学歴フィルター については学生がヒステリーを起こすのも間違ってる気がするが、「ウソの建前を言う・責任の所在を学生のせいにするのはよくないのでは?」と感じる。
ところが、居直っていて「学歴フィルターがあったからなんだ!バカかお前ら」ぐらいのことを人の基準を借りて、振りかざしたがる不愉快な人が多すぎる。
あんまり不愉快だから居直ってる人達を晒しておこう。
学歴フィルターに怒る前に就活生がやるべきこと(藤代裕之)
「学歴フィルター」と言う単語と、平等の幻想について
ただ、下の「平等の幻想について」という記事は価値のある記事だから不愉快には思ったが、「こういう切り口がもっと全面に世の中に出たら面白そうだ」と思うぐらいには良かった。
そもそも、どうして学歴フィルター?
頭ごなしに非難する・居直ってる人を肯定する前に考えておきたいのが学歴フィルターが存在する理由だ。
1つは学歴のない人が虐げられたと感じるように排除の論理としてフィルターが存在すること。「優秀な学生を確保したいから学歴フィルターを活用します。フィルターで除外されるMARCH以下の学生には優秀な奴なんているわけないから採用しません」という外に向けたメッセージ。
学歴フィルターを公表できないのは、学歴フィルターがある理由くぉ(外向きには)雑にしか説明できないからだ。
実際、高校や大学で大したところを出てなくても立派な人はいる。
逆に、学歴フィルターで人様を差別しておきながら犯罪に走ったり、集めたはずの立派な人材がいるはずの企業がことごとくうまく行ってなかったりする。
「優秀な人材を取りたいから学歴で区切ります」
なんて言ったら、「本当に高学歴な人は優秀なのか」と馬鹿にされるし、実際バカバカしいお話だと思う。ましてや、それを振りかざしてる人は本当にバカだと思う。
だが、理由はもう一つある。
それは、企業側の内向きな理由だ。
例えば、リクナビ/マイナビで5桁6桁のエントリーがある企業があるが…そんなに多くの人のエントリーシートや課題を見られるわけがない。
だから、学歴フィルターを独自に設置するか、中学校の計算がいかに早くできるか(SPI)をやらせるなど、膨大な応募者をシンプルにふるいにかける基準が必要になる。
そのぐらいのことなら「リクナビ的な就活の弊害で学歴フィルターをかけないととても採用係の仕事が回らない」(かと言って、就活サイトを利用しなかったり、採用過程をアナログにしたら、もっとコストがかかって面倒くさいことになる)と言えばいいし、この言い分を掲げて学歴フィルターを肯定しても良いような気がする。
そうすることで、学歴フィルターを振りかざして差別するバカな高学歴者も、被害者意識を持つ学生も減ると思うが…事情はそんなにシンプルでもない。
採用試験は膨大な人が応募する1次試験だけでは終わらないのだ。
そして、採用過程を勧めば進むほど、学歴フィルターは「事務的な理由」ではなく、「政治的な理由」で機能するようになっていく。
よく言われることだが、大きな企業には学閥がある。学生の絶対数が多い早稲田や日大はたいていの上場企業には多く枠を持っているし、偏差値が高い慶応もまた然り。
学閥がもっと酷い組織になると「ある学歴でないとトップになれない」と言う馬鹿げたローカルルールが存在する。
経営者になる頃には大学を卒業して社会人になってから30年以上経つであろう人達が、30年前の自分が卒業した大学のことをネチネチと自慢したり、見下したりしあってトップを極めるバカな組織が実在する。*1
ご紹介しましょう!財務省さんと東京電力さんです。
…が、東電は最近は東大出身者ばかりをトップに据える体質から一変したので、財務省の方だけを紹介。
財務省の、とりわけ官僚のトップである財務事務次官は原則「東大法学部」出身者しかなれません。大蔵省時代から数えて東大法学部以外の事務次官は4人、そこから東大経済学部出身者を除いた「東大以外の事務次官」はなんと2人。しかも、両方とも京大というからこれ以上強い学歴フィルターは存在しないだろう。
しかも、どのぐらいの成績で卒業した・試験に合格したと言う話までネチネチ言われ続けるのだから、いかに異質な組織かがよくわかる。
これは逆算すると採用の段階で、すでに「いくら優秀な人でも東大・京大以外の枠は自ずと小さくなっている」と言うこともできる。
学閥があれば、学閥を維持するためのパワーが働くし、幹部になる人の学歴が厳密に決まっているならそれだけ幹部候補者を選ぶために早くからその学校の学生を採用せざるを得ない。
細かい実務をしてる下っ端の採用担当者がどれだけ優秀な人を選ぼうが、後半の面接の方は幹部がする。
