このマンガを手に取ったきっかけはこのツイートでした。
とりあえずJリーグ漫画の傑作『マネーフットボール』読んどこうぜ #Jリーグサポが巨人にアドバイス pic.twitter.com/H1zLp5CfyF
— ゆー@magneter (@neccoUK) 2017年6月8日
というわけで、今回はサッカーマンガ「マネーフットボール」を紹介する。
やっていること自体はJリーグをお金とデーターの側面から切り取る「Jリーグ版グラゼニ」であり、「サッカー版ラストイニング」(※ラストイニングはキャッチャー出身監督が、ID野球を駆使して選手の育成と甲子園を目指す高校マンガ)。
ただ、サッカーでお金やデータでスポーツを語るような作品をやると、スケール感が違う。だから、夢があって面白かった。
この記事では、サッカーをデータから見る面白さよりも、サッカーを取り巻く環境について書かせてください。
データ的な面白さは読めばわかります。
でも、サッカーというスポーツが持ってる様々な性質が、サッカーマンガを読む上で
格差が大きいからこそ、夢も大きいのがサッカーの世界
まず、クラブチーム同士の格差が大きい。
マンガで属しているチームはJ2でかつ、愛媛県の小さなチームだが、上に上がるためには、自分達よりも金持ちな都会のチームとも戦わないといけないから、お金の問題が切実になってくる。
野球の場合は、プロ12球団で一番お金を出しているソフトバンク(55億)と、一番低予算な中日ドラゴンズ(22億)は約3倍。
ただ…サッカーの場合は、J1の中だけで4倍。
2015年のデータでは1位が浦和レッズの20億円、最下位がモンテディオ山形の5億。
ちなみに、マンガの舞台はJ2。そして、J2の予算格差はなんと7倍!
2015年のデータでは1位がセレッソ大阪で、最下位がザスパクサツ群馬。
参照:サッカーコラム J3 Plus+ 【Jリーグ】 「人件費が高いクラブはどこか?」を調べてみた。~1位は浦和レッズ、2位は名古屋グランパス、3位は鹿島アントラーズ~
そして、サッカー選手の年俸は、日本でもらえるのは最高でも1億5000万円程度。
2017年 Jリーグサッカー選手 年俸ランキング|サカマネ.net
一方、海外に出ると…日本人選手でも、日本で稼げる金額の倍以上稼ぐ選手が出てくる。
2014年-2015年 サッカー日本代表「年俸」ランキング|サカマネ.net
例えば、本田圭佑の2014年の年俸は7億7000万円だが…海外で活躍すると日本で出してくれる5倍。
2013年のものを入れてもいいなら香川真司の9億2000万円というのも、かなりのもの。
2013年 サッカー日本代表「年俸」ランキング|サカマネ.net
…格差もでかいけど、夢の大きさもでかい。
野球にはこんな大きな夢がなく、(ヤクルト、広島、ロッテを除いた)大半の球団は5億円プレイヤーになるチャンスがあるから
「何が何でも海外でプレイしたい」
「何が何でも有名なチームに行かないといけない」
というサッカーほどのハングリー精神は描かれてこない。
しかも、サッカー選手の方が選手寿命が短く、野球選手の方が長く、30後半のおじさん達も大活躍しているから、なおさら「若者がハングリーに飢えてる描写」はプロ野球のマンガではサッカーほどではなくなる。
この作品「マネーフットボールの魅力」はサッカー選手が短命で、ピンキリだからこそ、サッカー選手は夢も緊張感も強く持っているというところ。
しかも、主人公は金持ちクラブから、 貧乏クラブにレンタル移籍して「このままだと本当に貧乏になる!ヤバい!!」というところからスタートしてるから熱血漢な主人公をさらに熱くしていて、読みながら熱が伝わってくる。
しかも、熱血漢な主人公がデータ主義なチームメイトや、コーチに恵まれることで、自分のサッカーそのものを見直しながら進んでいくから、スポ根モノでかつ、オタクが好きなデータ系雑学スポーツマンガでもある所が面白い。
パラグアイにサッカーしに行った同級生の話をさせて
大きくネタバレをするが、このマンガの最後の話は「内戦が起こるような国で、主人公がサッカーをしながら、【もーやだこんな国】とか言ってる話」で終わる。
でも、僕にはこの話がギャグだとは思えなかった。
というのも、このマンガのラストを読んだ時に、自分の同級生のことを思い出した。
僕は高校1年生まで、神戸のサッカーの名門校にいた。
そのことが縁でサッカー部員と一緒に授業を受けていた。
高校2年生以降は引っ越してしまったし、その後連絡を取り合ってたわけでも何でもないんだけど…彼らの事がふと気になって、学校を出て何年も経ってるのに、検索したことがある。
「勉強にも興味のなかったサッカーバカのあいつらはどうしてるだろう」
今思えば…平凡な普通科の学校に転校した後だからこそ「俺にはサッカーがある」って言えるだけ彼らの方が尊敬できる。
警報クラスの雷雨の中で、サッカーボールを蹴っている姿を見た時に、とても衝撃を受けたのは今でも忘れられない。
だから、数年経って…高校も大学も卒業して連絡も取ってなかったし、今連絡をとっても俺は何を言えばいいかもわかんない。
そもそも、連絡取る資格も自分自身にないと思う。だけど、気になったから調べた。
そるとその中の1人…僕が高校時代からすごいと思ってた人がマネーフットに出てくるカジ(主人公)みたいな人生を本当に歩んでた。
そいつはパラグアイとかオーストラリアまで行って、プロとしてサッカーを続けてた。
結果、途中日本のチームとも1度だけ契約にこぎつけていたが、また別の海外チームに挑戦していた。
マネーフットボールで…紛争地域で苦労しながらサッカーするカジを見てたら、その同級生のことを思い出す。
同時に、マネーフットボールと言うマンガがあったから同級生の生き方が人々に理解されるような気がして嬉しくなった。
サッカー選手は世界規模の争っていて、だからこそ格差も夢もあるすごくハングリーな世界。
そこにはデータの面白さもあるし、データの中にある選手の生活や待遇問題を突き詰めていった結果、大局的な戦略も見えてくるし、人間ドラマもある。
データで突き詰める面白さがあるから、感情的なことも見える。
データと感情、ハングリーな勝負と愛情、チャンスと絶望感…見えてくる。
とても視野が広がるマンガでした。