「長嶋茂雄は発達障害」といえば、角が立つだろう。
だが、「長嶋さんは良くも悪くも人と特別な資質を持ってたから大成した」と言えば、反対する人は少ないはずだ。
そんな、「長嶋さんの特異さ」を発達障害に求めてみたい。
「障害とは何事だ!失礼ではないか」と思われるかもしれないが、この場合の障害とは普通ではない・偏りがあるという意味だ。決して差別的なレッテル貼りではない。
実際、天才的な仕事をした偉人には「発達障害だったのではないか?」と言われる人がいる。例えば、エジソンやスティーブ・ジョブズ、黒柳徹子などはこの発達障害であったと言われる。
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そして、発達障害だったと言われる著名人に長嶋さんを挙げる人もいる。
実際に、彼についてのエピソードには発達障害者本人や医者には、発達障害のように見える話が残っている。
長嶋が大成したのはサードだったからである!
いい伝説も多い人だが、トンチンカンな伝説が多い人だ。これはその一例。
- 試合前「靴下がない!」と大騒ぎ、周りの選手も大騒ぎ、「ごめん、あった」片方の足に二枚履いていた。
- 試合後「車の鍵がない」と大騒ぎ、周りの選手も大騒ぎ、「ごめん。今日は、電車で来たんだ」
- 記者「長嶋さんのダイナミックさはどこからきているんですか?」長嶋「英語だから、アメリカですね」
- オーストラリアで野球教室。「赤井君、上手いねえ」、「赤井君ナイスバッティング」、「赤井君がんばれよ」
「しかしこのチームは赤井君ばっかりだねえ」→赤井電機がスポンサーだった。
彼のドジや間違いだけで一時間の番組が作れるほどの「伝説」がある!
これらのエピソードを取り上げた番組を見ると…どうも長嶋さんがドジをやらかす時には「1つのことに集中するあまり他のことが頭から吹っ飛んで、気がついたら自分のその前にした行動を覚えてない」ことが多い。
悪く言えば、不器用でトロいところがある人。やんわりといえば、変わってる・不思議・ユニークとオブラートに包んで言われたり、悪い意味でなくとも普通の人とは違う考え方・捉え方・やり取りや行動をしてしまう人。
よく言えば「順序や段取りがわかっていることには人一倍集中できる」人が発達障害の人にはいる。*1
そのため、発達障害で大成した人は学者やアスリートや芸能人など「一芸に秀でた人」が多く、「自分に向いてることであれば、高い集中力で没頭できる」のが強みだ。
特に長嶋さんクラスになると集中しすぎて雑念が振り払われるほどになる。
…だが、複数のことをこなすなど「1つの動作に集中できない環境や仕事」が苦手。それが発達障害の弱点であり、長嶋さんほど重度だと子どものようなミスをする。
だから、長嶋さんはドジすら伝説になった。
周りが見えないほどの集中力があったからこそ「ドジ」「困った人」でもあったが、「アスリートとしては」すごい強みだった。
周りが緊張する場面であるほど彼の集中力の高さが際立ってここ一番で活躍できる。
一つのことに集中するあまり【無心になって】打席に立つ。
これが相手投手からは「顔色が読めない」と困惑され、捕手からも「(野球と関係ない話をして集中力を乱す)ささやき戦術が通じない」との証言もある。
でも、そんな長島氏が野球で大成できたのは、「1つのことにしか集中しなくていい守備位置・立場を確保できたから」ではなかろうか?
本来、野球は1つのことに集中する人に向いたスポーツではない!
守備位置によっては連携プレーが必要。打撃も走塁も監督の指示を見て動くサインプレーが基本。
だから、サイン無しで暴走したり、連係プレーを意識して動いてないとそれだけで説教もの!だから、よほどの強打者やスターでない限り、視野が広くて周りが見える方が求められる。
長嶋という選手にも当然連係プレーはあった。だが、最小限で済むような打順・キャラ・プレイスタイルが認められたところが成功を大きく後押ししていたと考えている。
それが顕著に現れているのが守備位置ではないだろうか?
