フィクションに於けるリアリティ、説得力の強さと出し方

リア友の日本史オタのやつと秋葉原のマンガ専門店を物色している時にこんな本を見つけた。

特におすすめされてたわけではなく、ただ目の前を通り過ぎた時に、日本史オタクでかつQMA勧めた友人が

「イザベラ・バード!!日本奥地紀行!!!」

と、知識を連呼した。

参照:イザベラ・バード – Wikipedia

僕は歴史オタってわけじゃないけど…学生時代に社会科科目に強かったせいで

「歴史・地理・政治経済について知らないことがあるとなんか負けた気がする」

的な変なプライドと底から来る興味で、すぐさま購入。

当時、47歳のイザベラ・バードと、ガイドの伊藤鶴吉が、かなり若く好感が持たれやすいキャラになっているところに対して賛否両論あるけど…内容はかなり忠実。

また、忠実にするために、思い切った表現もしているし、今の人が見たらショッキングに感じることも生々しく描いている。

その辺がすごく気に入ってる!!

強い元ネタがあるフィクションは、アレンジを加えても強い。

日本を絶賛する番組やマンガ…例えば、Youは何しに日本へ?とか、テルマエ・ロマエ的な

「面白おかしく、みんなが受け入れやすいところだけ切り取りました」

という感じがないところが僕は好き。(アレはアレで面白いけど)

一般的に知られている作品だとJIN-仁-に近いかな…。
約200年前の日本…それも「途上国としての、辺境地の日本」を扱ってる作品。

あるいは、クレイジージャーニーでアフリカに行ってやってることを、江戸時代にイギリス人が日本でやってる。
それも、当時の(都会育ちの)日本人でさえ受け入れがたいほどの辺境の地まで足を運んでる。

原作や元ネタ、文化的な下地…それが固まっている作品なので、骨太で面白かった。

そして、僕に対してコメントしてきた人は、同じ理由から来る面白いコンテンツに「仁義なき戦い」を挙げている。

仁義なき戦いもドラマや映画として有名だけど、元々はヤクザの獄中での手記をベースにしたノンフィクション。

原型がしっかりしているフィクションは緻密で、受け手に合わせて取り繕った部分が減るため、リアリティやその時の考え方が残ったまま作品になる。

その強さがすごい!!

 海外ドラマが面白いと感じるのも、実は同じ理由だと気づく

似たようなことが、海外ドラマでも起こっている緻密さにも見られることに気づいた。

例えば、メンタリストというドラマを見ていると、様々な文学の引用がある。

白鯨とか、シェイクスピアとか色々あるんだけど…メンタリスト自体の影響はホームズではないだろうか?

ホームズの影響だと感じたのは、メンタリストの関連動画としてAmazonの画面上に表示されていた

「ホームズこそ、現在の科学捜査の原型ではないか?」

という検証がなされたドキュメンタリー。

そのドキュメンタリーには「現場を残す大事さ」「現場から仮設を組み立てていく手法」がホームズ的だと言われ、メンタリストでも必ずそういうシーンが入っていた。(一番すごいものだと現場と目撃者を見ただけで犯人を当ててる)

同時に、「ホームズ以前の警察官は、科学捜査ではなく証言を取ることや、それらしい人に自供させる(落とす)ことに重点を置いていた」という話も出てきた。

この対比は海外ドラマを見る上では知っておきたいこと!

というのも、メンタリスト以外にも、ホワイトカラーという刑事ドラマを見ていても、実は探偵役の人はホームズ的で、地方の下流の警察官は腕力で犯人をあぶり出す昔ながらの人…という対比でできていることが多い。

ホワイトカラーやメンタリストはまだエリートな捜査官を舞台にした話だから冤罪や冤罪に巻き込まれる話は少ない。
でも、プリズンブレイクというドラマは、状況証拠でゴリ押しするケースがとても多く、冤罪で逮捕されるためにいるようなキャラさえ存在する。

冤罪・冤罪にしてでも事件を終わらせたくて尋問するシーンが出てくる時は総じて科学捜査なんかできなそうな、頭の悪い現場の保安官が出てくる。

エリートな警察官の元ネタをホームズ、ホームズ以前の(ホームズに登場しうる)警察を元に保安官ができたようにビジュアル的にも、キャラの手法や性格から見ることができる。

ホームズ自体はフィクションだけど、ホームズのモデルになる人が二人いる。

一人は観察力の鋭い外科医で、その人は法医学的なこともやってたということから法医学的な要素がホームズに組み込まれた。(筆者のコナン・ドイル自身も医者だし)

