ビッグモーターが起こした不祥事は争点が多すぎる。
保険金詐欺・街路樹への除草剤散布・強引過ぎる営業・詐欺みたいな広告とローン・ブラックな社風とノルマ・コンプライアンス意識の低さ…挙げたらキリがない。
しかし、私の中で「これが一番しっくり来るなぁ〜」と思ったのは、ホリエモンがビッグモーター告発しているh意図を呼んで色々話を聞いたこの動画だった。
ざっくりいうと、
「2代目の副社長への代替わりを急ぎ過ぎた結果、2代目の及びその取り巻きが暴走して、創業者の知らない間に大きな問題へと発展した」
という話が出てきたのだが…さもありなんというお話すぎて、【これやろなぁ】と納得してる。
ビッグモーター問題を見ていると、大塚久美子さんを思い出す
「代替わりした時に、自分の取り巻きの意見ばかり聞いて路線変更」
「その結果、それなりの規模や資金がある会社が末期症状になるまで潰れてしまう」
という話を聞くと、大塚家具をボロボロにした『大塚久美子』さんのことを思い出します。
大塚家具は、久美子氏が経営に関わる前は高級路線でした。
会員制で、まとめ買いしてくれるお客さんを大事にする会社だったそうです。
しかし、大塚久美子さんはそれをやめて、
「カジュアルなお店にして誰でも入りやすいようにしよう」
というニトリやイケアを意識した路線に切り替えましたが…試みは失敗しました。
だって、ニトリやイケアは、日用品も買えるちょっとしたテーマパークじゃないですか…。
そういうところと、家具しか置いてない大塚家具がかちあっても、勝てっこないのです。
後にヤマダ電機と組んでニトリやイケアにはないテーマパーク感を出そうとしましたが…すべてが手遅れでした。
ユニクロの柳井社長を参考にしたのかもしれません。
でも、ユニクロは、そもそも当時競争が熾烈だった「安い紳士服」を避けて、日用品の衣類にシフトして、なおかつ店員が声をかけない独自のスタイルを切り開いてるから成功しているのです。
大塚久美子さんも、ビッグモーターの副社長も
「超高学歴で、先代のビジネスを引き継いだままテコ入れして会社をメチャクチャにしてる」
という共通点がある。
大塚家具もビッグモーターも、先代の段階で完成されたビジネスモデルだったのだが…
「もっと売上を出したい」
「勉強した合理的経営ではこうなるはずだ」
という2代目経営者の都合を押し付けて、エラいことになってる。
いや…ヘタに完成されたビジネスモデルだからこそ、2代目経営者自身は
「80点のビジネスを100点にしよう」
と試みて、元々80点だったビジネスさえ失うことになる。
あるいは、先代ではなく2代目経営者の自分を持ち上げてくれる部下を欲しがったのでしょうね。
結果、その部下達がおかしな経営を会社に持ち込むようになっておかしくなっちゃったんですけどね。
これは経営者に限らず、歴史上の皇帝や武将でも自分の味方を重用しすぎて、その人のせいで地位を失ったり、国が滅んだりしてますね。
逆に、いい中興の祖は「多角化」に成功してる
世襲に限定すると…任天堂の山内溥さんが大成功例ですね。
元々は花札の会社だった任天堂からトランプを発売。
「トランプ→おもちゃ→家庭用ゲーム機」
と、徐々にトレンドの中心に近い業態にシフトしてます。
任天堂の多角化経営は途中までは全然上手く行かなかったそうです。
しかし、元々の「花札」という業態がそんなに大きくなかったから「多角化しなきゃ」と思い切った選択を取り、成功するまで続けて、モノにしたようです。
何よりも、一度積み上げたビジネスも潰さないでちゃんとやり続けてたところもいいんです。
実際に、任天堂は今でも花札・トランプを作ってます。
他にも、オリックスの宮内義彦氏が「中興の祖」と言われてます。
元々は、双日から独立したリース会社だったオリックスですが、宮内義彦さんが社長になってからは経営が多角化しています。
宮内義彦さんの時に金融保険不動産へと手を広げています。
最近でもこの拡大路線は続いていて、DHCも買収したことで化粧品・健康食品まで手掛けるようになってます。
豊田章男さんもトヨタ自体の経営の部分もあるけど、評価されてるのはGAZOOやスポーツカーの復活など今までのトヨタがやってこなかった部分に活路を見出したことだったりします。