連携プレーの少ないサードをを守ったことが野球を「1つのことにだけ集中してプレイできるスポーツ」という長嶋さんの捉えやすい形にしている言えなくはないだろうか?
よく、長嶋さんの守備は「サードなのにショートの位置も投手の位置も守るほど守備範囲が広い」と評される。
ところが、これを後世の人が聞くと
「そんなに動けるならショートか外野をやればいいじゃない!」
と長嶋さんのエピソードを聞くたびに思っていた。
実際、高校時代までは長嶋さんの主な守備位置はショートだったが…ショートではエラーが多かった。サードではエラーをしないこと・併殺打(ダブルプレー)に打ち取ったことで記録を持っている選手であると同時に、守備範囲も広い名手だ。ところが、ショートではそれが生かせなかった。
野球と発達障害の知識両方があれば、「ショートはランナーや相手の攻撃を意識したプレイが多く、打球だけに集中する長嶋さんクラスの発達障害には力が発揮しにくい」と気づく。…発達障害は使い道次第で天才にも化けるが、見誤ると駄目になる。
一方、サードは飛んでくるボールが(右打者の引っ張りが来るから)最も鋭い。
だが、「ボールだけに集中できる」ため「反射神経も脚力もあるが、周りの他人を見て連携するプレイが苦手」という長嶋さんには適任な守備位置なのだ!
監督として大成しきれなかった理由
話は変わって監督時代の話。
もちろん、優勝も日本一も経験し、長く監督を経験したため、てんでダメでもない。
でも、勝率は巨人で長く監督務めた人の中では良くない方に入り、名監督や優勝請負人・チーム再生の救世主…と言ったイメージはない。(実際、やりくりがうまい監督というよりは「名勝負を演じた」「野球界を盛り上げた」と言った取り上げ方をされる方が多い。)
ここにも発達障害が大きく絡んでいるのではないか?と考える。
長嶋さんが監督として大成しきれなかった原因を議論する際、大きく分けて2つの言い分が出てくる。
1、長嶋ファンに多い意見として「V9を実現した選手が衰えて粒が揃ってない時期に引き受けたからダメだったんだ」という人材不足論。
2、アンチ長島に多い意見として「あんな擬音とジェスチャーで指導されても誰もわからないよ!」という指導者失格論。
どちらも部分的には正しいが、どちらにも反論がある。
1は「長嶋がいる時期の巨人軍は補強が多かったから、選手自体を揃えることはできたし、実際補強で優勝したシーズンもある」こと。
2は「中畑清を筆頭とする伊東キャンプのメンバー・そして松井秀喜など長嶋茂雄が育てたと言われる人がいるから、育てる力はあったのでは?」と。
これら以外でデータを見てて気づいた特徴がある。
「長嶋茂雄が去った直後に、監督経験が浅い後任者である藤田・原両監督が日本一になっているため、作り上げたチームは決して悪くない」
一年だから大した補強もできないし、新監督の手腕で選手をグイグイ伸ばすのも難しい。戦力だけなら、前政権とほとんど変わらない中でかたや監督をやめ、かたや日本一。…その差はどこにあるのだろうか?
私は長嶋さん自身の監督としての【野球の能力】ではなく、もっと【事務的な能力】が低かったから結果が伴わなかったのではないか?と考えている。
長嶋氏の監督時代の主な失敗
・サインを忘れる
・試合に興奮しすぎてボディーランゲージに走って、相手からサインがバレてしまって打たれる。
・采配を間違える(名前が覚えられない/自分の使った選手を忘れてしまう)
・選手の育成方針が周りから理解されない。とりわけ、奇抜な転向をさせた際に理由が説明されても理論がわからず周りがフォローできない。
…つまり、意思疎通通じて周りをまとめたり、協力して何かを成し遂げるのが苦手なようだ。
「試合当日に王貞治の記念ホームランを打つ日だと言いはって、それを見せるために息子を球場に連れてくる(しかも的中!)」というエピソードを持つ長嶋さん。
本人も勝負強さゆえに多くの伝説を持つ長嶋さんだ!
