西宮の大躍進と三井不動産の「まるで将棋」な都市開発

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ここ10年、兵庫県の勢力図がかわってる。
兵庫県の人口は1位が神戸、2位が姫路、3位が尼崎…という順番だったのだが、ここに来て西宮市が3位の尼崎を抜いて3位…さらに、兵庫県で最も人口が伸び続けているため、2020年以降には兵庫県の中で二番目の都市…いや、人口の伸び率や商業的な賑わいから言うと兵庫の中心都市に躍り出てくることが今や既定路線となりつつある。

神戸市は何をやっているかと言うと…戦後〜90年代まで保っていた日本第5位の都市の地位を21世紀になってから福岡に追われ、2020年以降には川崎市にも抜かれ7位になろうとしている。
トップ10入りしている都市の中では最も衰退している都市という悲しい状態になっていて、ついに出身地の衰退が寂しくなってしまった僕は記事にした。
神戸市が政令指定都市の中で一人負けしてるらしいので、語る。

この記事の反応として、
「播磨っ子と徳島県民は神戸で遊ぶけど、関西の都会っ子は西宮や梅田に行く」
「神戸で遊びたいけど、なにもないから結局は京都や大阪に行く。よその人を案内するときならなおさら。」
という寂しい反応がきた。

そこで今回は西宮が伸びている理由を紹介していこう。
…とおもって調べたところ、どうも都市開発のやり方がここ20年ぐらいのトレンドに沿っていて、西宮を調べると、東急グループや、三井不動産の戦略も見えてきて面白かったので、まとめて紹介していく。

阪急から見た兵庫の中心は西宮である!!

逆に西宮はなんで人口が増えているかと言うと…西宮に00年代に3つも大型商業施設を再開発で作ったことが大きい。
アクタ西宮→震災で潰れた専門街の跡地を再開発。
ららぽーと甲子園→甲子園阪神パーク跡地を再開発。甲子園球場の近くという好立地。
阪急西宮ガーデンズ→かつて阪急ブレーブスの本拠地だった阪急西宮球場の跡地に巨大な商業施設を開発。

こんなにいっぱい商業施設があると旨味が少なそうに見えるかもしれないが…西宮に限って言うとそんなことはない。

まず、西宮は神戸と大阪の間にある。
隣接する都市には宝塚や芦屋などいかにも金持ちが住んでそうな街がある。
さらに、西宮自体が元々ベットタウンとしても便利だから高級住宅街として作り込まれていた。
そんな西宮が開発されると、市内の内需と市外の外需を両方取ることができる無敵な都市ができあがる。

その無敵な都市を作る上で重要なのは、阪急にとって西宮こそ兵庫県の中心!!交通の要所だということ!
これは阪急の路線を見てもらうとわかるが…神戸なんて阪急基準で考えたら隅っこなんだよ…。

阪急ブレーブスの本拠地が西宮だったのも、震災後にゴリッゴリに西宮が開発されたのも、西宮を開発したら阪急電鉄の列車が使われるし、阪急沿線沿いに人が住むから!

ここまで説明すると…
「じゃあ、なんで昔から神戸ではなく、西宮がもっと早く発展しなかったんだ!?」
と思うでしょ!?
ここが昭和と平成の切り替わりで面白い所なんだよ。

神戸は…鉄道以外では、兵庫の中心なんだよ。
顕著なのは道路で、新名神高速道路と、山陽・中国自動車道とがするのは神戸。
明石海峡大橋とつながってるのも神戸。(港町なので海路や流通にも強い)

だから、車で行動する人は神戸市で遊びに来る。
それが神戸の強さだったわけだが…平成になって車の価格が高くなったり、都会に人が集まりだすと…神戸が強みとしていたモデルは崩れてしまう。

一方、車を持たない人は鉄道に乗って移動するため、鉄道の中心地である西宮にはチャンスが生まれた。
同時に、神戸は震災後の復興で遊べる場所や重要な商業施設が不景気により失われてしまう。中小の企業は離れ、大手は不況のため「復旧でいいや」で、神戸から都会っ子を満足させる遊び場が消えてしまう。
一方、震災と不況のほとぼりが冷めた後に開発が進んだ西宮は阪急・阪神沿線の都会っ子たちの遊ぶようになった。

 

交通手段と景気…という時代の流れが神戸と西宮の明暗を分けた。
自動車の時代に特化した神戸と、鉄道の時代に特化した西宮。

この流れは近代や戦後の歴史を集約したものとも言える。

戦前も鉄道の時代だった。

戦前にも鉄道が開通したことをきっかけに「阪神間モダニズム」と呼ばれる兵庫の海沿いの地域の近代化・開発が起こった。
これによって芦屋や宝塚、神戸の海側の高級住宅街が開発されてる。

