VALKYRIES of their own accord 1947 /名無しの東北県人

久方振りの同人誌紹介をやりましょう。

今回は私が「同人紹介をやりたい」と言ったら、作品を無料で送ってくれた勇者「名無しの東北県人」の作品です。ゆえに、作者が絶対見るのですが、全く媚びない方針でやります。(クレーム王の私に「妥協」だの「恐れ」なんてものはないと思っていただこう(笑))

今回は…小説でもなんでも「文章書くよ」って人は是非見て欲しい。

お品書き

  1. あらすじ
  2. 高度≠面白い
  3. オリジナリティー
  4. 文筆家の2種の人種
  • あらすじ

…と、その前にVALKYRIESの正式名称なのだが、「VALKYRIES of their own accord 1947」です。 

世界中の国家の代理戦争をするためにそれぞれの国家が一か所(山形県)に学園を設置。設置してその中で人間よりも強い強化人間と、それよりもさらに強い強化人間が戦争するという話。

イメージしにくい人はエヴァみたいに「隔離された戦場」があって、スカイクロラみたいに「戦争をする場所と人間を急ごしらえで作られて」という設定がそこにあり、それが「第二次世界大戦のパロディー」みたいになってるイメージしてもらえればいいと思う。(ざっくりと書いてるのはネタバレしないため)

  • 読む人を選ぶ作品

結論から言うと、そもそも「戦記モノ」というジャンル自体が私の専門外のジャンルだから、読むだけで結構大変だった。

私とはさほど年齢が変わらない人間が書いたとは思えないほど、厚みがある内容や情報量で真面目に読むとかなり時間がかかった。それだけ面白かったり、良い部分があったり、細かいところまで描かれているわけだが…これをいい部分だけ賞賛する形にすると、買った人・読んだ人から「それは違う」って批判が来るから、若干冷たい書き方になる。

戦記モノ単品としてみれば良くできてると思う。ストーリーも描写も予想を越えて読み手に衝撃を与えるモノがいっぱいある…が、小説として、作者含め関係者のために言わせてもらうと、これは絶対に「多くの人に読んでもらいたい」の夢は叶えられない。

理由は「文体も中身もマニアックすぎて、わからん人が続出するから」だ。

面白いかつまらないかという以前のところで読者と作品の間に壁を作ってしまっている。それも結構たくさんある。
特に失敗してるのが…読めん。読めないわけじゃないんだけど、かな文字で読めば伝わるようなものをワザと感じで「髑髏」「絨毯」とやられると、なんだかわかりにくい。いや、本当に読めない漢字が続出して、mixi・Twitter上で漢字テストをやったところ「竦める」と「鹵獲」はほとんどの人が読めなかった。(エロゲーライターと、博識のマイミク、創作オタクが一人解けただけで、あとは全滅。中には文中に出てきた漢字のうち3つしか読めない人まで出てきて平均は6点。上記の二つに加え「夥しい」を間違える人が続出)

作者からすれば「え?そこから問題?」というぐらいの話だったそうだが、こっちの「読めて欲しい」は伝わらない。戦記モノにいっぱい出てくるのでそのノリで使ったそうだが、普段使わない漢字、普段使わない言葉が出てくれば、読む人はつんのめる。

ちなみにこの「読めない」という話は他にもある。特に戦闘シーンに於いて兵器名を連発したり、体の名称を「脳漿」とか「大腿」とか書き、また兵器や機関のアルファベット・カタカナがごちゃごちゃになって、とにかく読みにくい。

…だから、「これを番人に向けて単に「面白いよ」」と言っても、あるいは実際に面白さがあっても読む人はゴールするだけでもしんどい作品になるのでは?と思うのです。

pixiv上に作品の一部をアップしているにもかかわらず、伸び切らない理由はそこにある。

  • オリジナリティーの意味

この作品を読んでいて感じたことがもう1つある。それは「よく勉強された心理・戦争描写をしながらも、そのオリジナリティーがない」という事。

まず、オリジナリティーって何?という話をしよう。
世間では「目新しい」事・モノなのだろうけど、それはモノを書いたことのないアホが考える事。
文章書いたり、創作すると、割と「新しいこと・創作されたこと」って思いついてしまう。

…例えば、私は「エヴァンゲリオンはオリジナリティのある作品」だと思ってる。これを言うと、古参のオタクは「あんなオマージュだらけの「パクリのバーゲンセール」にオリジナリティなんぞない」というのだが…何かしら既存のモノとかぶってしまうのは日本は大昔から創作物を書いてるのだから、「使われているものを新しくする」ということ自体が無理。

