」では流し打ち・テキサスヒットというイチローが得意とする分野は篠塚が解説。
さらに選手選びでも、ベテラン枠にイチローの地元の先輩である稲葉篤紀を据えるという盤石のイチローサポート体制。

WBCが09年にこのイチロー中心の布陣ができあがらなかったら、WBCはこんなに盛り上がらなかっただろう。

 

そして、メジャー進出や、WBCに並ぶ大きな発言がこの「頭を使わなくてもできてしまう野球」発言。
この問題は丁寧に説明すると複雑だから…長いけど、じっくり説明していこう。

そもそも、「頭を使わなくてもできてしまう野球」の真意とは?

色んなことを指した言葉だから、1つ1つ話す前に大まかに「頭を使わなくてもできてしまう野球」が指していることをまとめる。

頭を使わなくてもできてしまう野球問題の具体的な事例
1、野球選手の大型化
2、スピードボールへの偏重
3、マネーボール(確率重視の野球、出塁率重視、盗塁・バントの軽視など)
4、フライボール革命(ボールにスピンをかけてホームランを打つことを重視した戦術)
5、時間短縮のためのルール変更(申告制の敬遠など)

イチローがメジャーに行ってから日本・メジャー両方で起きた変化は主にこの5つ。

すごくざっくりいうと
「確率やデータに基づいた考え方が浸透したため、選手のレベルの底上げがなされつつも、選手自身が考えて新しい技術を編み出す・体得することがなくなった」
というもの。

BuzzFeedもイチローが語った「頭を使わなくてもできてしまう野球」とは何かの中でフライボール革命以降野球が大味になったことに触れているが…とてもとても足りないから、もっと色々紹介する。

体格問題:ON、イチローは同じぐらいの背丈。それ以上大きくするほど怪我のリスクも増えていく

最近は
「ホームランは体が大きくないと打てない」
という固定観念があるらしい。

だから、選手は「体重アップでパワーアップ」とか言い出すし、アマチュア野球ではご飯を詰め込んででも食わせる。
小柄な選手が活躍しようものなら「あの小さな体で吉田正尚はすごい」とか言われる。

オリックスファンだから言うが…谷佳知も吉田正尚も日本人の平均身長よりちょっと大きいぐらいで、決して極端に小柄ってわけじゃないからね?

谷佳知もプロ野球選手にしては小さいと言われる選手だったが、2塁打のシーズン記録を持ってる。
吉田正尚についても、173cm83キロの慎重で本塁打26本のホームランを打ってる。

「小柄=打てない」はオリックスファンなら全員反対。
「体重増やさないと打てない」だってイチローがいるから懐疑的。

そもそも、イチローだって小さいイメージあるけど、180cmで、79.4キロと実はかなりでかいんだよなぁ。

王貞治で177cm、79キロ。
長嶋茂雄が176cm、76キロ。
王さんの前のホームラン世界記録保持者であったハンク・アーロンでも183cm、82キロで…今の「スラッガーは90キロ以上」とは全然違う。
落合博満も重たくしたイメージがあるけど、NPBの公式によると178cm82キロでそこまで重たくないんだねぇ…。(巨人時代はともかく、ロッテや中日の映像ではシュッとしてる)

もちろん野球そのものの変化もある。
しかし、20世紀の名選手の体格が割と似通ってるのは、「理想形はそこなんだろうなぁ〜」と思わざるを得ない。

 

一方、今のスラッガーと呼ばれる選手はこれよりも遥かに大柄な人が多い。
筒香嘉智 185cm97キロ
柳田悠岐 188cm92キロ
中田翔  183cm107キロ
岡本和真 185cm96キロ
普通なら走れないぐらいの体重だけど、柳田は92キロで盗塁もすごいから規格外!!
これだけでかくても、メジャーだともっとでかいスラッガー(例:アーロン・ジャッジ201cm、128キロ)がいるから体格では「まだまだハンデがある」に思われがちけど…骨格的から逆算するとこれでも重たすぎるよねぇ…。

