朝、ネットを見るとこんなニュースが話題になってた。

これ、かっぱ寿司の店舗で働いたことがある私からすると、「わかるー」なんですよね。
チェーン店はどんどん料理しなくなっているし、なんのスキルも身につかないバイトの中で「こんなところでバイトしたって何のキャリアにもならねぇよ!」と思うのも両方わかる。
…まぁ、学生時代は「こんなのやって何になるんだ?」と思う側だったんですけどね…。
チェーン店はむしろ、「料理しない方向」を目指してる。
まぁ、ぼくは報道以外のことはかっぱ寿司でのことしか知らないんだけどね。
そのかっぱ寿司でさえ「できるだけ料理しないようにしようぜ」という方向で動いてたわけです。
具体的には何かというと…昔、「あら汁」というメニューがあったんです。
お寿司屋さんの定番メニューで、実際かっぱ寿司の全メニューの中でも特においしくて、人気があったのですが…なくなりました。
なんでなくなったかというと「みそ汁は全部機械化したかったから」なんですよね。
当時のかっぱ寿司は海苔汁・あさり汁・あら汁というのがあったのですが…あら汁だけは仕込みが必要だったんです。
ちゃんとあらを店内で煮込んで、骨をとって具材だけ器に入れ直して…と、他の2つのみそ汁にはない手間ひまがかかってたわけです。(だから、うまかったんだけど…仕込むためにスタッフが早く出勤しないといけないし、お店の中に加熱中の鍋をずっと置いておかないといけないから、管理がめんどくさい)
他の2つは、機械化して具材を敷いてみそ汁を入れれば完成。
しかも具材は、買っておいたパックを開けるだけで、お手軽!
あと、他の回転寿司チェーンでも「店内仕込み」なんて書いてありますが…これも裏を返せば、それが書いてないお店は店内ではなく、買ってきたものを上に乗せるだけなんです。
当時のかっぱ寿司も店内で切ってたのは…マグロとハマチぐらいで…他はパックから出してただけなんじゃないかな?
マグロを店内できる理由は、余った部分を鉄火巻や揚げ物にするためで、余すところなく使おうとするとマグロの赤身の部分をお店に送ってしまったほうがいいから…だと思います。(実際そんな感じで料理してたし)
…自動化・機械化の波がもっとすごかったのはくら寿司。
あそこはさらに、客が食べたお寿司の皿を、レーンの下にある穴に入れたらそのまんま洗い場まで流れていくシステムまで作り、回転寿司特有の「レーンに流れてる皿を取らないで、寿司だけ食べられてしまうこと」の防止策として、寿司を保護するカバーまで作った。(他にも、寿司の乾燥を防止することで、長時間お寿司を流していることができる…という闇の深いメリットもあるけど、その話はいいや…)
ちなみに、自動化・機械化をさらに超越したのがサイゼリヤで、サイゼリヤまで来ると店に包丁も使わないし、ガスコンロもないそうです。
各飲食店チェーンの店舗数、知ってますか?
やりがいを感じてない学生バイト、
ちょっとぐらい料理ができる人達、
店内で料理してないと手抜きに感じる消費者
この人たちに言いたいのは「どこで食べてもある程度味だから、通うんでしょ?そもそも、君たちだって飲食チェーンに創意工夫とか求めてないじゃん…」ということです。
そりゃ、数店舗なら職人さんを育成すれば、均一した味のお店を人力で作ることはできるかもしれない。
「レシピが同じなら味なんか同じになるに決まってる」
という人はラーメン二郎や、二郎から独立したインスパイア店を思い出してみるといい。
二郎は全国に40店舗あるが、その40店舗でさえ微妙に違うことから、ジロリアンと呼ばれるファンは同じようなモノの僅かな違いを楽しむべく店舗を廻る。(中には店主の暴走で、「破門」された元ラーメン二郎もあるから、味を合わせる気がない人まで出てくることも触れておきたい)
チェーン店は40店舗じゃ済まない。
そうなると、人間の手で「同じ」が実現できなくなってくる。
2020年現在、かっぱ寿司が325店、くら寿司が451店…そして、サイゼリヤは1500店舗以上だそうだ。
こうなってくると…「セントラルキッチン」である程度調理して各店舗に配送、そしてできるだけ調理しないで出してもらうほうがサービスの質が安定する。
特にお寿司屋さんは生モノを多く扱うわけだから…変な店主が出て食中毒でも起こすと大変なので…できるだけ均一したサービス、店舗によるブレを抑えるのは妥当。
むしろ、店主の裁量を増やして全体のブランド価値が下がるのは、企業はもちろん、回転寿司が好きだけど行きづらくなる客にとっても損失だから「料理しないで安心安全なものが出てくる店」は素晴らしいよ。
逆にチェーン店で料理するところはすごーく大変か、ブラック
「チェーン店でも店内調理をがんばってるお店があるじゃないか」
というご意見はあるが…これはかなり茨の道。
セントラルキッチンはあるけど、店内で仕上げる餃子の王将。(2020年現在737店舗)
ここは社員に「ブラック研修」を課したり、他のバイトよりも圧倒的に忙しいから3割増しの時給を払って働いてもらってる。
そして、昔の餃子の王将は、メニューが多く、店舗の個性も認めていたが…最近は店舗を減らしてサービスの均一化を目指しているから「自由にやらせて、結果を出すのを手伝う」というのは限界があるらしい…。
ちなみに、餃子の王将はブラック企業というよりかは、オラオラ企業です。
払うもの払ってるからこそハード…ということなので、払うもの払ってないのにハードな会社と一緒にするのはやめようね。(※未払い問題がでたら、手のひら返すけど)
セントラルキッチンを導入しないで頑張っていた大戸屋。(2019年時点で463店舗)
ここも、冷静に考えればめちゃくちゃ無謀なことをしている。
定食屋さんでメニューも多く、店舗もいっぱいあるのに…店内調理にこだわってた。
これで黒字だったらいいんですが…赤字です。
さらに、従業員の働き方についてもずぼらで過去にはガイアの夜明けに、社長のパワハラ発言をすっぱ抜かれて炎上したこともありますからね…。
大戸屋が街の定食屋さんだったら全然応援するよ?
っでも、数千人が関わる大所帯で、「みんな料理をすべきだ」とか言い出して社員が残業だらけで世相を無視したブラック労働&経営陣の無謀な戦略の責任をすり替えられて怒鳴られる日々を送るとなると…それは違うよね?
(大戸屋を買収した)コロワイドグループもそれはそれでブラックな側面、顧客のことを考えてない側面があるからぼくは好きではないよ?
事実、コロワイドグループになった飲食店はどうもパッとしないし…。
それでも…茨の道を歩み続けた結果、みんなを不幸にしてる(でも店舗もファンも多いから復活して欲しい)大戸屋が残り続ける可能性があるなら…買収やむなしかなぁ…と思います。
ちなみに、かっぱ寿司もコロワイドグループになってますが…こことは相性が良かったみたいで、復活の兆しを見せてます。
かつては安さで企業の位置づけを作ろうとしてたかっぱ寿司ですが…この体質を変えて、お寿司の食べ放題をやったり、付加価値の高いコラボメニューをやったりして、昔のかっぱ寿司にはなかった華のある独自色を作ってるので…【経営】という意味ではコロワイドは考えてるんだと思います。
チェーン店の魅力は【どこで食べてもある程度おいしいという安定感(それを実現するための仕組みづくり)】と、【行く度に面白いことをやっててワクワクする】ということですからね…そこを突き詰めてるという意味では、コロワイドはある程度優秀なんだと思います。