イチローのアドバイザー就任は野球選手のセカンドキャリアの革命だ!!

イチローが特別アドバイザーに就任した。
イチロー 会長付特別補佐就任「信じられない」 決断の決め手は“チーム愛”
これに対して、世論では「実質的引退」だとか、「客寄せパンダ」だとか、悲観的な意見が多いのだが…ぼくは、アリだと思ってる。

その理由は3つあって、

  1. 今までも前例が殆どなかったことを浸透させてきたのはイチローなので、イチローが成功させた事例は、これから色んな球団が真似するようになるスタンダードになってきたから。
  2. 指導者・二軍育成選手以外に選手をキープする新しい方法だから。もし、この方法があったら、引退したり、独立リーグに行く必要のなかった選手はちょいちょいいるから。
  3. フロントとの確執や、指導者のポストの問題で指導者になれなかった人、当時は指導者として声がかかる可能性が低かったものの、現役時代に多くの選手を指導したり、練習で背中を見せて影響力を残して引退した選手はけっこういるため。また、そういう位置があってる選手はけっこういたから。

この話ってどう切り取るかで、1~3のどれが重要になるかが変わる。

「イチローのやってきたことの多くが根付いているから1こそ重要」と考える人もいるし、
「戦力外でも二軍行きでもない形で選手をキープできる。編成に大きな影響を及ぼすからペナントレースの読み方が変わってくるので2が重要」と考える人もいるし、
「今まで指導者にならない・なれない名選手が多かったから、一緒に練習できるアドバイザー契約がアリなら、日本の野球のレベルはもっと上がる。だから3が重要なんだ」と考える人もいるだろう。

そのへんのことを語ってみたい。

こんなにあるぞ!イチローが最初にやってプロ野球に根付いたこと。

厳密にはイチローが最初じゃないかもしれないけど…「イチローがやったことで日本のプロ野球、またはメジャーリーグに浸透した文化」はかなり多い。

 

有名なところで行くと

振り子打法

イチローによると、小学生の頃には振り子打法の理論の基礎はできていたそうだが…野球の常識をくつがえすようなキテレツな理論だったことから理解されなかった。

「打ち方が変わってる」
とかそういう問題じゃない。
考え方がセオリーとは正反対なのだ。

通常、野球のバッティングは豪速球を少しでも長く見るために、後ろの方で待つ・見極めるような打ち方をする。待っていてもボールが来るのだから、自分から体をぶつけに行くような打ち方をせず、タメや目線がずれないように、後ろ足を動かさないようにする。

 

ところが、振り子打法は自分から前に打ちに行く。
一般的な打撃の理想から見ると、目線はブレやすいわ、タメが崩れやすいわ、ボールを見極める時間は短くなるわで…ろくなことがない。
実際、イチロー本人も速球に対応できないことが増えた晩年やメジャー移籍直後は、速球に対応するために振り子の幅を小さくしている。

しかし、非常識に思える振り子打法を編み出し、なおかつ一時期定着させたのもイチローである。

 

変わった登録名

鈴木一郎から、「イチロー」に登録名を変えてからブレイク。
イチロー以前にも面白い登録名の選手はいたかもしれないが、下の名前やカタカナ、ローマ字といった変わった登録名を使う選手が増加。

同時期に一緒にパンチ佐藤も名前を変えたのは有名な話。
パンチ佐藤によると、パンチパーマにするにあたり、仰木監督と同じお店で、同じように接客され、パンチパーマを待ってる間にビールとかうどんを食べるところまで同じようにされた…という話がめっちゃ面白いのでYou Tube的なところで探してみてね。

 

初動負荷トレーニング

フィットネスコーチである小山裕史さんが1994年に発表した理論。

イチローが最初かはわからないが、初動負荷トレーニングと検索するとイチローにまつわる話が出てくるぐらいにイチローが初動負荷トレーニングをやっていることは有名なので、「世に広めた一人」には間違いなくイチローは入るであろう。
初動負荷トレーニングを熱心に取り入れた結果、晩年でも一塁ベースまでのタイムは衰えないどころかむしろ速くなっていて、イチローの走力を支える大事なトレーニングとなっている。

イチローの影響かは定かではないが、初動負荷トレーニングを取り入れた野球選手はイチロー以外にも実はたくさんいる。
他のスポーツ界よりも多く、成功している選手が初動負荷トレーニングを取り入れているのはイチローの影響が少なからずあるだろう。

 

日本人野手初のメジャーリーガー/日本人選手で初めてポスティングでのメジャー行き

投手ではすでに先例がいたものの、野手のメジャーリーガーはイチローが最初。
「原点にして頂点」なんて言葉があるが、イチローが最初にメジャーリーグに行き、メジャーで最も成功した野手・長くプレイした(してる)野手もイチロー。

00年代には多くの日本人野手がメジャーに挑戦した(できた)のはイチローの影響が大きい。
…ほとんどの選手は3年ぐらいしか続かなかったが。

 

ついでにいうと、ポスティングでメジャーに行ったのもイチローが初めて。
メジャーに挑戦して2A止まりの人であれば、イチローの前に一人だけいるけど、メジャー挑戦はイチローが初めて。イチローが作ったわけじゃないが、イチローという成功例がなかったら今ほど根付かなかっただろう。

 

ジュラルミン製のバットケース

日本ではむかしからあったそうだが、MLBに行って影響された選手がイチローのマネをするようになったできごとの1つがバットをジュラルミン製のケースに入れて一定の状態に保つ…というもの。

たまに、記事になっていたり、報道されたりしている。

 

わかりやすい記録だけでも、これだけある。
これ以外にも、記録には残りにくい影響まで含めるとイチローが初・広めた影響や風潮はたくさんある。

イチロー自身も「野球の研究者でいたい」というのも納得だし、実際研究者のように先駆者として色んなことを根付かせてきた。

だから「現役の可能性を残しながら、アドバイザーとしてチームに帯同する」というのは、すごくよくわかる。イチローが現役の状態を維持している限りまた新しいスタイルが生まれるかもしれないから。

 

アドバイザー契約はベテランの新しい引き際、新しい選手の囲い込み方として使える

新しいルールづくりは必要だけど…「支配下登録とは別のアドバイザー契約」は、新しい選手の囲い込み方として使えるのではないだろうか?