身長も大きければいいというものではなく、人間は大きすぎるとそれだけ負担も大きくなる。
ましてやアスリートの場合は体重も増やすため、骨格への負担が多くなって、昔の名選手のように毎試合出場できる選手は減った。

フル出場とまで行かないが、昔の野球は主力選手はそう簡単に離脱しなかった。
給与体系とか、当たりが弱かったとか色々な要因はあるが、第一線の選手になった人が40歳まで続けられるのはこのタフさが大きい。
若くて実力のある人でも無理なくコンディションをキープできる調整法・体格・フォームにたどり着けなくて体を壊して引退する人は多いからね。

一方で、大きい選手ばかりかといわれるとそうでもない。

昔の野球とそれほどサイズが変わらないのは吉田正尚以外だと…この人。
山田哲人 180cm、76キロ
ヤクルトもオリックスと同じぐらい小柄・細身な選手が好きな球団だから、妥当。

小柄な選手で有名なのは投手の石川雅規。
この人は167cm73キロで、慎重は日本人の平均より小さい。
ところが、通算163勝の名投手。

小柄な選手に可能性を見出すチームは一部の変わり種が好きな球団を除くと減った。
なんで全体的にでかくするようになったかと言うと…金属バットと清原和博/松井秀喜が大きな原因だと思ってる

高校野球は金属バット解禁以降、打撃偏重でウェイトトレーニングで打撃力をアップさせる戦術が主流になった。(池田高校のやまびこ打線が有名)
最初は打撃力アップと言ってもそこまで体を大きくする方に行かなかった。

ところが、清原和博、松井秀喜の登場で選手は巨大化の一途をたどる
特に松井秀喜が188cm95キロの巨漢でかつ「ゴジラ」の異名をとったことから「でかいほうがいい」という巨艦主義ならぬ巨漢主義へ時代は動き出す。
特に、ここ10年ぐらいは90キロぐらいの選手が当たり前になるほどだった。

 

言うまでもなく、清原和博は天才、松井秀喜は練習の虫だったから成功したのであって、体格はおまけにすぎない。

実際、当の松井はメジャーに行くと、メジャー特有の「手元で曲がるボール」に苦戦。
体格だけならアメリカンサイズな松井でも結果が出なくて苦しんだ時期もあった。30本前後打ったシーズンもたくさんあったが…それでも、日本ほど打てなかった。

重ねて申し上げるが、この傾向は選手のパフォーマンスを上げたが怪我で離脱する選手を増やすことにもなる諸刃の剣となって今のプロ野球選手を苦しめている
巨漢主義の時代のきっかけになった清原や松井も晩年はケガが多くなって、満身創痍の引退となっている。

この問題についてイチローは

「人間が本来持ってるバランスって必ずあって、パワーと勘違いして大きくするのはダメ。骨格がそもそも違う。色んなセンサーを発していくからそれを自ら殺してしまう。教えてくれない体にしてしまう。怪我も野球の一部と解釈してしまうけど、そうじゃない防ぎ方は絶対ある。」(ジャンクスポーツ)
「筋肉が大きくなっても、骨格は大きくならないから自分の適正体重をキープしなきゃダメ」(報道ステーション)

とヤンキース時代、マイアミ時代それぞれに違う番組で警鐘を鳴らし続けている。

 

投手のスピード偏重:昔の変則選手を滅ぼした割に、実は結果が出てない投手の大型化

選手の大型化問題は実は投手のほうが深刻。

確かにスピードは今のほうが圧倒的に早くなった。
実際、20世紀には松坂大輔がプロの試合で155キロのストレートを投げたことが話題になった。
しかし、昨今のプロ野球では160キロ以上じゃないと話題にならない。

スピードが上がった代わりにかつてのような軟投は投手が消えた。
星野伸之、小宮山宏、渡辺俊介、山本昌…など、ストレートが140キロ行くか行かないかの投手でもコントロールや投球術で生き残る人がいた。

