世代交代ができないプロ野球チームが学ぶべきラミレス采配の話

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2021年のプロ野球は、4月時点ではオリックスと日本ハムの2人負け状態になっている。

そして、この2つのチームが同じ理由で負けてて、なおかつチーム内の空気もグダグダだから、この記事を書くことにした。

日ハム式「抜擢型世代交代」はすごく効率が悪い!!

日本ハムが強かった頃は
「その年一番の選手を獲得する」
という競合覚悟で話題の選手を強気に指名する方を取ってた。
これものの見事に当たって、若くして抜擢してもことごとく活躍してきた。

 

さらに、栗山監督は、最初から大抜擢するのが大好きで、特に斎藤佑樹は1年目の4月には実戦登板させて、2年目には開幕投手にまで抜擢してる。
これがダルビッシュ有や、大谷翔平クラスの選手であればハマるのですが…斎藤佑樹や清宮幸太郎の場合は大きな壁にぶち当たることになる。

 

そして、オリックスは日ハムと同じぐらい「選手を大抜擢するのが好き」なチームで、福良監督時代・中嶋監督時代は、若くて売出し中の選手がいれば、既存のレギュラーをベンチウォーマーにしてでもガンガン使っている。
日本ハムで選手を指導した経験がない西村徳文前監督でさえ、ルーキーの中川圭太を交流戦でガンガン出して交流戦首位打者にしちゃってたりする。

 

これ、一見すると
「若手を抜擢して積極的に世代交代する姿勢が西武にはない文化だから羨ましい」
とかよく言われるんだけども…積極的な抜擢だけではダメなんです。

プロ野球は攻略され始めてから本当の野球がスタートするが…

「若手を抜擢するチーム」という文化は反対に言えば、
「ベテランでもちょっと調子が悪かったり、期待の新人がいたらすぐに交代させられる」
という文化でもあります。

だから、経験値が蓄積されるような選手が育たないのです。
それどころか、2軍で基礎力をつける前に抜擢されることも多いから、一度攻略されてしまうとそこから次のステップへと進む時間がないのです。

これが、中川圭太や杉本裕太郎みたいに
「二軍にいれば、1試合に1本は必ず打てる」
「二軍でやることがないから1軍でしか経験値が上がらない」
ぐらいの選手だったらまだいいんです。

でも、日ハムのファームは今年以外はずっと弱かったし、オリックスが今抜擢している太田椋・紅林・頓宮といった選手達はそもそも2軍でやることがないほどの成績を収めてるかと言うと…そんなことはないです。

だから、オリックスの若手抜擢はうまく行かない。
さらに、調子で変えられるから、研究され始めて壁にあたった選手が、壁と戦う前に控えに回る。
これがもう一伸びして欲しい選手が伸び切らないことに繋がってくる。

日ハムの場合は、そこに「準レギュラーの中堅以上が、自分より下手な若手を抜擢されることで出番が減る」と言う現象まであるため、ベンチの空気がギスギスし始めている…。

※一番最悪のケースになると、監督が抜擢したい選手を使うために、既存のベテランを追い出すところまで行きます。谷繁元信捕手のリードが気に食わなかった森祇晶監督は谷繁を毎日叱りつけた結果、谷繁は「どこでもいいから横浜以外で野球がしたい」と横浜を出る決意をして結果、横浜の暗黒期は深刻なものになりました。かつての横浜の主力選手達は口を揃えて「谷繁が出ていったことが横浜が弱くなった最大の原因」と言ってます。

 

だから、無理な抜擢をしないチームもありますし、なんならその方が強いです。

特に西武の場合は主力がケガをするまで無理な抜擢は避けるため、世代交代は遅い。
しかし、緊急出場した若手をベテランが支えたり、ベテラン達のチームカラーを若手が吸収していくから西武は何世代も強かったし、今でも遺伝子が活き続けて、いい加減な若手も定着する人は西武らしい選手になっていく!

