経済学の可能性と欠点は「カモのネギには毒がある」読むとよくわかる

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すごい本が出ちゃいましたねぇ…。

原案に夏原武さんがいる時点で、かなり期待できます。
しかも、マンガも甲斐谷忍さんが手掛けるとなると…これは買う前から当たり確定!

 

そして、期待を裏切らないクオリティだから紹介したい!!

 

あらすじ

大前提として、夏原武原作・原案作品は基本社会派で、特に経済のマンガが多い。
今回も例にもれず、「経済マンガ」で、しかもかなり濃いめの内容です。

 

その上で、あらすじ。
まず、世界的に有名な大学教授「加茂洋平」教授という人がいるのですが…その方が奇人変人。

経済学の教授なのに
経済学は経済学者から学ぶものじゃない
この世で一番役に立たない職業は経済学者である
の理由で講義はほぼ休講。

また、「カモリズム」という持論を持っていて、カモる人・カモられる人から経済を学ぶべきと考えてます。

 

休講して何をしているかと言うと、「カモる人」と「カモられる人」をフィールドワーク(実地調査)して、詐欺師や詐欺の被害者に接触します。

時には、被害者証言からスキームを推理し、詐欺師などを経済学(と本人の嘘みたいな財力)で退治します。

 

そして、主人公は1話で家庭の事情で大学をやめそうになっていた女子大生。
1話で加茂教授に救われ、最後にゼミに入って、先生の詐欺師退治のお手伝いをします。

 

詐欺師退治のために、変装して潜入する教授(真ん中)・先輩(右)と一緒に潜入してる女子大生(左)。
夏原武作品にありがちな「青臭い事を言う」「教授の変人ぶりを突っ込む」のが主人公の役目です。

夏原武作品でおなじみの、
「一般論担当のツッコミ役/解説役で実は一番の奇人変人/奇人変人なダークヒーロー」
という3人の会話劇を通じ、経済の難しい話・詐欺などの経済犯罪のスキーム解説を読むのは通常の書籍を読むよりもすごく頭に入ってくる作品…というわけです。

 

要は、「明るいクロサギ」です

今の30歳以上だったら、あらすじ聞いて「それ、ただのクロサギ!」と思った人も多いでしょう。

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そうですよ?だって、夏原武さんこそが「クロサギの原作者」ですから!
そりゃ、セルフリメイクみたいな作品も、出しますよ。

クロサギとは、「詐欺師を騙す詐欺師」という意味の俗称。
作中では普通の詐欺師をシロサギ、結婚詐欺師をアカサギと呼ぶため、詐欺師を騙す詐欺師のことはクロサギと呼んでいて、主人公がそのクロサギだったことから、そのまま作品名になっています。

 

原作読んだことなくても、作品名や主題歌ぐらいは聞いたことあると思います。
というのも、ドラマ化・映画化されていて、その時のキャストが「野ブタ。をプロデュース」が大ヒットした直後の、主演山下智久、ヒロイン堀北真希という(助演も含めて)豪華過ぎるキャストで映像化されたから、一度ぐらいは聞いたことあると思います。
主題歌も当然、山下智久がノリノリだった時期の楽曲なので、話題になりました。

 

 

そんな夏原武さんの出世作。
これを現代的な詐欺被害・社会問題を扱って、集英社テイストにコミカルに描く形で現代に戻ってきたのが「カモのネギには毒がある」というわけです。

これだけでも「面白いに決まってる」のに、ライアーゲームの「甲斐谷忍」さんが加わるんですよ!?

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ライアーゲームもドラマ化されてるから知ってる人もと思います。
知らなくても、中田ヤスタカさんが手掛ける音楽が良すぎて、一度ぐらい聞いたことあるかも!

 

だから、相性もすごくいい!

まず、ライアーゲーム自体が、心理戦を題材にしたデスゲーム作品。
だから、文字数が多くなりやすい頭脳戦をマンガ描き慣れてる方です。

また、「カモのネギには毒がある」は経済学の中でも、心理学に近い分野である「行動経済学」の作品です。

もちろん、経済系のネタは夏原武さんが持ち込むのでしょう。
しかし、心理学に近い分野は、夏原武さんのネタを補強・ブラッシュアップして、高い理解度でマンガに落とし込むことができるため、すごく相性がいいのです。

 

夏原武作品自体が、当たり率が高くてオススメ!
そこに、最高の相性を持つマンガ家さんが組むわけですから…そりゃ強いですよ!

