アフタヌーンにてマンガ化までしたのに、なにかと批判される恋愛工学。
そこで今回は、恋愛工学が批判される理由について探ってみたい。
概要
そもそも「恋愛工学とは何か」だが、それはここの説明がわかりやすいだろう。
「工学」という名が示すように、これは女性の落とし方を“科学的”に解明していこうというものなんだよね。海外のカリスマナンパ師たちが実践しているメソッドが下地になっていて、それを“理論物理学の研究者”にして“金融のスペシャリスト”である藤沢さんが、主に進化生物学と金融工学のフレームワークを応用しながら日本の一般男性向けに発展させたもの、というのが恋愛工学の基本的なイメージ
そのイメージを「小説」にして、鼻につく男が「(恋愛工学さえ覚えれば、)東京なんか無料のソープランドだ」と言って、はばからない人がナンパ術をモテない主人公に教えていく。
その問題の小説がこれ。
そして、小説とは別途に恋愛工学のノウハウをもっと詳しく・もっと細かく付け加えているのが著者のメールマガジンである。
藤沢数希メールマガジン「週刊金融日記」
恋愛工学は男性的な志向に恋愛を最適化した考え方
では、どうして海外のナンパ本よりもそれを元に小説に落とし込んだ恋愛工学がウケたのか?
その分析はこの記事がわかりやすい。
これって、ナンパ師達がやってきたことをまた同じように繰り返しているんだけど。
確かに面白いと思った。工学って名乗るくらいだから、専門用語を作ってみたりして概念を数理モデルに落とし込んでいる。これは非常に俺は納得できた。言ってることは、「ナンパでの声かけは、定型文作って、それで話かける、これを『オープナー』と言う。『写真撮りましょうかオープナー』『こんばんはオープナー』などいくつか定型作れ」こういう感じで、定義つけられた行動をひたすら繰り返せば、ヒット確率が5%なら20人話しかけられればいけますね。これはナンパ業界では常識だけど、これを『メソッドだ』と割り切ったのがよかった。
ゲーム的に恋愛やナンパの段取りを整理したことが、女性に比べて物事をゲーム的で論理的に解釈するのが好きな男性達にウケている。
ただ、ゲーム感覚のノウハウに釣るという根性も、実際につられて体を預けてしまうことも女性から見てたまったもんじゃないんだけどね。
また、「ナンパ師達が繰り返し言ってる」ところを見るに、ナンパ師の技術とは女の子の気持ちがわかることではなく、状況を判断してテクニックで乗り切っているという話が、ナンパ師以外の男性にとっては斬新なのだろう。
傾向として、男性の方がゲーム的で論理的なモノを好む。
(インドアで数量的な)ゲームを作る方もやる方も圧倒的に男性が多く、有段者であればなおさらその傾向が強くなる。
また作るゲームも女性向けの作品に比べるとシステムやルールに凝るものが多く、システムを作るのも攻略するのも男同士だったりする。
逆に女性向け(または作者が女性)のゲームは操作の難しさよりもキャラやテキスト、操作を簡略するためのトリックなどに特化していることが多い。
難しさの方向が「気づくこと」に特化した作品が多く、システム・ルールあるいは操作性は男性向けのゲームに比べてシンプルなものが多い。
人間関係や恋愛でも同じことが言える。
全然違う目標設定、行動原則…よくわからないまま親や異性から植え付けられたトラウマ。
そういうものに対して男は仕組み化することで解決しようとするが…仕組み化しうるだけの経験値がない人がほとんどだから、仕組み化の多くは失敗する。
近年では20代男性の半分以上は交際歴がない。
だから、恋愛とは「女性がルールを握ってるゲームであり、男性の発想とはぜんぜん違うものでできている」ように見えるし、そう言われている。
でも、違うルールでやるゲームは怖いものだ。
ただ、恋愛というゲームは得るものが大きいし、クリアしないことで悪く言われるからゲーム自体は好きじゃなくてもクリアしたいとは多くの人が思ってる。
だから、恋愛に女性向けの気づきや発想のゲームを、男性向けっぽくシステマティックな)ゲームのようにこなせるノウハウを求める。
恋愛工学に限らず、「モテるマニュアル本」に手を染める人が出てくる。
男からすれば、「数字や明確なRPGや戦略シミュレーション、カードゲームにルールを切り替えれば、もっとできるんじゃね?」という考えから来る。
