フリーゲーム「幽獄の14日間」から脱出するために、魔獣を倒そう!!

 

また、この作者は「ありそうでなかったゲーム」を作ってきたなぁ…。
3作目になるんだけど、この人のゲームはいつも「ありそうでない」ところを絶妙についてくる。

しかも、この作者の作品は安定して面白いから、レビュー書く側としては安心してプレイできるし、紹介もしやすい。レビュアーにとって一番ありがたい作者の一人だよ。

ゲームの概要

リソース管理型脱出RPG。

出口を塞いでいる魔獣を倒すために、レベルアップしたり、武器を強化したり、仲間(聖霊)を召喚したりして、最強チームを作って脱出するゲーム。

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ダウンロードはこちら。

幽獄の14日間:無料ゲーム配信中! [ふりーむ!]

RPGツクールMV作品なので、特設ページからブラウザでのプレイもできる。

幽獄の14日間 公式サイト

作者は、「カリスは影差す迷宮で」「黒先輩は黒迷宮に迷わない」の饗庭淵さん。

 

 饗庭淵作品のよさが詰まった作品

ニコニコ動画では、「黒先輩」の方が有名な饗庭さんだが、(少なくとも僕は)「カリス」のようなSF色を帯びたゲームも作れてしまうことこそ、饗庭淵さんの本来のカラーだと言いたい。

強い言い方をすれば、「黒先輩ファンではなく、饗庭淵さんのファン」と書いたのは、黒先輩でブヒってる萌え豚と一緒にされたくないからだ!!

あのゲームはあのゲームで好きだけど、あのゲームの本質が「セクハラができること」だと思ってる人がニコ動のコメントには多く見られるので…「え?作者の業が深いことでしょ?」「巻き込まれ主人公みたいな顔をした男の子が黒先輩にアレだけのことをされて、終盤の方は割とドライに自分の推理(ツッコミ)をいうところでしょ」と言いたくて言いたくて仕方のない自分がいる。…この際だから言うんだけどさ。

…そうだなぁ…GAINAXアニメ全般が好きな人は、エヴァのファンとは言わない。

古参の人はナディアのファンと言い、00年代だとFLCLのファンだと言って、エヴァファンのライトユーザーと住み分けする。

いや、エヴァはエヴァで好きだよ?でも、より濃ゆいもの・より自分にあったものを探して色んな物を見たら、万人ウケした作品と少しづつ好みはずれていく。

それは悪く言えば、「オタクにありがちな知ってますアピール」であり、よく言えば「ライトな人が見てることの先を話」がしたくて、そう主張する。

話を戻そう。僕が饗庭淵さんの作品を語りたくなるのは

・絵「も」うまいし、新しいゲームやマンガ作品を見るたびに進化している。

・考えてること「も」おもしろい。特にカリスや、ブログ上に掲載された他のゲームへのレビューを見ると、僕なんかじゃとても追いつかないところまでよく見えてる。

・でも、業が深いから、常に「ありそうでない」ところに行って、他のゲームにはない(いい意味でも悪い意味でも)独自のポジションを作る。

という、追いかけているからこそ見えてくる共通の面白さから作品単位ではなく、作家単位で「この人のファンだ」と言った。

2作品3作品、あるいはブログなども見ないとわからない部分まで含めて語りたいから言った。

まず、絵について。「幽獄の14日間」ではすごく絵が見やすくなってる。

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うまくなったというか、安定してるというか…バランスがキッチリしてるというか。

作者のイラスト… を3作品見てるけど、ぼくはこの作品が一番好き。

絵自体に安定感が出てきた。同じように巨乳キャラ・服を着たキャラを書いても前ほどバランスが崩れなくなったし、あからさまに崩れてる絵がなくなった。

…いや、厳密に言えば、「崩し方」が綺麗になって、おっぱいに目が行く絵を書いたり、バランスがおかしい(二次元イラスト特有の巨乳の)描き方でも、絵自体に不快感とかやり過ぎ感を感じなくなった。

…前作のカリスまでは、イラストを貼る時に「絵のせいで、一部の男オタク向けのゲーム」と偏見を持たれないか不安だったけど、それが大きく改善されたように思う。

服のことを意識して描いてるキャラと、わざと服を無視してるキャラの描き分けがされてて、しっくり来るようになった。

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あとは、男性キャラを書くとそれはそれで違った持ち味が出るのが、黒先輩の頃からずっと「面白いなぁ〜」と思いながら見てる。そして、今回のも面白い。

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次に考えていることについて。

今回の「幽獄の14日間」は一見すると、「この作者にしては」ライトな部類なゲームに見える。もっと面倒くさいことが好きなイメージがあっただけに、意外だった。

だが、表面上はライトでも設定で込み入ったことを書いてみたり、手助けしてくれる聖霊の設定に凝ってみたり、ストーリーラインで「あれ?」という違和感を残すゲームにしたりと、細かい所でひねってくる。

差別化とか、面白いとかつまらないとか、打算的な話じゃない。

計算され尽くしたゲームバランスやライトな人でも入っていける要素を設けても、エゴとか作風とかもっとエモーショナルな爪痕がきっちり残るように作るのを忘れないところに、納得できる。

単純にオタクが好きそうなイラスト/フェチズムを追求してるとかそういうことじゃなく、ライトな中に「深み」がきっちりとしてるから「やってよかった」「ありそうなんだけど、ない」というゲームにうまくおとしこんでいるのよね…。

「深み」があるからこそ、のめり込む。 

「幽獄の14日」についてはこんなエピソードもある。

Normalモードをクリアする時には割と簡単にクリアできた。

しかし、Normalモードクリア後のhardモードでは、14日のうちの最後の1日までフル活用しても、最後の1体でギリギリの勝利だった。

本当に絶妙なゲームバランスをしてる。

しかも、そのhardモードをクリアしないと開放されないイラスト・エンディングも含めて、hardもプレイせずにはいられないような色々な仕掛けがしてある。

そして、プレイすると、hard限定のキャラが何人かいるため「プレイしてよかった」という気持ちになれた。

ゲームバランスの話をするなら、このゲームの特殊性にも触れねばならないだろう。

・セーブファイルが1つしかないこと

・寝床に入る以外に、MPが回復手段できないこと(HPも序盤は回復手段がない)

・しかも、Normalでは全回復の寝床も、hardではHPが半分回復に制限される

・MPを消費して何かを召喚する場合、敵が来るか味方が来るかがランダムなので計画的なプレイが難しい。当然、味方になる聖霊の順番やタイミングもランダム。

といった、RPGをやりこみ慣れてる人がよく頼るゲームのやり方(複数セーブ・回復キャラ/アイテムの活用・パターン化など)がやりにくい仕様だから、リソース管理ゲームと言っても、単純に効率化すればいいという話じゃない。

リスクヘッジも必要だし、運も味方につけないとうまくいかないため、hardのクリアはギリギリになる。

その難しめなhardのギリギリ感、やり終わった後に報われた気持ちになるエンディング、hard限定のキャラやキャラ同士の会話…この辺かな…。

hardをやってこそこのゲームはオモシロイので、是非hardまでたどり着いて欲しいよ。

アレもアレで業が深いゲームだと思うんだけど、黒先輩だけは書籍化してるのよね…。

なんかジブリが好きな人ほど宮﨑駿の業の深さに気づいてないのと共通したものを感じる。

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同じく饗庭淵作品から。凝った設定とダンジョンがとにかく好きです。

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