多分、サインや人の名前を覚えていたら、指示や人選は合ってたのかもしれない。
だけど悲しいかな、常人にとって当たり前のことが長嶋さんには一番難しい・向いてないことだった。
ちなみに、「ホームランを見せるために息子を連れてきた話」にはまだ続きがあって…。
なんと「自分が王のホームランに興奮しすぎた結果、息子を球場に連れてきたことを忘れて置き去りにした」のだ!
この例に限らず、興奮して試合を見ている・野球に集中して考えている時には大事なこと自分が一番集中しているから忘れていくのだろう…。
才能も使い方と理解者がいなきゃ成り立たない
選手だった時には(決して、万能ではなく向き不向きがあった選手であったことから)向いたところに当てはめてもらう・自分に適しているところを勝ち取ったから成功した長嶋さん。
ところが、監督として欠点が露骨になった監督時代には欠点を補ってくれる理解者の不在。そもそも監督という立場が向いていないから「監督の仕事そのものを変えてしまう」逆転の発想や助け舟が出なかったことで【悪い意味での伝説】が結果にまで結びついた。
発達障害と言われる人は現在社会に当てはめにくいが、成功もしてる。一方、大多数の人は一般社会の中で病んでしまったり、あぶれてしまうと聞く。
「周囲が悪い・社会が悪い」という気はない。
しかし、長嶋さんのように「できることとできないことが周りと違うからこそ自分の適した位置を知る、適した位置を融通してもらうように動かないと力を発揮しきれない人がいる」ということも知ってもらいたい。
長嶋さんクラスの逸材はなかなかいないにせよ、当てはめ方や得意なことだけをやらせると「プチ長嶋」になれる人は案外、いるかもしれない。
つまづくところ、失敗するところが根本的に違うからその人にあったフォローや配置をすれば輝く。
たしかに、大人が発達障害に気づいて路線転換するのは難しい。
だけど、子どもだったら「向いてる方向に伸ばす」だけの時間があるし、実際に子どもが発達障害であることに気づいたり、疑いを持つようなエピソードから発達障害について調べる人が多い。しかも、悲観的に考えて落胆から入る人が多い。
そりゃ、人がしないようなドジを子どもの頃から自分の子どもだけしてたら「コイツ大丈夫か?」と思う人の気持ちもわからないでもない。実際、大人になってから発達障害であることが発覚する人も「普通になりきれない」「普通ができない」ことに悩む。
だが、そんな人でも興味や適正、あるいはキャラを活かして立ち位置を勝ち取ることができたら大成できるとしたら…?
そう考えてもらえら前向きになれるのでは?そんな思いから、これを書きました。
一部見たが、いい番組だった。長嶋さんがリハビリに熱を燃やすとほとんど不可能なことを可能にする様を見て「この人ほど集中力があって、それを実現するためのフォロー体制があればなんだってできる」と感じさせられた。
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*1:病院で発達障害を判断する際にはまず、長嶋さんのようなドジや忘れを良くするかについてを聞かれる。次に、IQテストをして、IQの偏りを見る。バランスが良くない人が発達障害という診断を受ける。「偏り」だから全部ダメでも、全部できるわけでもなく「できるできないのばらつきが大きい人」が診断される。
優秀な部分を活かして成り上がる人も入れば、悪い部分ばかり見られて伸びない人もいたりする。また、周りからの評価がやることによっても、どこを見ているかによっても真っ二つに別れ、その人自身が「俺は優秀なのか?ダメなのか?」と悩むこともある