もう1つはコナン・ドイル自身。実際、冤罪を晴らした実績もある。

ホームズの影響を受けている作品だからいいとは限らない。

だけど、ホームズの法医学的な部分と、キャラの破天荒さを引き継いだ作品になりやすく、日本の警察ドラマとはぜんぜん違う感じになるから、日本人の僕が見ると新鮮。

新鮮な理由について考えた時に、文化的なベースが違うことをキチッと理解しておくと納得しやすい。

ホワイトカラーの美術品偽造ネタは宗教系のドキュメンタリーを見ると、見つかるネタ

文化的背景の違いで言うと、ホワイトカラーには、ホームズとはぜんぜん違う意味で驚かされた。

…というのも、主人公のニール・キャフリーは美術品の偽造のプロな

「美術品を偽造する際に、鑑定されることを逆算して偽造品を作ったり、見破ったりする」

と言うことをしている。

そして、その手法の1つに「昔の作品から、素材を拝借する」「年代がわからないように劣化させる」という方法がある。

つまり、そっくりな絵画を作ったとしても、タッチだけではなく素材の年代や成分まで合わせないと美術品は捏造できないのだという。

ドラマを見た当時は

「すごい!こんな発想どこから出てくるんだろう」

と思って数ヶ月後、偶然にも元ネタの1つであろうものが出てきた。

それが「聖骸布はダ・ヴィンチによって偽造された」とされるドキュメンタリーをYouTubeで見つけた。

布が作られた時期が炭素を分析した限りでは、ダ・ヴィンチの時代…あるいは聖骸布が公開された時期だから偽物では?とする説が掲載されていて、「これ、ホワイトカラーで見た!!」と、点と点が線に繋がったことに驚いた。

聖骸布にかぎらず、キリスト教世界では宗教的な謎に迫る時に美術品が絡んできて、それを検証する手法が日本よりは一般的と言うか…広く知れ渡っていることに気づかされて

そうか、キリスト教やその関連する話に興味を持つと、美術品の偽造や解釈の問題の話に行くから、(美術品の偽造を扱う)ホワイトカラーってキリスト教に興味がある人か、そうでないかに酔って作品の見方がごっそり変わってくる!!

ということに気づかされて驚いた。

日本史だけやってるとわかりにくいんだけど、世界史…特に西洋史は宗教史・文化史・政治史が日本史に比べたら密接に絡み合ってる。

だから、宗教に興味を持つと文化や政治に興味を持つし、文化に興味を持つと宗教的政治的背景がないと理解しづらいものが日本のそれよりも出てくる。

日本に美術品の捏造がないって話ではない。

※日本の美術品の捏造の話も読みたい人はギャラリーフェイクというマンガが面白い。

ただ、西洋史や宗教上重要な位置づけの美術品があることが、ドラマの設定やトリックに色濃く反映されたドラマだと気づいた時

ホワイトカラーってキリスト教の国だからできたものなんだ!

と妙に納得できた。

まとめ:リアリティとオリジナリティと説得力

オリジナリティなんてものは受け手の問題。

元ネタがあっても見た人が元ネタを知らないか、見慣れていないとオリジナルなものに見えてしまうし、元ネタが実体験でも境遇が近い人から見るとあるあるにしかならないから…実はあんまり関係ない。

じゃあ、リアル自体が面白いかというと…違う。
リアルなのはあくまでも相手を納得させたり、話を飲み込みやすくするだけ。
根拠や作る側が具体的で自分のことのように話しやすい「わかること」「話の流れで説得できること」なだけ。

別にリアル自体が面白いわけではないから、リアルの面白くないところを削ぎ落としたり、他人が斬新だと感じそうなオリジナリティを削ぎ落とさないと面白くはならない。

ただ、ブログでももっと長いフィクションでも、作者が自分のわかる話をすることは重要。

自分が知ってることや見聞きしたこと、詳しく説明できることは、強い。
それを実体験で取るか、文化的背景への理解で取るか、勉強して習得するかは別としても…スラスラと言葉にできることを扱うことは説得力や相手の理解につながる。

憧れだけで書いたものは、聞こえはいいんだけど、具体的に、納得行くように話せるかというと…それはすごく難しい。

それは、「書くな」って意味じゃなく、「憧れでいい部分」と「憧れではだめな部分」 を住み分けないと、絶対に伝わらないって意味。

例えば、女の子の部屋なんて憧れで美化されててもいいと思う。
男で何人もの女性の部屋に入ったことあるやつの方が少ないから相場がみんなわからないことは雑でもある程度は受け入れられるだろう!!

でも、女子高生を見たことない男はほぼいないので、骨格とか服装とかはリアルもしくはそう見せられるか、可愛く見える別のモチーフを見つける程度には勉強しないといけないだろう。

フィクションの難しさはそこなんだよなぁ…。

話や設定を盛っていい・盛ったほうがいい部分と、逆に盛っちゃいけない部分。

盛っちゃいけない部分は体験や知識で補わないといけないが、
話の盛る部分は嘘くさくても、自分の美意識や客観的な美しさを注ぎ足さないといけない。

この2つ両方があって、うまく折り合いをつけないと面白さはできあがらない。

そこが人が何か作る、話すことの難しさだと思う

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創作に於ける主人公と敵キャラの弱点・倒し方問題
ホワイトカラーで美術品の偽造以外ですげーなぁ…と思ったのが、「能力が高すぎるキャラクターの負け方や弱点を能力以外のところに作ってる」というところ。
通常はなんでもできるキャラってあんまりうまくいかないんだけど…この作品は見事に収まるように工夫してて、衝撃的だった。

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