ただ、女性から見ると、恋愛を(数量的な)ゲームとして解釈しすぎているからこそ恋愛工学は批判される。
ゲームが違えば、クリア条件も違う
たとえば、同時に複数を口説くのが恋愛工学ではベースになっている。私も、男女問わず勧める戦略だ。1人へ愛をコミットすると、ひとはキモい行動をとりがちになる。相手に好かれるためにも「そこそこの好意」に止める技術が求められる。 だが、本命の相手が現れて、しかもその相手と付き合い始めたら愛情は一人に注いだほうがいい。「付き合う前」の戦略と「本命と付き合った後」の戦略は全く異なる。だが、恋愛工学は前者しかない。 恋愛工学は「この男はいい男だから逃したら手に入らないかも」と不安にさせる技術だ。しかし、付き合った後に必要なのは「この男は私を大事にする人だから愛し続けたい」と思わせること。不安を与える男は、女から切られてしまう。そういう意味で、恋愛工学に本命を大切にする方法は存在しない。
外資系OLのぐだぐだ(旧) 今さらながら恋愛工学を賛美する男性に思うこと
方法論として、複数の女性に当たることは結果的に男性自身ががっつかないこと、数を打つことによって確率を上げることに繋げている。
一方で(もう過程からして「女なら誰でもいい」感は出てしまっているが)、相手を大切にする方法が全然考えられてないため、女性にとっては不評。
もうちょっと言うと、相手をきっちり見てない(一人に絞らないでひっかけることを優先する)人が恋愛するのは好きとか嫌い以前に、不純に見えるらしい。
私は基本的にナンパ師や恋愛工学受講生が大嫌いで、なぜかというと根本的にミソジニーで「男尊女卑だし女が嫌いだけど女の肉体は好き」という人たちであるなあという印象と、女の人格の存在に気づいていないので恋愛やコミュニケーションの失敗をすべて自分に原因があると考えている印象があるからです。
たとえばセックスマジ拒否という結果があったとして、もしかしたら生理とか口臭がイヤとか恋愛工学受講生だと気づいたとか生理前でイライラしてたとか実は男とかそういう理由があるかもしれないじゃないですか。ナンパ師や恋愛工学受講生は「このテクニックのこういうところがダメだったんだ…」と思う。世界に自分しかいない感じがめっちゃキモい。
しかも、中学生の下ネタにしか見えないようなナンパ用語をがメルマガや著書にいっぱい出てきて、恋愛工学は工学と呼ぶにはけばけばしすぎる。
女子が聞くと「ウザい・キモい・ガキっぽい」の三拍子が揃ったような下ネタ、物扱いしてるとしか思えないような言葉をマネしながら「俺、この通りやったら女とヤれるんじゃね?」と女にすり寄るからなおキモい。
そういえば、なぜ女は恋愛工学的なことはしないの?
その答えをたどる上で、この記述がなかなか本質的かもしれない。
確かに、女性の言うように、恋愛の機微で感情を持ってやるべきだってのも分かるんだけど、それでは男は女と付き合えないというわけだ。女なら股をひらけば男をゲットできるが、男は50人に声をかけて1人と付き合えるかどうかなわけだ。
たしかに、男から見れば、よほど太ましくて足音がやたらドスドスしてるデブでもないかぎり「女が男10人に付き合ってと言えば、5人ぐらいはOKする」と思う。
恋愛工学を見てもわかる通り「女の子と付き合うこと」をゲームの終着点にしてる人が一定数いるから。
もう少しきっちり言うと、男が誰からの告白でもOKできるにはこんな理由がある。
・肉食系→えっちぃことがしたい。えっちなくても二人だからできること、行けるところに行きたい。
・DQN系→トモダチ・職場・家族…とにかく誰かしらに自慢できる。面目が立つ。
・草食系→自分のことが好きな子が好き。(承認してくれる異性がほしい)
ちなみに、僕は草食系と肉食系の複合系である「食虫植物系男子」がベースだ。*1
ついでに言えば、DQN+肉食はイケイケ系、DQN+草食でハンサム仮面系、全部複合型の人を女の子に全部求めちゃってるから依存系と名付けたい。(※特に使いません)
とにかく、男は「女の子に告白されたり、好かれて嫌な気分は少ない」のだ。
実際には趣味が合わない・話が合わない・一度出かけたら相手の嫌いなところが見えてきたなどの理由で決別するかもしれない…が、「とりあえず1回ぐらいOKしよう」と思う人は多いんじゃない?
