※このマンガの読者の7割は30代女性だそうですが、ぼくは20代の男だから「わかる」「共感できる」「男がクソだよね」的な感想は少ないです。そういう傷の舐め合いみたいなものを期待している人は読まないほうがいいと思います。
1122の3巻読んだ。
感想としては
「何もかもが自己正当化で空虚。セリフがたくさんあって文字を読む部分が多いけど、結局は全てが自分や自分が考える世間体に対する言い訳」
というのが、ぼくの感想でした。
最初からわかってたじゃん!と言いたくなるあらすじ
…3巻の感想を読む人に改めて説明することじゃないけど、1122というのは公認浮気をしている夫婦のお話。で、2巻では妻も女向けの風俗に行きだす。
3巻冒頭では、風俗で会った若い男性とホテルで会ったところから始まり、それまで気づかなかった欲望に気づき始める。
一方で夫は家庭内で満たされない性欲を満たすための浮気だったはずが、浮気相手からガチで求婚されたり、なじられたりして夫は夫で浮気に対して罪悪感を覚え始める。…という感じのお話。
で、罪悪感に気づいた夫の様子がこれ
最初からわかってたじゃん!「クズ」とまで言わないにしても、「クズだと思われてもしょうがないことをしてるんだから、自分ができることだけはちゃんとやってあげよう。できる限り相手の生活や人生を邪魔しないようにしよう」ぐらいのことは公認浮気始めた頃から考えておこうよ…。
浮気や欲望は否定しない。でも、「罪には罰を」という決まりがあるだけ
誰もが夫または妻として生まれてくるわけじゃない。
そういう意味で、浮気や歪んだ人間関係を否定しようとはぼくは思ってない。
いや、ぼくが思う思わないにかかわらず、誰かを好きになったり、いい関係になったときに人間は欲する生き物だからこそややこしくなるし、それをみんながみんな我慢できるというわけでもない。
だから、ゴシップ誌や芸能ニュースで浮気や熱愛を見て盛り上がる人はわかんない。
浮気や熱愛で上機嫌でいてくれたほうが家庭や仕事がうまくいく人はそっちのほうが周りにとってもいいこともある。
…ただ、結婚が契約である以上、純潔さをお金儲けに使っている以上は、契約したことを破棄したり、続けていく上で差し支えがあることには「罰」を受ける必要がある。…ここだけ。
冷静に考えてほしいんだけど…犯罪の中には「被害者がいない犯罪」と言われるもの、「決まり自体がおかしいもの」なんていくらでもある。
そりゃそうでしょ?毎日・毎年のように失言や不正が報じられている政治家達が決まりを決めてるんだから…ぜんぶが正しいわけないじゃん。
いや、その時には正しかった決まりだって何年か経過して正しくなくなることだってごまんとある。
…婚姻やジェンダーの決まりなんてぜんぶが正しいわけじゃなく、ただ「決まりだから」「そういう時代だから」という側面が大きいことなんていくらでもある。
だから、過去の決まりが野蛮に思えるようなことも多いし、今の決まりやあり方に疑問を投げかけられることは多い。
説明がくどいから、まとめようか。
この話や世の中の常識に対して、「浮気が悪い」んじゃなくて、「決まりを破っている以上、そのツケを払うか、ツケを誰かに持たせ続ける信頼関係や距離感を保つべき」って言ってるだけ。そこに土足で踏み入るのも無粋だし、ずっと続けて行きたかったら続けるための覚悟や準備や代償が必要ってだけ。
ただし、距離感を崩してるのは夫じゃなくて妻だからね?
このマンガの面白いところって男は浮気している夫にせよ、浮気相手の旦那にせよ、妻との距離感や位置づけを自分なりに定義して、その距離を維持しようとしている半面、妻や浮気相手はそれをグズグズにかき回してるってところ。
マンガでは「信頼してる」という口実で「妻に舵を押し付けて自分は仕事に没頭している」みたいに浮気相手の旦那を描いているけど…家事も仕事も子育ても実家との仲裁も全部やる夫の方が珍しいわ!!
浮気相手の旦那が特別悪いやつかというと別にそうではなく…男からすると、あれが一番マトモだし、たいていの男はああいう対応しかできない。
子育てや家事から逃げてる部分は否定しないよ?ただ、男ではなく夫・父親として自分を最適化してできることをやり抜こうとするとああいうふうになってしまう人は少なくないよ。(実際、自分の父もそういうところあるし、それがなかったら今頃家庭がもっとおかしくなってたし)
むしろ、おとやん(公認浮気をしている夫)の方ができすぎているぐらいで、できすぎた夫の唯一の望みを叶えなかった代償が公認浮気なわけ。
女子力高めの料理や家事して、仕事もして、仲の悪い親との関係を取り持って…それでも男として認めてくれないで「便利な夫」ぐらいになってるのがなんかもう、「この女バカじゃないの!?」と男のぼくにすると読んでしまうぐらいにはひどい話なわけ。
で、自分から拒んでおきながら、拒まれた途端に急に欲しくなって、お店に行っていい感じって…マンガでも触れてるけど、ほんと酷いよね。全面的に、ここの発言に同意してる。
で、このコマはこう続く。
もっと「大人の女性の情緒的な感じ」だと!?黙れよバカ女!!
