児童虐待問題の統計は法律が細かく絡みすぎてややこしくて仕方がない

あるニュースをきっかけに色々調べていたけど、事情がかなり複雑だったからまとめてみたい。

そもそもちゃんとまとまるかどうかはわからないけど、虐待系のニュースを見た時に「なるほどこういうことか」とわかるケースは増えていくかと思う。

相談数が激増してるけど、報道や活動家の主張とは少し違う…

まず、爆発的に相談件数が増えている。面白いほど増えてる。

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児童虐待の定義と現状 より

何度か激増している時期があるが、これは「虐待や深刻なケースが増えたから相談が増えた」のではなく、法律が変わったり、変わるにあたって児童虐待の問題が盛り上がりを見せたためだ。

まず、2000年に児童虐待防止法が施行されたのだが、その少し前…法律が議論されている時期に相談が増えている。(それ以前から児童虐待対策の法律があるにはあったけど、それほど周知されていなかったそうな)

参照 児童虐待防止法制度 

次に、激増する平成16年には児童虐待防止法の中の言葉が「虐待を受けた児童」から「虐待を受けたと思われる児童」に通告しなければならないとされる範囲になり、通報できる範囲が広がっている。

「 おかげさまで」というべきかどうかは分からないが、児童虐待で検挙される人は増えた。

https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/jidougyakutai_fukushihan_kenkyoH26.pdf

確かに増えているのだが…その内訳もよく見て欲しい。

増えているのは傷害や暴行であって、よくネットやマスコミで問題視されている殺人や性犯罪ではない!

それどころか、長期的に見ると子どもが殺される事件自体が減っている。

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参照 嬰児殺(赤ちゃん殺し)と幼児殺人被害者数統計

他の犯罪同様、昭和の方が多い。

この時点で「昔の家族の方が家庭で役割分担できてたからうまく行ってた」論は疑わしくなるのだが、よく見てみると他にも面白いデータがある。

特に、1歳未満の犯罪の大半は女性であり、1歳未満という誘拐されたり、誰かに預けたりもしにくい性質から母親の犯罪が多いのだそうな。

が、これは日本が他の国に比べて育児に関わらない父親が多いというデータもあるから必ずしも母親のせいだけとも言えない。

ただし、ややこしいのが「父親が育児に参加したら、事件が減るか」と言われると、逆に暴行や傷害については検挙数が増えてるということ。

また、今でも1歳未満の子どもへの殺人は女性が大多数を占めるが、最近増えている(今になって増えたのか、気づいた人が通報するようになったのかはわからないけど、データ上は最近になって激増している)暴行や傷害はむしろ父親による犯行が母親のそれの倍なのだ。

また、確かに殺される場合や育児放棄する場合は1歳未満への犯罪のほうが多いのかもしれない。

だが、それ以外だと12〜15歳以降の被害者が多くなる。が、必ずしも性犯罪というわけでもない。

また、いわゆる「ロリータ・コンプレックス」の存在が懸念されているが、むしろ女の子ばかりが虐待の被害に遭うのはかたよるのは15歳以降、広く見積もっても13歳以降(13,14は男性の被害者も多い)なので、よく「女児を性的に表現することが犯罪を助長する」論はあまり当たってないように思われる。

ちなみに、この話は虐待に限った話ではなく、やっぱり昭和のほうが多いのだ。

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幼女レ○プ被害者数統計

だいたい、児童相談所に持ち込まれる相談のうち性的虐待の割合は3%。ほとんどは身体的な虐待と育児放棄である!