ところが、最近はそういう人が消えた。
あまりにもいなすぎるせいで、現役の軟投派の名前を挙げようとすると大ベテランの石川雅規があがる始末。

スピードが上がった分だけ通用するようになったかと言うと、そんなこともない。
高校野球 甲子園球速ランキング スピードガン導入以降(甲子園球速)

これによると…20世紀に150キロ以上高校野球で出した選手は松坂大輔、新垣渚、中山裕章だけ。
残りはみんな21世紀に甲子園に出た選手ばかりだが…松坂ほど活躍した選手が大谷翔平・菊池雄星ぐらいで、新垣渚ぐらい活躍したのが藤浪晋太郎と、山口俊ぐらい。

それどころか、体が大きくスピードボールを重視する分だけ、自身のコンディションのコントロールが難しくなって制球難やイップス、怪我に苦しむ選手が続出している

この手のスピードボーラー大好きなのが、楽天・阪神・西武・ソフトバンク・日ハムだ。
※逆に変化球・制球力・変則投手が大好きなのはオリックス、横浜、巨人。オリックスと横浜はもはや伝統。

スピードボーラー大好き球団についてはその後の経過は以下の通りである。

  1. 若いうちからガンガン実践登板させる楽天や阪神に行った選手は苦しんでる。
  2. 西武は育成に時間をかけることで成功する人もいる。しかし、育成に時間がかかるチームになって、かつてのような即戦力選手はめっきり減った。
  3. 特にスピードボーラー大好きなソフトバンクも寺原・新垣・岩﨑・高橋純平と取っているけど…大成功というよりは現役の長い時間の間にどこかで成功する選手が多い。
  4. 一番成功しているのは現状では日本ハム。ダルビッシュは即戦力で活躍、大谷翔平も怪我が多いものの爆発力で他を圧倒。さらに吉田輝星・柿木蓮も獲得してますますスピードボーラーを増やしている

スピードボールは大事。

しかし、雇い入れる環境がない球団はかえってうまくいかない。
独自の投手育成プログラムを持っていないチームは大型投手を故障がしやすい投手・育ちにくい投手にしてしまっている
雇い入れる環境があってもプロレベルで安定した活躍をする選手を育てるのには時間がかかるか、コンスタントな活躍ができずにすぐに怪我してしまう。

マネーボール問題:確率重視の野球はここから加速した。

マネーボールとは、貧乏球団だったオークランド・アスレチックスが安いチームで勝つために編み出した「確率重視の野球」だ。

マネーボールの概要としては、
・四球も同じだから打率より出塁率を重視。
・逆に与四球が多い投手はダメ。
・ヒットは長打率を重視。(それでも、OPSよりも、出塁率に軸をおいた独自の数値を採用)
・バントや犠打はアウトを与える行為だからダメ。
・盗塁は確率的に損だからしない。
・打たれた時本塁打なら投手の責任。安打なら投手以外の要素が大きいから投手のせいだけじゃない。
という独自の理論で構築されてる。

この理論で行くと、イチローはあまりいい選手ではない。
単打率が多く、ボール球に手を出し、早いカウントからうちに行くから、高い盗塁成功率を持っていてもアウトをあげていることも多い。…という理由からいい選手にはならない。

が、これは理論上のお話。

野球に限らず、ありとあらゆるゲームは(対策も含めた)メタゲームになることが大前提になるため、もしマネーボールが実践されていることがわかるとマネーボール自体が不利になる。

統計上、「盗塁しない方が得点が入る」と思われがちだが、これは盗塁がある世界でのお話。
逆にほとんど盗塁してこないチームや、盗塁できないであろうランナーであることにバッテリーが気づくと、今度はバッターに集中するためランナーから出したことによるプレッシャーがなくなる。

盗塁単体でデータを取ればリスクがあるが、撹乱作戦としては盗塁はとても有効。

チーム単位の攪乱作戦でも、盗塁と並んでバッテリーのペース配分を崩すために、策士な監督が敢えて変な打順を組むことでバッテリーを撹乱する。

有名所で言うと、
・つなぎの4番(バレンタイン時代のロッテ)
・8番投手/つなぎの9番(ラミレス時代のDeNA)
・2回転打線/もう1つの波(原監督の巨人、栗山監督の日ハム)
・猫の目打線(仰木オリックス)
など、バッテリーのプランを崩しに行く打線を作ることで勝つチーム。