欲望のまま拒んだり欲しがったりしてるの、ぜんぶお前じゃん!!
新しい家族や交際のあり方を提起するマンガ?
冗談じゃない!!
女の変身願望とないものねだりをたらたら垂れ流しているだけのマンガだよ!こんなの!!
30代女性が読者の7割のマンガで「この女クソじゃん!」と言っても、敵を増やすだけだろうけど、全部自分の気分と都合に合わせてくれる執事がほしいなら石油王にでもなってからどうぞって心の底からいいたいわ!!
落ち着いて考えてご覧よ?普通の男、エクササイズの様子を見て
「妻のエクササイズがハード系からロハスエレガント系に変わった」
みたいなこと言わないよ?3巻でおとやんに言ってるけど、ロハスエレガントって言葉を知ってる男、日本に1割もいねーよ!!
検索しても出てこねーし!!
男に高い期待持ちすぎ。
そのくせ、ズレた方向に(性欲や体型のコントロールが女性よりも劣ると考えて)見下しすぎ。
違うのよ…コントロールできない人はできないし、できる人もたまにいるってだけ。
大半の人は欲望をコントロールできてるわけじゃなく、自分の欲望に気づいてないか、欲望が渦巻く場所から距離をおいているだけ。
だから、この作品…がっかりするほど平凡に流れてる。
「新しい夫婦のあり方を大物女流作家が提案する」なんて宣伝文句は大嘘で、極めて人間的に、極めて普通の人間らしく話が進行している。
結末や破局する手前だけどういうふうに物語を締めくくるかだけ興味があるけど、今の所
「え?男の人が20代で悩む欲望のコントロールについて、女性は30で気づいて、それでも自分の身勝手さやコントロールできてなさに気づかないの!?」
ってだけ。
賢くなっても、結局は動物。それが人間
このマンガ読んでるとつくづく思うのが…賢くなっても、人間なんだよなぁ~ってこと。
例えば、高学歴で世間的にいい会社に就職しても、そんなもんブラックだったり、メンツや見栄にこだわってる人間はみんなが高学歴な場所だろうが、低学歴な場所だろうとあるんだよ。
例えば、色んな我慢や努力を積み重ねていい職業・良い収入を得ても、それを犯罪や不祥事1つで無下にしてしまう人は…いっぱいいるんだよ。
それに対して、「社会がおかしいです」はごもっともなんだけど…社会がそう決まっている以上は変えるのは難しくて、みんなと違う方向に行きたかったら、抵抗されたり代償を払うのを覚悟しないといけないわけ。
働き方だろうが、人と違う恋路を行こうが一緒。
で、自分の欲望に気づかない時や、相手との関係が表面的にうまくいくと人間って調子に乗って「動物よりも上のなにかになれた」と思いこむんだけど…結局は動物なんだって。
動物にならないで済むタスクばかりをこなしているか、そこに向き合って悩んでるか、動物であることを開き直ってるかの違いだけ。
そういう意味では、哲学的に有意義なマンガ。
作者のやっている実験は、すごく人間の根幹を掘り下げてて面白い。
ただ…なにか新しいものを提案するマンガとして宣伝されたり、女性の読者がAmazonなんかで「男が悪いんだ」みたいな感想書いていると…それは違うよ。
相手の痛みをわかってあげない人と人間関係は結局は不安定だし、
逆に、痛みをわかってくれない相手に対して、考えを汲み取ろうとできるだけの信頼関係がないとそれもそれでうまくいかない。
どっちが悪いとか、話し合えば解決するとか、誰がクズとか…そういう話じゃないよ。
相手のことを理解できてない(しようともしてないなんとなく自分の中で定義しておしまいの)まま自分の欲望に走ってる人は、そのツケを払う時が来るってだけ。
ツケを払ってでも欲望をどうにかしたい人、今誰かの決めた枠組みを抜け出したい人を止める気はないし、やればいい。
でも、この作品の読み方として、それぞれにツケを相手に回して自分の生活が成り立ってることを理解してないと…読んでも「男が悪い」「女がわるい」以上のことが出てこない。
ぼくは比較的男を擁護してるけど…それは「できる範囲でよくやってる」ってだけのことで、クズと言われてもしょうがない部分があることを否定するつもりはない。(そして、クズなりに罪悪感や罪滅ぼしをしようとしてるし、そこまで含めてよくやってるとは思う。それでも、叩かれるのは仕方ないんだけど、叩く人はそこまで含めて叩いているのかどうかにすご~く疑問がある。)
ただ、この作品読んで「男クズだなぁ」って思ってそれでおしまいなら、何読んでもきっとその程度の感想しか出てこないよ…。
そうやって傷を舐めあっていたいだけの人のことは止めないけど…もっと深い話していることを読み取ってくれる人が増えたらなぁ…と思ってぼくはこういう失礼な記事を書いている。