生活保護問題の記事を読んで「言ってることは正しいが、届かないような書き方だ!」とやきもきした。
生活保護利用者に「お金を渡して使ってもらう」の重要な意味(みわよしこ)
だから、今日は久々に生保の話を書く。
・生活保護に関する基本知識のおさらい
一般的には「不正受給が横行してる」「外国人の受給者が多い」と言われる生活保護だが、それらは偏見以外の何物でもないデマである。
生活保護を受けてる人の半数以上は高齢者であり、働けない人だ。
「不労所得」も何もない。高齢者や障害者など働けない人が大多数を占め、他にもシングルマザーや所得が少なくてやっていけない人など困窮した人が多い。
ついでに言えば、生活保護が薬物やギャンブルに流れていると言う批判も多く聞こえるが、これも生保が悪いのではなく、ギャンブルやそれをしている個人が悪いのである。
有名歌手のヤクも、生保受給者のヤクもヤクはヤクです!ちゃんと捕まえましょう。
※写真はイメージです
この辺の基本事項をもっと細かく読みたい人は
「生活保護叩き」に関する間違いを検証すべく、ざっくりと調べてみた
をお読みください。
今回は生保と経済の関係について色々書いていこう
生保を高く維持した方が救われる労働者がいるだろうに…
よく、生保批判に使われる画像として、これがある。
このデータの現実味のなさはなんだ?単純な比較とはいえ、「こんなモデルケースはそもそも存在しないのでは?」というほどの現実味のなさだ。
まず、生保受給者側のほうだが…金額うんぬんについてはいい。だが、28歳で生保を受けている以上、働けない何かしらの理由や援助を受けないとやっていけないほど困窮した事情がない限りはこんなモデルにはならないのではないだろうか?
実際に若年層の生保受給は少なく、高齢者が多い。理由が老衰であれ、障害や疾患であれ、働くことができない人が大多数であることをこの図からは読み取ることができない。
次に、働いてる方だ。都内で時給800円のアルバイトなんか本屋ぐらいしかない。
コンビニや飲食店など一番バイトの募集をかけてる所ですら900円・1000円はざら。アミューズメント施設やオフィスに潜り込んでバイトするモノもだいたい1000円前後が相場で時給で働いているフリーターの中で800円で働いてるヤツのほうがザラだ。
現実問題800円で働き、都内在住の単身者なんか本の虫ぐらいであり、万が一その図を見て「働いたら負け」と言っているなら、滑稽な限りだ!
レアケースを比較した図を振りかざすだけでもバカらしいのに、生活保護を批判する人は「最低時給に生保を合わせろ」と言いたげに生保を叩きに回る。「生保に最低時給を合わせろ、賃上げしろ」でも「生保で受けられる補助を他の低所得者にも分配しろ」でもなくだ。
両方に関わりがある厚生労働省でさえ、最低賃金と生活保護の関係についてはこんな風に述べているのにだ。
最低賃金と生活保護との関係について見ると、生活保護が健康で文化的な最低限度の生活を保証するものであると言う観点から考えると、最低賃金の水準が生活保護よりも低い場合には、最低生計費の保証という観点から問題であるとともに、就労に対するインセンティブが働かずモラル・ハザードの観点からも問題であると考えられる。
実際に、厚労省がこう言ってるように、最低時給との格差を是正する時には生活保護はむしろプラスの基準になって、実際に生保との格差が是正された時にはいくつかの地域の最低時給は上がっている。
巡り廻って、生活保護の人の生活水準がちゃんと維持されることは労働者保護にもつながっている!少なくとも、791円から賃金が上がるなら800円ぐらいしか出なかった書店員は喜ぶだろうし、もっと時給が上がるように生保のおかげで動いていけば、その次に低い飲食店の店員にも恩恵があるのだ!
にも関わらず、全然生活保護制度となんの関係のない生活保護叩きをすることで財務省にセーフティーネットを弱める口実を与え、大企業には時給を上げろというチャンスを水に流してしまうような意見を考えもなく言いまくる人が沢山いる。
彼ら、生活保護叩きこそが労働者や弱者の敵だということをもっと知ってもらいたい限りだよ!
もちろん、生理的な感覚として高齢者や障害者、生きていくのが難しい片親の世帯が受給している人に対して
「奴らは我々の税金で食べているのだ。びた一文無駄に使われたくない」
と言いたいのはわかる。でも、それだと優先順序が違うよ!生保でパチンコに行くよりも、億単位の不正やムダ使いをしてる政治家、官僚を叩かなきゃ!パチンコに行く生活保護者よりもずっと還元していただけるだけの金額が出てくる!そういう人にガミガミ言う方がいい。
生活保護の経済効果は言われてるよりもでかいかもしれない…
今の厚労省の資料を見て気づいたことがある。最低賃金の考え方が生活保護と連動してる(生活保護に合わせる形になる)なら生活保護の経済効果はもっと大きいということだ。
よくネットでは、生保の経済効果は「生活保護者が貯金するほどのお金がないから生活保護のほとんどは消費に回る」ということにとどまらない!
「最低時給を上げる力になるため、同じく貯金するほど余裕が無いフリーターや学生アルバイトの収入を増やし、低所得層を下支えする効果」もあるのだ!
つまり、生保が高い水準でキープされることで経済的な恩恵を受ける人は生保だけでも、生保を消費されるお店だけでもなく、低所得者全般を下支えすることにもなるのだ!
もちろん、働けない人にお金渡し続けなければならないことがある以上は「安定した財源がないから生保を上げることができない」との言い分も正しいし、間違ってないとは思う。
しかし、生活保護は200万世帯でその上投票率が高い高齢者が半数以上!
そして、非正規雇用は全体のおおよそ4割。人数にして2000万人以上の人が最低時給に関心も恩恵もある層なのだ!いや、先ほどの厚労省の資料によれば、最低賃金の適応労働者の人数は5000万人いるそうだから最低賃金が上がることを喜ぶ人はもっと多い!
票がほしい政治家にとっては不毛な生保叩きに媚びへつらうよりも、生活保護の水準を現状維持以上にしつつ、それを口実に最低時給をじわじわと上げていく事は大きな支持・票につながるいい話ではないだろうか?
こういった声が政治家に対して届くようなってほしいものだ。
損をするのは、労働力を買い叩かないと会社が成り立たないブラック企業ぐらいなもの。企業は雇用を生み出すというが、やっていけないほど安い賃金の雇用で増えるのは貧困層と劣悪なサービスだけだ。そいつらが損をしても困る人のほうが少ない!
生保削減を掲げる財務省でさえ、低所得者層の消費が全般的に上がれば、財務省だって損な話ばかりでもないはずだから、どんどん方向を変えていって欲しいよ…。
まだ読んでないですが、ケースワーカーのマンガだそうです。興味あるから手に取りたいんだけど、いかんせん、時間もお金もない。
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