吉田豪さんが面白いテーマを論じていた。
マニアがジャンルをつぶす論|吉田豪
度々ブログを作り込むで議論になるテーマになって、ぼく自身も悩んだし、相談にもなるテーマにこういうのがある。
「人気が出てきて色々な読者さんがついたけど、どうやって運用していけばいいだろう?マニアな人に寄せたらいいか、ライトな人に寄せたらいいか悩んでいる」
もちろん、「勝手にしたら?」「書きたいことを書いていけば?」で一蹴できるテーマではあるが…人気が出てきている以上、リスクやリターンをちゃんと把握しないで舵取りをしたくないから割り切れない…というのが人情だろう。
そこで、今回は「マニア」がコンテンツに及ぼす影響と、「ライト」を取り込む方法、そしてそのバランス感覚について論じていきたい。
まずは、ブログの読者を生態系として捉えて考える。
巷には「マニアが多いのがいい」「ライトが多いのがいい」…という議論が溢れている。
しかし、ナンセンス。
マニアにもいいところはあるし、ライトにもいいところがあるからどちらかに寄りすぎてはダメ。
例えるなら、食物連鎖に近い。
自分の記事やTwitterをなんでも読んでくれる人・興味のある話題なら情報提供もしてくれるマニアは大きい魚、
興味のある記事をちょいちょい読んでくれる・人気の記事ぐらいは抑えてくれるライトは小さい魚、
検索エンジン等でたまたま読みにきたぐらいのライトの中でも特にライトな人を動物プランクトン(虫や小エビ、稚魚)ぐらいに考えて行くと…ブログ運営はわかりやすい。
図にするとこんな感じ。最も数が多いのは、通りすがりのライト層。
一方で、ブログに対して影響力を持っていて、コントロールしやすいのはマニアやライト層。
「池の水をぜんぶ抜く」はひょっとすると高度なマーケティング番組かもしれない
最近の人気番組「池の水ぜんぶ抜く」を見てもらったらわかるけど…生態系に悪影響な魚として取り上げられるのは、小魚を食い散らかす大きな魚…特に天敵のいない外来種が目の敵にされやすい。
ところが、「池の水をぜんぶ抜く」シリーズにはワニガメが登場する回があって、ワニガメがいると小魚を食べてしまう鯉やアカミミガメが生き残れないから結果的に小魚が生き残る…という面白い現象が起こってる。
そういう意味では「鯉やライギョが跋扈する多い池にはワニガメを放って、生態系のバランスを保とう」ということも言えなくはない。
だけど、法律上ワニガメを含めたカミツキガメ科は特定動物になるから…今の日本の法律で、つまり近隣住民が安心できる池で、なおかつ生物多様性を守ろうとすると…日本の在来種よりも大きくて強い生き物を排除する方向に行くのもしょうがない話。
資本主義に置き換えると…薬物や色狂いなど…中毒じみてる人が一番お金を貢いでくれるから、そういうファンに寄せたサービスが最強でかつ強すぎるからこそ消えない。
だけど…合法かつ健全にやっていこうとすると、そのサービスに通じたオタクやストーカー化しない程度にいい意味で見守ってくれるファンを大事にするのがいいのよね。
結果、マニアやオタクは「他の利用者が楽しめないほど、熱狂的に遊ぶから、排除しないといけない」と言い出す安易な発想になりがちだけど…実際に排除しないといけないマニアは、酷くストーカー化してきたり、厄介なクレーマーになりつつあるごく一部の人だけなのよね…。
マニアが課金したり、リピートしないサービスはそもそも初期段階でずっこけるから、ライトユーザーにも通りすがりのライトにも届かないから…そこのバランスが必要なのよね。
「池の水をぜんぶ抜く」には「水が綺麗になって野鳥が帰ってきた」とか、「ヘドロと強すぎる外来種を駆除すれば、半年後にはちゃんと水草が生えてキレイな池に戻る」と言われたりするけど…そういう意味では食物連鎖の頂点に立つヤツが悪いわけじゃないのよね…。
マニアばかりが強くなりすぎないために必要なこと
「池の水をぜんぶ抜く」の話はこのへんで、ブログの話に戻す。
マニアな人を持ち上げ気味に来たが…ここでマニアと付き合う上での悪影響も少し語っておく。
マニアは…強すぎる。
確かに。マニアは行動力があるし、いろんな記事を読んでくれるから支えになってくれることは間違いない。
だから、ブログで成功した後に読者との交流企画をやったり、サロンを開設したり、有料記事を作ったりすると…最初に読んでくれるのはだいたいマニア。
しかし、マニアに寄せすぎると…マニアのためにブログをしているのか、自分のためにブログやっているのかよくわかんなくなる。
アンチに転向されると自分のことをよくわかった上で批判してくるから厄介だし、読者として離れてしまうと(思い入れがある、または支えになってくれている)大事な相手を失うからついついマニアばかり見てしまうのもわかる。
でも…、相手が何を言おうが「俺がルールだ。いいものは採用してやるが、悪いものはわざわざ聞く必要はない」ぐらいの強い自分を持ち続けるのがいい。
考え方としてはラーメン二郎の店主になった気分でやるのがいいと思う。
二郎は駅から遠い場所にばかりある上に、独自ルールの多い不思議なラーメン屋さんだが…だからこそ、強い。
マニアの意見を聞きすぎない「二郎のスタイル」を貫いているし、ライトな通りすがりが簡単に入ってこない駅から遠い場所で営業している。
