マンガ「戦国小町苦労譚」は名作の風格!戦国時代好きのバイブル!!

2019年6月24日

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プロからアマチュアまで玉石混交に小説を投稿することで有名な「小説家になろう」。
「異世界転生」というジャンルをブームさせたこのサイトから、生まれたのが今回紹介する「戦国小町苦労譚」という作品だ。

しかも、作者の夾竹桃さんは…プロではなく、この作品が商業デビュー作でありながら、ぼくが「20万部しか売れてない!?200万部売れていないとおかしい」「戦国時代好きな人のバイブル」とまでいう作品が生まれた。

「なろう=異世界転生」のイメージが強いが、この作品は戦国時代へのタイムスリップもの。
犬夜叉みたいに戦国時代といいつつファンタジー要素があるタイプの作品ではなく、信長のシェフのように主人公の特技で戦国時代を生き抜くようなお話。

ぼくはかねてより「異世界転生モノの中でも、未開の地の開拓を主軸に置く話の場合、信長のシェフみたいな作品こそが正しい異世界転生だ」といい続けてきた。
これは「異世界転生」というジャンルは未開の地へ行って新技術を提供することをストーリーの軸とした作品が多い割には、登場人物には予備知識もなければ、その世界の技術や文明レベルを無視した作品があまりにも多いからだ。

 

だから、作者や主人公にしっかりとした知識がある作品を渇望して欲求不満な日々を過ごしてきた。
そんな中ずっと渇望していたことを本当にやってくれたばかりか、緻密に作り込んでくれる作品に出会えたので、紹介したい。

織田信長の本名、全部言えますか??

「実家が農家の歴女」という姉小路静子が、戦国時代にタイムスリップしてしまう。

右も左も分からないところを、暴漢に襲われたところを信長と取り巻きの武士達に助けられ、彼女は興奮のあまり信長のフルネームを口走ってしまう。

フルネームを知ってる時点でこの人はすごいんだけど…この時代に実名を呼ぶのは無礼に当たるため、信長に切られそうになるといううんちくが続いている。

そもそも、ここを抑えてる時点で「へぇ〜」と思うような歴史知識だが、これが冒頭数ページで出てくる時点で「これはモノが違う」と期待してしまう。

静子は自らについて、かくかくしかじかと説明するもうまく伝わらず、便宜上は「南蛮から持ち込んだ農業の知識をもった女性」ということで、織田家の領土内の農地を任せてもらうことになった。

よくあるなろう小説では、「自分が持ち込んだものはすげーんだぞ」とドヤ顔しかしないのだが…そこは農業に詳しくて戦国時代マニアであり、未来人。
歴史を変えることになるものの、栄養や飢餓をどうやったら改善するかもわかってるから複雑な気持ちで自分の技術を普及させるという立場を取って既存の作品とは違うことを2話時点で説明している。

当時の雑だった農業や暮らしぶりだったが、後世で開発される知恵を使って1つづつ改善していく。

見慣れない技術や農法に煙たがられたり、半信半疑に思われつつも先進的な農業を浸透させていく。

最新技術を持っているからこそ慕われるところと、ミスするところの両方を描いているところがすごい!!

現在日本で浸透しているものだけではなく、今の日本では違法だけど昔からあるものもフル活用していく。

ここまで見ると「(知識や考察はすごくても、主人公がひたすら成功し続けるという意味で)なろうでよくある俺TUEEE系かな?」って思うかもしれない。
しかし、元々が現代人の農家だからこそ、戦国時代には当たり前だったマナーや常識を抑えきれてないところを抑えていくのも、この作品ならでは

確かに、持ち込んだものの大半は戦国時代よりも優れている。
常識やマナー、できて当たり前のこと、今にはない文化に時々小さく失敗して信長や現地の人からは不思議がられたり、怒られたりする。

信長様もそれについて、疑問にも面白くも思って、こんな風にまとめている。

よくあるなろう作品でも、異世界転生系の作品では最新技術を持ち込むと受け入れられることが多い。
だが、その世界の人ができることに敬意が払われないことが、とにかく多い!!
この作品がすごいところは「戦国時代の人が当たり前にできることはリスペクトされる」「当時の人に馴染みがないものは一度拒絶や批判を受けつつ素晴らしいとわかると浸透する」という1クッションが常に存在する。

それどころか、現代の技術を普及させつつも、技術を普及させる以前の不便な暮らしもキチッと体験するからこそ
「先人の知恵・努力はすごかった」
「ただただ感謝するしかない」
という彼女の言葉は深く突き刺さる。

当たり前だけども、東京で過ごしていた人の知識が優れていたとしても未開の地で暮らす人の方ができることもある。
例えば、劣悪な環境で作業を続けたり、薪割りみたいにローテクな世界だからこそやらないといけない仕事をこなすのはできないことだが…この辺を描かないなろう作品がとにかく多い。

 

しかし、なろう作品には
「自分が未開の地に行けばドラえもんになれる」
と勘違いした作品が多い。また恥ずかしげもなく、そんな作品を書いている人がびっくりするほど多い。

