「ガールズ&パンツァー劇場版」には人生のだいじなものが詰まってるんだよ…

 

ガルパンはいいぞ!

今まで見た劇場版アニメの中で一番面白い作品だったんじゃないか?

好みの問題はあるが、少なくともぼくは今まで見た「テレビシリーズの続編の劇場版」の中では一番面白かった。劇場版だけで評価するならば、エヴァよりもけいおんよりもまどマギよりも良かった

もちろん、今挙げた作品は全部好きで、どれも胸を張って薦められるほど面白いから、全部見て欲しい。でも、どれか1つを推薦するなら「ガルパン」。そのぐらいガルパンの劇場版が面白かった。

面白い上でしかも、やってることがすごすぎて

「劇場の短い時間でこれだけ作品を作り込めるの!?」

という驚きがまたなんともねぇ…。

 そういえば、ガルパンって重い話だった。

今回の映画は、「学校を存続するために(女の子が戦車に乗ってチーム同士で戦う)戦車道の大会で優勝を目指して戦う」というテレビ版でのお話の続編。

テレビ版では、優勝したところでお話が終わるが、劇場版では「文部省の役人から約束を反故にされ、再び学校存続のために約束を取り付けて大学選抜チームの為に戦う」というお話が展開される。

突然の廃校、待機中の仮の施設での生活…と序盤はシリアスな話が続く。

 

…あーそういえば、ガルパンは重いアニメだった
もちろん、「戦車の重量や、メタリックな感じが重たい」なんて話ではない。
「シリアスで息が詰まるような重苦しい設定・ストーリーが多い」という意味での重たい作品なのだ!
テレビ版のおさらいも込めて、比較的重たい設定をおさらいしておきたい。

Q.そもそも、主人公「西住みほ」が縁もゆかりもない大洗女子に入学してきた?

A.戦車道大会での大きな失敗から、元いた黒森峰女学園の部員はもちろん姉や母親に顔向けできない状態になってしまったから。(劇場版にも出てくるが、未だに母親とは顔が合わせられないし、実家に帰ることがみほにとって苦痛)

Q.そんなトラウマがある「西住みほ」が戦車道を再開したのはなぜか?

A.生徒会長「角谷杏」が「戦車道を履修しなければ退学」と脅してまで強引にやらせたのが、事の始まり。(みほ自身は目が虚ろになるほど嫌がってたところからのスタート)

 

さらに言えば、生徒会が何ふりかまわず単位の優遇・遅刻の免責、戦車道の成績次第ではバレー部を復活させるなど…よく考えてみると泥くさいアメとムチを駆使して戦車道チームが形成されている。

さらに、この泥くささは劇場版ではパワーアップしてる。

生徒会長が学校存続のために政治家顔負けのロビー活動をするわ、その中に出てくる官僚が実社会での横暴さ、生々しさに重なるようないやらしいところを忠実に描いている。
よく見てみると意外に重たい話だし、ストーリーのために取ってつけたようなおまけ要素ではない

ガルパンでは泣けない。いや、泣いてる場合じゃないんだ!

…だが、すごいのは「話に中身がある」こと…つまり「重いこと」ではない。

むしろ反対に、「重さを感じさせない」のがガルパンのすごいところなのだ!

この映画もまた、前半の戦車で戦わないシーンでシリアス・やさぐれたキャラ・西住家の切なくも泣かせる思い出話が出る。

…でも、じわっと泣きそうになる反面、「ガルパンで泣いてる場合じゃないな」と思わせてくれるような話の切り替え、ギャグやBGMを挿入などがテンポよく行われていくから「重い話」なのに涙が似合わないのがガルパンという作品の面白さである!

テンポの良さや展開の速さ、明るいキャラクターや特に明るくなくてもひたむきな行動を選択し続けるガルパンのキャラクター達は「お涙頂戴」にも思えるいい話で決して泣かせはくれない。

話自体は泣けるのだが、それをBGMやギャグシーンを挟みこんだり、もう少しで泣けそうなところでぶつ切りにして次の話へとトントン拍子に進めていく。

泣かせようとしない。説教しようとしない。かわいこぶらない。

でも、大事なものは詰まってるし、いい話でもあるし、かわいい。

ガルパンの魅力はそれらをサラッと軽々と通り過ぎることにこそある。幾つかの重たいテーマに対して軽薄に取り扱うのではなく、敢えて正解を押し付けないことにこそ、ガルパンの面白さはある。

