兵庫県三木市の人口が減って寂しいので、勝手に宣伝する

全国的には
・ゴルフが趣味の人か、
・乗馬・競馬に詳しい人か、
・工事現場で働いてる人か、
・政治問題に詳しい人か、
・日本酒に詳しい人か、
・戦国時代大好き、信長の野望が恐ろしくうまい人
このどれにも当てはまらない人には全く知られていない人口7万人程度の街…それがぼくが小学校時代に育った兵庫県三木市だ。(ぼく自身、説明がめんどくさいので、建前上は計5年間を過ごした神戸市を公式には出身地にしているが…厳密には神戸半分・三木半分がぼくの出生)

最近になって、久しぶりに調べたところ、人口は減って、街に通っている鉄道は赤字路線になって偉いことになっているそうなので、
「だったら、ネットで宣伝してみよう」
ということで、ぼくの地元を紹介する記事を書いてみることにした。

調べるきっかけ

アマゾンプライムビデオにて、「プラチナタウン」という借金まみれの地方を再生するドラマを見た。(原作は楡周平さんの経済小説)

このドラマの中に、主人公の改革を阻む地方議会のドンとして、公共事業を請け負う強いパイプを持った議員さんが出てくる。

ドラマをツイッター上で勧めたところ、地方議会のドンにシンパシーが湧いた人がいて、その人と
「地方は、公共事業が雇用の受け皿になってるから、無駄とも思える施設がたくさんあって、それでも作り続けている街があるのはしょうがないよね」
という話で盛り上がった。

 

その話をするうちに、
「あー言われてみると、(ぼくの育った)三木市って公的施設やその誘致がびっくりするほど充実してたなぁ…
と感じた。

同時に、プラチナタウンではそういった「公的施設がダメ」ではなく、「時代にあった新しい方針を打ち出して人を呼べるシステムを新しく作り直していく必要がある」という結論だった。

これも三木市はとても当てはまっていて、
「90年代に住んでいた時には、とても住みやすく公共施設にもお世話になった。しかし、大人これがちゃんとマネタイズできるか、わざわざ住みたいかをちゃんと考えていくと…難しいなぁ…
と思うため、プラチナタウンとセットで三木市の現状について話すことにした。

外貨を引っ張る能力がやたら高く、車持ってる家族には最高の街、三木市

特産物の話をするにも避けて通れないから先に歴史の話からさせてもらうと…三木には「別所氏」という小さな戦国大名がいた。

三木城というお城に立てこもって、羽柴秀吉と2年も戦った三木合戦という戦いをして滅亡した別所治長という武将がいた。
しかし、小さな戦国大名を網羅している「信長の野望」でさえ、周囲に強い大名が多すぎてプレイする人が少なく、天下の秀吉を手こずらせたとは言え、別に華のある戦いでもないからほとんど知られてないマイナーな合戦だけど。

三木合戦の戦災から復興する際、大工道具の需要が上がり、三木は金物の街として江戸時代以降も工業都市として地方から出稼ぎに来る人がいるほどだった。
その後、第二次世界大戦後に低迷するも、近年は中国で大工道具が伸びたことによって今も金物の街として健在。特に鏝(こて)はシェア90%と言われてる。

さらに、今でも酒米のなかでトップシェアを誇る「山田錦」の発祥の地であり、一大生産地だ。
大関・白鶴・沢の鶴など日本酒の大手企業は(特に神戸市の灘を中心に)兵庫県に集中しているため、兵庫県全体の特産品を実は三木が支えてる…というわけ。

さらに、ゴルフをする人には「廣野ゴルフ倶楽部」でも有名。
日本を代表する名門ゴルフ場で、80年以上の歴史があって、プロのトーナメントも何回も開催した実績がある。

金物・日本酒(の酒米)・ゴルフ場とおっさん臭いものばかりだが、おっさん臭いものにはめっぽう強い。

「若者が遊ぶところがないじゃないか!」
いやいや、そんなことないよ!