阪神間モダニズムは鉄道によって都市と都市がつながったことがきっかけ。戦前は鉄道の時代だった。
そして、戦後は自動車の時代だから、神戸の山奥のニュータウンや播磨側の開発が進む。(※神戸のニュータウン構想は戦前からあったが実践されたのは戦後で形になってきたのは1960年代以降。関東でも首都高の構想は戦前からあり、その後東京オリンピックにモータリゼーション化されてる。)
平成になると、播磨や神戸の山奥ではなく、また海側…それも鉄道の乗り換えの要所である西宮の時代になる。

切れ目が、
1910年〜1940年(鉄道開通から来る阪神間モダニズム)
→1964年〜1970年(東京五輪後のモータリゼーションの時代)
→2000〜2020年(ITと車離れから都市集中型の鉄道の時代)
となっているので、40年〜50年ぐらいで都市開発のトレンドが変わっていくと考えてもらえるといいかもしれない。

次回は自動運転技術や空飛ぶ車ができる2040年〜50年ぐらいに車の時代が来るかも。
そう考えるとなかなか面白い。

 

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なんで、武蔵小杉?

西宮の話はこのぐらいにして、上の話を応用した首都圏の話もやる。

 

沿線の開発に熱心な鉄道会社というと、西日本なら阪急、東日本なら東急(というか、どっちも小林一三が基礎を作ったので、兄弟)。
その東急が現在力を入れているのが、武蔵小杉だ。

ここ10年、川崎市が最も力を入れて開発されたのは武蔵小杉だが…武蔵小杉は東横線と目黒線、そして南武線がクロスする交通の要所だ。
阪急でいう西宮みたいに「大都市のターミナル駅同士、沿線の高級住宅街や乗り換え路線も結ぶ要所」は東急でいうと、武蔵小杉に当たる。
横浜と渋谷、さらには田園調布や目黒にも武蔵小杉はつながっているから。

 

「東急が開発した街というと田園調布や二子玉川のイメージが…」
という人は、阪神間モダニズムのところをもう一回読もう。
鉄道開通から沿線沿いの高級住宅街の開発…ここまでは昔からあったことで、今のトレンドとはちょっと違う。

 

「二子玉川が開発されてあんなことになったのは最近だから、西宮と同じでは?」
と言う言い分もわかる。

確かに、二子玉川駅は渋谷のベットタウンとしてはいい。
…反対側は中央林間という「名前は聞いたことあるけど、行ったことない駅」でランキングを取れば上位に入りそうな駅だから!!

そもそも、神奈川県大和市とか言われて誰がわかる?
中央林間は神奈川県大和市にあるけど、大和・座間・海老名・綾瀬という「人口がそこそこいる割に、存在感が薄くて区別がつかない都市四天王」を正確に区別できてる人、どれだけいるの?神奈川県民でさえ難問だよ。

そんなところをつないでる路線よりは、東横線沿線・目黒線でお金使ってもらったほうがいい。
そこで、東横線の中間地点で、目黒線・南武線とも乗り換えができる武蔵小杉が2010年以降開発されている。

武蔵小杉の地元住民からすれば
「武蔵小杉なんて下町だから開発しなくても…」
と思うかもしれないが、東急にとっては要所。

東急線に限ったことではなく、しばらくは首都圏の下町が開発されることになるだろうなぁ…。
次のターゲットは駅の工事が行われてる下北沢かな…。
いや、でもこういう話をするなら三井が大きく関わってる街について話したほうがいいかな。

「まるで将棋だな」と言わんばかりの三井不動産の都市開発

「郊外の再開発あるところ、三井不動産あり」
というのが、21世紀の再開発事情。

これは大げさでもなんでもなく、三井不動産は開発の先回りをして土地を確保したり、ららぽーとブランドで乗り込んできたりする。

まず、今までの話をするなら西宮でも、武蔵小杉でも、ららぽーとはある。(武蔵小杉については高層マンション群も三井不動産グループが作ってる)
さらに、川崎の再開発で言うと武蔵小杉以外にも三井の先見性は2つの駅で発揮されている。

1つは川崎駅で、明治製菓の工場跡地に作られた「ラゾーナ川崎プラザ」は事実上のららぽーとだ。
ただ、ららぽーとにしようとしたところ、川崎市長から
「ヨソと一緒は嫌じゃ!オンリーワンがええんじゃ」
と言われてラゾーナ川崎プラザに。(だから、ららぽーと一覧には載ってない。)

もう1つが新川崎駅。
ここは武蔵小杉に横須賀線が通る前に、川崎市で唯一横須賀線が通っていて、同時に徒歩5分で南武線に乗り換えができた駅。
夢見ヶ崎動物公園以外ほぼなにもない場所に三井ビルディング新川崎と、パークシティ新川崎をバブル絶頂の1988、1989年に開発。