ろくに勉強しない奴が「俺のスタイルだ」と個性を言い訳にするようなもので、その行為自体に既視感を感じる。

オリジナリティーって何?と言われるとその答えは「作家性」だろうね。
最近のアニメ…それもラノベ原作のモノにありがちな事は設定やなんやは微妙に変えてあり、キャラの良さも変えてあるのだが、まとまって「自分の作品だからこんなふうに仕上がった」というクセがない。

日本のアニメの監督で有名な人って「この人が手がけたんだなぁ」とそれを見てわかるような作品全体を貫く芯がある。世間では「作家性」と呼ばれるそれこそがオリジナリティーだ。

この作品の場合は勉強しない奴の「俺スタイル」が問題なのではなく、積み上げたモノの上に「自己」を見出してない事が問題なんだ。
作品自体のコンセプトも、個々の描写もいいのだが、全体を通して読むと同じ作品の中にいくつもの部屋があって迷路に迷い込んだようになってしまう。作者が歩いて欲しい方向が見えないから立ち止まってしまう。

これでは批判も賞賛も…という以前に注目されない。

色んな作品を研究しているのは彼のツイートや小説上のオマージュ・兵器や用語の数々を見れば、私程度の知識があればわかる。でも、それを自分のものにしきれてない。使ってるだけでそれは「ツール」で終わってしまっている。作品自体をもっと面白く見せうるような書き方にできてないから、自分が見た「萌えや恋愛や気持ちや…という人間模様」と「社会事情」のモノが分離して、同じところに住むことができなくなってる。

それが作品全体を迷路のように文章だけでなく、ストーリーそのものまで難解にしてる。読んでいて「既視感」がチラつく割に、目新しいところが光らない。ないわけじゃないのに、埋もれてしまう。…そこがもったいない。

そもそも論を言うと、戦記モノというジャンル自体がややこしくなりやすく、それを補完する技法・工夫がもっとあるはずだ。例えば、尺を長くする・登場人物を間引く、描く場所をマクロか・ミクロどちらか一つに終始する。

読むに読めない状態、全体を貫く線がない状態では、読者は目線や心の置き場がその作品に作れない。それが問題なんだ。

  • 小さな工夫で解決できること。

僕みたいに「スタッフなしの一人芝居」と違って、彼の場合はスタッフがいたり、媒体が本である事から文をいじらずに解決する方法がちょっと残ってる。根本的に文章をいじるのもありだが、それをしない方法を書いておいたほうが作品を急に誰かに見せることになってもなんとかできるから、それを紹介しよう。

・キャラ・機関紹介を作品の冒頭に付ける。
…これが一番早い。1・2ページそれに割くだけでも変わる。(ハリーポッターを読んでるときに重宝した思い出があるので。)

・地図や勢力図何かを付ける
…せっかくリアルに書いてるのに、それが伝わりきらんのはちょっと残念。(断片的には想像できても、コロコロと舞台が変わってしまったときにこれがどこ、これが何かをわからない置いてきぼり感がなんとかならいかなぁ…と。)

自分が読んだ戦記モノの体験談。

・兵器名や体の名称の中でも「多分わかんねーだろうなぁ」と思うものを各章の終わりに付け加える
対談本なんかでよくある手法なんだけども、彼らにしかわからんような言葉がいっぱい出てくる本ってあるんだ。それを注釈として各章の最後に入れるというやり方をする。

…ここらへん内容を変えなくてもできる。特に上の二つは自分が売るときにオマケで付けてあげればそれで解決する。

最後にまとめます。世の中の「損なクリエイター」には二種類のタイプがいる。1つは押井守タイプで「よく見ないと、面白さが伝わらないため、世間一般ではつまらないという評価が通説になる」タイプ。もう一つはかじいたかし(「僕の妹は漢字が読める」の作者)タイプ。アイデアはすごくいいけど、それに続くだけの知識がないというタイプ。

自分がその二つのどちらかにいるという自覚があるなら、自分の売り込み方や勉強する目標としてそれを考えて創作に取り組むのが良い。そう思うのです。

「悪い作品」って世の中に少ないと思うのです。たいていの場合は「あと一歩で面白くなるのに、そこで筆者が読者の声を聞きそこねたり、知識的に及ばない」というケース…つまり「惜しい作品」の方が世の中には多いと思うのです。

・作者紹介
ちなみに、C82にも作品を出してくるそうです。偉そうで申し訳ないが、その時には「惜しい部分」を補完する工夫を見出した作品が来ることを私は期待したい。

今回は「紹介」というよりも「創作という行為を評論する文」になってしまったが、手放しに紹介してもみんなが「面白い」とその通りのリアクションが来るものであれば、是非紹介したい。

公式サイト
https://thevalkyries.web.fc2.com/New_Valkyries/index.html

pixiv
https://www.pixiv.net/member.php?id=4062099

同人誌
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これが「目」で語る戦いだ
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