グリーンピア三木って言うのがある。
…あ、今は「ネスタリゾート神戸」って言うんだけど。
ネスタリゾート神戸

三木市で育った子どもは一度ぐらいは絶対行ってる!
甲子園球場235個分の土地を切り開いてプールやらホテルやらゴーカートやらが楽しめるリゾート施設で、三木市で育った人は…夏にあそこのプールかスケート場に行ったことあるはず。

ちなみに、ぼくはわんぱく小僧だったから、ウォータースライダーの滑り過ぎで寝違いを起こして起き上がれないまま翌朝、病院に連れ込まれ翌朝おしっこを500mlほど【直接】針を刺して吸い上げられるという人生で一番痛かった体験をしたけどね。
しかも、貴重な夏休みを寝違いのせいでそのまま1週間入院・当時やってた野球は3週間できなくてライバルに思いっきり溝を開けられるという一生ネタにできる思い出ができたよ。

「グリーンピア三木」という名前の通り、公的リゾートホテルだったわけだが…2015年に民営化されてリッチな雰囲気漂う本物のリゾートに生まれ変わってパワーアップしてる。

さらに、小学校の時の自然学校と呼ばれる自然体験活動は三木市とJRAが建てた「三木ホースランドパーク」という施設。
その名の通り乗馬体験ができる施設で、兵庫・和歌山・愛媛の国体の会場になっていたり、この施設にちなんだ三木ホースランドジャンプステークスという競馬のレースもやってる。

これに加えて、兵庫県の消防学校がある(だけでなく、立派な陸上競技場がある)兵庫防災センターが三木にあったり、高速道路の入り口もネスタリゾート神戸の隣と、工業地帯である別所地区の2つあったり、採算が取れてるか謎な公共施設や公園が充実してたり…もう、すごいよ。

変わり種でいうと…「三木スケートボードパーク」というのがあって…900万円かけてスケートボード専用のコースを作ってたりする。
一見ムダ使いのようにも思える施設だけど、この施設に「ソチオリンピックに出場することになる角野友基選手が通って練習してた」というし、「日本で唯一のフルパイプ」を有するパブリックパークというから…バカにはできない。

1つ1つの施設がバカみたいに広く、
特定の趣味を持っている人にしか使われてない施設が多く、
マネタイズできるビジョンをキチッと持っている施設が少ない
という意味では、ほとんどの人にはムダなのかもしれない。

それでも、車持ってて趣味もあるような家庭が住むには三木はすごくいい街だ。
昭和末期から平成初期ぐらいのライフスタイルから見ると、三木と同じぐらいの規模感で三木よりも素晴らしい街ってなかなかないよ?
車さえあれば、都会の華やかな買い物・多彩な食文化以外だいたいのことは楽しめるし、子育て向きの教育上いい施設がそろってて、地場産業だってある。

サラリーマン家庭だって、神戸から車で2,30分だから、神戸に通勤するには決して悪い立地でもないし…。

人口10万人以下の街で、都会のような便利さ・華やかさを追求するのは無理だから、できる限りのベストは尽くしていると思う。

 

しかしながら、そんな三木市でさえ、2000年から徐々に人口が減って、ピーク時86000人いた人口は77000人になってしまってる。
良質な公共施設も地場産業もあって、自動車さえあれば神戸にも近くて、公共施設も使い倒せる街なのに…。

 

そう考えると、プラチナタウンのテーマである
潤沢な公共施設や余った土地を、時代にあった形で再利用して、地方を再生していかないといけない
という課題は、北海道の借金まみれの街だけの話じゃなくて三木みたいなまがりなりにも産業や歴史があって局地的には人を呼ぶことができる街にだって言えることなんだよなぁ…。

 

三木市の弱みは…だいたい西神ニュータウンのせい

三木市って車を持ってる人…特にファミリー層やニッチな趣味を持ってる人にはうってつけの街なんだけど…徒歩メインの人が生活したり、三木市の公共施設を使って外から人を呼ぶのはとても難しい環境になっている。

まず、三木の鉄道事情だけど…粟生線(あお)という神戸電鉄の赤字路線が、通っているだけ。(赤字だからいつまで通ってるかも疑問)
神戸市の鈴蘭台から小野市の粟生駅まで通る路線なのだが…びっくりするほど、使いみちがない。
特に、小野市の粟生駅まで行けば加古川線との乗り換えが可能になるのだが…三木市内は乗り換えの手段がない。
三木市の南側にしか鉄道が通ってないから人口11万人の三田市に鉄道で行こうとすると鈴蘭台経由で迂回しないといけないめんどくさい仕様になってる。(市の北部は鉄道網すらないから、「車がないと不便」どころか、「車がないと住めない」という状態

言葉で色々言っても伝わりづらいと思うので、地図を貼っておく。(画像は三木市役所のホームページより)

