フリーゲーム「虚白ノ夢」で自らの存在意義を探してきた

 

書籍化されたホラーゲーム「虚白ノ夢」をプレイしてきた。

あらすじ

自らの存在意義を否定して身投げした少女、碓氷深白(うすい みしろ)。
そんな彼女が目を覚ますと、そこは天国でも地獄でもない、
『鏡の世界』と呼ばれる仄暗い空間だった。

「……この世界で鏡を探しなさい。そして、それを割るの」

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・謎を解きながら探索し、先へ進んでいくアドベンチャーゲームです。
・脅かし・流血などのホラー描写を含みます。苦手な方はご注意ください。
・行動・判断によっては即死します。
・エンディングは5種類、うちスタッフロールが流れるものは3種類です。

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虚白ノ夢:無料ゲーム配信中! [ふりーむ!]より

主人公のダウナーな感じの女の子が、「鏡の世界」の中にある鏡を生前の記憶を思い出しては、その鏡を割っていくお話。

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ふりーむ 虚白ノ夢

夢現   虚白ノ夢

書籍

 サスペンスだと思ってやったほうが面白いと思う…

ストーリーの中にある不安や緊張感やねじれ・こじれがとても良かった。

…これは僕も言ってるし、ふりーむで感想を書いている人を見てもストーリーを褒めている人は多いのよね…。

ネタバレし過ぎない範囲で言えば、深白の家族構成はかなり特殊。

その特殊な家族構成は自分の記憶からもうっすら分かる部分。

…と同時に、「鏡の世界」にいる他の人の記憶も見ておかないと、全体像が見えてこない。(つまり、ゲーム的にも終わることができない)

例えば、初めて鏡の世界に来た彼女に事情を説明した金髪ショートカットの子。

あの子はただのチュートリアルか?それとも…。

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ストーリーを軸として、それがこのゲームが「死にゲー」になっている要素につながっていたり、ストーリーを開拓するゲームの流れにつながっているのが、僕は面白かった。

…多分、この辺の部分を楽しむゲームであり、周囲の評価を見ても、この部分で納得出来ないと感じる人は少ない。

ホラー演出とエンディング分岐がやや面倒くさいのがキズ

書籍化されるクラスのゲームまで含めての話として…ホラーゲームの弱点はだいたい「ゲーム性」なんだよね…。

お話や世界観はいい作品が多い。

だから、人気が出るのもわからなくない。

…ただ、ゲームとしては次のような問題点が出てくる。

・エンディング分岐をしても、同じ話を何度も聞かされて耳タコだったり

・途中でエンディングが固定してすごく前のセーブデータに戻る手間がかかったり

・しかも、ミニゲーム・推理ゲームというよりは脅かすための初見殺しが中心のゲームでこまめなセーブをしないとゲームがやりづらいゲームで…山のようなセーブデータのどこにもどればいいかわからなくなったり…

・かと言って、RPGやアクションのように作業部分も能動的で動きがあるわけじゃない

…みたいな欠点がだいたいどのゲームでもある。

それは部分的には克服できるし、してるゲームもある。

ただ、虚白ノ夢はホラーゲームが持ってる弱点や限界が出たゲーム。

まず、やたらと初見殺しが多い。

驚くとか驚かないとかじゃなくて気がついたら死んでるような、初見殺しが多い。

その割に、頭を使って突破するパートはそんなに多くない。

ないわけじゃないから、「ゲームとしても面白かった」と言う評価も見かけるんだけど、物足りない人には物足りないのかも…。

ストーリーとの兼ね合いを考えれば、「納得できる方針」ではあるよ?

ただ、ゲームを操作する人間として、同じ所を何回か探索するような部分があんまり多かったり、テキストの繰り返しがいくつかあると…「うーん…」と言いたくなった。

…なんでこんな話をしてるかというと「実況プレイ動画や、本を読んで面白かったからゲームをしたいです」と言われそうなタイプのゲームだから。

それに対して「実況プレイ動画はつまるところ、繰り返しになる所、操作が重複する所を編集で飛ばせるけど、ゲーマーはそれを1つ1つやらないといけないけど?」と言いたくなるようなゲームだから。

…言い換えると、実況や本で読む分には良いゲームだと思う。

むしろ、実況→本という順番でストーリーや関係性をちゃんと補完しながら読むと面白い作品…じゃないかな??

くどいけど、真相さえわかれば納得はできる構造のゲームだ。

それだけお話をしっかり作れてる。

ただ、ホラーを死ぬこと・殺しに来てる人で表現しちゃってる部分が、表面上すごく安直に見えたり、それをゲームとしても初見殺しや「ガタガタガタガタ」という大きな音で表現する方に走ってるから…こんな疑問を持つ。

「え?彼女はむしろ生きてる(ややこしい家族関係による)人間の感情・執着の恐怖から身投げのに、(無慈悲に)死ぬことや血でホラーを表現するのはどうなんだろう…」

ホラー演出的な意味でも、お話を飲み込む意味でも、ゲーム上のホラー演出が嫌な意味で引っかかるんだよなぁ…。

理由がわかった今でも…しっくり来ないんだよなぁ。

ゲームとして飲み込みにくかったせいか、僕の価値観として深白(か、深白よりもねじれた人)に感情移入しすぎちゃってるせいか…。

お話とゲームのかみ合わせとか、プレイしながら感動を募らせていく積み重ねの面で考えると「合う人と合わない人が出ちゃうのかな?」とは思う。

…何度も言うけど、これはストーリーそのものが矛盾しているわけじゃないから、好みとか読み取る側の問題のお話なんだけどさ。

 おまけ:作者について

やや酷評気味だったけど、カナヲさんは僕の中では、「ゲーム以外の活動が最も面白いフリーゲーム製作者」の一人だから、この話をいれさせてください。

作者は「はじめての宿屋さん」「積層グレイブローバー」などのカナヲさん。

虚白ノ夢」で、書籍化も達成している。(おめでとうございます)

また、電ファミニコゲームマガジンでは「心霊写真使い涙歌」「被虐のノエル」を連載。

特に、「心霊写真使い涙歌」については「ライトノベル原作のフリーゲーム」という、見たことも聞いたこともない不思議な試みをしている。

…ここまででも、面白い。

でも、もっと面白いことが3つ。

1つはニコニコ静画で、マンガを連載してること。

自作ゲームのないところに女子高生は集まらぬ。 / カナヲ – ニコニコ静画 (マンガ)

1つはやたらとホームページを作りこんでること

てりやきトマト

いちいちバナーを作ってきたり、一部のゲームでは自分で攻略情報書いたり…手の込み方が多岐もわたるから、面白い。

最後は、Entyをやってること。

カナヲ – teritomaさんのパトロン・ファンになろう | Enty[エンティ]

ここも、イラストやらバナーやらきっちり作ったり、最新のゲームを入れたファイルには、パトロン限定のゲームの存在をテキストファイルで周知したり…。

ここまでやってるゲーム製作者さんがなかなかいないので、独自路線を貫き通して欲しい。ゲーム製作者さんはいいものを作っても作者自身がフォローしてもらえてない傾向がつよいから、そんな中でブランド?スタイル?そういうものを確立して欲しいと思います。

ゲームとしてプレイするなら「人を選ぶのでは?」と思うところがあるのですが、実況や書籍で見る分にはオススメのゲームです。

良かったら手にとって見て下さいね。

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