昨日、「秘密のケンミンショー」と「月曜から夜ふかし」の都道府県特集の間を取ったようなご当地紹介記事を栃木県と宇都宮で書いた。
すると、リクエストが来て
「和歌山県版もお願いします。」
と来た。
和歌山県?和歌山…。
「和歌山は特産物でもご当地料理でも全国に知られているし、観光地にはリゾートから世界遺産まである。とても【地味な都道府県】とは言えないのではないか?」
歴史ファンには熊野古道・高野山はもちろん、孫市を擁する鈴木家でも紀州徳川家でも有名なので「宇都宮よりもずっと宣伝しやすいし、実は潤ってるんじゃないの?」と…思ってた。
ところが、調べてみるとかなり衰退してた。
70年代からずっと過疎化の一途をたどって、県全体の人口は100万人を切りそうなぎりぎりの状態。
都道府県のGDPについては40位です。地味だとか、未開の地だとか揶揄される栃木県(16位)や群馬県(21位)はもちろん、宮崎県にも劣る。
仮にも近畿だ!?
どうしてこうなった?
…実際問題、交通の便がすごく悪いんですよ!!
和歌山の有名な観光地といえば、リゾート「白浜」とマグロの町「勝浦」だ。
しかし、この2つ…アクセスがものすごく悪い。 いや、この2つに限らず、和歌山って交通の便が良くない。
特に酷いのは勝浦で、高速道路が通じてないからね…。
梅田から行くと白浜で高速を降りて国道を走らせて合計4時間。白浜行くだけでも2時間。(電車でも勝浦は4時間、白浜は3時間かかる)
…和歌山のリゾートや名所に行く時間があれば、新幹線で東京に行くこともできるし、関空・伊丹経由で北海道や九州に行ける。そのぐらいの時間がかかる。
「交通の便」はふしぎなもので…実は白浜だったら、大阪からよりも、東京からの方が近いぐらいだ。
…実は和歌山には「白浜空港」というのがあり、東京と白浜を70分で結んでくれる!
だから、観光客を呼び込みやすいのは実は東京からのお客さんだったりする。
神戸?京都?クルマが好きなお父さんが3時間以上ハンドルを持ってくれる家庭しか来ないよ!だいたい、神戸は海水浴も温泉も四季折々の魚も全部揃ってるからむしろ、ライバル関係である!
フォローのために述べけど、白浜はいいところだよ??
春夏秋冬違う魚が味わえて、おまけに歩いて回れるところに広々とした海。さらに温泉付き。…すごく不便だから「そこまで時間かかるなら、沖縄でも北海道でももっと派手な所行くわ!」と言われちゃうところではあるけど、いいところではあるんだよ?
世界遺産「熊野古道」もそうだ。範囲がバカみたいに広い上に立地も悪いから…回りにくいのよ。短期間でくるには移動時間が多すぎるし、長期間で滞在するなら北海道や九州・四国(お遍路)とどっこいで競合していしまう。
…けど、それほど人気がないし、ライバルの地域のような「自然がいっぱい」という方向ではあまり宣伝されてもない。(学校行事や自然体験ツアー系のものをもっと多く誘致するべきだが…その手の実習のために和歌山に行った人を見たことも聞いたこともないのよねぇ…)
身も蓋もないけど、和歌山のライバルが強すぎるんだよ!!
観光業の話ばかりしてきたが、当然ながら工業も立地の悪さは響く。
農林水産業が盛んな和歌山…といえば聞こえがいいが、逆に言えば「工場誘致を兵庫と滋賀・三重に取られた結果、あまり近代化しなかった」のが実情。
実際に県でも大阪寄りなところしか、大企業の工場が誘致できてなく、無駄に情報を羅列してくれるウィキペディアでさえ異例の少なさを誇る。
県全体が過疎化と(大阪から人を吸い上げられる)ストロー現象に悩まされ…県の中心である和歌山市でさえ、人が減ってる。
普通、「県全体が過疎化している」ことは珍しく、県の中心部ぐらいは人口を維持・拡大していることが多い。でも、和歌山の場合は中枢都市でさえ寂れているのだからいかに雇用がなく、寂れているかが良くわかる。
おまけに、「農業・林業・水産業が盛んだ」とか「歴史がある」は書いたけど、これもかなりきわどい状態。
歴史→歴史そのものはある。でも、他の近畿が強すぎて影が薄れる。近隣の大阪/京都/奈良/三重にはそれぞれ歴史にまつわるキラーコンテンツがあり、徳川吉宗と孫市というのは伊勢神宮や古都に比べたら、和歌山はマニア向けコンテンツなんだよね~。(熊野古道・高野山の歴史でさえ京都・奈良に比べたら新しく、歴史的事件があった現場でもないのが辛いところ)
農業→梅・みかん・柿・山椒の生産量が日本一。だが、コンスタントにお金を稼ぐ主食や野菜は弱い。(山だらけすぎて、広く平らな土地が必要な作物はだいたい向かない)
北関東のジミーな埼玉・茨城・群馬・栃木は米と野菜に向いていたから実は農業が盛んな都道府県の中では活路があった。
物流や工場誘致など別産業の差はあるけど、農業でも儲かりやすいネタが扱えないのが…かなり痛い。
漁業…マグロの産地だと書いたが…実は関西人はさほどマグロが好きじゃない。
少なくとも関東人ほど好きじゃない。瀬戸内の魚を食べる文化圏もあり、文化の基礎が形成された時期にマグロの立地があまりにも遠いかった(でかつ、マグロは江戸時代までは腐りやすいものとして有名だったから余計食べない)、
ほかが太刀魚・カツオ・クエかぁ…。なんか、関西人が好きな魚から微妙に外れてるんだよなぁ…。カツオもマグロも好きだよ…?好きだけどさぁ…。
他にも「サイコロ、麻雀用品のシェアがかなり高い会社が入っている」ことで有名だそうだが…熟成しきった産業なのでこれから大きく伸びるとも思えん。
一番ひどいのは林業!林業は本当に衰退してる。
日本中で衰退している上に高齢化している。それでなおかつ「数の力」でも「技術導入」でも効率化が遅れている分野なので…暗いなぁ…。
ちょっとだけ明るいのは研究関係・イメージ戦略
和歌山自体には大学は少ないんだけど、近畿大学や京都大学のキャンバスがあり、特に近畿大学は「完全養殖マグロ」をこの地で作ったことで有名だ。
東京農大や東京理科大など「東京」とついているが、研究施設・キャンバスが北海道にあるような感じで、実際の自然が必要な研究をする機関を誘致するチャンスは和歌山にもあるようだ。
実際、来た大学があり、それが話題になるような成果を出したから言ってみるけど…。
陸の孤島と言われている場所にはちゃんと特産物がある場合が多い。
宮崎県がそうだったのだけど、あれだけ特産品があり、プロ野球のキャンプ地になっているから話題にするチャンスも多かった宮崎県を…東国原元知事が現れるまでそれほど「宮崎」というブームは起こらなかった。
宮崎だって立地から言えば、九州で最悪。特産品があるせいで佐賀ほど埋もれなかったものの…実態は立地がよくないから伸びしろのある産業は他の地域に取られやすかったのよね…。
和歌山も、コンテンツがないわけじゃない。
見せ方とか、宣伝の仕方だとおもうんだよ…。
そこが面白くなってくると、もっと活路が出てくるのかな…。
特産品がある分だけ、ふるさと納税みたいなものでアピールできるのは救いがあるよなぁ…。もっとも、そこに参加するのはまだスタートラインなんだけどさ…。
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