作者は「わかっててやってる可能性もある」けど…盲目に絶賛している島流しに遭ってフィリピンあたりで本当にドラえもんになれるかどうか試してきてほしい。
本当にドラえもんになれるなら、日本でくすぶってないで海外でドラえもんになって楽しく暮らしはどうだろう?その方がみんなのためだ。

しかし、この作品では「苦労譚」というだけあって、最新技術を持ってしても苦労が絶えないことを多く描いている。
最新技術や新しい文化を持ってしても、現地の人と「わかりあえるところ、なかなか信用してもらえないところ、今の人にはできないところ」をうまく切り分けて作品に落とし込んでいる。

 

たとえば、戦国時代の人たちも肉食に関しては歴史的な経緯から、疑問を持っている。

日本人の平均身長は「実は米ばかり食べていた江戸時代よりも、肉が食べられていた古代の方が高い」という説があり、(当初は)食糧事情を改善するために積極的に肉食を進めている。

肉食自体は、無から有を創造しているわけじゃない。
しかし、そこがこの作品の深いところだ。

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あなたはコンピューターを作った人が誰か、知ってますか?

なろうでよくある展開では、「異世界に銃を持ち込む」とか「最新の遊び(オセロとか将棋)を持ち込む」といったことがよくあるのだが、この作品は「その時代の技術で(貴重だったり、避けられていたけど)可能なもので、なおかつ問題が解決されるもの」に極力絞ろうとしている。(フィクションなので、全部が全部とは行かないが、ツッコミどころ満載の作品に比べると落とし込めるようかなり考え込まれている)

例えば、お砂糖やしいたけ栽培なんかが、それに当たる。
まず、砂糖だけど…これはこの時代までは薬でもあった。
だから、新しいものでこそないものの貴重だったため、静子が量産体制を整えると喜ばれた。

しいたけも「ザ・和食」というイメージだが…しいたけの栽培法が確立されたのは案外最近というから面白い。
これも「未来から新しいものを持ち込む」というよりかは、「技術は持ち込むことで、量産体制を整えて食糧問題の改善や資金源として活用してもらう」という発想になっている。

ぼくが「なろう最高傑作」「歴史好きのバイブル」と絶賛する理由わかってもらえたかな?

とにかく、「技術革新」や「問題解決」についての考えが深い!!
深いからこそ、「未開の地でドラえもんになる」とはまた違う形で…技術が活用されている。

技術とは本来そういうものだ。
技術を発明した人よりも、技術を普及させた人の方が歴史に名を残す。

ゴリゴリに技術畑だったニコラ・テスラと、商売も上手だったトーマス・エジソンの話はあまりにも有名。

しかし、もっと顕著なのはコンピューターじゃないかな?

おそらくはUボートの暗号解読で活躍したアラン・チューリングだと言われているけど…再評価されるのに時間がかかっている。

また、アメリカでのコンピューターの先駆者であるジョン・エッカートより、コンサルタントとして合流して報告書にまとめたジョン・フォン・ノイマンの方が世間的には有名。
だが、比較的有名なノイマンでさえ、日本ではコンピューターサイエンス詳しい人か、雑学好きな人しか知らない。

さらに言えば、家庭用として浸透させたAppleのスティーブ・ジョブズや、マイクロソフトのビルゲイツの方が一般層には有名だろう。

技術には開発と普及…普及の中にも見せたり与えるだけではなく、利用者に受け入れられるサービス・ビジネスを確立する段階がある。
民衆は開発者よりも紹介した人よりも、技術で暮らしを変えた人の名前を語り継ぐ

関係ない話のように見えるかもしれないが、この辺を抑えているからこそ、静子のスタンスは、「ないものを作る」よりも、「今あるものをコストダウンや魅力を伝えることによって世の中に浸透させる」という方向で最新技術を活用している。

ここがすごいのだ!!

 

本の虫の人は、参考文献リストをとにかく見てほしい!!

当然、ここまですごい作品を作った人ともなれば、下調べの参考文献からしてもうすごい。ぼくは本を読むのが苦手だからそこまでだが、読書が好きな人なら泣いて喜ぶ文献の数々が掲載されているから「歴史系の本を読みたい」という人は是非参考にしてほしい。
引用・参考文献リスト(戦後小町苦労譚)

ぼくでも知ってる有名所だと、社会科の授業の資料集でお馴染みな山川詳説日本史図録から、銃・病原菌・鉄、君主論に戦争論なんかが資料として載ってる。
銃・病原菌・鉄は、概要を抑えるだけでもそれなりの時間がかかる本だ。これをちゃんと読んだ上で小説に落とし込むとしたら、それはすごく手間な作業であり、アレだけ緻密なものができたことに合点がいく。

確かに、作品のコンセプト自体は「よくある話」だ。

しかし、下調べがあまりにも緻密であり、戦国時代に降り立った現代人が考えそうなことを見事に実現している。
よくあるのは天下人になろうとしたり、特技を仕事にして社会までは変えようとしない人だが…農業に詳しい歴史マニアが戦国時代にタイムスリップしたからこそ、「その時代の(食糧や平和になってからの雇用の)問題を解決したい」「解決するためなら、暗殺されて絶えてしまわないように、みんなに普及する」というスタンスの彼女は斬新。

単にうんちくがすごいだけではなく、勉強している人間だからこそ、本当に必要なものをその時代に提供しようとする姿勢が、物語に落とし込まれていて面白かった!!

