タイトルに「天下の大泥棒」とか書いちゃったけど、この作品に出てくる盗みの大半はスリ。
…しょっぱいコソドロを、しかも学校に行って教わって、免罪符を買ってからスリに励むという言葉にしてしまうと恐ろしくスケールのちっさそうなゲーム。
それも、スリをコマンド入力や読解力によって「スリが成功しそうなやつから狙う」ようなゲームでもない。
古い時代の大味のゲームで…一律に「確率」が決まってるから、スリが失敗するごとにリセットすればいくらでも成功しちゃうような作品。
…すっごい古いですよ!!なんと、2001年にリリースされたゲーム!!
…オレが小学生の時に今とほとんど同じフォーマットのフリーゲームがある事自体にすでにびっくりしたんだけど…そのぐらい古い作品。
その辺の時代のフリーゲームはおろか、インターネット情勢すらどうなったかも知らない。
そこで、こういう時に便利なニコニコゲームマガジンの「自作ゲーム大年表」を開いて、調べ直してきた。
ちなみに、ふりーむが2000年、フリーゲーム夢現が2001年。
ゲーム単体で言えば、シルフェイド見聞録が2001年。
レビューサイトで言えば、フリーソフト超辛口ゲームレビューもこの年。
ちなみに、僕は当時12歳。
バリバリの野球少年。
あの当時、うちにパソコン自体がなかったんじゃないか??
あったとしても、オカン・オトンしか使ってないぞ…??
要するに、現在の様式のフリーゲームやその界隈ができあがった当時の作品。*1
それも、20代半ばのやつはまだパソコンも触ってなかったか、ゲームがダウンロードできるだけのまともなマシンがないぐらいの時代にできたゲーム。
…つまり、骨董品です。
骨董品だから、作中の手描きイラストからゲームシステムまで全部古い。
一般的な言い方で言えば「絵柄が古い」で、ちゃんと言えば「顔・体の輪郭や顔のパーツの線が太い」といえばいいの?うまいんだけど…今見ると違和感のある絵柄。
これを先に言っておかないと、2016年現在にプレイするにはすごく人を選ぶゲーム。
それでもやりたい人はここからダウンロードしてね。
・ゲーム概要
『人の命と麻薬以外は盗んでよし!』
盗みを奨励する「盗賊の街」ミストを舞台にしたちょっと異色のRPG。
登場人物の(ほぼ)全てをターゲットにスリを行うことが可能です。
伝説の宝に日記帳、中華鍋まで盗品のバリエーションは豊富に用意しました。
このゲームでは盗みを重ねることでイベントが展開していきます。
敵と戦ってレベルアップ・・・といった要素はなく、どなたでも気軽にゲームを進めることができます。(作者ページより)
盗むだけじゃなくて、動物をさらってしまうこともできます。

のトップにある「リンクフリー」という死語がもう時代を物語ってるよね!!
ダウンロードはこちら
盗品から始まる謎解きゲーム
やってもやらなくてもいい要素でもあるが、このゲームの醍醐味だから語っておく。
ゲーム自体は
「盗んだ金額が授業料に達し、なおかつ課題がクリアできていれば、お話が進む」
ので、すごく簡単にクリアできる。
ただ、ハッピーエンドを見たい場合、念入りに街を探索しておかないと見つからないアイテムや、スリに失敗したらやり直しをしないといけない部分がでてくる。
神経質というか、几帳面さのいるゲーム。
冷静に考えれば、普通のアドベンチャーゲームのような進み方をする作品。
ところが、意外や意外に目新しく見えるような工夫が多いゲーム。
アイテムを集めるときに「盗む」ことが中心になったり、
盗んだものを換金・鑑定することからも話がスタートしたり、
盗む過程で知り合った人が終盤になって協力しあったり…
ゲームとしての目的やジャンルはありふれているが、それを新しく見せる・ありがちなテンプレートからはみ出すだけの工夫がすごいゲームだ!
そのために、お話や設定もきっちり作ってるし、それを前後に並び替えることで伏線が気持ちよく回収される構造にもなっている。
しかも、丁寧な作者はホームページ上にわかりやすい相関図やアナザーストーリーなどクリア後に楽しめるおまけもネット上に設置してくれている。
ゲームシステムとして見ると…どちらかと言うとありふれた作品。
でも、それをお話や設定の力で、「泥棒といえば思いつくメタファー」を盛り込んで、ガッツリと作ってるんだよなぁ…。
大枠のシナリオ自体はわかりやすく、特に序盤でなんとなく予想がつく。
でも、その過程や伏線の繋がりが緻密!!
絵柄も古いとは言え、絵自体はうまいから絵による演出も素晴らしくハマったパーツ・回収された伏線をうまくもり立ててくれる。
フリーゲームらしい、面白さ。いや、RPGツクール作品らしい面白さというべきかな。
お話の面白さや設定や演出の力で、いかに昔からあったものを目新しく見せるか。
技術自体はありふれてるから真似できるものを、真似できない形に持っていくか。
その辺がキッチリと示されたゲームだから、今でも十分にやる価値があると思う。
今でも…フクザツなゲームを作る作家さんや、作りやすいツールが出てきた現在でも、こうした作り方をする人はいるし、そういう人でも考え方次第で面白いゲームが作れる所がフリーゲームをやる方・作る方双方の面白さなんだよなぁ…。
ストーリーの成り立ちに「王」という立場が絡んでくるゲーム繋がり。
ちなみに、「冠を持つ神の手」 は庶民が王を目指すために教育を受けるゲーム。
一方、「盗人講座」は王が没落して、盗人を目指すために講座を受講するゲーム。
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クリアのしづらさや、難易度調整から言えば、盗人講座以上にイマイチなゲーム。
でも、キャラ設定と演出の作り込みがしっかりしてるから女性から大幅な支持を受けて異例の速さでコミカライズしたフリーゲーム。
*1:一応、アンディー・メンテが97年から活動してるから、それ以前からあるにはあったけど…97年時点でゲームをパソコンで落としてやってた人って…何者だよ!?