KADOKAWAはサブカルの電通を目指してるのだろうか…

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※この記事は5000文字かけて語るため、長く「角川ドワンゴとフリーゲーム」という切り口から始めるため、ほかの角川ドワンゴ論に比べると論点や切り口がニッチです。れでもいいという人だけどうぞお読み下さい。

ニコニコゲームマガジンからあんまり愛を感じない

試みや方向性はいいと思うのだが、あまり愛を感じない。そう感じさせるエピソードがある。

僕もゲームレビューで触れたことがあるフリーゲーム製作者の方がニコニコゲームマガジンでゲームを作っていた。

「ニコニコゲームマガジン」とは雑誌のようにゲームを月1回のペースで無料配布されていくサイトのことだ。

ニコニコゲームフェスなどで人気を集めたゲームやフリーゲーム界隈で人気のホラーゲームを1時間でできる程度の量のゲームとして続編や番外編を作って連載していくものだ。

ニコニコに関連したサイトで自分のゲームが配布されるだけではなく、人気実況者が実況プレイでバックアップしてくれたりと「マネタイズのできなさ」「露出度の少なさ」に定評があるフリーゲーム製作者が世の中に出るチャンスとして、期待を寄せていた。

しかし、僕が知ってる製作者の方だけは事情が特殊だった。

ゲーム自体はニコニコゲームフェスで賞ももらっているし、実際にゲームも作っている。だが、それ彼が原作のゲームではなく、すでにあるライトノベルのフリーゲーム化でかつ、連載ではなく「読み切り」という1本ものだった。

ラノベのフリーゲーム化??それはもう、フリーゲームじゃないよね?

いや、フリーウェアではあるけど、狭義には同人的で自作的なゲームの中でもフリーウェアとしてオンライン上で配布しているゲームのことを「フリーゲーム」と呼んでいるから、それではないよね?

それは商業ゲーだよね?商業ゲーを低予算で作るためにゲーム製作者を賞をあげて断りにくく囲い込んで、代わりに、毛並みが違うお仕事をさせてるんだよね?

作者やフリーゲームに対して愛情を感じないという話でもあるが、もっと強く言いたいのは「ゲームではゲームの仕様と物語が繋がってること、仕様があってこそ物語が際立つものもあるから、いきなり物語を【ゲームにしなさいよ】と言われても、それはその人の才能を見込んだもの・発揮できるような仕事ではないのでは?」と思うから、こう書いてる。

ちなみに、作者軽視・フリーゲーム文化軽視だと感じてるのはこの1回ではない。

ニコニコゲームマガジンで、あるゲームの続編を試しにプレイした時にも、難易度が極端に下がり(それを演出でごまかし)、それでいて本家のゲームでは肝になっていた設定が活用されてないゲームが作られているのをみて「1時間に押し込めてまでこんなゲーム作ってどうするんだろう?」と感じたものだ。

フリーゲームの良さである「荒削りな難しさ」や「暗い人間にこそわかる・響く・語れるような繊細な心情描写」がごっそりなくなったそれは、狭義にはフリーゲームというよりも、商業的なゲームへとかじを切っていた。

 じゃあ、なんでフリーゲームなんかに力を入れてるの?

断っておくが、「フリーゲーム」とGoogle検索すると4番目に僕のサイトが出てくるぐらいには僕はフリーゲームの話をしてるし、フリーゲームに対して知識や愛着を持っている。

そんな僕だから言うが、フリーゲームは本当にお金にならないジャンルだ!

商業したゲームはほとんどなく、書籍化したゲームも書籍はそれほどヒットしない。(ヒットした痕跡をアマゾンレビューなどの形に残したりしない)

人気のゲームには50万DL以上のものもあり、フリーゲーム自体がインターネット普及後だけでも十数年の歴史がある。だから、潜在的には数百万人ほど関わりがある人がいるそれなりの規模を持った趣味ではある。

だが、ボーカロイドや歌ってみた、踊ってみたのように「女子中高生中心のティーンの文化」ではなく、「元々が他人を必要としない・SNSで自分の趣味をシェアしたりしないマニア達の文化」だから、フリーゲームは大きな流行がない代わり、十数年もクリエイティブなサブカルチャーとしてやっていられた。

女子中高生とフリーゲームは水と油

最近はマニアばかりではなくなったものの、女子中高生を基軸としない文化なので、大々的なブームもこなければ、マネタイズもされにくい。

歌い手や実況者やボーカロイド文化は、女子中高生の「恋愛感情」や学校の仲間内で「知ってる・できるとかっこいい流行り」であったが、フリーゲームはそもそも女性向けゲーム自体が少ないため、正直言ってフリーゲームを角川ドワンゴが持ち上げる必要なんかない。

女子中高生がキャーキャー言わない文化であり、女子中高生はボカロPに恋することはあってもフリーゲーム制作者に恋することはないから。(※ただし、女子中高生ウケのするイラストが書けて、彼らのハートもつかめるゲーム製作者は除く)

「女子中高生」というキーワードが大事な理由は、人気歌い手でかつ中堅ボカロPでもある鋼兵さんのゆっくり雑談動画などがとてもわかりやすい。興味と時間がある人、なぜティーンなのかを聞きたい人はこの動画を見るといいだろう。


www.nicovideo.jp

つまりだ!

