【まとめ】ベネッセの個人情報流出は企業体質ではなく産業構造上の問題

 

Twitterでつぶやいたことが反響があったので、言いたいことをまとめていく。

結論から先に書くとベネッセの個人情報流出問題を人々は「東電やオリンパスのような企業体質が起こした事件」と捉えているが、「飲食産業の過労死、深夜バス業界の事故ような産業構造の無理から生じた事件」と捉えるのが正しい。

ベネッセだから起きたのではなく、下請けやアルバイト/派遣の賃金に合わない大事な仕事をさせれば、どの企業でもリスクが伴う話だ。

そして、これからも事件は起こる。

今回はそういう話。

 まずは簡単にあらすじから

説明するのがめんどくさいので、図解します。

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出典・ベネッセの情報漏えいをまとめてみた。 – piyolog ベネッセの情報漏えいをまとめてみた。 - piyolog

画像が見られない人のためにざっくりと言えば、「ベネッセの顧客情報を扱う孫請け企業に勤務する派遣社員がほぼ1年で1000万の顧客情報を持ちだして、うち760万ほどを名簿屋に流していた」という問題がベネッセ及び関連企業で起きた。

ただ、この問題についてどうもベネッセは本質を見誤ったような対応をしている。

ベネッセ情報流出、下請け先を刑事告訴へ コピー履歴残る  ベネッセ情報流出、下請け先を刑事告訴へ コピー履歴残る - ITmedia ニュース

トラブルを起こした企業を訴える・批判することで怒りの矛先を変えるのはベネッセとしては合理的な判断で、ITリテラシーのない親御さんの批判をかわすためには理にかなった措置だろう。

だが、問題の本質はそこではない。

本当に怖いのは「悪い人」 ではない。

名簿を流出させた派遣社員の男性は39歳で子どもがいる4人家族で生活に苦渋していたという。証言を見る限りはギャンブル狂いだったことが借金や生活難につながったそうで、とても同情の余地などない人だが仕事では指導者的立場だったそうな。

借金とギャンブル癖がある人に大事な仕事をさせたことから「もっと身体検査をすべきだった」という指摘もあるが、この事件のリスクはもっと社会の中に内包されたものだと考える。そのことを説明したのが次の動画だ。

岡田斗司夫さんのブログは使いたいときにもう文字起こしされてるから助かるね~。

というわけで、書き起こしから抜粋。

僕らは、「犯罪のバックにすべてを握るヤクザみたいな胴元がいて、気の毒なお年寄りから金をだまし取っている」と思いがちだけれども、「振り込め犯罪結社」を読んだら、今の犯罪は、話がもっと大きくなっている

(略)

名簿の質にも良い悪いというのがあって、質が良い名簿には、いろいろな補足情報が書かれているんだ。子供についての名前はもちろん、性別や年齢から「どこに住んでいるのか?」、「どこの企業に勤めているのか?」みたいなことまで、データが書いてある。だから、今は「もしもし、母さんおれだけど」じゃないんだよ。「もしもし、おばあちゃんフミヒロだけど」というところから、振り込め詐欺は始まる。これだけのデータが全部そろっているので、5万円で名簿を買ったとしても儲かるんだね。

(略)

名簿屋というのは、どうやって名簿を手に入れるのか。僕らは、ついついアンダーグラウンドなことを考えるんだけど、今のやり方は違うんだよ。今は、陰に隠れてこそこそとアンダーグラウンドな組織を編成するのではなく、フロント企業として堂々と看板を出して、真面目に経営をしているんだ。この名簿屋みたいなものが、副業としている主な業種は、「バリアフリー関係のリフォーム会社」、「遺産相続の法律相談事務所」、「福祉関係の会社」などで、ここでおじいちゃん、おばあちゃんから山ほど相談を受けて、その相談内容をすべて名簿に記録していく、ここで集めた個人情報を組織的に悪用して、詐欺を行う人たちに流すわけではなく、組織にひとりでも悪いやつがいたら、その人が、名簿を流しちゃんだよ。こういった一部の日本人の中に入り込んでいる“ワル”、犯罪者の分子みたいなものが、無限に細かくなってきていて、どんどん犯罪市場に流れるようになっているんだ。だから、おれおれ詐欺とか振り込め詐欺というのは、「暴力団が元締めでやっている」とか、例えば今でいうと「関東連合みたいなところが元締めでやっている」というのは、警視庁が流しているデマみたいなもので、実際は、組織犯罪なんだけれども、あまりに実態が広すぎて、ぜんぜん補足できていないんだ。

