フリーゲーム「999,Victory」は女子の発想で魔王を倒すゲームです!

 

珍しく女性向けな作品から紹介。

女性向けであるが、恋愛要素がないから男でも楽しめる設計と男性に人気のジャンルをゲーム。むしろ男性向けに慣れきった男のほうが、きっと(絵柄や男女キャラの設定からみて)女性であろう作者の「女性・女性向けならではの手癖」を存分に楽しめる仕上がりになっているからこそ、ほぼ男性向け作品しか紹介したことがない僕が紹介する!

ジャンル自体は男向けのゲームでもよくあるものだが、「女性向けならではの手癖」がこの作品の攻略と楽しさを語る上で大事なポイント。

・作品概要

「魔王に囚われたお姫様が魔王が留守にしてる1日の間に、魔王を倒す準備をする」

が大まかなあらすじ。

ジャンルはアドベンチャー。プレイ時間は1つのエンドを出すのに平均して40分。(長くても2時間)

これが9エンドあるから360分…半日もあれば、このゲームの全エンドが出せるはず。

ダウンロードはこちら

ゲームの開始画面はこれ

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作者の自作イラストが大量に盛り込まれていて、作中の大抵の絵は作者の自作。

ちなみに、作者の自作絵が全体的にクオリティが高いからそれを目当てにがんばっていただきたい。

ちなみに、エンディングのイラストはゲームの中にしかないが、作品のキャラを使ったイラストが作者のブログにいっぱい載ってるからそれも是非見てほしい。(ゲーム攻略情報もあるからプレイ中に困ったときに立ち寄ってもいいかも)

 ゲームオーバーも複雑な操作・計算もないゲーム設計

今までやったフリーゲームの中でも「ライトユーザーに薦めたいゲーム」なら1,2を争うほど「難しい要素、めんどくさい要素が省かれた初心者にやさしいゲーム」だ。

条件さえ満たせば、難しい操作もゲームオーバーになりそうなややこしいステージもない。それどころか戦うこともない

一見するとRPG要素もアクション要素も「あるように見える」し、それでもクリアはできる。

が、このゲームのすごいところは作っておきながら「だいたいのめんどくさい戦いや操作」は推理やステータス上げで切り抜けられること

例えば、魔王を倒す方法も「一撃で魔王を倒す方法」が2つもある。

例えば、正攻法では戦わないと手に入らない聖剣が実は戦わずに手に入る…方法もあるやもしれない。

このゲームに必要なのは、アイデアと段取り!「女の子の発想で魔王を倒すゲーム」とタイトルにつけたように、他のゲームのような正攻法ではない倒し方・クリア法が見つけられるかがポイントになるから!

エンディングに応じて必要な条件を考えて、その段取りだけをきっちり整える。

そうすればだれでもクリアできる。

ヒントはタイトルの「999Victory」。

これは999が行動でもステータスでも鍵。特に、出したいエンディングがある時には何かを999回やらないと出ない選択肢をうまく利用していくことが大事になる。

口に出してみるとすごく煩わしそうな内容だが、ほとんどの行動にはめんどくさく感じさせないための省略が存在するあたり、ゲームに明るくない人にやさしい

ゲームができない/ぬるいユーザーが悪いと決めつけがち、マゾゲー/クソゲーをクリアしたやつこそ偉い…という男のゲームにはなかなかない心配りだ。

また、コンテンツ自体をぬるく感じさせないためにアイデアやそのヒントの先にあるものをきっちりと作りこんでるところが面白かった。

 エンディングやキャラ設定にも女性らしさ

操作が簡単で抜け道があるからぬるめに作られてる感があるが、キャラクターやシナリオはむしろ短いゲームの中で濃ゆく作られている。

「男が作る女の子とは違う女の子が出てくる」と言えばいいかな?

男が作った女の子キャラはよくも悪くも恥じらいがなくて一本気すぎる。

露出の多い服を着ても恥ずかしがらんし、発言がきっぱりしてる。ヘタレな要素を男キャラまたはかよわいところがかわいい女に丸投げ。(また、かよわさも女性向けで描かれる女性のかよわさと一致しない)

結果、(男も驚くほど無神経な)男みたいな女の子が一定数出てくる。

共感やリアリティを感じにくい女性キャラのできすぎ感をこのゲームでは見事に取り除いて再編していた。

主人公(女)はいい意味でも悪い意味でも恥ずかしがりな一面もあり、ヘタレさもあり、発言や行動に「等身大の芋臭さ」があるところに好感が持てる「共感できるかわいさ」があった。

美人だとか、デレるだとか場面的なかわいさ記号的に「これはかわいくなって当然」というシーンがかわいいのではない。

発言に建前と本音があって、含みを持った台詞を少しづつ少しづつ溜めながら吐き出していくところに人間味や芯の強さを感じて共感が持てた。

また、台詞に表裏や含みが多いのが女の主人公だけ。

他の男キャラのようなハキハキ感とは違う味わいをテキストに持たせてることも「なるほど、確かにRPGの女の子は【女の姿をした勇者】か【ムダに凛々しい姫様】になりすぎてるかもしれない」とキャラ作りに深さを感じた。

男キャラについても、女の子らしい基準でキャラ設定が面白かった。

男が作るキャラにはモテそうかどうかという区分けよりも、「属性が違う」「種類が違う」キャラに分かれる。

例えば、学がありそうな戦士は少なく、イケイケの魔法使いも存在しない。良くも悪くもパッケージ化されていてキャラと能力がかっちりかみ合ってる。

美少女ゲームっぽい当てはめでも「委員長はいい子」「図書委員や文芸部員は頭なでたくなるか弱い系」「運動部系の女の子は男っぽい態度や仕草でフランク。だけど、無意識なだけで恋愛を意識すると一番乙女っぽい」など記号的な傾向論が存在する。

創作の作り方が良くも悪くも論理的で、パターン化され、いかにしっくり来るようなパターンにキャラを落としこむか、パターンではあってもそれに気づかせないぐらい論理や話を複雑にして積み上げるかがミソになる。

ところが、このゲームの場合は能力と設定がかみ合ってるかどうかよりも、女子から見たモテそうかどうかが大きくキャラに投影されているように感じた

「コンプレックスが強くて実はウジウジしてる男は手段も不器用だから、強そうに見えるしいい人そうに見えても、アレ」

「いい人だけど、いい人ゆえに踏み込めない不器用さが不遇さとかわいさになる男もいる」

「本当にモテるのはずるいオラオラ系で、エンドに問わず一番美味しいポジを奪う」

…魔王や勇者であることが先にあるのではなく、キャラクターの性質がその人を魔王や勇者に変えたり、そこから飛び出して行くことで話が生まれるようなところを感じた。女性向けにもパターンはあると思うが、パターンの表現の仕方がキャラの職業ではなく、モテそうかどうか、モテそうなら何系か…という基準に落とし所があり、そこに違いを感じて楽しめた

作中でのやりとりからキャラやエンディングを成し遂げていくことで

「なるほど、同じジャンルや属性のキャラを設定してもこんなに違うのか。」

と引きこまれていく。作りこむところや、作りこんだ上での考え方が違うから「なるほど、そんな作り方もあるのか」と新しい発想を頂いて少し賢くなれた気分だ。

彼女のひとりぐらし 1 (バーズコミックスデラックス)

芋臭さがかわいい作品で思いついたのがこれだが…この作者については性別がどっちだと言われても驚かないところがあるんだよなぁ…。

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