有効求人倍率を徹底解説するから、じっくり読んでけ!!!

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有効求人倍率がバブル期以来の水準になっているらしい。

有効求人倍率、バブル期超え 4月1.48倍 :日本経済新聞

テレビや新聞の経済ニュースってなんでこんなに大雑把なのかな??

有効求人倍率ほど「それ単体から汲み取れることが少ない経済指数」が、やれ上がったの下がったのとバカみたいに大騒ぎするのかな…??

正直、理解に苦しむ。

そもそも、有効求人倍率とは…。

公共職業安定所(ハローワーク)に来た「求人数÷求職者」。

そのため、民間の求人媒体に掲載されているものなどは含まれない

そして、「求人数」はパート・アルバイトも正社員も両方ある。そのため、ニュースでよく話題になるのは非正規雇用も合計したもの。

データは厚生労働省から公表され、業種別・雇用形態別など様々な詳細なデータも見ることができる。

一般職業紹介状況(平成29年4月分)について 厚生労働省

クセモノなのは「ハローワークの求人」が基準になっていること。

そのため、

・採用にお金をかける資金力がある企業
・長く続く人の傾向がつかめていて、その人達にうまく繋がるパイプがある企業

の求人はあまり反映されていない。

本当に、入ったら楽しく・長く勤められるような、生きるために働くという前提が整っているような企業はその数字では表せていないかもしれない。

どんな求人も、雇用形態や業種問わずごちゃまぜなんだから…。

だから、ネットでは次のような批判が飛び交う事が多い。

 

ハローワークは事業者にも、求職者にも「火中の栗」

全部が全部「火中の栗を拾う」ような酷いものばかりでもない。

しかし、確率論として悪意のある言い方をさせてもらうと

・周囲や同業者のツテ、お金をかけた求人広告で人が集められない企業
・そもそも、民間の求人媒体に人を載せるお金がない企業
・それどころか、ハローワークの紹介状を経由することで補助金を貰いたい(大した額ではない補助金をいちいち気にするような)企業

の求人ばかりが積み重なった上で「有効求人倍率」だから、仕事が増えたからといっていいとも限らない。

誰もが知ってる日本の大企業でも、GoogleやMicrosoftでもいいよ。

上の上の求人が…もし公表されたら誰もが入りたいであろう求人が、ハローワークで人を募集すると思いますか?

…そもそも、上の上の求人を出せるような企業ならハローワークで誰かれ構わず呼ぶような状況に陥る前に、人を雇う手段があるはずだよね…??

もちろん、例外はある。

将来、上の上になる会社が「今忙しいから猫の手も借りたくてハローワークを使った」こともあるかも。でも、今はまだハローワークに頼るような会社なわけで…。

あるいは、「倫理的・体力的・職場的に抵抗のある業種だけど、うちは未経験者歓迎で、業績もよく待遇もいい。」という仕事もあるだろう。

でも、それはその時点で火中の栗を拾う側面があるからなぁ…。

…もちろん、求職者側にも同じことが言えて、「周囲のツテ、民間の転職サイト、各種学校では職が見つけづらい人」がハローワークを頼るわけで…。

もちろん、(経験を積ませる場所がないことで悩んでるのに)経験がないとか、年齢で引っかかるとか本人にはどうしようもないこともあるから全部本人のせいではない。

でも、過去の栄光・将来の可能性ではなく、今を見れば「雇いにくさ」がある人がどうしても集まってしまうわけで…。

そうなると、お互いがお互い「火中の栗を拾う」ような形になりやすい。

有効求人倍率はあくまでも、「ややこしい求人」が増えた・減ったの話。

それも、細かい部分を検証するわけでもなく、単年の全体の数値だけを見て上がった・下がったとニュースにしているマスコミ各社の報道には何も意味がない。

有効求人倍率から読み取れること・読み取れないこと

今回の有効求人倍率を見る時に注意しないといけないポイントは主に3つ。

1、正社員の有効求人倍率はまだ1を超えてない。

今回、マスコミで話題になった有効求人倍率「1.48」は正社員のものと、パート・アルバイトの合計。

正社員だけの求人だけを見ると、0.97。

ただでさえ、「ややこしい求人」が集まるのに、求職者の数よりも求人数が少ないのか…。

それも、問題だけど、正社員と全体の差をグラフにするともっと大きな問題が浮上する。

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有効求人倍率がバブル期超え 正社員だけみると…(ハフポスト)

