経営者は部下に学ぶもの〜【ホッピーの教科書】を読んで言いたくなった話〜

ホッピーの教科書

ホッピーの教科書

どうせビール派だから飲まないけど、これ読んでから【死んでもホッピーなんか飲むか!】と思った。

経営者が部下や従来の会社・部下のユーモアのやり方に対して…要するに「会社の基盤・資源」を活かす経営ができていない事を自慢気に語る姿に腹が立った。

  • 「初めてだから優しくしてね」が許されるのは処女だけ!

【ホッピーの教科書】の概要は3代目社長である筆者がホッピーの会社改革を行なっていった事を語ったり、社長業の傍らに自分のスキルアップのためにやっていることを語っていくことなのです。

僕がホッピーというたかだか一企業に怒りを覚える理由は「ホッピーと僕の前職には共通点が多い」からです。

関東中心の顧客層・ロイアルファミリーによるワンマン経営(しかも、経営を父から子へバトンタッチしている最中)・優秀な先代からの付き合いの側近がいらっしゃる・雑な部分もあるが、強みが尖っていて会社の規模以上に業界や世間で知名度がある。

これらがホッピーと僕の前職で被っている。社長が代替わりすると、新しいものを導入したがるんですが…その新しいものは「経営者が内側から育てていかないといけない」んですよ!「黒船ドクトリン」「外圧」と呼ばれるような「コンサルタントが・学問が言ったから」はダメ。余りにも無責任だし、その会社に最適化する作業を経なければ、ならないため現場の提案よりも現場に負荷をかけるケースがある。

僕がホッピーの社長「石渡美奈」氏が犯罪的だと思ったのはそこである!新米社長だと言い訳しながら、会社の人間を日経の連載で「レベルが低い」と実名や特定できるような狭い言い方をして罵倒するのだから…非常に不愉快だ。
それで、外部のコンサルタントの言うことを聞いたり、「もっと他の部署の気持ちを分かってあげるようなことをやれ」と日々の仕事の中に研修やセミナーを上乗せしてくる。

小見出しにもあるように「初めてだから優しくしてね・大目に見てね」が許されるのはバージンだけです。まして、社長業なんて言う…人の生活背負ってる人が「新米ですから」とか言い出したら、「できない理由、言い訳にして逃げる口実を自分につくるな!!」と怒りますよ?

元ヤクザのアニキ格だった中本(仮名)という社員が僕の会社にもいたが…彼だって「部下を食わしてやりたいからこの商売を学びに来たんだ」と言っていらっしゃる。僕が前職で学んでいた理由も僕自身の肥やしだけじゃない。友人の同人作家が即売会で本を手にとってもらうためにこの技術が必要だから僕はまずは職場に飛び込んだ。

…そういう覚悟や人を想う気持ちがあれば、「新米」なんて恥ずかしい事を何十人の上に立っている責任者が言うことはできないのです。
例えば、SUZUKIの会長さんみたいに謙遜とベンチャー精神を込めて「俺は中小企業のオヤジ」と言ったり、松下幸之助・山田昭男みたいに社員のアイデアを吸い上げる事・考えさせる文化を作った上で「社員がやってくれたから会社が大きく出来ました」と社員と言うのはわかる。

だが、新米でありながら、現場の人間を変えたのなんのと虚勢を張りまくる辺りにもう…ね。フレーズとの矛盾を感じる。本文中で言えば、営業経験もない社長が営業の目標を「稚拙だ」とか言い出す辺りに怒りとかなんとか…そういう感情よりも、もはやあきらめに近い感情を覚える。

  • 僕が偉いんじゃない!僕を登用し続けた経営陣が偉かったんだ!

この本で一つ思いあがりが解けたから言わせてください。

僕は経営者が「自由な社風」を守ってきたから活躍できた部分・自分から考えて動く力がついただけで、経営者が違えば今ほど自信をもって自分のことを「商人」なんて言うことはできなかったと思います。

うちの会社には同期若手4人衆がいた。僕・中本・尾部・レオパレスの4人だが…経営者直属でお仕えし、新人や年配者・女性の面倒を見た4本柱を経営陣はその時その時で使い分けた。

僕以外の3人は売上至上主義で力強い体育会系出身者だったが、僕だけが会社の中ではアカデミック寄りの人だったため、ところどころ行き過ぎた部分で僕の案が防波堤となるところが大きかった。

売り方が完全に「経営陣」をコピーした尾部に対して、僕は「経営陣」の売り方をもっと誰にでも出来るソフトな売り方にすることで、新人がマネしやすいようにした。(ぼくら二人が新人の面倒見ることが多かったし、現にそれで育った)