00年代半ばになにもない街にそれだけ立ってたから、「なんだこれは」と思って調べたが、この後武蔵小杉が注目されたことによって、近年には高層パークタワー新川崎というマンションをもう1つぶっ立つ。

しかも、パークタワーが立つ前には三井ビルディングの前に広大な駐車場「三井のリパーク」として運用されていた。
何十年単位で景気が良い時に開発するために大量の土地を確保しておいたのだ。

そして、景気と鉄道の再編に合わせて開発したのが、川崎や武蔵小杉、そして新川崎。
10年20年先を見越して、交通の要所に投資を行って土地を確保・最も高く売れる時に住宅を立てる…「まるで、将棋だな」というしかない。

これは他の駅でもそうで、東京で言うと大崎駅や豊洲がそうだね。

大崎駅はりんかい線・JR乗り換えがある割に、駅前にはなにもない1999年に高層のオフィスビルを作った。
その後、大崎は開発されて注目を集め、三井はパークシティを建ててオフィスビルも住宅もセットで大崎をもり立てる。

りんかい線への注目度の高さはりんかい線のスタートになっている大崎…そして豊洲にも力を入れてることからも伺える。

豊洲にはららぽーとがある。
アニメ「東のエデン」の舞台になっている映画館やニートが集められたビルはららぽーと豊洲なので、アニメファンの人は是非足を運んでみてほしい。
加えて、パークシティも豊洲にある。
投資したのは10年前だが、築地市場の移転やオリンピック会場の関係で豊洲は注目されているからここでも10年越しの成功…「まるで将棋だな」と言いたくなるような詰め将棋的な成功を見せる。

JRやりんかい線がやらないところを三井がやる

交通の要所を開発する手法自体は阪急や東急に近いところがあるが…JR沿線沿いを狙って開発してる。

JRは駅ナカや高架下などには力を入れているが、駅前に大きなオフィスビルやマンション、大型ショッピングセンターを構えたりしないから、そこを三井が狙う。
駅の近くなら阪急や東急もやってるところもあるが、美味しくて土地が確保できたところなら三井が来る。

そして、人々はららぽーとや高層マンション群で
「三井が来たなぁ〜」
と思うかもしれないけど…本当は広めの三井のリパークや、オフィスビルができてたら「くーる、きっと来る」と三井不動産側はもう言ってるようなもんなのだ。

一山狙いたい人は三井とイオンを追いかけるといいかもしれない

最後に、
「三井以外はどないやねん」
という人のために、不動産の開発や管理・運用にはざっくり分けて4つの考え方がある。

都心のど真ん中の方が景気に左右されないから強くない?丸の内とか梅田とか
と思った人は、三菱地所型。丸の内はだいたい三菱。

乗り換えや新しい路線を先読みして、広大な土地を確保しておけば、長い目で見れば大儲けできるのでは?
と思った人は、三井不動産グループ。

自分たちで鉄道も通して、駅前の開発もして、スーパーや関連産業も育てれば、その街の利益を総取りできる。
的なことを考える人は東急や阪急…あとは西武と発想が近い。

「狐や狸が出るところに出店せよ」
人気の大都市に出ていかなくても、地方民の生活をすべてカバーすれば、利益の高いジャンルも取ることができるし、競争少ないからいいのでは?
と考える人はイオングループ。小売で地域と信頼を抑えつつ、金融や不動産に誘導していくスタイル。

 

三井とイオンが広がってきて「なんでだろう」と思ってる人は、その辺の事を抑えると最近の経済事情がわかって面白い。
そして、まだ伸びていない地域に密やかに投資したり、運営権・経営権をとって拡大していくのが三井かイオンなので…「まるで将棋だな」という体験をしたい人は三井やイオンの動きを追いかけてると面白いかも。

将棋とまで言わなくても、桃鉄とか信長の野望が好きな人は、こういう話に興味を持つと、新しく発展する都市を先回りして予想したりできそうだし、大企業や戦前の財界人の先見性にびっくりする面白さがあると思うよ。

 

こういうのができてきたあたり、西宮ってもうすごいんだなぁ…。

 

◆関連記事:兵庫県都市開発ネタとか

兵庫県三木市の人口が減って寂しいので、勝手に宣伝する
そもそもの発端は三木市を調べた時に「今は神戸じゃなくて、西宮だぜ」って言われて神戸も調べたら寂れてて、西宮を調べる結果になりました。

町の本屋さんが減少した原因はAmazonではなく、コンビニだからな?
地方ネタで経済ネタな記事。地方の本屋は元々蔵書数自体少ないので、コンビニに売れ筋の雑誌を取られて時点で負け確定だったんだよ…。

2020年以降、また世界も日本も不況になるらしい
オリンピック不況が来ると話題なので、書いた。

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