「ありそうでなかった」というところを攻めてくれたマンガを見つけたので、紹介したい。
見たまんまなんだよね。
「伝説の勇者御一行」 の一人だった魔法使いの女性が、子どもを産んで、出産太りして…というお話。
保活が忙しくて、魔王を倒しに行けない伝説の魔法使い
何を言ってるかがわからない人は、とりあえずこのコマを見てほしい。
…ドラクエみたいな世界観にスマホとコーヒーという「ガバガバな世界観」はともかく…子育ての作品。
ドラクエっぽいビジュアルや設定だけど…完全に保活マンガ、子育てマンガ、働くお母さんマンガだよ。
このへんとか読んでもらうと、さらにわかりやすいかも。
格好的にはドラクエやけど、もはや話している内容は完全に普通の保活。
だから、「ドラクエ風の雑な異世界ファンタジー」というよりは、「変わった保活マンガ」ぐらいの気持ちで読んでほしい。
ガバガバな世界観でも言いたいことがはっきりしていれば、マンガは面白くなる!
前述した通り、タイトに作り込まれている作品ではなく、作者が言いたいこと意外は大雑把に作られた「ガバガバな世界観」のマンガ。
好き嫌いは分かれるかと思うけど…ぼくは
「描きたいテーマがしっかりしている上で、こだわりの薄い部分をガバガバにしている作品だから、目をつむってもいいんじゃないかな?」
と思う。
いや、世界観がガバガバなマンガは紹介しないようにしてるよ?
特に「異世界転生を扱ったライトノベル」みたいな作品はよっぽど良くないと紹介しないようにしてる。言いたいこともないくせに、「ガバガバな世界観=ドラクエの廉価版コピー」みたいな作品のガバガバ作品が山のように溜まってると「もう、ドラクエやれば?」って気持ちにしかならない。
ダメな異世界転生ラノベを10冊買えば…ドラクエのソフト買えるやん。
…とか割と大真面目に思う。
ただ、この作品は、世界観設定はドラクエに出てきそうなものをそっくりそのまま拝借しているけど、言いたいことがしっかりした上でドラクエ的だからこそ、「あー逆にわかりやすいかもしれない」と思うシーンがいくつかある。
これは、世界観をドラクエ的にしたことが功を奏している例だと思う。
普通の子育てマンガだったら、
「妻が優秀だから何でもできると思われてる」
「優秀ですばやくこなせる人も手間暇自体は変わらないのに、できない人ややったことない人には楽できる方法があるかのように見える」
だめな人の楽したい願望や、育児疲れしたパートナーから雑に八つ当たりされる感じを説明しようとすると、ややこしくなってしまう。
それを「魔法使いだから子育てだってできるんでしょ(と勝手に思い込まれる設定)」にしたのは、すごくわかりやすい。
他にも、政治家の発言や、義父母の発言、職場の上司の発言といえば、角が立つところを、ドラクエなら当たり前に出てくる「頭の悪い無責任な王様のせい」ということで、育児への頭ごなしな認識が晒されているのは、マンガとしてのわかりやすさが集約されていて面白い。
これ、本気で思ってるおじさんや年配者、田舎出身の人がいそうだから言うけど…赤の他人に子どもなんか預けたくないよ。
親戚や知り合いに見てもらうのはその人のことを知っていたり、相手も同じ社会に住んでるからこそ「まさか、わざと酷い目に遭わせたりしないだろう」という信頼関係があるから成り立つわけだよ!!
なんで保育士やヘルパーさんに資格が必要かと言ったら…それは赤の他人だからだよ。
赤の他人がお金をもらってやる以上は「これだけの勉強をしました」「これだけのことができます」「お金をもらっている以上は、契約したことは守ります」みたいな約束事をするから、成り立ってる。
都会に住むってことは契約社会に飛び込むってことなんだよ。
人数が多すぎたり、みんなが忙しすぎたりするから、「手続きのためにお金と順序を積んだ人同士で、やり取りしましょ」ってこと。
それがわかってない人の頭ごなしな意見を、王様が言ってることにしたら…すごく構図としてわかりやすくなる。
育児の問題になってる現場って、責任の所在が本当はもっと複雑なんだけど…そこを現実ではなくドラクエ世界にして説明することで凄くシンプルにして「育児の悩みはこうだ」という話におとしこんでる。
細かいところで好き嫌いが別れてしまう要素はあるよ?
例えば、作中に誰一人育児に協力的な男性が出てこないから「疲れていてネガティブになったことによる【認知の歪み】【事実誤認】がけっこうな部分あるのでは?」とマンガ読んでて、思う人はいるだろう。
特に被害者意識が強い人が読むと、作品の本筋よりも責められてる感じが嫌になる人も出てくるかもしれない。
でも、ドラクエテイストにしたことで、男の人や未婚で経験のない人にはわかりにくい育児の悩みを、すごくわかりやすく紹介しているのは有意義だと思う。
さっきから、「賛否分かれる良作」と繰り返しているのは…僕は男の人に読んでほしいから。
作品自体はドラクエ風にすることでわかりやすく、愚痴っぽくなりすぎないように仕上げてあるから、「責められてる気分」で読まないで、「こんなに大変なんだね」「なにかできることないかな」という気持ちで読んでほしいから。
描きたいことだけしっかり読み取って残りを話半分というか、わかりやすくするための舞台装置として読めれば、かなりいい作品。
「ありそうでなかった」を地で行く作品だし、詳しく語られている。
一見雑に思える舞台装置も、わかりやすく説明する・理解させるためにはすごくハマっている。
読む方にも力量の問われる作品ではあると思うけど、いいところを攻めているから是非読んでほしいです。