盗塁自体の話なら、盗塁するチームは強い。
優勝するチームが盗塁も1位であることは少なくない。
確率上は盗塁することで損をすることもあるが、盗塁してくるとわかってることこそ、次のヒットを生み出す可能性もある。

逆に盗塁をすればいいのか?と言うと「盗塁からリズムを作るチーム」というカラーを潰して勝てばいい。
日本シリーズではこのやり方は定番で、V9時代の巨人が福本豊対策を徹底したり、2018年の日本シリーズで甲斐拓也が広島の盗塁を阻止し続けて攻撃のリズムを崩す。

日本シリーズはメタゲームになりがちで、「強い勝ち筋を作って、勝ち続ける」というチームはだいたい日本シリーズに弱い。
実際マネーボールを実践したアスレチックスもポストシーズンには負けている。

日本の野球でいうと、阪急時代は福本豊の盗塁を軸にしていたため、盗塁破りを徹底することで巨人はV9をキープ。
オリックス時代になっても、イチローを中心とする勝ち筋で優勝したオリックスを野村監督は、データ野球でイチロー封じを徹底して勝つ。

野球は、シビアな戦いになるほど対戦カードゲームっぽくなる
強い装備をクリアできるRPGではなく、カード単体の強さ以外にも対戦相手への対策をキチッとしないと勝てないカードゲームのような野球ができないとナンバーワンにはなれない

データは戦略の幅を広げ、新しい形の評価を作るメリットも有る。
しかし、データや戦術は具体的であるほどメタゲームに弱くなる。

現場の選手・監督が頭を使わなくてもできてしまう野球は、戦術としてブレイクすることがあっても、野球が新しい戦術を生み出し続けるメタゲームである限り、普遍的なモノになりえない。
それをわかってほしい。

フライボール革命問題:新しい野球を作ったが、古い野球を排除するものではいけない

これもっと単純。
「守備の頭を超えたら、守ることは不可能」
という前提に基づいてホームランを狙う戦術。

ホームランの打ち方もデータとして算定し、
「打球をこの角度で、このスピードで打てば高確率でホームランになる」
というデータに基づいて選手を指導する。

野球好きな人なら
ボールにバックスピンをかけてフライを打つことでホームランが打ちやすくなる
という理論はご存知だろう。フライボール革命はデータで証明したものだ。

コレ自体は間違ってない。
だが、落合博満がもう40年も前に実践してる。
実際、テレビ番組でも「バックスピンでフライを打つ練習をするとホームランが打ちやすくなる」という話をしてる。

しかし、落合の場合はさらに複雑なので、「フライボール革命ってやつですか?」と聞くと、「違います」という答えが帰ってくる。そりゃそうだ、それはまだ一部に過ぎないのだから。

落合のすごさは独特なフォームやトレーニングの上にある。
バットがボールを捉えるミートポイントもフライボール革命と違って、後ろで揃えることで、どんなボールでも打てる。
差し込まれても打てるように手首を鍛える独自のトレーニングを積んでるため、フライボール革命と同じところもあるけど、フライボール革命とは全然違う打撃ができ上がる。

そして、このフライボール革命もメタゲームができてしまう。
才能を開花させるきっかけにはなる理論ではあるものの、相手の狙いが分かれば外したらいいと気づくから、対策された後でも打てる本物しか結局は生き残れない。

頭を使わなくていい野球以前にも技術はある。
しかし、違う技術もあるから野球は奥深い。

もちろん全打席ホームランは1つの理想形だ。
しかし、状況変化や目的に応じて色んなバッティングがあり、イチローは目的に応じて手段を使いこなす達人。
この思想もイチローとは反対側にある。

ホームラン、クリーンヒット、ポテンヒット、流し打ち、内野安打にセーフティーバント…全部を使いこなす。
繊細な野球だからこそ、メジャーにはなかったし、なかったものだからこそイチローは日本以上の大記録を出した。

