BuzzFeedで話題になっている記事を読んだ。
「女性医師では回せないと言うなら、回す努力をしましたか?」 日本女性外科医会代表が問いかける
この記事に載っている医療問題が、医龍に似たような話が出てくるので
「15年前のマンガだけど、相変わらず、医療現場の問題点は医龍を読めばいいんだなぁ~」
と、改めて思った。
今だからこそ、医龍をもう一回紹介したい。
医龍では、女医さんはすごく苦労していて、序盤の主人公である加藤晶という女医さんは、出合い頭に朝田からこんなことを言われてる。
医龍の1巻でのお話。
女性問題以外にも、研修医の伊集院くんを絡めて、パワハラや前時代的な医局の文化が紹介されている。
また、朝田を招聘した際についてきた、ミキという看護師を中心に、看護師の医療現場での歯がゆさなんかが描かれてたり、麻酔医や急患を扱う現場も紹介されてる。
それらは現代でも通じる内容だと思う。
というのも、2002年から連載された医龍の大きなテーマでもある話が、2018年のBuzzFeedでも問題視されているからね。
「医師は医師にしかできない業務に集中させて、他の医療職に任せることを進めないと高齢化が進む今後を乗り切れません。海外のように、一部の診療業務ができるナースプラクティショナー(診療看護師)や、フィジシャンアシスタントを本気で導入し、書類作成などは医療クラーク(医師事務作業補助者)に任せるなど根本的な業務の見直しが必要です。」
「女性医師では回せないと言うなら、回す努力をしましたか?」 日本女性外科医会代表が問いかける
これこそまさに、医龍のメインテーマ。なので、「医療現場って、15年間何も変わらんかったのね」という気持ちになった。
女性問題についても同じこと。
しかし、そこは17巻で出てくる妊娠した女医さんと伊集院くんとのやり取りが、詳しい。
「ダメ」っていうのが決まりで決まっているわけではなく、不文律としてそういう事になっている。もし、妊娠するとどうなるかと言うと…
すごい矛盾だよね。
人間のバイオリズムを活かして病気や怪我を治す職業の人が、バイオリズムを無視して働くことを強いられてて、結果人間らしいことができないと言うね…。
仕事のしわ寄せが来ることで腹が立つのは男も女も同じ。
ただ、医龍では「女性の方が妬みがあって若い男性のほうがまだ理解がある」と紹介されているほど女同士の嫉妬も強いなんてことも書いてあったが、その時にはにわかに信じられなかった。
ところが、2018年のツイートでも同じような話が出てくる。
女性の職場を快適にしないのは、どうも女性同士でさえ団結しづらいところにあるようだ。
さらに叩かれそうだけど、ママさんが多い某科で子持ちバリキャリ女医が教授選に出て、全然票が入らなかったのは有名です…。
女性票が入るかと思いきや、子持ち女医でもこれだけ働ける!という改革をされたくない人が多かったのでは?と噂になりました…もちろん真実はわかりませんが。— みくりっつ (@gkjKuOh) August 2, 2018
ここで気をつけたいのは、医療の現場はちょっと特殊なこと。
というのも、病棟にはお盆も正月もない。
どんな時でも誰かが病院にいないと入院患者や救急患者を見ることができないから、開業医や小規模な病院、緊急性が少ない専門分野もない限り9時5時以外しか働けない人はいらない。
結果的に、医療の中心である大病院では、育児をする女性は足手まといになる。
こういった職業の性質もあって、ネットで正論を垂れてる人よりも、現場の女医さんやナースさんに医療現場について聞くと「男性優遇やむなし」「子育てとの両立大変」みたいな話が返ってくる。
絶対叩かれるけど、私は男性優遇は仕方ないと思う…。
今の働き方で女性が過半数になれば医療は崩壊する。
ママDrは17時帰り、男性医師がその分働いて埋めていて、それが当然の雰囲気になってしまっている。
結婚出産しても男性医師と同じ量働くという女医の決意が育たなければ…無理もないかなと…。— みくりっつ (@gkjKuOh) August 2, 2018
普通の仕事みたいに「残業をなくして、男も女も定時に帰ればいい」とかTwitterで書いてる人は
「じゃあ、入院や緊急の患者はどうすんねん」って話。
コンビニや飲食店の24時間営業とは訳が違うから同じ次元で語るな!と思っちゃうよね。
それでも、
「自分の生活の方が大事。働くために生きてるのではなく、生きるために働くんだから、職場や社会が回るかどうかなんていちいち個人の責任にする方がおかしい。」
というのが、通常の叫ばれる正論。しかし、エリートに限ってはそうとも言えない。
日本のエリートとは何かを知りたかったら医龍を読めばいい。エリートの価値が大暴落する禁忌の書物だから。
ちなみに、女性の問題以外にも、エリートな職業で起こってる問題全体を、医龍がかなりの部分を語られてる。
例えば、「忖度」の問題とか。
忖度という言葉自体は医龍には出てこないが、医龍の中では度々上司のミスを部下が自らかばったり、医療ミスの責任を取らされる状況を自ら受け入れたりする現場が出てくる。
官僚の世界で問題になったのは、2017年の話だが、医龍では2002年とか03年には、そういう話をしている。
頭のいい人しか付けないような仕事の人達は、自己保身の面でも頭がいい。
だから、叩かれてでも論理的道徳的に正しいことをするよりは、処世術として権力からいじめや報復を受けないように立ち回る。
結果、忖度や癒着、黒い人脈は何年にも渡って受け継がれたり、それがないと仕事が回っていかないような状況になってしまってる。
ついでにいうと、体質変化が極端に遅く「15年以上前の問題を繰り返している業界・企業」には電通という広告代理店も存在する。
1991年にパワハラから男性社員が過労自殺させる「電通事件」が勃発。
その後、20年以上経過した2015年にも、女性の新入社員をセクハラ・パワハラ・過労の三重苦で自殺に追い込む事件が起こっている。
すごいね!