 

なんかサラリーマンの「若手の育て方」「仕事の振り方」みたいな話にも近い感じになって来てますが…本質は同じです。
上司が指示の仕方を工夫しない場合、実力があって次のステップに行ける人間を抜擢するか、人手不足で補充的に未経験者にも入ってもらいつつ先輩が支える。これが正しい抜擢です!
若いから起用する?女性だから役職につける?壁にあたったら全部本人のせいにして処分を下す??こんなことする職場は抜擢じゃなくて無茶振りですよね????…そうです、オリックス・日ハムの抜擢はほぼ無茶振りです!

 

さらに、この「抜擢」の文化はドラフト戦略の方にも影響してくる

ただ…日ハムファンは途中までは「抜擢という名の無茶振り」がうまく行っていただけに今の話を聞いても納得できないと思います。
でもね、それはダルビッシュや大谷翔平が優秀だから「抜擢という名の無茶振り」を乗り越えられたのであって…ダルビッシュや大谷が取れないとうまく行かないんです。

 

…いや、日ハムがダルビッシュ有や大谷翔平を自分で探してこられるならいいんですよ?

日ハム自身がチョイスして「この選手が一番いいんだ!」という選手を取っていればよかったのだが…日ハムが言う「今年一番の選手」はマスコミで話題なだけで実力が一番というわけでもない人が多くなってきたから…まぁ、最近はひどい!

 

話題の選手というのも大変危なくてですね…
「甲子園で勝ち抜いて、スターのように注目されるようになった選手」
「体が大きくてホームランを打てる早熟のアマチュア注目株」
「六大学野球で鳴らした大学野球に於けるアイドル的な選手」
と言った感じに偏ってしまうため…下位指名で小技が使える手堅い選手をとって置かないと野球が大味になる。
しかも、大学からプロ入りして活躍するのは東都リーグの選手であって、六大学ではないことも多いから…話題性重視の指名はうまく行かない。(チームとして強いのは今でも六大学だったりするんですけどね。)

 

ここだけはオリックスよりも問題が深刻だ。
というのも、日ハムと違って、ドラフトで競合を避けた指名をすることから、
・世代の日本代表から指名(六大学系を取る時はだいたいこれ)
・東都や東北リーグから指名(立正大学や青山学院大学などが好き)
・北関東や九州/沖縄など地方の選手を開拓(群馬県が一番オリックスファンが多いらしい)
と言った渋めなチョイスを早い段階でしてきたから…獲得能力は高めだ。

 

しかし、獲得能力の高い・低いの違いはあれど、思想が似てるからオリックスは別の病気を長い間持ってました。
それが、「社会人即戦力投手大好き病」です。
オリックスは少なく見積もっても30年…多く見積もると山田久志さんの成功体験から社会人即戦力投手を取るのが大好きでした。今はマシになりましたが、長年オリックスが抱えていた病です。

その結果、川越英隆・小松聖・金子千尋・山岡泰輔・田嶋大樹など思いつくだけでもけっこうな選手を引けているんです。
しかし、社会人選手のピークは短いし、社会人投手に依存しすぎて投手が育てられなくなるといった弊害もあります。

 

日ハムは今になってかつてオリックスが抱えた病を抱え始めているのですが…この2つのチームに共通するのは「抜擢という名の無茶振りをすれば育つ」という誤った認識です。

 

ちなみに、ビジネスの世界でも大きい会社が敢えて新卒採用して、中途採用だけで会社を回さないのには理由があります。
中途採用はうまく行けば足りないピースを埋めてくれますが中途採用で失敗すると会社にダメな文化へと変わってしまうからです
即戦力といえば聞こえがいいのですが…それまでのやり方でうまく行かないときに新人のように教えたり、安易に配置転換できなかったりします。
ぼく自身、年上の人に仕事を教える側になったことがあるのですが、めちゃくちゃやりづらいだけではなく、若い子の言うことを素直に聞ける人ばかりでもないです。

これがプロ野球チームとなれば、社会人選手やFAで選手を獲得するほど若手は人間関係的にもチームプレイ的にもやりづらくなっていくリスクが増すんですよね…プロ野球は社会人から入団しても先輩なら先輩として扱わないといけないですからね…。
そんな先輩が、即戦力として抜擢されたものの、失敗して機嫌やムードを悪くすると…どうしていいやら…。

 

弱小チームがやるべき「正しい抜擢」はラミレス采配から学べ!