フリーゲームは実況者の養分になることはあって、実況者とフリーゲーム製作者が持ちつ持たれつの関係になることはあっても、ドワンゴがフリーゲームをもり立てる必要は特にないんや!!

それどころか、実況者はニコニコゲームマガジンで紹介されたゲームをやるせいで、新しい面白いゲームを探さなくなって実況プレイ動画界隈もフリーゲーム界隈も作られる創作物がマンネリしていって誰も幸せにならへんのや!!

そもそも、フリーゲームが築いてきた文化はニコ動文化のメインターゲットである女子中高生とは水と油!

ホラゲーはともかく、難しいやりこみゲーや凝った戦略ゲームはティーン女子とは相性が悪い!!女子中高生のゲーム力じゃ凝ったフリーゲームはできへんのや!

そういうわけで、フリーゲームはニコニコゲームマガジンで連載されると演出重視で難易度を下げたフリーゲーム特有の荒削りさが失われてしまう。ホラーゲームやイラストがキレイなアドベンチャーゲームばかりが選ばれて、やりこみ系作品やガチ勢御用達の「なにがなんだかわからないゲーム」は相変わらず埋没するんや!!

実況者が触れているうちはやりこみ系も、元々そこそこの難易度があったり、手間暇がかかるような難易度に設定されたホラーゲームもウケただろう。あまり言われないことだが、実況者達の…特に人気の実況者に限って言えばゲームの腕前はかなり高いからフリーゲームをいかにも簡単そうにクリアしたり、手間がかかるゲームも面白おかしく編集して女子中高生が退屈しない容量・楽しめる形に魅せられた。

だが、ニコニコゲームマガジン…つまり、ニコ動のユーザー向けにゲームを作るとなると難易度はガッツリ下がる。

元々、商業的なゲームが大衆化して難易度が下がっていった時期・わかりやすさを重視し始めた時期に、難しく・わかりにくく・でもそんな苦労の中でゲームを攻略していく手探りの楽しさを体現し、受け継いできたフリーゲームにはある程度の難しさ・不親切さ・不格好さはむしろプラスの要素だが、ゲームが苦手な女子中高生。

つまり、ドワンゴにもフリーゲーム側からみてもあまり得しない。

ドワンゴは実況者個人で面白いゲームを拾ってきてもらったほうが動画に多様性ができて面白くなる。

フリーゲーム製作者も本当はもっと濃ゆいゲームを作ってる人達だから、ティーン向けに難易度を下げたり、演出を優先したゲームを作るとなると、自分のゲームであっても実力が発揮できるとは限らない。書籍化される可能性の高さ・ゲームマガジン自体のギャラがすごくいいなら話は別だが、実績が少ない人に大金渡すようなどんぶり勘定が通るわけもなく、賞やゲームマガジンの連載を獲得したゲームがどれもこれも書籍化できるわけでもない。

Q.では、誰が得しているのだろうか?

A.角川しかいないでしょうね。

角川がドワンゴを抑え、はてなと小説サイトを作る理由

今、角川が独占的なシェアを誇る市場がある。

「ライトノベル」だ!

2011年時点で、ライトノベルの主なレーベルを角川の中に吸収したため、ライトノベルのシェアは9割とまで言われている。

ラノベ業界シェア9割が角川の手中に!?【MF買収問題】 | オタク.com

ラノベというと 、世間的なイメージは次のものだ。

「イラストが売上を左右して、ファンも売る方も文章なんか見てないのに【ノベル】と名乗ってるまがいもの」

「イラストレーターにもなれず、ちゃんとした小説家・脚本家にもなれない哀れで醜い、(見下していられるぐらいに)かわいいワナビーが書いた低年齢向けポルノ」

「最近のラノベ(笑)」

など、ジャンル単位でバカにされている分野のことだから、シェア9割と聞いても良いイメージが持てないかもしれない。

だが、ライトノベル業界の市場規模は書籍全体の市場規模が落ち込む中で、むしろ成長を続けているライトノベル市場規模の話書籍の出版傾向 ~ライトノベルの場合~ より)

マネタイズしたいネットとコンテンツが欲しい角川の「利害の一致」

同時に、ライトノベルはネット上のサブカルチャーの貴重なマネタイズの方法でもある。現にボカロ小説もあり、フリーゲームも幾つかノベライズ化されている。

必ずしもライトノベルレーベルや角川から出ているわけではない。だが、その何割かはライトノベルレーベルから出ていて、ボーカロイドとはターゲットの年齢層が、フリーゲームとは製作者の作風や元ネタが被る。

