農水省が出しているPDF資料「日本酒をめぐる状況」によると日本酒の消費量は昭和45年から3分の1にまで激減してる。近年では日本酒どころかビールさえも減少し、リキュールやワインの時代になりつつある。
話の発端
昨日は接客業はつらいよ! あけすけビッチかんどー日記!の管理人のかんどーさんにブログレッスンをした。
レッスンの代金としてご飯をおごってもらうことが恒例となっていて、今回はトークも色々することにしてたので、昼夜両方奢ってもらう約束をした。
レッスンするとは言え、かんどーさんも読者1300人以上を抱える一大勢力。
そのため、レッスンも食事会も含めてほとんどが「伝わる人にしか伝わらない細かい雑談」に時間を割くこととなった。
自分のブログ・文章ライフとどう向き合うか、
迷いがあることには何を基準に考えていくか、
小手先ではない観察力や文章力をどうやってつけるか
そして、「古いものの中に新しいものをどうやって融合させるか」
…そういう雑談をした。
パソコンを使って説明することが少なかったから、その時間の半分は行きつけのお蕎麦屋さんでの雑談。
行きつけのそば屋:川崎で美味しい蕎麦が食べたくなったら「手打ちそば たか」へ行け!
ランチで利用し気に入ってもらえたので、ディナーでもこのお店を利用させていただいた。
かんどーさんはビール、僕は日本酒を飲んだ。…そば屋だし。
色々注文して料理と一緒にお酒を嗜むうちに、かんどーさんは
「そば屋のおつまみにはやっぱり日本酒があう!揚げ物はいいんだけど、和食の繊細な料理には日本酒がよく合う!!」
と気づいた。
そこから、僕が日本酒を頼む度に、コップの下に敷いた小皿にこぼした日本酒をかんどーさんが飲むようになった。(多くは飲めないから、量はそのぐらいでいいらしい)
このかんどーさんとのやり取りで気づいた。
俺「日本酒離れとは実は和食離れなのではないだろうか…」
かんどーさん「!?…そうだと思う!!」
日本酒の消費量が多いのは基本的に米どころ
かんどーさんは「九州ではお酒を飲む文化があるから、離れてないと思う」と話してた。(※九州出身)
本当かどうか、調べてたら、こんな統計が出てきた。
1人あたりの清酒の消費量の都道府県ランキング – 都道府県格付研究所
そうだよね~
九州は焼酎の文化だから、実は日本酒の消費量は少ない。
逆に、焼酎の資料を見ると九州が多く、東北が少ない。
北陸・東北が多い理由は
・米どころで、日本酒の産地だから
・中央に比べると飲食店が増えにくく、「食の欧米化」が進みきらないから。
だと思う。
情けないのは僕の出身地である兵庫県。
というのも、兵庫県は実は日本酒の名産地。
醸造好適米としてトップシェアを誇る「山田錦」を最も多く作っているのは兵庫県です!!
小学校4年生の時に「わたしたちの三木市」という社会科の教科書の中に山田錦の話は出てくる。
そのため。兵庫県の農業の文化が残ってる播磨地区の人達なら、小学生でも「兵庫県は日本酒の一大産地」だと知ってる常識中の常識。*1
中学以降は神戸に引っ越すが、神戸の灘区・東灘区は日本酒の有名なブランド(白鶴・沢の鶴・大関など)がある。
だから、兵庫は間違いなく日本酒文化!!
…でも、悲しいことに兵庫県での日本酒消費量はいまいち…。
都会はビール!兵庫なんか牛までビール!!
「なんでそうなのか?」というと…食が欧米化して、ビールばっかり飲んでるからです。
兵庫県出身だから、県外で暮らしている今でも兵庫の日本酒を頼むようにしてる俺みたいな人は、少数派。
当の兵庫県民はビールばかり飲んでる!噂によれば人間どころか、神戸牛までビール飲むというから、もうすごい!!