逆に、僕は一番の踏ん張りどころでは逃げ腰になる傾向があるため、僕はメインで人を先導するリーダーにはならなかった。そういう役目は不動産営業でどれだけ時間をかけても、バットコンディションでもノルマ越えに命をかけてくるレオパレス氏が向いていた。(それゆえ対峙するんだけどさ。)

尾部氏がリーダーのうちは「現場の切込隊長・中本(「実力派で金欲も強いため、一番ノルマを背負い込んで叩くタフガイ」)」「現場にはっぱをかけながら、「全員の完売」を考えるレオパレス」「無理のある部分で止めたり、新人をこの4人の次ぐらいの層に持ってくる俺」「経営者との間でつなぎ役をしたり、3人のバランスを取りながら動く尾部」の4人はかなり機能が良かった。…このバランスは経営陣3人が作り上げたモノだが…こんなのはよその企業じゃ絶対やらせてくれない。

例えば、僕で「アカデミック枠」であることから見て分かるとおり、この組織の学歴は恐ろしく低いです。社会経験も世間からすれば、そう大したことはありません。でも、このメンバーはほかの商人達が…行く街・行く街の商人達が「一日でそんだけ売ればたいしたもんだ」と褒め称えられ、それなりの給料ももらってる存在なんです。(僕は限界来て辞めたけど、そう言われるまでは粘った。)

この文化は「やり方は任せるから仕事を終わらせろ」という方針の次の上司の下でも僕は仕事を自分で見つけて何十万分の在庫処分に貢献した。

多分、ホッピーで育っていたら、そういう人材にはならなかっただろう。(手を上げたことをやらせてるようじゃダメだ。自分で聞きに行って汲み取るぐらいの勢い、相手にしゃべらせるぐらいの組織じゃないと「人材力」なんて育たない。)

「自己判断で動いてください。責任は私が負います。」(踊る大捜査線・室井慎次)

このぐらいじゃきゃ、現場から提案なんか出てこない。いつまで経っても「鬼の居ぬ間に…」で社長が鍋蓋の如く、動かないような状態にならないと会社がちゃんと働かない。

だけど、鍋蓋のようにどっしり構えているならまだしも「初めてだからやさしくしてね」などと言うバージンスタンスで物言われちゃ…もう、「初心者は黙ってろ」という風になるだろうに。

数字が出ている事を「正義」にしちゃいけない!数字が出ないときでもやるべきことをやってる奴・全力で取り組んでいる奴を大事にする会社(前職)ぐらいにならなきゃ!

だいたいみっともないよ!40にもなるお人が、社長という責任ある立場で、部下の愚痴・コンサルタントの賞賛・挙句「わしが育てた」と言いたげなかき回し。

もう一回言うぞ?「ホッピーなんか二度と飲んでやるか!こどものビールかサッポロビールの方がずっといいよ!」…男は黙ってサッポロビールっていい言葉ですね。社長は黙ってサッポロビールなんですよね。黙ってなくとも、せめて無関係や能天気を装って「やらせる」ぐらいでちょうどいい。

…この本への反論はまだ1・2章部分メインで書いたものなので、これが「前編」だと思ってもらえればけっこうです。まだ、木曜・金曜当たりに書きます。

  • 結論だけまとめるよ。

・社長が「何かできた」と自慢しちゃいけない。いや、してもいいけど、それは他人のふんどしである時は出さず、身内のものであるときは出したらいい。

・社長は「トップダウン」じゃいけない。「ボトムアップをトップダウンする」(会社の中で出た提案を最後の最後でまとめ・調整してあげる)ぐらいが一番いい。提案が採用されたり、人が育ったりする事が社員のいいモチベーションになり、それを社長が「改革」などと言って奪い取ってはならない。

・「社長は黙ってサッポロビール」で、目だけをぎらつかせているぐらいがちょうどいい。学問や奇抜な制度・研修などを拡充するのではなく、その時間その時間がもっと濃厚になるような商売の手助けをそっとしてやればいい。

・「社長のバージン(新米・初めてだからという失敗)なんて誰が許すもんか!」です!リーダーは何もしなくてもいい代わり、失敗しちゃいけない。いや、してもいいけどしたときに何が原因で、誰に謝るかを考えてやらないといけない。

・社長と政治家の違いは「強いリーダーを演じる必要性」だ。つまるところ、政治家にはそういう「オーラ」はいると思うが、社長はどこまで行っても「商人」です。商人にふさわしい「柔和で深みとユーモアのあるオーラ」が出せる人であればいい。作り笑いと濃い化粧で画面にアピールするのはくどい商人だ。客のいるものを心得てない。

…僕の記事が一社でも多くの企業を能動的で、現場の気持ちがわかる企業へと変貌させてくれることを祈るばかりです。

ホッピーの教科書

ホッピーの教科書
著者:石渡美奈
価格:1,470円(税込、送料込)

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