昨日のフリースタイルダンジョンを、僕のブログを知る人と(電話をつなぎながら)一緒に見ていた。
すると、ビジュアルから見るとキャラが立ってない崇勲というラッパーが、ラップバトルで勝ち抜いてた。

ビジュアル的にも、ラップ的にもそれほどキャラが立たない人。
そんな人が、ラッパー達から罵られても罵られても、罵られた言葉を吸収して「それが俺だ」と「等身大の自分」を構築して行くスタイルに、過去の放送回で人気のラッパー達が立て続けに負けていった。
そして、いよいよ勝ち抜きバトルの中でも、めったに登場しないラスボス「般若」まで辿り着いた。

般若vs崇勲という戦いを前に僕は
「こんなに、ラスボス到達を祝福できない(釈然としない)チャレンジャー、見たことない」
「勝ってるのに、構造がヒップホップっぽくないからまったく気持よくない人が登りつめちゃった!」
とモヤモヤしていた。
すると、電話の向こうの人から
「あなたのブログ上・ネット上のバトルスタイルも、崇勲っぽいですよ。」
と指摘された。…そうなんだよ。だから余計に、思うところがあるんだよ。
崇勲タイプな人の強み・パワーアップ法
正直言って、このタイプは悪口を言われ慣れてる。
自分の事を大した人間だと思ってないし、大した人間じゃないからこそ「等身大の自分」を積み上げるのに、相手の悪口を利用する。
ヘタすれば、悪口を言えば言うほど「アイツが一方的に感じが悪いやつだよね」という印象を与える。
ネットバトルでの僕のスタイルを人々はこんなふうに評する。
「青二才は攻撃力が皆無なくせに、HPがバカみたいに高いか、死んでも生き返るゾンビのような奴」
…ネットバトルのいいところは観衆も殴りこみをかけられるから「僕が攻撃をする必要が無い」ってところ。
ネットほどじゃないが、ラップバトルも論理的な勝ち負けではなく、審査員や客の盛り上がり(説得力)が勝ち負けを決めるから近い部分はある。
直接言い負かせないなら、言い負かそうとしてる奴の印象を下がるように見せ、批判的な意見を受けても自分の評価を落とさなければいいんだ。
見てる人が、僕の敵に「感じわるい」「大人げないことをしている」という印象を持ってもらえるように、僕が「誠意ある対話をする姿勢」「謙虚で前向きに自分の芸に徹する」という形を取る。
従って、辛口な古参ブロガーが悪口を言えば言うほど、
「青二才さん、ガラの悪い人に絡まれて大変ですね〜」
「彼は善人に見える。また、悪口を言う時でも誠実に書こうとしてる。それがわかってもらえない人がいることが気の毒だ」
という位置取りが、際立つようになっていく。
このタイプは「理解者が現れる」ように振る舞ってるからこそ、いい人でいられる。「等身大の自分」を盛ることなく、嫌な部分があっても肯定しようとする姿勢を貫く。
そして、理解者が増えれば増えるほど、強くなる。
一度周囲を納得させた自分が、その等身大の自分でいつづけるほど、観衆が味方でいてくれるから他の人からの批判や攻撃が栄養分として蓄積される。
口喧嘩で相手を打ち負かせない人、相手を知識やビジュアルで圧倒できない人の弱者の戦略…それは自分のフィールド(理解者達)を構築して、その中に引きずり込むこと。
その場では、相手の悪口・卑怯な攻撃・相手の方が優れているという見下しが、その人の「等身大」をより強くする。より、その人に共感する材料になっていく。
崇勲みたいなラッパーの弱点
インターネット上で、文章のやり取りでバトルした時であれば、弱点は3つある。
1、同じような戦い方(相手を攻撃せず、等身大の自分を肯定的に捉える姿)をより強度のある人間が示す
2、(圧倒的なノイズでその人のペースを乱すべく)複数名で囲んで殴る。
3、雑に(今まで、その人が積み上げてきた話の流れをリセットして)褒める。
崇勲とタイプが似ていると言われる僕の弱点は上の3つ。
コレをフリースタイルバトルに落としこむと…次の3つになる。
1、相手をディスらないで(代わりに、やんわりとネグりながら)、自分が相手よりも上の存在であることをキッチリと積み上げていく
相性が良さそうなラッパー:漢a.k.aGAMI・般若
2、アンサーしきれないほどの高速ラップ・勢いで叩き落とす。
相性がよさそうなラッパー:ACE・焚巻
3、雑に褒める。(相手が提示する「等身大の自分」をほめつつ、更に自分のほうが面白い話につなげていく)
相性が良さそうなラッパー:(いい人モードの)サイプレス上野
ちなみに、下に行くほど、相性が悪い。
