(猟奇的とは)よく用いられる表現の割には定義が難しい言葉の一つ。国語辞典などには「奇怪・異常なものを捜し求めるさま」と書かれていることが多い。
一般的にこの言葉を用いるときは、「捜し求める」という意味が抜け落ち「奇怪・異常な様子」という意味合いで用いられることが多い。マスメディアなどでも「猟奇的な犯行」などという言い方がなされることもあり奇怪な、異常な犯行という意味合いでほぼ通じることになる。
このゲームはどちらの意味でも当てはまる。ゲーム自体の雰囲気も奇怪で、その奇怪で謎めいた世界観を掘り下げていく話でもある。
・ゲームの概要
【フリーゲーム「OFF」について】
Mortis Ghost氏と彼のチーム、Unproductive Fun TimeによってRPGツクール2003で制作された、ベルギー発フランス語のフリーゲームです。
2007年に公開され、2011年に英語版が公開。独特な世界観と不思議なキャラクター達、見事にマッチしたBGMが海外で高い人気を誇っています。※この日本語版は2011年に仏語版から翻訳された英語版を元に制作されました。(2014年8月12日)
【 ストーリー 】
あなたは “バッター” と呼ばれる存在の操作を任されました。
“バッター” は、必ず果たされなければならない、重要な任務を帯びています。
“バッター” を導き、その任務を達成してください。
引用元・ダウンロードはこちら
OFF日本語版 | OFF日本語化計画(OFF Japanese Translation)
ちなみに、僕は翻訳されたものも含めて海外製のものをやったことがないからかなりワクワクしながらプレイ。
画面やRPGのスタイルこそ見たことあるゲームですが、テキストの調子や世界観を見て「ここまで違うのか!」と驚きっぱなしだった。
高度な謎解きゲーにして高度な文学!
ゲームを始めて目を引くのは、「ベルギーのゲーム」だと聞いてプレイしたのに、主人公がなんと「バッター」だという。…野球なんかちっとも普及してない国なのに、ユニフォームを着てバットを持って歩き回るヤツが主人公であることに驚いた!
日本で言うとアメフトの格好したヤツが歩いてるぐらい怖いのか…。
それも、このゲームはMOTHERのようにオフィスや工場、住宅街など日常生活の場を歩き回るゲームだから、いかに異様なさまなのか…考えただけでこの「バッター」というキャラは日本人が作ったゲームよりもずっと強烈な存在だといえる。
怖いけどノスタルジー/愛らしいけど不気味
次に驚かされるのはイラストだ。マップこそMOTHERやポケモンを連想するような作りであるものの、イラストやドット絵はゲームで…特にRPGやアドベンチャーでは見かけないような不気味さ・奇怪さにゾクゾクしながら、心奪われていく。
その一部をご覧いただこう。
そして、戦闘画面がこれ
しかし、この種のイラストをなんて呼べばいいか?
落書き風?ホラー系絵本風?不気味だが、どこか目に馴染む一癖あるイラスト。
怖いけど、どこか懐かしい。
愛らしいのに、不気味。
心の中に、頭の中に、ひょっとしたらもっと無意識な思考を刺激していくような感覚。世界観をイラストと、イラストを引き立てるような不気味で重苦しい音達がゾクゾクさせながらゲームに誘う。…そんな奥行きのある演出がこのゲームにはある。
このゲームはどれ1つとして簡潔な言葉にまとめられるものがない。
シナリオも、絵も音楽も、ゲームも確かに感覚を刺激している。ただ、刺激の仕方が複雑すぎて、明確な言葉で、シンプルな感想にしてしまった途端に陳腐になってしまう。
このゲームはプレイも語るのもとても頭を使う。
プレイ中もプレイ後も頭を使う。プレイ後は高尚で洗練されたシナリオ に頭を悩ますが、だからといって難しいだけのゲームではない。
単なる芸術や文学ではない。ゲームとしての頭脳ゲームや駆け引きにもこのゲームは優れているのだ!
RPGの皮を被った謎解きアドベンチャー
正直、RPGとしてはそこまで難しくない。 ほぼ苦戦するところがなく、アイテムも十分すぎるほど買える。
ただ…謎解きゲームとしてはかなり難しい。
しかも種類も豊富。
スイッチを順番に押したり、パズル方式でパーツを探して当てはめたり、迷路に入り込んだり…しかも、ヒントが別の部屋にあったり、スクリーンショットで保存して見ながらやらないと解けないものがあったり、メモが必要になったり…ひらめきを要する。
ひらめきだけではなく「反射神経を問うミニゲーム」「記憶力を問うクイズ」などかなりの作り込みがなされている。
ゲームとしての「小さな謎解き」を積み重ねていくとシナリオやメタファーに繋がる「大きな謎」が浮かぶように進む。
小さな謎解きは大きな謎に基づいて作られたものが多いから、繰り返しプレイすることで気づくこともたくさんある。また、一見ミニゲーム要素、お楽しみ要素にしか見えなかったような謎解きが後々つながってきた時に「これか!」という驚きがあるのも、このゲームの魅力。
謎解きが謎解きを呼び、終わっても謎を残し、またゲーム内の謎に挑戦させる。
まるで沼!ズルズルとゲームにハマって行く。
「イラストや音楽に引き込まれる」
「世界観が独特!続きがやりたい」
「色んなことが明らかになった!終わりが見たい。」
「終わったら終わったで自分の考えをいいたい」
「でも、自分の考えをもっと明確にしたいからゲームをもう一回やりたい気も…」
と気持ちを逆なでされてしまうゲーム。
そこには常に奇怪さがあり、次の奇怪さにつながっていて、その「次」を探し続ける、次を味わうことで突き詰めたくなる猟奇的なゲームなのだ!
ゲーム自体は丸一日あれば終われる。
だが、このゲームの自分なりの答え、ゲームで感じた感触、誰かにそれらをいいたいと言う衝動はプレイしてしばらく、ずっと続いていくだろう。
ゴーリーほど残酷ではないが、白黒でホラー色があって独特のデザインの形容しがたいものが出てくる…というイラストを見てるとゴーリーを思い出すんだよなぁ…。
ちなみに、文学的教養がほとんどない僕がゴーリーを知ってたのは妹がエドワードゴーリーを借りてきて、家で読んでたのを俺とおかんがたまたま見て、家族会議沙汰になったから。
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謎解きゲーは謎解きゲーだけど、こっちはさっぱり系。謎解ければスッキリする。