いや…。
兵庫に限ったことじゃなく、都会はビールなんですよ…はい。
1人あたりのビールの消費量の都道府県ランキング – 都道府県格付研究所
もうちょっと踏み込んで言えば、飲むお酒だけではなく…食べるものも、欧米の食文化の影響を受けちゃっているんですよね…。
だから農水省はこういうデータも出している。
大切に伝えたい。わたしたちの「和食(washoku)」(2):農林水産省
「野菜を350グラム、瞑想、運動こそが重要」みたいに言われる*2ご時世だけど…平成12年時点で日本人は1日に野菜300グラムすら取らなくなっているんだねぇ…。
一方で、肉や乳製品は倍増。
そりゃ、日本酒に合わせにくいから、日本酒飲みませんわ…。
もともと日本酒自体がそういう飲み物じゃないし…。
結果、日本酒が生き残る道はこの3つになってしまった。
・肉や乳製品にあう日本酒を作る
・日本酒を和食文化が浸透した地域に輸出する
・女性や若者などあまり日本酒を飲まなかった層の開拓
…これだけではないと思うけど…そもそも和食を食べない人に普及するとなると、昔からあるブランドや、価値基準がそのままってわけにはいかなくなる。
そのことを理解してないと日本酒を普及するのは難しい。
食文化は生態系なのだ!
だから、どこかにほころびが出たり、新しいものが入ってきてしまうと、周りも影響を受けて古いものは形を変えるか、滅びるかを迫られる。
日本酒離れは和食離れ及び農業問題が重篤になって現れたものなのかもしれない…。
ある意味GHQ的な政策、バブル的な西洋かぶれの弊害
GHQがパン食を普及しようと話をちょくちょく見かけるが…発想自体は正しかったと思う。
…というのも、食事が別の国のモノに染まると、それに合わせたお酒や食器、下手したらうんちくや専門家まで輸出できる。
ただ、昭和45年時点ではまだまだ肉の消費が少なかったり、乳製品もまだまだ普及途上だったから、GHQの政策が成功したかと言われると…足りないと思う。
むしろ、深刻なのはバブル期に浮かれて「西洋的なものに手を出すことこそイケてる」と意識してた人達。
彼らの時代にに乳製品とビールの消費量が加速度的に伸びた。
やつらは海外から色んなものを買い漁っているつもりだったかもしれない。
けど、長い目で見ると自らの文化やルーツを売り捌いて、新しい文化を買っただけ。
それも、新しい文化に対する含蓄や魂まで浸透せず、安っぽくなっただけだと考えると「本当にヤバい時代だったんだなぁ」と後世から見た僕は首を傾げる。
気持ちはわからなくもないよ?
一人暮らしが増えた結果、家で魚さばく・処分するのは大変だから、「日持ちするし、調理も簡単なお肉の方がいい」という意味で、僕も家ではお肉に頼ってるから…。
理想は、毎日魚と野菜自分で作って食いたいけど、そんな体力も調理スペースもお金もないよね…。
なるほど。「食文化は生態系」で、同時に「食文化はライフスタイル」だ。
多人数で暮らして、家に家事担当の人(奥さん、お母さん、女子力の高いヒモ)がいたら、もっと変わってたかもしれない。
けど、日本的なライフスタイルが崩壊すると同時に、食文化も「肉料理や、中華料理の方が手軽じゃん!」と言わざるをえないわけで…。
その気持ちがわかるから、頭ごなしな批判はしづらい。
ただ、安易に保存環境も整えられない人がワインのうんちく語るような成金趣味には断固反対かな…。
保存環境というと、美味しんぼに「日本酒の保存環境をキチッと整えている所はすごく少ない」なんて話もあったよなぁ…。
美味しんぼが正しいかどうかはともかく、みんなが当たり前に知っていた伝統みたいなものは、一回ぶち壊れると元に戻すのは難しい。
形だけ守ってる人ばかりになると、本当の意味で戻っていくのは大変。
食文化だけの問題なら「時代ですな」で済むよ?
でも、食文化が死ぬごとに、地場産業も死んでいく。
そう考えたら、かなり深刻な問題だと思うんだよなぁ…。
P.S
こっそり応援している日本酒専門ブログを貼っておきます。
「日本酒について興味はあるけど…」という人はよかったら読んでみてください。
ついでにこれも。興味がある人は是非どうぞ
*1:知らないやつは小学校4年からやり直してください