確かに、経営には1つのビジネスで100点を目指す役割の人もいるのです。
そして、前任者からビジネスを引き継いで、新しいことをしないで堅実に100点を目指してる経営者のほうがたぶん多いと思います。
でも、ビジネスの世界は新しい道を切り開いて「3つ新しいビジネスを起こしたから、300点になったぞ!」みたいなこともありえます。
有能な後継者はむしろ、新しいことを切り開いてくれる人です。
先代の経営よりも優秀だったり、アイデアをガンガン出せるタイプなのであれば…すでに完成してるビジネスモデルに手を入れるよりも、新しいことを小さく始めた方がお互いのためなのです。
大塚久美子さんは、既存の大塚家具ブランドも変えてしまったばかりか、自身が手掛ける新事業にも同時進行で勝つ大量の広告を投入しすぎて、赤字しか残らなかったんですけどね…。
一人で「素晴らしい後継者」と「ダメな後継者」の両方をやってる宮崎吾朗みたいなやつもいる
宮崎駿の息子として有名な宮崎吾朗さんは元々建築の人です。
アニメーション演出家になっちゃったのせいで「親の七光り」というイメージが付いてしまいましたが、「三鷹の森ジブリ美術館」に関しては本当に専門分野を必要とされていたようです。
しかも、専門家でかつ親子だったこともあって、宮崎駿相手でも法律的にできないこと、イメージがフワフワしててできないことには、「ダメなもんはダメ!」とキチッと物を言ってたそうです。
アニメ関係で下積みをきちっとするか、ジブリのアニメにタッチしないで自分のテリトリーを開拓できたらもっと評価されていたかもしれない人なのですが…残念ながら、アニメに手を付けたからこそ評価が下がってしまった人です。
アニメを作る才能自体はあって、「本人が描いた絵コンテとは思えない」「どうしてもっと早くやらせなかったんだ」と言われるぐらいの人物ではあったらしいのですが…いかんせん、専門外の分野で、世界の巨匠を引き継ぐのはあまりにも無理がありました。
今スタジオポノックに出て行ってしまったメンバーの誰かにアニメを引き継がせて、自分はテーマパーク作ってたら…ジブリがアニメを作らなくなることもなかったかもしれません。
まとめ(?):中途半端に優秀な人の方が組織を滅ぼす
あんまり無能だと、優秀な人の傀儡になるしかないから…滅びないんです。
自分の才能や手腕を過信してない人なら、やたらめったら挑戦して自滅するようなことはしないのです。
経営でも、歴史上の武将や皇帝でも、トップが暗愚でも周りが優秀で、優秀な人におまかせするか、大きな変化をしない人は滅びはしないのです。
ただ、中途半端に優秀だからこそ、
「宮崎駿ほどじゃないけど、アニメも作れます」
とか、
「高学歴で、父親よりも真っ当に経営を勉強しました」
といえる人物だと…滅びちゃうんですね。
武田勝頼自身は優秀な武将だったそうです。
でも、父の武田信玄が偉大すぎて先代からの家臣をまとめ切れない状況でも、自分の実力で戦い抜ける実力とガッツがありすぎたもんだから…武田家は滅びちゃったそうです。
逆にすごく有能な人なら「先代と違う分野で成功する」という道を選ぶことに成功しています。
特にビジネスであれば、軍資金がある限り違うビジネスに挑めますから、「今までの仕事はできる人におまかせしながら、自分は色んな新しいことにチャレンジする」という路線で、成功してる人もいます。
武将でいうと徳川秀忠がそういう路線です。
彼は武将としてはダメダメだったけど、政治・学問・人望に力を入れて、徳川幕府の基礎を作って次の世代にバトンを渡すことに成功してます。
「乱世には向いてないけど、平和な時代に向いてる。」
「カリスマではないけど、真面目で温厚な人柄が評価されてる」
という父とは少し違う路線で成功しています。
10倍ぐらい実力差がないと、人は思い出や実績には勝てないんです。
そして、10倍実力差がある人は何をやっても成功するから会社を多角化できるけど、普通の人は堅実にすごい人のやってきたことを守ろうとするのです。
先代から会社や事業を引き継ぐ機会があったら、偉人の思い出や実績とは戦わないでください。
評価されたかったら違うジャンルで一山当てる!
そんな才能がない自覚があるなら、先代や一緒に作ってきた仲間をリスペクトして愛されキャラを目指すのです。