日本一勉強ができる人たちが入る企業が、集団の同調圧力を前にすると、20年間なにも学習しない連中に様変わりしやがる。
つまりですな、文系の最高峰である電通・中央官庁も、理系の最高峰である医療の現場も、学歴社会の末路とは、言われたことを完ぺきにこなす高性能かつ従順な奴隷を完成させること!!
それこそ流産しようが仕事したり、上司の革靴でビール飲まされても仕事ならついていく人こそ、学歴社会の一番完成された人材よ!
だから、就活で学歴や性格を理由に落とされた諸君は、「上司やしがらみに従順な奴隷としての適性が低い」だけなので気にしないでいい。
優秀か無能かといった問題ではなく、向いてるか向いてないかの問題だから、そんなに気にしなくていいよ。
とはいえ、ああいう人たちがふんぞり返ってることや、ああいう人達が作ったブラックな働き方のしわ寄せがこちらに来るのは避けたい。
だから、ああいう「忖度するエリート」は倒せるものなら倒してしまいたい。
変えられるものなら変えてしまいたい。
忖度するエリートはどう倒せばいい?
もちろん、自分たちが素晴らしいと植え付けられてきた学歴社会・企業社会の欠点を指摘するのもいいことだ。
しかしながら、生産性を上げていった結果、楽しいものを追求していった結果、悪しき伝統を倒さないと意味ない。
潰すだけならクレーマーになれば潰すことはできるよ?
特にテレビ局みたいに公共性の高い民間企業は総務省にクレームを入れて徐々にコンプライアンスでがんじがらめにした結果、少しでもエッジの効いた番組作るとクレームが来て、ネット炎上するから、当たり障りのない番組だらけになって緩やかに衰退する。
ただ、それじゃトドメは刺せない。
代わりになる居場所がないと、古くてダメなものから人々は移行しない。
それこそ、NetflixやAmazonプライムビデオ、速報性の高いネットニュースがあったからつまらない番組を見たくない人はネットの有料配信や、スマホアプリに移行できたわけで…。
圧倒的な技術や代わりになる素晴らしいものを作ったり、広める側に回っていかないと古いものを、みんながハッピーになる形で倒すことはできない。
そういう意味では経済原理とか、消費行動で変えられる相手は救いがある。
自分や口コミで作れる消費活動がそのまんま投票行動になるから、「いいと思ったもの」を買ったり広めたりしていけば、自ずとみんながいいものを消費するようになる。
官僚や医療の世界の場合は、その辺が難しい。
効率を上げるような機械や仕組みを外から作って提供しづらいから、おかしくなったり、古くなったりすると、本当に変わるのが遅くなる。
経済の力でどうにかなる分野は、いくら電通とて大きな力や技術革新が起これば変わらないといけなくなる。
一方で、医療や官僚は法律(それを根拠にした資格)にガッチリ支えられてるから、どんなに不効率になろうが、時代遅れだろうが「聖域」が残り続ける。
しかも、法律を決めるのは官僚や医者にとって口利きのしやすい政治家だから、なおさら「聖域」は守られ続ける。
ぼくは近代社会の手堅い部分であると同時に、すごく大きな脆弱性と敗北も含まれているように見受けられるが…どうやったら乗り越えられるんだろう?
いっそ、GoogleかAmazonに建国してもらうか!?
ぼくからすれば、まだGoogleやAmazonの方が信じられるのよね…。
「GoogleかAmazonが世の中を支配すると大変なことになる」っていう人が多いけど…時代遅れのこと・バカバカしいことだとわかっていてもそれを死ぬまでやり続ける医者や電通マンや官僚の方がヤバイのでは?
ここ数年のニュースを見ていると、ことごとくエリート主義・官僚主義が、ドロドロしたものにしか映らないような事件が相次いでいるだけに、疑問なわけだが。
日本の社会とはなんなのかはこれを全部読めば割とわかります。
「ネガティブな部分ばかり挙げ連ねて煽ってるんじゃないか」
と、ティーンに読んだ時は思ってた。
しかし、少なくともエリートだらけで、自浄作用のない職場…これは医局に限らず、省庁や電通まで、医龍に書いてあることが当てはまっていて、あながち嘘じゃないからビックリしている。
だから、医龍を今こそ読んで欲しい。
16年前に連載がスタートした作品だが、インテリたちは16年で変わるほど柔軟でもないし、自浄作用もないんだから。