 

せっかくだから、「経済学部出身者」として、この漫画の魅力を語る

せっかく経済学のマンガなので、少し経済学の視点から。

まず、経済学学んだ人からの感想は
そこよそこ!みんなそれが知りたいし、それが大事なのよ!
という部分を切り取ってることが素晴らしいと思いました。

 

経済学部という名前はかっこいいんですが…実態は大したことないんです。
高校の政治経済、公務員試験、ファイナンシャル・プランナーを足して割ったような、

「合理的な判断をすればこうなるよ」
「こんな制度があって、こんな考え方で世の中の経済学をかじった・世の経済を設計する人は動いているんだよ」

ということをざっくりと抑えることはできるのが経済学部です。
細かく知りたい人は会計などの商学・より政治家・法曹関係者・行政組織のカラーを学べる法学を学んだ方がすぐに役立ちます。
だから、経済学部に行くことはあまりおすすめしません。(やり直せるなら行きません)

 

もう少し、感覚的な言い方をしましょう。
経済学を大学で学んでも「経済とはこういうゲームです」という概要や操作方法をざっくり教わるだけ。
ゲームに勝つには、環境の把握/戦術/防衛術/よくある失敗の学習の理解・ケア・ブラフまで全部できないと勝てませんよね?

対戦ゲームでそれなりをやり込んだ経験のある人なら、そんなことみんな知ってますよね?
そういう意味では、経済学なんかやるよりも「自分の得意な対戦ゲームを徹底的に突き詰める方が勉強になる」とさえ思いますね…。

とはいえ、ガチ勢じゃなくてもゲームに勝ちたい・負けたくないのは一緒です。
だから、大多数の人が知りたいのは、ゲームの表面的なルールではないです。
もっと具体的な実践に即した戦術・防衛術・ミスの理解、環境の把握がして長期間勝ち続けたいし、大きな負けに巻き込まれたくないのです。

その辺の「応用」「実践」の部分を読みたい時に夏原武作品が、コンスタントにヒットし続けてるのです。

もちろん、ゲーム理論/市場の失敗/合成の誤謬みたいな概念は習います。
しかし、ありとあらゆるパラドックスやジレンマ、頭の悪い人・追い込まれた人が取る行動を踏み込んで習った・研究した人はすごく少ないです。
そこは、経済小説や、経済ドキュメンタリー、自身の体験で、補完しないといけないのが現状なのです。

みんな大人になると、「カモる人」「カモられる人」の経済の中で生きてることはわかる時が来るのです。

でも、大学のあらゆる学問では「ルールの把握」で止まっていて、本来戦う・守るための学問であるはずの経済学部でさえ「ゲームに勝つための戦術や防衛術、陥りがちなミス」まで踏み込まれていないのです。

 

結局、経済学/経済学徒/経済学者の弱点はそこです
プラスもマイナスも「具体的かつ体感的に自分のものにする」ところまでいかないのです。

お金儲けだけのことを考える必要はないが、「仕事単位で搾取や借金が当たり前」な仕事があることは知ってほしい

これは、ビジネスに活かせるようになろうと思っても同じです。
職種も儲け話も色々あるのですが…どの仕事が儲かるか、どの仕事が儲からず将来性がないかをちゃんと把握してない人が多いです。

それどころか、収益率・仕事の受注までの過程もろくに説明できないまま大人になる日本人が「将来の夢」
を卒業文集に書かせる文化があるのだから、「カモられる人」は無自覚に増えています。

というのもですね…工事の警備みたいに
「仕事自体が最低でも下請け、大半は孫請け以下」
という立場も収入も小さいお仕事も世の中には存在します。

子どもの夢によく挙がりがちな対面接客のお仕事は、大半がアルバイトだったり、経営者だったとしても開業にあたってそれなりの借金をしていたり、社会情勢に流されやすかったり…大変なお仕事もあるのです。

 

もちろん収益性や所得以外のやりがいや自己実現はありますから、否定はしません。
しかし、それらをろくに教えないことで、「カモられる人」になって抜け出せなくなる人、しくじりを経てやっと学ぶ人がたくさんいるのが現状です。

そんな「座学や小さなしくじりだけでは気づかない」「成功体験を得るまでがむしゃらに色々がんばる体力も運もない」人のための経済学こそが、本当は必要です。

防犯や経済犯罪の被害といえば遠いことに聞こえるかもしれません。
成功を目指すにしても多くの人がしくじりを経て、経済のスキームやお金の流れを意識するようになるのが現実。

だからこそ、
「カモのネギには毒がある」
がもっと浸透してほしい。
できれば、夏原武さんがてがけた経済系の作品をもっと読んでほしい。

 

心理学的な面白さがあるから、経済学好きだけじゃなくて、心理戦が多いマンガが好きな人にもオススメ。

 

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敏腕不動産営業マンが「嘘がつけなくなる」という呪いにかかって、不動産業界・契約の闇と本気で向き合って仕事するようになる…という経済マンガ。不動産周りのことに興味があれば是非。

 

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