正社員のグラフが途中からになってる理由はあとで説明するとして…

まず、好景気になっても、正社員よりもパート・アルバイトの求人ばかりが増える。
これはリーマンショック前も、アベノミクス以後も同じ傾向を示している。

そのため、「有効求人倍率が増えてる=アルバイト・パートの求人の急増が全体の数字を押し上げている」というだけで、実は長期的に雇用される人は数値ほどは増えてない。

好景気で少しでも増える方が良いのだが、テレビ・新聞で大騒ぎしているほどではない。(使い捨て労働者が増えてるだけ)

結果として、格差は広がる方向へ行ってる。

すごく雑に「ピケティの指摘」について説明すると、この図がわかりやすい。

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実はみんな読み切れない トマ・ピケティ『21世紀の資本』を簡単図解 恥をかかないために(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

これは、株とか投資をすれば、なおさらわかると思う。

2012年時点の日経平均株価は8000円~9000円台。2017年…今日の株価は19000円台。

好景気になったことで資産家たちに来る恩恵は資産が倍やそれ以上になること。

でも、好景気になって増える求人は時給が10円20円高い安いの世界。

それも、景気が悪くなったらクビになるかもしれないような雑な求人ばかりが増えるため、好景気になっても恩恵は驚くほど少ない。

これを、ピケティの数式で言うなら

r(資本収益率)>g(経済成長率)

これだけ。

ただ、これを丁寧に説明すると長くなるから詳しいことは「21世紀の資本」の訳者が作ってくれたあんちょこをどうぞ。
ピケティあんちょこ、あげよう。 – 山形浩生の「経済のトリセツ」

2、バブル超えとか言ってるけど、実はバブルとの比較が…できない。

マスコミ各社が「バブル超え」とか書いちゃったせいで、怒りっぽいネット民がすごい剣幕または、ため息のような愚痴で反論をしている。

この人達の言いたいこともわからないわけじゃないけど…問題はそこじゃないんだよ。

ネットで「勉強しようぜ」と言ってるけど、実はこの人達もバブル時代の正確な数字は持ってないんだよ…。

まず、「バブル時代の正社員の有効求人倍率のデータがない」から比較ができない。

正社員のデータも別途集計・公表される様になったのは2004年の11月からなので、バブル期の求人倍率がどうだったかは実は誰もわからない。

バブル期超えと報じた日経も、ネットで「数字だけ帳尻合わせただけで俺達のほうがバブルよりもしんどい」と喚いている人も、両方ともバブル時代のことはあんまり正確には知らない。

ほんとそう!

数字が出てきたところで、バブル期とは内実が違いすぎるから比較に意味がない。

バブルを超えたと報じるのも意味がないし、ネットで反発するのも両方とも無意味。

バブルの時の方が良かったことも悪かったこともあって、それは今と違う。

社会的背景も、産業構造も違うから何の意味もない。

3、求人が増えているのは、「きつくてやりたがらない仕事」ばかり

ニュースにもあるし、厚労省のデータにもあるのだが、増えているのは運輸・製造・建設といったお仕事。あとはアルバイト・パートが多そうな仕事。

特に建設はオリンピック特需が原因で短期的に増えているものだし、運輸については産業単位で赤字な中小企業が多かったり…長く働くには向かない、キツい割に見返りがキチッともらえる頃まで働くには優秀さが問われるような仕事ばかり。

本当にこんな感じだから困る。

ITも求人は増えているし、サービス系も増えてる。

ただ、それは「求人」が増えてるだけで、ホンマに働き続けられるかどうかは別問題。

厚生労働省はデータを出しているだけだからなぁ…。
どちらかと言うと有効求人倍率で一喜一憂するマスメディアの方がずっと問題。

でも、どうしようもない求人や法律違反の企業を野放しにしてきたり、労働者を泣き寝入りさせてきたのは労基署…つまり、厚生労働省の出先機関だからねぇ…。

ただでさえろくな求人が来にくいハローワークを、さらに「ロシアンルーレット」顔負けの人材斡旋サービスにしてるのは広い意味では厚生労働省だからねぇ…。

そう考えると、有効求人倍率で盛り上がる度に「大本営発表」みたいに見える人の気持ちもわからなくはないなぁ…。

興味が湧いた人はどうぞ。専門書だから分厚いし、読むだけのタフネスがいるけど、収穫は大きいはず。

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