フリーゲーム「ザ・スクールジャック」、不謹慎の皮を被った王道RPGだった

 

ストーリーもビジュアルも、ものすごく不謹慎なゲームです。

しかし、いざやってみると、案外

「あれ?出オチじゃなくて、しっかり作りこまれてる良いゲームじゃないのか!!」

となります。

・概要

これを読んでもらうのが一番早いと思う。

 ●ストーリー
  17歳の少年、亜冨丸 呈朗(あふがん てろう) は
  高校に進学せず、自堕落な生活を続けていました。
  先の見えない人生になってしまいましたが
  彼はそれなりに日々を楽しんでいたようです。
  それも、あの日まででした。
  偶然再会した中学時代の友人たち・・
  輝いていました・・彼とは比べるべくも無く
  馬鹿にしていました・・落伍者である彼を
  傷つき怒りに震える彼はネットの友人へ相談しました。
  呈朗「学校を襲撃しようと思うんだ」

  ●ゲーム内容
  校内のどこかにいる旧友7人の殺害を目指すゲームです
  時間経過で情勢が変化する校内で探索したり
  デフォ戦したり協力者が出すお題をクリアしたり、な内容
  てゆーか不謹慎ゲームです。過去の凶悪犯罪のパ クリで
  成り立ってます。

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なにしろ、主人公がこれだからなぁ〜

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操作するキャラもこれだし…。

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  もう、この時点で笑ったよ。

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 過去の凶悪犯罪とネットネタが融合!最高に不謹慎なゲーム、爆誕!!

ネタにしか見えないコンセプトのゲーム。
だが、そこには作者の尋常ないこだわりが反映されている。

中でも、作中に出てくるアイテム・敵キャラは実際の凶悪事件を元ネタとしたものがいくつも出てくる。

有名どころだと「スーパーヤリヤリサワ―」とか、「火炎瓶」「パイプ爆弾」とか、「3Dプリンターで作れる銃」みたいなのが平気で出てきます。

古くは安保闘争の頃の凶器・犯罪から、新しいのはノルウェーでの大量殺人事件まである網羅している。

しかも、ただ出すだけではなく、説明文にまでネタを反映させる凝りっぷり。

例えば、スーパーヤリヤリサワ―なら「ノーベル賞ものの発明」と言い張る実際に作った人達のクソみたいなコメントまで反映している徹底ぶり。

さしづめ、犯罪とミリタリー(自家製武器)の小辞典…と言った感じのゲームだ。

…細部へのこだわりはフリーゲームの醍醐味の1つだけど、このゲームはそれが徹底しているので、ネタを調べても、ゲームをやりこんでも飽きがこない作品となってる。

オタク的な不謹慎・ゲスさはなぜか楽しめるんだよなぁ… 

「学校を占拠して、旧友をジェノサイドする」

というブラックユーモアがむき出しになったゲームだが…これが意外と嫌にならなかった。
ゲスだからとても万人にはおすすめできないけど、僕が嫌いなゲスさではなかった。

その理由を色々考えていくと、こんな理由にたどり着いた。

反省するゲス、反省しないゲス

ゲスにもいろいろ種類があって、僕のようなオタクが楽しめるゲスもあれば、オタクが楽しめないゲスもある。

洋画で言えば、テディベアが下ネタを言いまくるTEDは大好きだが、薬と女とカネのことしか考えてない男が主人公のウルフ・オブ・ウォールストリート(Wow)は吐き気がするほど嫌い…というのがある。

この違いはなにか?

それは「テディベアがかわいいから」なんて話じゃない。

両方ともゲスな映画だ。

「女をモノ扱いしていることが見え透いた下ネタ」
「薬やお酒に溺れるダメ人間の描写」
「人に迷惑をかけて、しかもちっとも懲りてないシーン」
が山のように出てくる。

しかし、オタク的なコンテンツには、罪悪感や背徳感が伴う。

・「まともな人はすごい」という部分がコンプレックスの裏返しから来る嫉妬や報われなさ

・「私が悪かったです、ごめんなさい」「もうしません」という謝罪

・「そんな自分を抜け出したい(一瞬抜けだした自分を素直に喜べる)」根の真面目さ

として、表現される。

始まりが屑・口が悪いだけで、意外といい話…というのがオタク版ブラックユーモアのやり口なんだよなぁ。

でも、Wowも、一ミリもそういう要素がない。

Wowなんか、ヤク中でも、人を見下してても、詐欺まがいでも「お金持てば全部許される」という、クソみたいな話だしね。

だから、絶対的に好きになれない。

だって、ただゲスが人を貶めてるで、女も薬も世の中も自分の奴隷ぐらいにしか思ってないし、なにか悪いことして失敗しても「事故」で処理できる都合のいい脳みそ。

…向上心って意味じゃない。

色んな事を思ったり考えたりできるかどうかという話。

自分にとって都合のいい快楽的な感情だけじゃなくて、 背徳感・嫉妬・誘惑に負ける弱い心とそれと向き合う真っ直ぐさと…そういうものも含めて「感情」を持っていける創作物をエリートは逆立ちしても作れない。

ザ・スクールジャックには、中身こそ不謹慎でもその辺の繊細さがしっかりしてたから僕は好きだし、こうしてレビューを書いてる。

犯罪者として成長することでコンプレックスを克服する主人公

この作品の面白さは、不道徳・不謹慎を貫いているくせに、主人公がターゲットの同級生達を手にかけるほどに、精神的に成長したり、自身を取り戻したりするところにある。

それでいて、ちゃんと「あてつけのヘイト」ではなく、「エピソード」がある。

ある子とは幼なじみで、ある子とはリア充に転身する前は仲の良い友達だったり、ある子とはその子がダメダメだった時には仲間意識を感じてたり…。

それゆえに、「自分は劣ってる」こともよく理解しているし、理解してたこそ違う道に走った。

あるいは、そういう弱さゆえのクズだから、ネットで見つけた協力者のことを信じることができたのだろう…。

同じ根源を持つコンプレックスと被害者意識がぶつかり合って、キャラとして深みのあるキャラになっている。

確かに中身は不謹慎で、笑い飛ばしていい題材。
できることならゲームにしないほうがいい題材なのかもしれない。

しかし、この国では犯罪者はなぜか「狂ってしまった人」のように闇に葬られがちであり、「普段おとなしい人がアニメやマンガの影響で魔が差して犯罪に走った」という話にマスコミは持って行きたがる。

豹変したんじゃないんだよ…。

このゲームの主人公に限って言えば、臆病でなんの取り柄もないいいやつが報われないなりに考えた結果、考えすぎて深みにハマったんだよ…。

反省も自己嫌悪もするような人間が、そこに行きすぎてしまったからそうなっちまったんだよ…。

僕と彼女の生きる世界

病んだ人間が病んだ世界の中に希望とか信頼関係を持とうとしてる作品…となると、やっぱりノベルゲーになるんだろうなぁ…。

ぼくは活字読むのが遅いからノベルゲーはあんまりしないんだけどさ。

◎関連記事:自己嫌悪・肯定感の低さが根底にあるゲーム

  フリーゲーム「Reincarnation」で…泣いた。

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フリーゲーム「死の就職活動」が色んな意味で生々しかった…

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