三木の人口増に貢献したのは神戸市と接している「緑が丘駅」周辺にニュータウンを築いたことにあるのだが…緑が丘の人にとって行きたいのは、鈴蘭台ではなく、西神なんだ。

神戸市の西区の山の上に「西神ニュータウン」というのがあって、そこは三木にはない専門店街や百貨店「そごう」がある。飲食店や小売店がことごとく雑な三木市での生活の中で、西神っていうのは三木から行ける都会なんだよ…。
そのことが輪をかけて三木の飲食店や小売店が多様化しない原因にもなってるけど、西神が近いことで「適度に田舎・たまに都会」な生活をおくることができる。

西神は住宅街なだけでなく、三宮まで30分で行ける市営地下鉄が通っていて、神戸ワイナリー農業公園というだだっ広い市営のレジャー施設がある。

プールやスケート場まではさすがにないけど…この「神戸ワイナリー農業公園」がかなりいい施設なので…正直、ネスタリゾート神戸や三木山自然公園まで足を運ばなくても…神戸でもファミリー向けのそれなりのレジャーが楽しめる。
ちなみに、ワインではなく、生食用のぶどうは三木もかなりいいものを作っているのだが…神戸ワインのせいで、地元の人しか三木のぶどうの存在を知らない感じに…。

三木は三木で企業誘致に力を入れて近年では色んな工場が進出しているとは言え、大々的な工業団地も実は西神のほうが先にやってしまってる。
だから、三木のニュータウンに最初に住み始めた人達は西神・西神南の工業団地にお勤めするサラリーマン家庭がベッドタウンとして利用した形となってる。

三木は三木ですごくいい施設を持っていたり、開発もやってきたのだが…ことごとく
「そんな遠いなら西神でええわ」
という感じになっているので…三木から神戸にお金が落ちても、西神から神戸にはお金が落ちない。

「鈴蘭台だって、神戸電鉄のターミナル駅だろ!」
という人がいるかもしれないけど…市営地下鉄で西神中央駅使う人は鈴蘭台のすべての乗り換えの2倍以上。ピーク時は3倍近い溝を開けられるほど、西神のほうがでかい
神戸市民と鉄道オタク以外は知らなそうだから言っておくけど…西神中央駅って、神戸市営地下鉄の中では利用者が3番目に多い駅だからね?

神戸市は、西神までではなく、神戸市の最果てで神戸電鉄と接続可能な「押部谷」まで市営地下鉄を伸ばす計画があったそうだが…90年代の不況や震災の影響で凍結。
そのため、三木にとって神戸の一番便利で美味しいところが、西神とつながってないせいで得られていない。

もちろん、西神中央からも近いおかげで「車さえあれば、三木は強い」というメリットは強化されている。だけど、車がないと三木は不便という弱点は改善しないのよね…。

結果、三木の強みは西神や神戸市とダブらない・戦わないことから生まれている部分でできていて弱みになっているのは西神で神戸からの経済効果に蓋をしている状態…というのが大きい

車の減税とか維持費が下がるような政策を打ってくれないかな…。
三木に限らず、地方で中小規模のユニークな街の多くは「車があれば便利」なところは、車さえ安く手に入る環境があれば、かなり救われると思う
しかし、車が税金の塊になってる現状は、地方の財政・都会の過密化にとっても良くないと思うのよね…。

車とか鉄道網とか…三木みたいな小さい自治体には手に負えないところに問題が出てきてるから、内側からどう時代に合わせたコンセプトを出してくるか、住んでくれそうな若い人にどんなフォローをするかが、人口減少に歯止めをかけるために必要なことになってくる。

地方移住を志す若者なのか、ニッチな趣味を持ったファミリー層なのか、高齢者向けなのか…そこはわかんないけど…人口増加させたり、三木の持ってる強い産業の担い手を探す上で「新しい形」は早かれ遅かれ打ち出していかないといけないだろう。

 

プラチナタウンのなかで語られてたテーマが、自分の地元にグサグサ刺さっているところを見て自分の住んでた街の話をしたくなった。
これを機会に少しでも三木市が知られて、ネスタリゾート神戸や、金物まつりなんかに足を運ぶ人が増えたら嬉しい限りだ。

色々あって家族ごと関東に引っ越して、今も川崎市在住のぼくにはこのぐらいしかできない。
だが、これで少しでも三木の知名度が上がってくれると嬉しいよ。

プラチナタウンは本当にいい作品だから、是非読んでください。
自分の地元が荒廃しつつあって、「なにかしないと」って思ってる人の助けになるはず。

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