人が才能を目の当たりにして抱く感情は3つ。
「感嘆」「恐怖」ーそして、「嫉妬」
才をつかめるやつは3つ目がより深い奴。あたしの持論だ!!
1話を試し読みした時に、上のようなセリフが出てきて、「これは面白いはずぅ!」と期待して読み始めた。すると本当に面白かったからこのマンガを紹介したい。
・概要
「輪廻返り」と呼ばれる前世の才能を現世に呼び起こす現象を通じて、元々凡人だった人達が、歴史上の人物の才能を手にした話。
…ただ、授かる才能は選べないため、犯罪者や独裁者などの才能を得て戦いを臨む人もいれば、逆に英雄や偉人の才能を得る人もいる。
特に、偉人の才能を得たもの達は「偉人の杜」と呼ばれる組織を作って、犯罪者の才能を受け継いだ連中を排除するなど、力を役立てようとしている。
徹底的に凡人。凡人が能力を持つからストーリーが生まれる!!
このマンガ好きな理由は…元々「天才」なやつが出てこないことにある。
器用貧乏だったり、自分にない才能を求めてもやもやする日々を送っていた人達がこのマンガの主人公となっている。(途中から、偉人たちの才能を借りた人達の能力バトルに発展するけど…そんな中でも主人公は使いどころの難しい才能をもつことで葛藤する「凡人の話」を貫いている)
本当の天才…生まれた時から天才であることが当たり前の人は出てこない。
天才と聞くといいイメージばかり思い描きがちだけど、活躍していないけど能力の高い人まで見てみると案外そうでもない。
自分の才能ゆえに大した努力もしなかったり、ちゃんと向き合えなかったり、自分のためにしか使えなくて世のため人のためには決してならない…という人もゴロゴロいる。
だけど、この作品は凡人が唐突に才能を持ったことで基本的に才能をいいものにしようと(なかったからこそ才能のありがたさと向き合って活かそうとする)傾向が強いから才能を持った主人公やいいものにしようとしてる人達を割と好感をもって詠み続けられる。
例えば、序盤。1・2巻こそ才能がない人間が才能がないこと、自分自身の嫉妬と、他人からの比較・見下しにうんざりしてる凡人達の凡人らしい凡人の話であり、凡人が自分の不甲斐なさに悩む話になってる。
話が進んでいくと、偉人の人格を授かる人と、犯罪者や独裁者の人格を引き継ぐ人の存在の話へシフトしていく。
…才能があっても、どう使えばいいか、そもそも使っていいのかに悩む。(※主人公の才能も「使いにくい才能」であり、偉人の杜の「才能を授かった人は才能を活かすべき」とは矛盾したものであるため、このテーマは特に掘り下げられていくと考えられる)
一方、3・4巻は正反対。徐々に才能を長く持ち続けた人間…つまり、「持てる者としてどう生きていくか」という話へとシフトしていく。
凡人だった頃の自分を忘れて思い上がってしまったり、才能を持ったことで頼られることにも勝つことにも退屈したり…凡人だった初心を忘れる人がでてきたり、才能があることそのものが卑怯に感じてしまったりするようになっていく。
偉人の異能力バトルを売りにしている作品でありながら、真面目で等身大なテーマにキッチリと向き合う作品になっているとこが、好き。
それらは肩の力を抜いて生きてる人、そもそも負けず嫌いでもない人、親や先生にガミガミ言われて育ってない人には「子どもっぽい」「思春期引きずってる」と見えるかもしれない。
でも、その思春期っぽい凡骨なコンプレックスと、多少大人になるまでのどこかで自分に対してきっと見出すであろう「才能」の組み合わせがただでさえ中二病っぽい「偉人達の能力バトル」というテーマを更に中二っぽくしてて好き!!
テーマからして他人とは思えない…世の中に対して感じている理不尽や使命感や退屈さをきっちりと代弁されていて、グサグサと刺さった。
偉人を取り扱ったフィクションの中ではかなりコアな作品
偉人と言っても…他の作品が切り取りにくい偉人を紹介するように工夫がされている所が面白いと感じた。
…偉人の名前や能力を継承する作品はどうしても、武人や戦国武将に偏りがち。
だから、ソシャゲをやっている人は、神話の偉人や武将については詳しい。
でも、この作品は文化系の偉人・実際に戦争で活躍した兵士・犯罪者などをピックアップしていくスタイル。
だから、読んでいるとちょっと検索しないと出てこないような偉人・犯罪者に詳しくなる。
武将や神話の登場人物をゲームっぽくリメイクした作品は多いけど、能力バトル用に文化人や兵士をリメイクした作品って神話や武将に比べると遥かに少ないから…出てくる偉人とマンガでのアレンジが出てくるまでしっかり繋がらない(予想しづらい)から読み進める面白さがあってすごくいいと思った!!
さらに、題材の拾い方、キャラクターの作り方、世界観やバトルの作りこみがこの2つの作品のいいところ・わかりやすくなるようなところをうまく取捨選択したような作品になってる。
「キャラをイケメン・萌えキャラばっかりにしなかった面白さ」の顕著な例はシュレーディンガーと、ニュートンだと思う。「シュレーディンガー」の才能を持った人は顔がネコのやつが出てくるし、「ニュートン」はリンゴの格好した奴が出てくる。
ニュートンはボケキャラで、ツッコミ役のアインシュタインの才能を持ってる女の子に殴られると、りんごの品種を言いながらリアクションする。
しかも、そのりんごの種類がほぼ毎回違うというよくわからないところで凝っているところが面白い。
女の子に擬人化されてるキャラも複数いるが、無機物や男をベースにキャラ化してるやつも多い。
だから、萌え萌えしてないのが読みやすいし、割と誰にでもオススメできる読みやすさもある。
ビジュアル的にユニーク文化系・軍人系の偉人が多いことはその人が何者だか知らないことえ、出てきても展開が読みづらくする効果、キャラに興味を持たせる効果もある。
そんな時に、登場した偉人を単行本のおまけページで紹介してくれるのも僕みたいな雑学大好きマンには嬉しい。
普段マンガにならない偉人がマンガで異能力をふるっているせいか、こころなしかかっこよく見えたり、異能力自体が新鮮で読み応えにつながってる。
だから、バトルマンガというありふれたジャンルなのに、独自の地位を確立してると思う。
もっと注目されていただきたいねぇ…。
と1巻読んだ当時は思ったけど…10巻まで続いている。
でも、アニメ化とかされてないから未だに「もっと注目されてないかなぁ」と思っていたりする。
かなりお気に入りの作品なんだが…