まず、攻撃されればされるほど、謙虚に観客と一体になっていくスタイルの相手は、実は褒められたり、同調されてしまうとダメ。
なぜなら、自分が客の支持を集めていた「等身大の自分」を相手も「俺も好きだよ」と言って観客の支持が二分割されてしまうため。
だから、相手次第では一緒に座ってラップをするほど腰の低い(低くなれる)サイプレス上野とはすごく相性が悪い。
次にダメな相手が、ACEや焚巻のようなアンサーが投げ返せないぐらいの物量を同じ時間のラップで投げ返すタイプ。
特に、ACEとの相性が悪いと僕は考えていて、いいラップをしても、強引に早口で踏み込んで圧倒してくるような相手には、「空気の力」は通じにくい。
そもそも、早口という特徴的なラップをするような人はその場の空気を掌握するのがうまい。
早口に並ぶだけのリズム感がいいラップや、「量」に負けない「質」が必要になる。
ACEを負かしたDOTAMAはまさしく、言い回しは独特だし、自分で「リズムキープできてる」と言い張るぐらい聞きやすいラップをする人だ。
そして、焚巻を負かした般若も、焚巻がいつもの調子でラップしているところに、ラップ自体に緩急をつけてリズム感をつけている。
最後は、般若や漢のタイプ。
この二人は崇勲と同じことを言った時の言葉の重みが違うから崇勲には相性が良くない。
崇勲VSDOTAMA戦で「俺は超合金ミュータント」だと言ったDOTAMAに、崇勲が「俺は人間、レペゼン人間」と返すシーンがある。
これは「ラップの中でだけ、凶暴化して強くなるDOTAMA」の暴力と、「ラップの中でも等身大の自分を貫く崇勲」の姿勢の対決を示したシーンだが…暴力は姿勢を増幅させるから、姿勢が勝ってしまった。
しかし、もし般若が「俺が般若だ」といえば、背伸びしてないのに新しい概念を提示したことになって般若が一歩勝ってしまう。
わかりやすくするなら、ステージに上がるために体を鍛えてる般若が「俺が人間」だと言ったほうが断然かっこいい。
もしも、さらに踏み込んで「レベゼン人間、俺は般若」とか言い出したら、「等身大の自分」が姿勢どころではすまなくなる。
どこにでもいる人間が、般若といえば通用する「等身大の自分」なんてものではなく唯一無二の存在・概念へと昇華してしまう。
4回の戦いを経て、強固に作りこまれた「空気」を壊せるかどうかはわからない。
しかし、言葉の上では上位の概念を提示したり、形の上ではよりかっこいいものを見せつけてしまうため…このやり方はかなり有効だと思う。
…ただ、個人的には崇勲が勝って欲しい。
散々、弱点や苦手なことを提示してきたが、実は般若が負けてる所がみたい。
いや、ヒップホップドリームだなんだと言い続けてるフリースタイルダンジョンという番組で、ベタ降りせずに突き抜けて夢を叶えた人が出てきて欲しい。
もちろん、誰が見たって般若が勝ったほうが美しいし、盛り上がると思う。
僕だって、その場の楽しさを優先すれば、崇勲よりも般若が勝ってる姿の方が滾る。
でも、UMBの歴代チャンピオンが一方的に積み上げられて、賞金獲得者もいないのに勝手に難しくなっていくフリースタイルダンジョンを見てると
「半年もやってて、ほぼ誰も賞金を獲得してない番組なのに、どんどん賞金獲得が難しくなっていく番組。
チャレンジャーを勝って当たり前な人達がボコボコにして、モンスターがキャラを立て続ける方向へ番組へと突き進んでいってる番組がヒップホップドリームとか言っちゃうのは残酷で理不尽だなぁ〜」
とも思うわけだよ…。
そういう意味も含めて、キャラが立ちきらない、ビジュアルで他を圧倒しない崇勲みたいなラッパーが100万円取ると、折れそうな人・やさぐれそうな人が救われそうな気がしていいなぁ…。
と、彼が提示する「等身大の自分」に引っかかり始めてる自分がいる。
・5月28日追記
崇勲でも般若に勝てなかったかぁ…。
そして、般若は般若でKREVAに宣戦布告…。
番組自体がインフレしすぎて、「チャレンジャーが100万を取る番組」ではなくなって、「最強メンバーが古今東西のフリースタイラーを蹂躙する番組」にスタンスが変わってきたなぁ…。
春日部ってのがいいよね〜。等身大にならざるをえない感じを際立ててる。
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マンガを読んでて「これぞ等身大。かっこよくないけど、正面からぶつかってる感じが良い」と思えた作品。しかも、文章表現がキレイだから気に入りました。