ソフトバンクにキューバ人の二刀流選手が登場したらしい。
球団関係者も「まさか」 ソフトB“二刀流”キューバ人がいきなり実戦デビュー | Full-count ―野球・MLBの総合コラムサイト―
…二刀流の話を聞く度に思うんだけど、二刀流の選手ってもっと増えてもいいんじゃないか?
というよりも、そもそも「投手ができる野手」「元々はそれなりに打てた投手」はたくさんいるし、両方できたような人が大打者や大投手になってるんだから。
イチローも王貞治も投手経験者だし、王貞治に至っては投手として入団してる。
「エースで四番」なんて言葉があるけど、高校野球までならそんなに珍しいことでもない。
子どものうちは野球センスがあるか、体格がいい人は積極的に投手をやらせてもらえるし、投手として足腰をキチッと鍛えた人が打撃でもいい成績を残す。
だから、投手経験のある大打者は多い。
それは今も昔も変わってないどころか大記録持ってるような人にも投手経験者はたくさんいる。
…でも、投手として輝かしい成績で、なおかつ野手として大記録の選手を紹介しようと思うと、ちょっと昔に遡る。
世が世なら王貞治はハンカチ王子みたいになってたかもしれない…。
投手出身で大成した野手の中でも最もわかりやすいのは王貞治だと思う。
実際センバツ優勝投手だし、高校時代はノーヒット・ノーランだってやってるし、投手として入団してる。
打者に転向したのは当時の監督から「投手としては大成しない」と転向を命じられたため。
これは本人も「投手としてのピークは高2」と言っているし、成績や周囲の評判もそれを物語っているからしょうがないといえばしょうがない。
もし21世紀だったら、投手として大記録を持ってる超高校級投手に打者転向なんかさせたらボロクソにテレビや新聞で叩かれるだろう。
だから、なーなーに投手をさせて辻内や斎藤佑樹みたいにぼろぼろになって、家業のラーメン店を引き継いでいたかも…。
テレビといえば、テレビではよく王さんについて語弊のある情報を流すことが多い。
というのも、「一本足打法があったから王貞治はアレだけ打てた」と語られがちだけど、実際には元からそれなりに打てた。
新人でホームラン7本は(新人なら)少ないわけでもないし、2年目には本塁打17本でチーム最多。ただし、三振がやたらと多いロマン砲状態。
そりゃ、一本足打法を確立したあとの方がすごいのは言うまでもないが、打撃の土台自体は入団当初からできあがっていたという…。
桑田真澄とか言う好打者
次は逆パターンである「投手なのに、すごく打てる人」について紹介する。
これの代表例は…桑田真澄じゃないかな?
甲子園の春夏通算本塁打で、清原に次いで2位。
プロ入りしても、3割前後打ってる…。投手だから、打席数自体は少ないけど、「ヘタな【代打の切り札】よりは桑田のほうが打つんじゃないか?」と思う。
いや、実際に「代打桑田」という采配が2002年の原監督時代によってなされ、桑田はバスターでレフト前ヒットを放っている。(しかも、投手交代のためじゃなくて、代走が送られてるから打つためだけに代打をやってるところが余計に面白い)
当時のニュースでは奇策扱いされてるけど、2002年の桑田の打率は.294。
代打の切り札として十分やっていけるぐらいに打率がいいのだから、実は奇策でも何でもなく、順当な采配。
他にも変わり種として、「投手の気持ちを学ばせるために二刀流に挑戦」という話が新庄剛志にはある。
これは、当時の監督である野村克也が選手時代には投手や配球を知り尽くすことで大成したこと、新庄がものすごい強肩で投手を本気でやれば150キロ以上の豪速球が投げられると期待されたことから来ている。
新庄の場合はケガの原因になってしまってあまりうまく行かなかったんだけどね。
もちろん
「貴重な投手に余計なケガはされられない」
「野手も投手もやったら膨大な練習量になるから、そんなにこなせる人はめったにいない」
というのもわかる。
でも、実際問題できる人は両方できているし、できているにもかかわらず、野球オタクや当時のファン以外はその活躍をあんまり知らないと言うのはどうなのかな?と思う。
シルバースラッガー賞を日本にも作って欲しい
シルバースラッガー賞とは、簡単に言うと「ゴールデングラブ賞の打撃版」。
守備位置別で打撃に優れた選手を各チームの監督、コーチの投票で決定する賞だ。
もしこれがあったら、桑田真澄は絶対に表彰されていただろう。
もしこれがあったら、「投手=打てない」みたいな変な常識を前提にしたスポーツ報道も減ると思う。
…これがシルバースラッガー賞が必要だと思う理由の1つ目。
そして、シルバースラッガー賞があるとあと3つ恩恵を受けるポジションが出てくる。
センターラインは守備優先だから、どうしても打撃成績が低い。
センターはそうでもないけど、捕手・二塁手・遊撃手はどうしても打撃よりも守備になりがち。
二塁手についてはたまたま山田哲人と菊池涼介が出ているから、今の野球では珍しく二塁手は打てる事になってるけど…歴代で見ると打って守れる大型二塁手ってそんなに多くないし、そういう人はだいたい話題になる。
遊撃手もそうだけど、打撃で注目される選手がいるときの方が珍しいから、タイトルが取れるクラスの人がいないときでもスポットが当たるようにしておいてほしい。
そして、もっとポジション別の打撃の賞ができたら、恩恵が大きいのは捕手だ。
去年、「打てる捕手」と言ってもいいぐらいの成績を収めたのは阪神の原口ぐらい。
そして、その原口も本塁打11本だから、他のポジションなら本塁打11本は「そこそこ」。
しかも、今年の原口は一塁手にコンバートしてる。
ただ…去年の成績を目安に言わせてもらうと、一塁手で本塁打11本のレギュラーなんかいない。怪我で出遅れた阿部以外はだいたい20本以上打ってる。
もちろん、昔と野球が変わった関係で捕手の仕事が昔に比べて増えてるから、「最近の捕手はダメだ」という話ではない。
昔から打てる捕手自体珍しいし、最近はそれがもっと出にくい環境になってる。
そして、総合的な成績しか見られない現状ではその問題が埋もれがちだから、ポジション別の賞があると面白い。
二刀流もそうだけど、変わっている選手や面白い選手を取り上げようと思ったら、その人の先駆者に当たる変わった人のデータや前例で「そういう人がいてもいいじゃないか!」「いないからもっと増やそう」といえる環境が大事。
大谷の登場以降、少し打てる投手を見つける度に「二刀流」とか、「マエケンがチーム初の本塁打」とか騒ぐようになったけど…元々は打てるような人が投手やってることは多いし、今まで注目してこなかっただけ。
ただ、ちゃんとデータや表彰と言う形で表に出してこなかっただけで、そこを表に出すともっと面白い選手や野球の見どころは広がると思うのだが…。
大谷の才能と努力は桁違いだと思うよ?でも、大谷ほどじゃなくても打てて投げられる人が才能を注目されなかったり、活かしきれてない現状は改善されてもいいと思うのです…