日本ハム奇跡の逆転優勝を語る上で大事なのは「5番田中賢介」である!!

日本ハムの逆転優勝について、報道からよく言われてる「球団最多記録の15連勝」の部分ではなく、終盤のギリギリの戦いを如何に制したかを突き詰めたい。

  • 大前提:ソフトバンクは例年、交流戦でやり過ぎて後半戦で失速する
  • ホームラン王を7番打者に据えた後半戦の日ハム打線

 

大前提:ソフトバンクは例年、交流戦でやり過ぎて後半戦で失速する

ファイターズが逆転優勝を決めた日に、よく野球の話をする人とこんな話をした。

「横浜にヤマを貼って追いかけてたから、クライマックスシリーズに出た次の朝には記事を書けた。(参照:横浜DeNAベイスターズがクライマックスシリーズに出場できた理由を監督・フロントの戦略から分析する!!

でも、パ・リーグはソフトバンク優勝で大方の予想だったから日ハムの記事を書こうにもいまいち自信がないから相談に乗って欲しい。」

とアドバイスを仰いだ所、意外な答えが帰って来た。

奇跡の逆転優勝とか報じられてるけど、そこがまずおかしい!

トータルで見たら日ハムはスタートダッシュに失敗した分巻き上げてるけど、ソフトバンクも例年のごとくスタートダッシュして例年のごとく後半で失速してる…いや、この時の失速が例年よりも酷かっただけ。なにしろ、今年には交流戦前までに力を出し切ってしまってる。

「例年?」

「そうそう、秋山監督の時にはすでにその徴候があったよ。」

9月・10月の月間成績をデータをさかのぼって探してみたところ、次のようになってた。「弱い」とまでは言い切れないが、やっぱりパッとしない事が多いね。

2010年
10勝10敗0分 勝率.500
2011年
23勝11敗3分 勝率.676
2012年
13勝15敗1分 勝率.464
2013年
14勝14敗1分 勝率.500
2014年
9勝14敗1分 勝率.391
2015年
16勝14敗0分 勝率.533

※2010〜2014年は阪神とソフトBが首位で9月に突入!最近5年の9、10月成績はどうだった? | BASEBALL KINGより引用

でも、もっと調査してみると…もっと昔から後半戦に弱かったみたい。

00年代には「クライマックスシリーズの呪い」と言われるほど、クライマックスシリーズになると勝てなくなる。

クライマックスシリーズの呪い – アンサイクロペディア

象徴的なのは主砲の松中信彦が驚くほどポストシーズンに弱くて、ネタにされてたというやつね…。
松中信彦 – アンサイクロペディア

でも、ソフトバンクは00年代も10年代も一貫して交流戦に強く、12回行われているなか6回も1位。そのぐらい前半に強い。

そして、今年の交流戦も「13勝4敗1分」で1位!例年にまして好成績。

しかも「セ・リーグが弱いから」ではなく、交流戦が始まるの5月から勝率が8割近くかった。

ところが、8月になって11勝14敗失速。

まさかの逆転負け…ソフト“マジック王手”の試合7連敗 ― スポニチ 

チームが調子のいい時に抜けたバンデンハークが8月10日に復帰したが…入れ替わるように9月には柳田・和田がそれぞれケガ。

9月の成績はわるいどころかむしろ持ち直した方ではあるが、前半のような「勝って当たり前」のソフトバンクではなかった。

致命的なのは主軸の内川・松田は30半ばというところ。
柳田がいないことで体力が落ちてきてる30代の選手がより活躍しないと回らなくなってしまった。

確かにソフトバンクの失速は例年の傾向でもある。

ただ、そこを計算してか、日本ハムは後半になってガラッとスタメンを変更。
ただでさえ、消耗しているソフトバンクをさらに削りに行くようなチームを作り上げた。

ホームラン王を7番打者に据えた後半戦の日ハム打線

スタメンデータベース」というサイトで今年1年のスターティングメンバーを振り返ると、日本ハムはかなり面白いことをしてる。

通常、野球のセオリーでは打てる打者は3・4・5番どこかに配置するのが基本。

ところが、日本ハムは今年ホームラン王まっしぐらのレアードをなんと後半戦では6番…ヘタしたら7番。
通常、最も打つ人が配置されるべき4番には規定打席到達者の中でワースト3に入るほど打率の悪い中田翔がほぼ固定状態。

この時、中田翔と一緒にほぼ固定状態だったのが「田中賢介」というベテラン選手。

でもこの人…正直言って、大谷・陽岱鋼・レアード・中田翔の誰と比べても、打ってない。

打率.272 本塁打2 打点53

なぜ、5番!?