私はオリックスの試合を毎日のように見る前は横浜DeNAのラミレス野球を毎日データやインタビューを追いかけてました。

 

その時に、ラミレス監督が横浜就任後に選手達に言ってたことはこうでした。
・「先発投手は完投しなくてもいいから、5回まで全力で投げろ!9回まで完投して次がダメじゃどうしようもない」

・「守備はまずセンターラインを固めたい。センターラインをしっかり守って固定できれば、守れるチームになる」

・「戸柱はしっかり守ってくれればいい。(オープン戦では)サインはこちらで出すから、しっかり捕ることに専念して欲しい。」

・「倉本の守備範囲は広くないが、エラーしないでしっかりその場を守ってくれたらいい。」

と言った感じで、全体的に選手に対しての要求を下げた上で「これだけはやってほしい」という要望を伝えていました
実際、ラミレス監督が最初のキャンプで選手達に言ったことも「凡事徹底」であり、「難しいことをして欲しい」だとか「限界を超えろ」だのといったことは、最初の段階ではいいませんでした。

采配する側として最低限やってほしいことを伝えた上で、選手の成長を見守るところからスタートしてます。
求めるところから足りないにしても最初は選手のいいところをマスコミの前で話して気持ちよくプレイしてもらいます。

最初は「最低限」ができる人から使って、次に成長が止まったり緩慢プレイがあってから競争させたり、外から補強したりしてチームの底上げをしています。

 

オリックスや日ハムの抜擢は「競争」が先なのです。
何をやってほしいとか、「君は能力がある選手だからやってくれるはずだ」といったモノがないまま、抜擢即競争です。

監督の意図ややりたい野球を発信が足りてないのです。
また、若さだけで抜擢されてるから選手の方もないをしてほしいか、どうやれば定着できるかが伝わってないのかな…と言う感じが見え隠れします。

 

もちろん、栗山監督も中嶋監督もマスコミやファンに見えないところでは選手にすごく言葉送ってる監督かもしれません。
特に中嶋監督にはラミレス的な、選手を奮い立たせる言葉を贈る能力は高くて、中川圭太への「俺は無敵の中川を知ってる」杉本裕太郎への「一緒に行こう」はオリックスファンへのあまりにも有名です。

あとはラミレス監督的な「役割をしっかり説明した上での抜擢」の要素が見えてくると私は中嶋監督はけっこう好きになれそうなんですけどね…。

現時点では采配面でも、使われた選手の動きからも「役割を全うしたり、役割を意識して動こう」という要素が見えてこないんです。

栗山監督が清水というキャッチャーの何がよくて、なにをまずやってほしくて使い続けてるかも見えないですし、中嶋監督とて太田はともかく、紅林や頓宮にどうなってほしくて使い続けてるかも正直見えません。

 

ここがオリックスファンやハムファンとしても辛いし、チームがダメな意味でギスギスしてるように見える一因に見えます。

 

お仕事しててもそうですよね?
できる仕事ならともかく、不安な仕事での「いい感じにやっといて」ほどしんどいものはないと思います。
好きに仕事した後で「もっとこうしてほしかった」と後から言われたらそんな上司ぶん殴りたくなると思います。

一人仕事だったら段取りも、完成形も自分で決められるからこの問題はないです。
ただ、人と働く場合は、相手が求めてる完成形を汲み取ったり、伝えたりできないと地獄ですよね。

 

それに近いものをかんじます。

 

 

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