そもそも、ライトノベルもゲーム出身の人が書いたり、商用のゲームでありがちな世界観を踏襲したり、逆手に取った作品がたくさんあるからラノベとゲームは元々の相性良い。

まして、普通のゲームでは満足できなくなった人が同じような悩みを持った人にゲームを作ってあげられるフリーゲーム製作者とゲームの世界観から影響をウケたラノベ作家は発想の始まり自体は「自分がプレイしたり、関わった商業ゲーに対してどう考えるか」というところから始まりからして、近い。

やってることが近いから書籍化したり、逆にフリーゲームにして、普段ラノベを読まない層に宣伝するという方法にしやすい…と考えたのだろう。

つまり、角川がライトノベル周辺のジャンルのサブカルチャーをドワンゴ経由で抑え、ドワンゴは角川経由でお墨付きを与えたクリエイターや作品をマネタイズする

また、出版不況のなか数少ない成長市場であるライトノベルだ。

だが、モタモタしていると他の出版社が「ライトノベルのようなストーリーを作ってるマネタイズしたい界隈」にうまく取り行って、ライトノベルのシェアを奪われてしまうかもしれない。少しでも早く手を回すことで角川の独走状態を維持したいのであろう。

はてなで小説サイトを作る話について

角川が小説サイトを作っている。

KADOKAWA × はてな「新・小説投稿サイト」今冬リリース!

それを紹介している動画(KADOKAWA 新・小説投稿サイト告知PV )を見た限り、ゴリゴリにライトノベルの存在を押しているため、はてなと角川が作ろうとしている小説サイトはどうも、ドワンゴを通じてネット上のサブカルチャーを抑えていこうとしている流れの延長だと推察する。

その際、一緒に作るパートナーとしてはてなが選ばれた理由は、はてなは「ブロガー」ではなく、「ブログをしてた作家」をはてなダイアリー時代に輩出してたからであり、最近でも作家こそ排出しなくなったが、文学フリマに寄稿・参加するユーザー、オタク系情報を拾い上げるスピードが早いユーザーが多いのがはてなだから…であろう。

…ただ、この試みについてあんまりうまくいかないと思ってる。

はてなのブロガー層はここ数年でガラリと変わり、最近のはてなブロガーはオタク色どころか議論や長文を書いたりもしない。

それどころか、はてな自身が理屈っぽい男性ブロガーを蔑ろにして、「はてな女子」などと特にアクセスも稼げない、文章も書けない、ブロガーの肩書がなかったらそれほど美人でもない中途半端な女性から「女性らしさ」を抽出してポップなブログサイトを目指してしまっているため、今のはてなの方針や動向と小説は逆方向なのだ。

小説を見る・拡散するのはおそらく昔から残っているごく一部のユーザーだけ。作家にも有名ブロガーにもなれず、いい年こいて、何年も同じようなニュースがループするはてなブックマークを卒業できない中途半端なおっさんたちだけ。

そんな人達の辛辣な批評コメントに価値なんかあるだろうか?また、そういったコメントがつきやすいはてな派生のコンテンツに小説を投稿する勇者がはてなの外から来るだろうか?

そう考えるとうまくいかない気がする。5年前ならまだ可能性はあったけど、今のはてなブログ・はてなじゃ厳しかろう。

まとめ

こんな思考をツイッターで書きなぐっていたら次のようなツイートをもらった。

「角川はサブカルの電通を目指しているのだろうか…」

うーん。因果関係が逆じゃないか?

角川は成長を続けている上に、映像化など本の売上以外の収益も期待できる「ライトノベル」での圧倒的なシェアを維持する・コンテンツを大量に出し続けようと考えた。

その結果として、ライトノベル周辺にあるサブカルチャーをたくさん持っているドワンゴ経由で抑える。

最近では、ドワンゴがすでに抑えていたニコニコ動画の文化以外にもフリーゲームを抑えるためにゲームマガジンを開設。(それ以前から、自作ゲームフェスをして力は入れてたが、角川が絡むようになってから、より積極的になった)

加えて、複数の出版社と文学賞をする「小説家になろう」に対抗する形で、独占的に角川が場所を作る。

結果として、角川の位置づけが「サブカルチャーを電通」かぁ…。なるほど。

ここ5年ぐらい、ドワンゴがニコニコ動画で人気のジャンルに関わっただけでも、マネタイズする人が出始めたのとほとんど同時に一過性のブームとしてカルチャーが滅びていくことが多かったけど…ドワンゴの後ろから、角川がマネタイズを後押しするとどうなるんだろうね?

進化が早まると滅びるのが早まるのか、それともコンテンツを見たり育てたりするプロが入ってくることで、ドワンゴがやってきたユーザー食い散らかしがマシになるのか…

ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち

川上さんが、未だにどういう人なのかがわからんのよなぁ…。映像見てる分には納得できることは多い反面、文章見ると「はぁ?」ということが多いので。

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1年半かけてフリーゲームのレビューを50作書きました。

フリーゲームが縁で知り合ったブロガーさんからの寄稿。

かなり時間を書けて作ったオピニオン系の記事繋がり。データ多め。

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