仮にライトなユーザーが通りかかっても、マニア達が粛々とルールを守っているのを見ると、一般常識よりも二郎ルールの方に従って、食べ物が残っていても「ロット(ラーメンを作るサイクル)を乱すほど食べるのが遅いやつは出て行け」というルールに従う。
マニアやマニアの意見を聞いておっかなびっくりしている取材に対しても、「普通のラーメン屋ですよ」と笑い飛ばして、熱狂的な信者が作ったわけのわからないルールも無視できる。
自分達の提供するサービスやスタイルに自信がある・自信をつけるだけのファン層を抱えているなら、むしろファン同士で揉めないように「俺がルールブック」「これはやるけど、これ以上はやらない」という線引きが大事になる。
ライトを取り込む方法とライトに好かれる記事を書く方法
とはいえ、二郎はマクドナルドや吉野家ほど人気があるわけじゃないし、そもそも二郎みたいなラーメン屋は稀有だ。
もっとライトユーザーにも優しいブログを運営したいと考える人も多いだろう。
そこで、ライトユーザーをどうやって増やすか、マニア以外も増やしてバランスをとる方法を書いていく。
ライトユーザーを増やす方法は「リア友型」と、「趣味型」でちょっとだけやり方が違う。
リア友が多い…例えば、すでにFacebookでは3桁の知り合いがいる人やビジネスの世界でいろんな付き合いがある人は…とにかく「読みやすい記事」を目指すこと。
お題は統一感さえ維持できたら、なんでもいい。
SNSでちゃちゃっと書けば済むようなテーマではなく、「ブログとして残しておくべきテーマで、2~5分かけて読む価値があるもの」でさえあれば、なんだっていい。
ただ、「リア友も読めないブログを検索エンジン・SNSから迷い込んだ人が読めるはずもない」と言うことだけは抑えて書くようにしたほうがいい。
逆に「趣味友型」は…時間の縛りがゆるい。
3~10分かけて読める濃い目の記事を書いてもいい代わりに、テーマをしぼって更新すること、テーマにあった告知先を見つけておくこと…が大事になってくる。
例えば、ぼくの野球の記事は、FacebookやGoogle+の野球ファンのグループに読んでもらっている。
ビジネスに関する記事はNewPicksや楽天ソーシャルニュースに通知している。
TwitterやFacebookはぼくの記事の更新通知をぜんぶ送っているが、趣味友向けの通知をやる記事もある程度決めてやってる。
趣味友は論文クラスに長い記事じゃなかったら、10分ぐらいかけて読む。
この記事も今の時点で3000文字かけてるけど…それはこの記事がブログの技術や、マーケティング的なことに興味がある人ならじっくりと読むことをわかっているから、
「毒にも薬にもならない短文記事書くぐらいなら、この記事1つ読めば全部わかる記事を書いた方が読者のためにもなるよね?趣味が楽しめるよね?」
と言うスタンスで書いているから若干長い。
ちなみに、ぼくのクレヨンしんちゃんランキングの記事は前編・後編で2万文字以上あるが…クレヨンしんちゃん好きな人は本当にこれをぜんぶ読む。
通りすがりのライト層はランキングだけ画像や見出しでチェックする人ももちろんいるが…クレしんファンや、ぼくとのオタク話を本気で追いかけるマニアは2万文字きちっと読んでコメントしてくる人もいる。
もちろん、「読めること」は大前提。
興味があって好きな人からいいねやシェアがない場合はその記事は失敗なので、リライトしてでも読まれるように修正するか、失敗だと思って捨てて考えたほうがいい。
ライトを取り込む方法をまとめると、
・読みやすい文章で書く。マニアや趣味友・リア友が読めないものは通りすがりの人は絶対読めない。
・リア友向けなら、題材は何でもいいからタイトルや読者との距離感に統一感を出して「いろんな記事をだいたい同じリズム感で」読めるぐらいにしておく。そして、長すぎるのはNG。
・趣味友向けは、拡散するルートを確保を作ること。趣味友がいる場所でもいいし、フォロワーに趣味友を増やすのでもいい。内容はリア友向けよりも若干マニア寄りに。
この辺を抑えておくと…検索エンジンから来た人も、ちゃんとライト・マニアの間で反響があった記事は読む。
ただ、大半の記事はマニアや趣味友・リア友が先に読むから…ないがしろにしないで、出したコンテンツへの反響は真摯に受け止めること。
ただし、作る前の段階や運営方針に、口を出してくるやつには「うるさい、俺がルールブックだ!意見は聞くが考えて実行するのは俺だ」ぐらいの気持ちでいいんじゃない?
ここまでで4000文字。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
「日本人は寿司にうるさい」と言うけど、もっとうるさいのはラーメン「屋」だと思う。
ラーメン屋って料理や接客、店内の内装でスタンスがわかるし、マニア向け・ライト向けそれぞれに成功事例があるからいろんなマーケティング・人気商売のヒントが隠れてると思う。
二郎や家系ラーメンがマニア向けの成功例だとすると、一風堂やTETSUはライト向けの成功例だし、逆に一時期成功したけど時代に取り残されたお店もある。…そのへんを突き詰めると面白いかも。