実を言うと、「新型うつ」という病気はない!
結論から述べますと、「新型うつ病」という専門用語はありません。むろん精神医学的に厳密な
定義はなく、そもそもその概念すら学術誌や学会などで検討されたものではありません。
新型うつがどういうものか説明した記事を出す記者やクリニック、有名な心療内科を名乗るマンガもあるが…アレらは実際に患者を見たわけでもなければ、何か根拠があって診断したものとは限らない!
もし、本当に診断を下してるとしてもあらゆる説明を間引いてシンプルにしすぎて、知識不足か患者向けのわかりやすい方便かのどちらかであろう…!
でも、傾向として
1. 若年者に多く、全体に軽症で、訴える症状は軽症のうつ病と判断が難しい。
2. 仕事では抑うつ的になる、あるいは仕事を回避する傾向がある。ところが余暇は楽しく過ごせる。
3. 仕事や学業上の困難をきっかけに発症する。
という人がいるらしく、どう診断すればいいか議論になっているのも事実。
今回はそこに対して、前半は自分が見つけた解釈の中で面白かったもの、後半は割と有力な説で新型うつ病とはまた違うところではちゃんと立場を確立してる病気について触れていきたい。
興味・関心にムラのある疾患などいくらでもいるわけで…
まずは、最近見つけたこの解釈を貼っておきたい。
「新型うつ」って言ってしまうと「仕事やってる時だけ発動して、遊んでる時は元気なご都合主義のやつね」って言われるからな。アレはどっちって言うと「心的外傷後ストレス障害」に近いもんだと思うんだよね。ストレス障害だったら、「その原因から遠ざかるのは当然」って理解されやすい。
— コ口吉 (@kagakunoumi) 2014, 9月 14
心的外傷後ストレス障害(PTSD)…「震災とか戦争の体験が長く続くとその時の記憶や恐怖が思い起こされてしまう」というアレか。
最近だと、震災の映像を繰り返し流し、見続けているうちに報道関係者や震災報道を見守る人がその時の恐怖体験から心を病んだというアレか…(解説口調)
そして、心の傷になってしまった体験から遠ざかろうとしたり、社会復帰が難しくなるレベルで体に被害が及んだりする。
…うーん、言われてみると「仕事で酷い体験をした人・上司に対して酷いトラウマやパワハラにも写ることをされて、そこから遠ざかりたい人」という事なら、確かにPTSDの一種という説明でもいいかもしれない。
「戦争や震災のような大きなトラウマ」ではないけど、若いうちに精神的に追い詰められて、そこから遠ざかりたくなるような傷・その傷から生じる「無気力」に関わるいろんな病気はあるのよ…。
断片的に言えば、部分的には異常な興味・高い適正を示し、コミュニケーションは苦手で孤立してしまう…というアスペルガーなど発達障害の特徴でもあり、発達障害を起点とした二次障害として仕事や人間関係に恐怖心が出て、精神疾患と診断されるほど追い詰められ、仕事が出られなくなった…という人は決して少なくはない。
自分が発達障害だと気づかないまま大人になり、不得意なことをなじられた経験をした人で、それが原因で無気力に襲われて…という体験があり、興味にムラのある・できることはできて、できないことはできない人なんか実は珍しくもなんともない。
少なくとも僕はその典型的な実例だ。新型うつと呼ばれるモノと違って、旅行にでける元気はないが、良くなる段階で得意・不得意に応じて大きな差ができてしまっているため「今言われている新型うつ病というやつでは?」と担当医に相談したことはある。(ぜんぜん違うと言われたし、そもそも新型うつ病という定義にも懐疑的な先生だったけど)
実は社会人だけが新型うつっぽい症状にかかるわけではない
新型うつ病の正体として、うつ病学会はその1つに退却神経症の存在を挙げてる。
例えば、「高校までマジメで成績優秀だった人が大学デビューしようとなれないことを頑張ろうとして空回りして、無気力で抑うつになってしまった人」は周りにいないだろうか?
私の周りにはそれが原因で精神科通いをしたり、そこで治療してみると発達障害であったり、別の精神疾患にかかっていたことに気づく人が多くいたようだが…。
これは「スチューデント・アパシー」と呼ばれる現象で、退却神経症の一種である。
大学の勉強が難しかったり、人間関係につまづいたりした人がうつ病特有の症状である「無気力」「抑うつ」にかかったり、精神的に追い詰められて学校を去ってしまったりする。
一説にはこれの社会人バージョンが新型うつ病の正体ではないか?と言われて、大学生・若手の社会人以外にも環境の変化や成長過程などでこうした症状が違う名前で呼ばれてはいるけど、現れているそうな…。
そもそも、うつ病になる経緯が世代別に違う
ここまで読むと、「やっぱり若い人がかかる新型うつと呼ばれる何かは、若者の甘えじゃないか!」と言われそうだが、それだけはやめてほしい。
そこで、抑うつ状態・うつ病になるパターンについて語っておきたい。
新型うつ病について議論する際に「うつ病は高齢な人がかかり、新型うつ病は若年層がかかる」という比較がよくなされるが、冷静に考えてみれば、当然なのだ。
何しろ、うつ病になる経緯が違う。若い人の「退却神経症」や「発達障害」など求められる能力が変わった時に、評価やコミュニケーションに順応しきれなくて病んでしまうケースがよく言われる。
中年の場合は、それらに加え、燃え尽き症候群や定年に関する原因もある。
年配者もうまく行かない・プレッシャーがかかることで病む人がいるが、それ以外に(決して目に見えてうまく行ってないわけではないけど)無力感を感じてしまったり、 生きがいを失ったりして病んでしまうケースがある。
甘えがどうこうではない。年齢やその時の境遇によって悩んだり、悩みを超えられない人がどの世代にもいて、それを頭ごなしに批判する前に理解したりフォローする仕組みを作るべきだ。誰かを批判すれば、自分に帰ってくるのが精神疾患の議論なのだから。
また、新型うつの議論は意図的に色んな病名や説を説明しないまま、視野を狭めて偏見を広げるばかりで僕は嘆かわしく思う。
病名や対処法ではなく、学問・メカニズム・専門的な知識や判断などまで世の中にもっと広がってほしいと思う限りだ。
スチューデント・アパシーもとい退却神経症研究の第一人者の著書。すごく気にはなるんだけど、難しいんだろうなぁ…。
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