さっきの体重の話、軟投派の話にも通じることだけども…選手のスタイルに応じて体型から打ち方、本番へのルーティーンが違うことこそ野球の醍醐味。
それを「確率や、ルールの上ではこうすればいい」といって考えるのをやめさせる方向に行くと「頭を使わなくてもできる野球」が完成してしまう。

いや、野球に限った話ではないのか。

野球の革命や確率論は学校の教育とか、ライフスタイルにあった働き方みたいなもの。
向いてる人にはいい。だが、向いてない人への救い・中間的な態度を容認がないと、発展の論理どころか排除の論理になってしまう。

発達障害でできることしかできない人に学校や職場のバランスのいい教育が適切か?というと違う。
稼ぎがいいハードワーカーを認めない働き方改革や、イクメンパパであるべきという押し付けがみんなを幸せにするかと言うとそれも違う。

夫に手取り足取りやってほしいことを伝えるぐらいなら女性だけで子育てする方がいいという人もいる。
イクメンパパで助かるって人もいるし、もっと極端だと「子ども苦手だから夫に子育てして欲しい」「いっそベビーシッターをもっと簡単に雇えるようにして欲しい」という要望もある。

どれが正解でもいいよ?
お互いの合意と適正があっていれば。

何でもそうだよね?
目の前の自分のことだけを考える分には「自分でやりたい・できるところ」へ向かっていくだけのシンプルな話。
ただ、それを確率とかデータというものさしや、流行が複雑にしてしまうこともあるから…今しか見えてない人はそこに気づいてほしい。

試合時間短縮のルール変更問題

最後。
これもシンプル。

申告敬遠と呼ばれる「投げない敬遠」とか、
審判へのリクエスト制度とか、
ホームベース上のクロスプレーの廃止とか…
ここ数年で相次いだルール変更。

特に論争を呼んでいるのが「投げない敬遠」で、敬遠にも攻防があったのに、その攻防を「試合時間の短縮」と称して省かれてしまうルールができた。
イチローはこのルールに「アレはダメでしょう。空気感が4球の間に。戻さないと。」と反対。

他にもクロスプレーの廃止はクロスプレーもイチローの見せ場だったため、イチローの技術が1つ見られなくなった。
クロスプレーは危険なタックルや捕手の怪我人が続出するから「しょうがない」という見方もできるが、これも野球の醍醐味なだけに寂しい。

リクエスト制度も「フェアになるからいい」と思われがちだけども…審判は人間だから間違えることもあり、ファンは熱くなってるから気に食わない判定に冷静になれないときもある。
その溝はルール上改善しようとも埋まらない。

確率や理論に比べたら、危険を回避したり、フェアにすることは選手にもメリットがあるよ?
ただ、野球を打つ・守る・走る・ゲーム理論の中での人間の行動を安直に考えすぎている人がルールや理論をイジりすぎ。
結果、野球を小さくしてしまっている…と、ここ10年ぐらい感じている。

 

 

 

長くなったけど、イチローが言いたかったであろうことを丁寧に説明したらこのぐらいのの文字数が必要。
そして、イチローの引退会見はほとんどの質問に1万文字の記事がかけるほどの重たいエピソードが混じっているため、それだけ噛み締めて読んで欲しい。

噛み締め方がわからない人、もっとイチローをきっかけに色んな意見が聞きたくなった人がこの記事を読んでイチローの言いたかったこと、危惧している野球の問題に少しでも触れられていたら嬉しく思います。

 

長くなりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。

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名言多いですよね〜イチローって。

 

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イチローだけで打線組んだw
イチローの実績を語り合いたい人はこっちをどうぞ。チームオールイチローを編成してイチローの実績を打線方式で紹介。ドラマに出演したり、投手として登板した話など脱線ネタも色々入れてます。

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イチロー以外でぼくが好きな選手・監督を挙げるとしたらラミレスです。ラミレスも見てて明るい気持ちになるから好きです。また理路整然としてるから野球について考えたい時はイチローかラミレスを見てます。

 

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