大怪我から復活しようとしている選手や、現役にこだわってるけど衰えてきたレジェンドの引き際として、「アドバイザー契約で帯同させながら、実際には緩やかなフェードアウトをさせていく」というのは、大いにアリなのかもしれない。

 

実際、編成やケガの都合で独立リーグに行く羽目になって、生煮え気味に引退していった選手、苦労を重ねて引退した選手はたくさんいるため、

「アドバイザー契約があったら、あの選手は独立リーグ行かなくても良かったのでは?」
「もっと世代交代がスムーズに進んだかもしれない」
と言う球団…1つや2つじゃない。

特に、ルールづくりに大きな影響力を持つ巨人軍は、世代交代をしないでギリギリまで引っ張る悪癖があるから「一緒に練習させておくだけでいい影響がある選手は残しておこう」「戦力外にしようか、よそに売り飛ばすぐらいなら、リハビリしながら若手にアドバイスさせよう」というルールは好都合な部分も多い。

もちろん、アドバイザーと言う名の「ルールを悪用して故障した、衰えた名選手をキープ・年俸カットする魔法の口実」になり過ぎても良くないから人数や最低年俸は決める必要がある。

ただ、支配下とは別の裏方の1つとしてそれがあっても面白いだけに、ルール整備はして欲しい。

コーチとして微妙だけど、結果・理論・取り組む姿勢などが素晴らしい人は…いっぱいいるわけで…

コーチにならなかったけど、凄い選手なんて日本のプロ野球にはいっぱいいる。

最近話題になった人で言えば、亡くなった衣笠祥雄。
あるいは、衣笠さんの話をするためによくインタビューに答えていた江夏豊。

両方ともコーチ・監督はしてないけど、選手としてすごく優秀だったし、後のプロ野球に大きな影響を与えた選手だ。

 

NHKの球辞苑という番組は、そういう人を拾い上げるのがうまい。
江夏豊も出てるし、走塁関連の回でよく出てくる鈴木尚広や(コーチやったことあるけど、すぐに辞めてしまった)福本豊も出てる。
「コーチ向きではないけど、独自のノウハウを持っている人」を取材し、ノウハウを映像に残すのがうまい番組だ。

…解説者や野球関連の番組、あるいはローカルにだけ出てくる不思議なおじさんといった形で、マスコミ業界には「コーチに向かない名選手」のノウハウを残していく流れはある。

 

ところが、プロ野球には、研究者のようなポストを勝ち取った人・採用した球団は少ない。
強いていうと…三浦大輔をアドバイザーとして囲っている横浜DeNAがやっていることが、イチローのアドバイザー契約と近いニュアンスはあると思うけど…アレは、もうちょっと広報寄りだからなぁ…。

 

「アドバイザーが絶対に必要」とは言わない。
ただ、アドバイザー契約があれば、ノウハウを残せていた・指導者になる前にコーチ以外で経験を詰む視察や勉強を詰むことができたと言う選手はちょいちょいいる。

 

あるいは…現役時代から実質的に指導者のような位置づけになっていて、もしアドバイザー契約があったら面白いことになっていたであろう選手もいる。

例えば、落合博満やアレックス・ラミレスは、現役時代にいろんな影響を残している。
落合は実際に打撃を教えた・助言した選手が後に大成しているし、ラミレスも現役の晩年には一軍昇格を拒んで筒香や桑原を指導し、結果的にDeNAの監督になれた時に大きな財産を獲得してる。

 

両方とも、フロントとの関係や過去の慣例から監督を要請されにくい立場だったため、監督の新しいレールの1つとして、アドバイザーがあったら、面白かったかもしれない…と思う。

 

ややこしくなってきたからまとめよう。

・コーチ向きじゃないけど、トレーニングが超人的・天才的過ぎてアドバイザー契約をしていたら面白いことになっていたかもしれない選手
→江夏豊、衣笠祥雄、村田兆治、桑田真澄、清原和博、福本豊など

・誰かの下に就けるのが難しい名選手だが、監督にしたいから勉強させたい、アドバイザー契約を使って勉強させていれば、あそこまで酷いことにならなかったであろう選手
→鈴木啓示、有藤通世、三浦大輔、小久保裕紀など

・監督になるのが難しいキャリア・タイミングだが、現役選手への影響力が大きくプレイ以外でもグラウンドにいる価値が大きい選手
→落合博満、アレックス・ラミレスなど

 

実際アドバイザー契約があってどのぐらい変わるかはわからないし、監督以外にもマスコミ業界や日本代表チームはそういった役割を果たしている側面はある。
ただ、もし日本の野球でも取り入れられたら「この選手は監督になったときあそこまでの失敗はしなかったかも」「野球しかないはずのこの選手が道を踏み外すようなことはなかったかも」という選手はちらほらいるから…やってもいいような気はしている。

 

そんな事を考えてるのは私ぐらいだろうか…??

 

 

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