納得行かなくて調べてみたところ… 彼の凄さは全然違うところにあった。

それは「出塁率の良さ」!!

その年によって出塁率の平均はまちまちだが…高くても.330。
しかし、田中賢介の場合、打率がそこそこでも出塁率は安定して平均を超える。
今年についても.361と出塁率が高い!
これは田中より打率が高い陽岱鋼よりも高い!!
それだけ、選球眼やカット打法などを駆使して 出塁率を稼いでいる。

その田中賢介を5番に置くと…打線が二段構造になる。

3番大谷4番中田翔を過ぎた後に、選球眼がいい田中賢介、6番にはホームラン王のレアード。(レアードが6番の時は7番に今年.374の岡。レアードが7番の時には陽岱鋼が6番に入る。)

7月の終わりから採用してるのがこの打順。

1、西川(出塁率盗塁No1)
2、近藤(または杉谷。犠打担当。杉谷については出塁率も高め)
3、大谷(打率3割。ホームランも20本以上)
4、中田翔(打率が低くても打点王。ホームランも25本)
5、田中賢介(長打力はないものの、出塁率・選球眼がいい)
6、レアード(本塁打王)→または陽岱鋼(打率3割近く、本塁打も14本)
7、陽岱鋼またはレアードまたは岡大海(41試合で打率.374)

さらに、9番にも中島卓也という出塁率が高くて、カット打法の名人で、なおかつバントもできる「シーズン前半や、短期決戦では2番打者を務めていた選手」もいる

後半戦、大谷の打者に専念したことで…シーズン終盤のぐったりしてる時に限って、1〜7まで気の抜けないような打線が立ちはだかる。

しかも、それはあらかじめ他球団が予想できたものではない。
前年度には大谷も打率がよくなかったし、田中賢介も5番なんかを打つタイプの打者では決してないから2番3番でしか使われていない。

15連勝した後、勝負をかけるべく考えぬかれた奇策がこれだ!!

これがじわじわと効いてきたのか、日本ハムの9月は15勝6敗2分とほんとうにいい。(8月の14勝12敗も悪くはないんだけどね。)

球団記録の15連勝とか、
大谷翔平の二刀流が両方ともうまく行ったとか、
増井を先発に転向させてその結果うまく行ったとか…

テレビで報道されてることも確かに大きい。

でも、栗山采配の真髄は長打力が少ない打者、一発があっても打率が低い打者も順番を並び変えて気の抜けない打者になるように、うまく並び替えてることにこそある

そこを野球のセオリーとかぶっ壊して、打線を二弾構造にして大谷と中田がダメでもまた次の回にも陽岱鋼とレアードが!
…これは気が休まらない!!

大谷ばかり…ちょっと気の利いたテレビでも中田・レアード・陽岱鋼など華のある人ばかりがすごいと言われがちだけど…そうじゃないん。

大谷を打者に専念させても投げる人がキチッといること。
攻撃面でも大谷以外の基盤がしっかりしていること。

この両方が揃っていたからこそ、大谷をその時々で一番おっかないところに配置できた。
・時にはマンガ顔負けのリアル二刀流
・時にはマンガでも見たことない二重構造の打線

その真髄が、後半の日本ハムの打順に現れているのではないだろうか…。

追記

2009年の巨人が近いことをやってたみたいなので、紹介。

1、坂本
2、松本
3、小笠原
4、ラミレス
5、亀井
6、谷
7、阿部
8、脇谷または古城または李承燁

加えて代走に鈴木!!

…もう、原さんはこのメンバーでWBC戦えばよかったのでは?

ただ、巨人が補強に補強を重ねて作った「最強の布陣」だからできることを日ハムはほぼ生え抜きメンバーだけでやってるから…すごいよ!!

それも、全部はできないけど部分的にできる人達を、徹底的に役割分担を区分けしてうまく配置してやってるからすごい。

理論を捨てたというよりも新しい理論を開拓してる感じだよなぁ…。

 

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