組織に強い学閥などの強いパワーバランスや方針(女性の幹部をたくさん作りたいなど)があれば、能力以前の部分から排除される。
これを企業人が「そのぐらい見抜け」「採用を進める前に排除してあげてる企業の優しさだ」とほざいてるが、僕に言わせれば「組織の動脈硬化をひた隠しにして、学生に高飛車に自己責任を振りかざしてるんじゃねーよ!!」といいたいわけでして…。
「学歴フィルター」と言うとしょぼい大学を出た学生への差別のように聞こえるが、実際には「学閥フィルター」の延長でもある。
「この企業は能力がある・ないにかかわらず、ある程度は学閥や脈々と続いてる伝統を維持するために同じ規格の構成体しか雇えない不自由な組織です」
という意思表示でもある。
良く言えば、高学歴な人をいっぱい採用できた人気企業だけど、悪く言えば学閥で採用された人は入社後にムダで不合理なシステムを維持するパーツ・もしくはシステム自体に誇りを持ってるめんどくさい人とやってかないといけない組織なわけだ…。
ココらへんをわかりやすく描いたのがグラゼニ
ステマでも何でもなく、僕はこのへんの話はグラゼニがわかりやすいと思ってる。
プロ野球選手…それも、給料が高くなった選手を貧乏球団が扱うとなると「採用する側の窮屈さ」がよくわかって面白く、わかりやすい。
中でも14巻を薦める理由は「こちらが結果や権利があるのに、向こう側の都合で決裂する」という就活生が見落としがち(ゆえに、就活生寄りの言い分は被害者意識の強いものが多くなりがち)なところを補填することが書いてあるからだ。
プロ野球は一般企業よりもわかりやすく予算とポジションの関係で人事に制約がある。
一軍の選手・活躍した選手が相手でも球団側の事情でちゃんと払えないこともある。
年齢の要素も細かく絡んでくるから一度若くして活躍すれば、その後に怪我やスランプに苦しんでも拾えてもらえることもあれば、逆に活躍してても年齢を理由にチームを追われたり…。
この辺の視点を学生は見落としがちだし、高飛車に人を見下すことしかできないおバカな高学歴様はきちっと説明しない。でも、実はここが大事になる。
大学入試までと社会人の就活が大きく異なるのは「採用する方も選択肢を見回すほど自由はなく、大本の方針があって、学生がベストを尽くそうが都合と合わなければ落とすしかない」と言うスタンスになるところだ。
学歴フィルターや性別枠は企業側から見れば、方針でもあるが、同時に内部の学閥を考慮しないといけない不自由さでもあるため、学生に「そんなことぐらい察したらどうだ」としか言えない人は何もわかっちゃいない。
「何十社もエントリさせられた挙句、うまくいかない」
「基準がちっともわからないダブルスタンダードが蔓延して立ちすくんでいる」
そんな学生には、立ちすくんでいる原因となる建前文化は、相手の事情を知らないうちは【得体のしれぬ恐怖】でしかない。
それを多少なり配慮してちょっと気を利かせて
「企業側の都合では無名の実力派よりボロボロの斎藤佑樹のええんやで」
「清原みたく、よそで実績を上げて巨人入りしてやればええやん!」
「チーム側の都合でクビになったり、指名が見送られた選手でもよそで見返したり、後々鍛えなおしてプロになった人はいっぱいおる。今、1つの企業・チームから否定されたって本物は他のチームや時間が経った後のオファーで復活できるんやで」
と、丁寧な説明のできないヤツラに【コミュ力】だの【察しと思いやり】だのと言われて説教されてるかと思うと虫酸が走るわ!!
学歴フィルターがあるならあるでいいさ。
でも、公表できないのはその企業の学閥だの、上司へのお伺いだの、歴史や伝統だの、リクナビ的な就活だのそういうのを一個一個説明して「これは学生への差別じゃなくて、こっち側にとって採用活動をするために必要なことです」と根気強く説明できてない人のことにもちゃんと触れようや!
就活生や学生にとって説明して欲しいのはそこだろうが!
怪しい就活セミナーに行くよりも、グラゼニを読んだほうが大人の事情を理解できる分、良いのかもなぁ…。
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就職ネタつながり。東京に出てくる人が多いが、貧乏になると悲惨なのも東京
自分の発達障害や躁うつ病と向き合うために、心に「うるせえ」を持って生きることにした
採用を突っぱねられて病んだ時は、心にうるせえをもって跳ね返そう!
*1:30年前はご立派だった清原和博さんは今どうなってるかよく考えてみてほしいね!いやほんとに