 

未来の知識を得た織田信長こそ、戦国時代の最強!

なろうによくあるのは「名声が轟くうちに国王や君主になる」というのがよくある。
もっと言えば、「スマホから得た戦術が時を超えても最強の戦術」というスタンスの作品が多い。

もちろん、戦国小町苦労譚は農業や戦国時代の統計を知ってることで解決できる問題を解決していく話だから戦争にはほぼ手を出さない。

しかし、姉小路静子が狩猟用に作らせたクロスボウを見た信長は、それをうまく活用して戦で運用している。

これ、なろう小説としてはかなりすごい。

まず、信長は長篠の戦いで火縄銃をうまく使ったことから「新しいもの好き」「銃を重宝した人」というイメージが先行しがちだけど…長篠の戦いの布陣をよく見てみると、「そもそも普通の戦が上手じゃないと、火縄銃をうまく扱えない」という前提があってこそ火縄銃での戦術が成り立つことがわかる

図を見ると、柵や水路で騎馬や足軽が進みにくい環境を作り攻めにくい場所をうまく選んで布陣していること。

現場での統率力も含めて、戦い方に応じてうまく布陣や戦術を変えているところが、当時の武将のすごいところ。
加えて、織田信長の場合はいち早く新しいものを取り入れながら戦術を編み出していくため、すごい!!

それが火縄銃だろうが、クロスボウだろうが、やってのけるだろうというキャラであり、それを単に武器がすごいだけではなく、うまく応用する柔軟性こそが信長らしさというフィクション内での表現に落とし込んでいるこの作品もすごい!!

次にすごいのは、内政面で才能を発揮した静子ではなく、あくまでも新技術や新しい考えを軍事面で発揮するのは信長だというところ。

何でもできる(できるように描いてしまう)のが、ダメな小説ではよくあることなのだが…あくまでも戦いは武将、内政(や学問)は未来人という住み分けがある。

 

これ、現代社会でも言えることで…学問に通じた人と、知識をお金にデキる人は必ずしもイコールではない。行動力があったり、人から教わった知識をうまく取捨選択できる人じゃないと、金銭的な成功は難しい。
しかし、権威がある人の知恵だけ役に立つものではなく、勉強熱心な人やオタク…あるいは土地柄や仕事柄でみんなの知らないことを知ってる人の知識が活きてくる人もいる。

確かになろう小説の中には、「何もできない現代人が、未開の地にスマホを持って転生すればウハウハモテモテのドラえもんになれる」と勘違いしている精神異常者みたいな主人公がいっぱいいる。

しかしながら、なろうの「転生」や「ファンタジー」のエッセンスを上手く使って、
「新しい環境に身をおくことで、自分の才能や特技が活かされて他人からも慕われるようになった」
という形で、なろうらしい小説を書く人もいっぱいいる。

例えば、「薬屋のひとりごと」であったり、例えば「若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です」なんかは、小説家になろうではやっている作風を、「新しい環境に身をおくこと」と解釈して、面白い作品を作り上げている。

作品紹介ではベタだけど緻密な作品であることから、「小説家になろうならではの、アイデア先行の面白さ」がなくて、らしくないように見えたかもしれない。

しかし、実際に読んでみると「新しい環境に身をおくことで主人公の才能や性格が高く評価されるようになる」というなろうの名作に多いエッセンスがキチッと入ってる。

現実では巻き込まれたり、なし崩し的に環境が変わって才能が発揮される人よりかは、普段からアクティブな人の方が多いよ?
ただ、アリババの創業者みたいに、就職活動や受験にうまく行かなかったからこそ起業して成功したような人もいるから「努力や得意分野があっても報われない人は、行動を起こして環境を変えよう」というフィクションは現実としても間違ってない設計であり、夢がありつつも夢だけを与えるような作品でもない
ぼくはそこが好きだし、共感できるんだ!!

これ、かなり高い確率で映像化すると思うのでぜひ読んでほしい。
ドラマじゃなくて、アニメになってほしいなぁ…。
ドラマだと、作中の難しい部分が改変されがちだから、アニメでうんちくも全部残して作って欲しい。

 

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マンガ「信長のシェフ」こそ正しい異世界転生だと思う
元宮廷料理人が原作者として参加した料理マンガなのだが…安定して面白い。
タイムスリップ要素がある歴史マンガであり、料理のマンガでもあるし、料理で政治的なメッセージを表現する政治マンガでもある。一粒で3度美味しい。

 

 

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