「新型うつ」なんかはじめからなかったんや!

新型うつについて書いた本を読んだ。

新型うつを知る本 (イラスト版こころの健康クリニック)

本を読み、気になることが湧いた。診察の日に精神科医の人に聴き、ネットでも新型うつの評判について調べた。

結論だけ先に書いてしまうと「新型うつ」なんて病名の奴はいない。新型うつ病の症状として語られる症状のヤツは確かにいるが、まだ大学病院でも意見が割れて明確に定義されてない病状のため強い調子で断言することはできないのがいわゆる「新型うつ」病の現状だそうだ。

…って僕のような素人がどこで仕入れたかわからない伝言ゲームみたいな情報を誰も信じないよね?別に僕が研究したわけじゃない。単に見つけ出しただけ。うつ病やメンタルヘルスの情報はかじってこそいるが、専門家ではない。

だから、大権威に語ってもらおう。

結論から述べますと、「新型うつ病」という専門用語はありません。むろん精神医学的に厳密な定義はなく、そもそもその概念すら学術誌や学会などで検討されたものではありません。 (出典・日本うつ病学会【うつ病Q&A】 https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/qa/index.html

まぁ、確かに新型うつ病の中で語られる症状は存在し、注目もされている。でも、研究者によって切り口も違うし、まとまった見解も存在していないため、現状では「こういう現象の病理があり、こんな研究がある」という程度の話しかできないのが現状だ。

科学研究の観点から検証する時間が少なすぎる

本を見て「おかしいと思った」と僕がアレコレ言う経緯はあとで語るとして、まずは理系の世界ではよくあることについて語っていきたい。

まず、文系の人は事件や事故が起こるたびに「地震は予測できますか?」「原発・放射能の危険性は?」などと簡単に質問する傾向がある。でも、理系経験者から見れば「実験や与えられた情報が足りない」「文系の人が大雑把に議論しすぎて本質的なことが喋れない」…というケースの方が実は多い。

そりゃそうだ。法律や文学や経済学は作っているのが人間だから明確な正解があるが、科学の相手は自然や式そのものだ。何度も実験・検証しないとわからない。文系と違って明確な正解ではなく、仮説や現状の研究結果を説明するしかない。だから、できる科学者ほど研究成果や状況判断に忠実だ。検証不足でケースがわかりにくい案件では安易な断言・名言を避ける。

そして、医者も科学者だ。人間という正解のない(あってもその都度変わる)存在を相手にしているから、病気の話なんかするときはそれ相応の検証が必要になる。

では、新型うつ病が話題に上がったのはいつ頃か?

実は異なるルートでネットと紙媒体の両方を検索したところ…両方とも同じ答えが出てきた。はてなブックマークのエントリーで2008年・国会図書館のサーチでも2008年だ。(「非定型うつ病」で検索するとネットが2005年・書籍についてはパニック障害と併せて語られていて、「新型うつ病」と関連する「非定型うつ病」の初出は2004年になる)

病状が明文化され、世の中に出回ってから長くても10年ほどの歴史しかない。分野であり、新型うつ病という名前がついてからの年月で言えば5年そこそこだ。

さらに、「うつ病」も「パニック障害」 もその病状の把握と治療に早い人でも半年…普通の人で1年以上かかる付き合いの長い病気だ。付き合いが長いし、診断にも治療にも大量の時間を要する精神疾患で、話題になってから5年そこそこしかない病気についてはっきりとしたことを断言できるはずなんかない。

病気の人を複数名見つけることは確かにできるかもしれないが、治るまでの段取りを整えた患者の数やその共通点を検証するには時間が足りなすぎる。

新型うつ病という病気が存在しない理由は、その検証する時間の短さにある!非定型うつ病の患者自体は10年前からいるようだが、実は専門家を名乗っている人でもそれほど寛解(精神疾患における完治状態)までのプロセスを見届けた患者の数がそれほど多くないのだ。

だから、結果として次のことが起こる。

煽られる「新型うつ病」の恐怖とレッテル貼り

新型うつ病についてはいろんな精神科・心療内科医が言及しているが…その症状や症例があまりにも似か寄り過ぎている。

わざわざ本を購入しようが、新聞やネット上のコラムを読もうが、要約すると次のことしか言っていないパターンばかりで、意見の中に「ゆらぎ」がこれっぽっちもない。

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そもそも、うつ病患者は大うつ・躁鬱にかかわらずいろんな年齢の人がいるため、頭ごなしな世代論・社会的背景に病気をつなげて考えることはできない。また、多くの精神病は「誰にでもある・感じることの延長で起こる」ため、病気の人間だけを囲い込んだり、病人だけが悪いように語ることこともできない。

だから、新型うつ病に限らず、専門に扱った書物やコラムをウィキペディアなどで精神疾患の項目を見ても「自分もそうなのでは?」となんとなく感じてしまう。

実際に当事者が感じている繊細な「病気の人にしかわからない苦痛」「医者や関係者にしかわからない患者の癖・不健康感」が書物では伝わらない。

そして、新型うつ病以外のポピュラーな病気ではそれにまつわる体験談が出てくる。躁鬱病や大うつ病を筆頭に、患者が苦しみをつづる本・ブログなどがあるのだけど…新型うつ病という診断が出せるほど病気として確立していないため、診断されている人自体が圧倒的に少ない。というより、慎重で優秀な人なら診断しない。

だから患者の集まりなんかできない繊細な辛さ・悩みが語られない。それが、新型うつは一方的に「精神年齢が幼い若者がかかる精神疾患」というレッテル貼りのイメージだけが一人歩きを加速させる。

そして、その新型うつ病自体の定義が曖昧なのに、今僕が読んでいる本では患者のコメントが本の中で登場する。…すごいよね~、アレだけ病名を受けるだけで不名誉だと感じるようなひどい病気だと自分のことを認めたばかりか、医者のインタビューに応じて本にまで登場してる。

…おかしくないか?

確かに「新型うつ病」「非定型うつ病」と言われるような従来の抗うつ剤が効きにくい患者はいるんだろう。でも、科学的根拠もなしに医者の名刺を使い若者叩きに利用するようなクズは言語道断だ!

こういうクズばかりでもないが、患者の前やテレビではたくましく突っ走っていく医者・各種専門家の言い分がもっと丁寧に検証されることを祈るものです。

新型うつ病にはこういうふうに「患者や身の回りの人の体験談」が出回ってないのです。新型うつ病だと名乗る人が自分たちの体験を発信していないのに、専門家だけが「そういう人がいる」「職場で問題になっている」と騒ぎ立てているのです。

…おっかないですね

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