特に、 読んで欲しい部分だけ太字加工しました。

名簿が詐欺犯罪などに悪用されたわけではないが、名簿が流出するまでの段取りがよく捉えている。これを4月のニコ生ゼミでしゃべっている内容だけど、7月に報じられているこの事件がどういう事件だったかをよく捉えている。

岡田斗司夫さんの考察をもう少し読んでみよう。

格差社会が前提となり、金持ちの老人層の人たちがいて、その人たちの孤独さにつけ込んで、僕ら普通の人間が、日常生活の中で悪に加担して、彼らから金を奪おうとしている。これは日本国民がイタリア化というか、マフィア化していってるとも言えて、現状の日本は、法治国家という表面層の一段奥に、「僕らの友達の中の誰かが、実はそういう詐欺組織に入っている」とか「誰かがそういう名簿を詐欺組織に流している」などがあって、今以上になにをやっているのか、わからないというということになってしまうんだ。

(略)

普通の人たちが「大学を出ても、就職しにくい」と言っていたり、最近の若者の就職率の低さや正規労働の低さ、派遣率の高さみたいなものが、最終的に国を危うくしていって、徐々に日本国民全体が、マフィア化していくという予兆を感じて、少しゾクッとしたんだ。だから、2014年と2015年の2年間が、「犯罪者がアンダーグラウンドにいて、それとは別に市民がいる」というような感覚が持てる最後の年なのかもしれない。

(略)

貧富の差の格差が今よりもっと広がったまま固定されるようになってしまったら、僕ら自身が半分犯罪者になり、自分自身や周りの人もマフィアみたいなものだということを、わかっていながら利用しあい、徐々にイタリア化していくのではないかと思えてしまう。こうして国民がマフィア化していくのが、ひょっとしたら新しい社会の形なのかもしれないし、国民のマフィア化を肯定る考え方が、保守層として現れて、この人たちが、民間の犯罪が当たり前になってきたときに、再び地方ごとに取り締まる組織として、警察と別の権力構造を持って誕生するのではないかと僕は考えてしまいました。

出典・「金を持っているやつを騙して何が悪い!」マフィア化していく日本人~マスコミのタブー  「金を持っているやつを騙して何が悪い!」マフィア化していく日本人~マスコミのタブー - 岡田斗司夫なう。

 

僕から見るとベネッセの個人情報流出は日本社会のマフィア化 が大々的に明るみに出たという意味では歴史の転換期になる事件ではないか?と考える。

今までは低賃金ゆえの労災・事故は飲食店のアルバイトや、夜行バスのドライバーなど無理をしてもバイト一人が倒れるか、バスが事故って乗員が数十人死ぬ程度だった。もちろん、痛ましい事件だが「他人事でいられる程度の事故」として賃金が低い労働者・過重な労働から生まれた無理なサービスを疑うことなく買い続けた。

ところが、今回の事件は死者も出ず、二次的な犯罪につながったわけでもない。しかしながら、名簿流出の規模・流出させた名簿の種類から見れば、社会不安を感じさせるレベルの恐怖だ。

「ベネッセが悪いんだ」ではなく、「大企業のサービスを利用しても、それらを提供・管理する現場の人間は賃金の安いバイトや派遣であり、その気になれば彼らは名簿を持ちだしてもっと大きな収入を得ることができる」と考えたら、この事件はもっと深刻に捉えられるべきだ。

そりゃ外の企業に投げたり、ゼネコン構造にしたほうが安くて効率的かもしれない。でも、それだけ多くの人が関わるほど持ち出せる人間も増えるし、身体検査もできなくなって監視・管理も難しくなる。

確かにベネッセにも問題はあった。しかし、この事件は「お金に困ったときに持ち出せるような場所に個人情報が転がっていれば、簡単に持ちだしてしまうことができ、根っからのワルではない普通の人が犯罪者になることも大いに有り得る」と示した!その点では大きな転換点だ。

最後に、もう一個だけ引用

昔の人は言ってるよ!「衣食足りて礼節を知る」と。衣食も足りてないのに、やりがいだプロ意識だと言われても、食うに食えなければそれどころじゃなくなるだろうさ…。そして、そういう人が入り込むリスクが増える構造になっていれば、誰が犯罪に加担するかなんかわからないわけさ…。

犯罪者を肯定する気はないが、犯罪者が特殊なのではなく、状況次第では人間の素質として罪を犯すということをもっと深刻に考えるべきだと思うよ。

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