そういえば、重い話だった。家族の問題も、政治やお金に振り回される話も、思春期の悩みも全部そこに詰まっていた」

「サービスシーンやコスチュームが出ているが、決して萌え萌えしすぎず、性的で下卑た印象を与えないことで、誰もが楽しめる作品に落としこむ

「戦車の話もしているし、轟音が飛び交うし、街もぶっ壊す生々しさがあるけど、決して戦争に対して意見や解釈は述べない」(特に映画版はこの部分が多め

…これらをキッチリと成し遂げている。でも、それら1つ1つのパーツがキッチリしていることがガルパンらしさではなく、むしろ「1つ1つの重たいテーマは後で個々人で考えてもらうとして、ガルパンというアニメはテンポよく戦車の如く障害をなぎ払って突き進んでいく」から、重たいテーマの話も気持ちよく見られることにある。

「ガルパンには人生のだいじなものが詰まってる」
…だけど、それを敢えて自発的に教えないからいいんです!

ガルパンだけは萌えミリじゃなくて、キャラミリと呼んで欲しい

別に萌え萌えしてないのに、「萌えミリ」と呼ばれることに不愉快さを覚えてる。

これは、映画の凄さを語る上でも大事なことだ。

ガルパンの劇場版で最もすごかったポイントは「劇場版の短い時間で元々多かったキャラ全員を登場させて悪者にすることなく、どれも見せ場を作り、さらには劇場版から登場する学園や新キャラを登場させた」ことにある。

 

…ガルパンは良くも悪くも、「萌える女の子」ばっかりが出てくるわけじゃない。(むしろ、そのことが重要)
キャラが立てば、それが萌えようが萌えなかろうが、安直な発想で作られたであろう単細胞なキャラも貪欲に出したから、40人・50人規模のキャラが作中に登場するし、映画でもそれは変わらない。

 

使いドコロが限られてる単細胞キャラに加えて、所属する学校によってテーマ曲が決まっていることがアニメそのもののわかりやすさにも繋がってる。

 

「萌えミリ」と呼ぶと、ガルパンの本質的な演出の高度さや、わかりやすさとは逆行してて、好きではない。
むしろ「萌えないキャラでも、貪欲に入れていくことでシリアスもミリタリー要素を陽気に描ける」ところが本質である。

 

いつも同じことしか言わないキャラや、明るくて豪快なところが売りのキャラがシリアスなシーンに空気を読まずに出てきてくれたり、
轟音飛び交う戦闘シーンもコミカルに描きたい時には、あまり真面目なことをしゃべらないキャラ同士の慌てたやり取りを差し込んでみたり、
戦車自体の戦うシーンを迫力や撃破の感動を強調して描きたい時にはキレ者キャラや、まだ成長できそうなキャラクターの話としてじっくり描いたり、

…萌えに関係なく「キャラを立ててる」からこそテンポよく話を切り替えられ、BGMをわかりやすく差し替えられ、戦車の奇抜すぎる戦闘シーンも「あー彼女ならやるかも」と思わせてくれる落とし所になる。

 

劇場版アニメでたくさんのキャラクターを出すのは確かに難しい。
だからこそ、ガルパンほど多くのキャラを劇場内で活躍させた作品もなく、そのことはすごいことだと思う!

同時に、キャラごとに物語的・演出的・BGM的な記号もになっているからこそ、キャラが多いからできるスピード感のある展開、姦しさが成り立っていて、キャラが多いことがむしろ心地よく楽しめるからすごい!!

 

あるいは、戦う戦車が少なくなってきた時にひたすら無言で戦車の音だけが飛び交う戦いが(前半の姦しいシーンとは見事に切り替わっていて、)映える。

本当にぎっちり詰まってる。
劇場版の短い時間だけど、大事なものが詰まってる。
それも劇場版というバランスのとり方が難しい作品の中につめ込まれてるからすごいよ!!

ガールズ&パンツァー 劇場版 オリジナルサウンドトラック

劇場版のBGMは本当に良かった。バカなのから、吹奏楽まで全部良かった。お気に入りはフィンランドのシーン。

 

・関連記事

最近見た映画繋がり。演出的に高度なことが詰まってるから是非見て欲しい!

タイトルとURLをコピーしました