そのため、児童虐待の犯罪としてみるとそこまで多くもない。

また、全体の話でも児童買春の話も度々問題になるけど…年々減ってる。

だけど、ここでもややこしいのは児童ポルノ問題で捕まる未成年の女性は年々増えてるということ。

そして、警察が出している具体例を見た限り、ネットで簡単に未成年の女の子と出会えるようになったためであったり、もっと酷いとツイッターみたいなもので画像をリツイートして共有したから捕まったであろう記述もあるため、これは虐待とはそれほど関係ないどころか場合によっては被害者がいるかどうかも疑わしい(いるものもあるからいないとは言わない)ため、児ポ法で捕まる人が増えたことを未成年の女性の被害者が増えたこととイコールにするのは軽率かもしれない。

…いや、もう少し厳密な議論をすると本当に実際に女性が被害に遭った場合は児童ポルノ以外の罪名もついて他の犯罪の数も増えるから、「女性の加害者が増えている」と言いたい場合には他の犯罪のデータを見た方がいいと考える

…警察の統計を見えも補足しきれない児童虐待

話を虐待の話に戻す。

ここまで書いてから、1つの疑問が湧いた。

それは「虐待死」と「殺人罪で検挙された人」が全く一致してないということだ。(ちなみに、虐待死については増えてるとも減ってるとも言いがたく年によってまちまち)

これは殺人罪として検挙できるものは殺意があったと認定できないのだそうな…。

そのため、警察で補足している「犯罪」と虐待による被害の数は一致しにくく、特に育児放棄については警察で検挙した数と、児童相談所に持ち込まれた相談件数(あるいは厚労省が説明している虐待死のケースに記載される数)とは全く一致しないものになっているのだ!

逆に性犯罪や身体的な虐待は検挙できるものが多いから警察庁のデータをみれば補足できるが、意思あったと認定がないため育児放棄の場合は犯罪として検挙できないから実際には警察で補足しているもの以外にも育児放棄されたり、被害よりも軽い罪(殺す気はなかったから殺人ではない罪で立件したけど、明らかに暴力を奮っているなど)で検挙するしかないそうな。

また、児童虐待についてのことを管轄するのは厚労省ではなく、地方の児童相談所だからこれもまたややこしい。

データや法律・国が示している指針などは厚労省のサイトで見ることができるし、児童相談所が取っている措置や対応についてもデータとしてみることができる。

でも、児童相談所がどのような基準で動いているかとか、権限を活かせるだけの人材や予算があるかについては関わった人しかよくわからないところがあり、法律や予算があったり、通報があってもちゃんと対応しているのかは疑問なのだ。

…こんな感じのことをかれこれ丸一日ぐらい調べてみたが、調べれば調べるほど「実態が把握できない」「断言気味に喋っている人は統計上のデータや定義を見ないで感情論を言うことが多い」という事がわかるのだ。(なぜなら、データを見ても法律上の定義や統計が補足しうる範囲をきっちり押さえてないと1つのデータを見ただけでは他のものと食い違って見えるものがあるのだから…。

相談が増えているけど、これは児童虐待そのものが増えたからかというと少し違うようだ。

相談が増えたおかげで殺人まで行かない犯罪や、殺人として認定できない虐待死が明るみに出て増えた部分もあれば、逆に昔なら殺人にまで発展していたような虐待が殺人に発展する前に見つかっているようでもある。相談件数が増えたことは必ずしも悪いことばかりではないらしいが、厚労省の資料だけでも、警察庁の資料だけでも、両方見てもいまいちそのへんのことがわかりにくい。

いや〜ネットで調べ物をすることはけっこう多いけど、こんなに結論が出にくいテーマを扱ったのははじめてだ。

結論が出ないし、出にくいから「世の中の人が問題にしていることはそもそも捕捉できてないか、法律がカバーする範囲が理解できてないか、問題になるだけマシでもうすでに被害者は減り始めていることだ」というなんとも歯切れの悪記事になってしまった。

そんな歯切れの記事でも最後まで読んでくださってありがとうございましたm(_ _)m

今回は細かく触れなかったけど、虐待された経験のある親が虐待に加担する割合が増えたり、子どもの前でDVが行われるようなことを間接的な虐待として定義しようという話もあるから子供と親という問題よりは親自身・親同士の問題でもありそうなのよね…そう考えるとこの問題はいくらでも掘り下げられる気がしてならない。

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