ある種のラッキーでもないかぎり付き合うことはおろか接する機会を得るハードルが高い男達は「経験値を積むスライムだったとしても、自分が追い求めたライバルだったとしてもとにかく戦ってレベルを上げなきゃ」と受ける。
やっとここで本題。
「じゃあ、なんで女の子は10人に声をかけて一度5股以上の関係になって、気の合う一人を選ばない」のか?
答え:恋愛はしたいけど、男ほど誰でも良くないから。
あ、「男だけが誰でもいいからふしだらだ」と言いたいわけじゃない。
実は、女性のほうが浮気した経験がある人の割合が多いというデータがあるから「女の人の方が恋愛に対してクリーン」というわけではない。
“女性の浮気”が急増中 その背景と浮気に走る女たちの本音とは?
これ以外でもテレビや浮気調査のサイトなどで調べても女性のほうが浮気してる人が多く、逆に男性の方が浮気してるデータの方はほぼ見かけなかった。
ただ、女性の場合「認められたいレベルの人に認められないと満たされない」のだ。
正直、デブでもバカでも女性から見て「気持ち悪くない(気づいてほしいことに気づいてる)人」なら見込みはある。
ただ、突然告白されて、突然好かれてすり寄られた時に男ほど「悪い気はしない」とか「少しぐらい話してみても」とはならない。
そもそも言葉や行動といった記号的な物よりもむしろ「そこでそれを言うか」「私じゃなくてもいいタイミングだろ」というところに引っかかって拒否する。
女性向けゲーム同様、気づくかどうかがゲームだから気づいてない人に答えは教えない。無言で嫌悪感を顔と行動に出すだけ。
「同じゲームで遊べる人が好き」とでもいえばいいのかな?
男性向けな数量化されたRPGやアクションみたいに「敵を倒すのが楽しい」「数量化された結果が成し遂げられたらゲームクリア」なら告白・付き合うでいい。
でも、女性向けの「キャラ性の強いアドベンチャー(ホラゲー・乙女ゲー・王子様やツンケンした使用人が出てくるゲーム)」はゲームクリアしていくことで、キャラの一面が知れることが大事。
やってるゲームもクリア条件も違いすぎるんだよねぇ…。
どっちがいいとか悪いとかそういうことを言う気もないし、言ったところでその人のポジショントークにしかならないんだよねぇ…。
だから、恋愛工学の議論はもっと軽く聞き流した方がいいし、こういう場所で過激なことを言いたがる人は「相手の気持ちとか、立場とか汲みとる気ないんだな〜」って思っておけばいいと思うのよね。
時間があるなら論争なんか見てないで、無視するか、自分で元ネタになってる著書をナンパ本から恋愛工学まできちっと分析するか…どっちかをやったほうが早いと思うんだよねぇ〜。
…というわけで、もう一回元ネタの本を紹介しとくね〜。それでおしまい。
一応、読んでみたけど…正直、不愉快なので、覚悟して読むことを勧めたい。
・関連記事(参考資料)
自分で読んだので、徹底的に用語を抜き出したり、体験談や聞いた話をまとめて解説しました。
フリーゲーム「999,Victory」は女子の発想で魔王を倒すゲームです!
これを書く上でかなり影響を受けたゲーム。キャラの作り方・女の子の振る舞い方が他のゲームと違うから、女心の理解に役立つゲームかも…。
*1:僕は偏屈だし、趣味もニッチだから話が合わなくてそもそも盛り上がれないことで関係がフェイドアウトするか、あらかじめ盛り上がらないことを知って「それでもええの?」と言っちゃうから誰も彼も受け入れられる博愛主義者にはなれない。だから、「ベース」は誰でもOKと思っていても、結果的には自分と合う人、好きになれる人しか残らない…はず