【アクタージュ2巻感想】映画は産業だからこそ、強すぎる才能も諸刃の剣

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学校の教科書に
「みんな違ってみんないい」
という詩が出てくる。

これってあながち間違ってなくて、なんの才能もない人はいないと思うし、同時に才能があっても成功するかどうかは別だ。

自分がブログをしていて、ライターのお誘いなんかを頂いた時・お金をとって読者のためのサービスをする時に悩むことなので…すごく考え込みながら読ませてもらった。

 

コントロールできない才能は野犬みたいなもの

アクタージュに出てくる映画や舞台の世界は「作品を完成させること」が至上命題になっているから、表現力が高かろうとそれを周囲に合わせてコントロールできないと、そんな才能だけでは生き残れないのだ。

2巻でテーマになっていて、演技力に特化した夜凪とは対極にいる「商業的に作品を完成させるプロ」である千世子との共演することで夜凪が成長する物語になっている。

 

ピンと来ない人がいると思うから、少し例を出す。

テレビのバラエティに
「本業がよくわかんないタレントがいっぱい出てくるけど、この人達はなんでテレビに出続けるのかな?」
という人いるでしょ?

勝俣州和とか、恵俊彰とか、Youとか、高田純次とか…あのへんの人達ってテレビのコンテンツに落とし込むのがうまい反面、固定ファンがすごく多いかと言うと全然そうじゃない。
特に勝俣と恵については「ファン0人説」なんて水曜のダウンタウンでいじられるほど、ファンがいないからね。

もちろん、ちゃんと本業があってタレントになった人達。だけど、本業がわからないほど本業をしていない人がテレビで生き残り続けている理由はテレビ番組に完成させる能力がすごい高いからなんだ。
これは本人が出た番組でも言ってる・言われてることだけどね。

個人的に好きなネタを言うと、俳優の大泉洋が北海道ローカルで出演している「ハナタレナックス」という番組で、大泉抜きの(大泉が所属してる演劇ユニット)メンバー4人が
「地上波で放送できるものにしてくれる人」
と、大泉を称していて、同時に、
「俺ら4人じゃ、CS放送になってしまう」
と言ってたのが面白かった。

役者として上手い下手とか、タレントとして面白いつまんないは別として、テレビで生き残る人って番組を番組として成立させる能力の高い人。

 

それがこのマンガで言うと、千世子になる。
ただ、同時に芸術家肌の人からすると「癪」なようで、必ずしも全肯定してないところも面白い。
千世子のことを夜凪は「キレイなのに顔が見えない」といい、師匠もといメンターポジションにいる黒字は夜凪の破天荒っぷりと合わせてこう言ってる。

黒字さんは才能があって仕事を斡旋する一方で、必ずしも彼女の才能だけではうまくいかない現場に放り込んで、彼女の才能をもっと深く広く使えるようにアシストしている。

その感情がお前を役者にする

同時に壁にぶつかっても貪欲にがんばる彼女に対して、こんな事も思ってる。

ぼく、ここのセリフ大好き。
不甲斐ないとか、悔しいって自分への要求であり、願望の裏返しだから、なんの分野でも成長の糧になる。

職業マンガとしての商業的に成り立たせないといけない部分と、人間としての成長したい・自分でできるようになりたいという内的要因からくる欲求(商業的に必要な部分もそうでない部分も)を両方描けているのはすごいなぁ…と思う。

「その感情がお前を役者にする」
とアクタージュでは言ってるけど、これは役者に限らず、色んなことに当てはまるのよね。

どうでもいいことには悔しくもならないし、落ち込まないし、必死に考えないし、勉強しようとも思わない。
だから、悔しいとか不甲斐ないってちゃんといい教材を見つけたらエネルギーなのよね。

そこが描けているところが好き。

役者のことは役者から盗め

個人的にしっくり来たのはこのシーンかな。

テレビの世界では…テレビに出ている人や芸人自身を「プロ」、どれだけ面白くてもぽっと出の人を「素人」と呼ぶけど、これはありとあらゆる職業に当てはまるのよね。

作品を深掘りしていく技術にせよ、作品を完成させる技術にせよ、それをキチッとお金をもらってやっている人じゃないと教えられないし、言葉に重さが出てこない。

他の少年マンガにも誰かに技を教わったり、アイデアを閃かせるきっかけは出てくるけど…この作品は特にそこが明確に「役者から盗む」ということになってくる。
同時に、持っているパーツも役者ごとに違うことでキャラクターの個性と特性をキチッと表現できているから「職業マンガなのに、バトルマンガっぽく読める」「バトルマンガで割と当たり前に出てくる描写を現実の生活や職業人生にうまく落とし込んでいる」というわけ。

同時に、マンガやアニメの主人公は素直に吸収していく素直なキャラが多いなかで、彼女は一番個性的な中で、他の個性を吸収しないとキチッと作品を仕上げたり、職業人になれないという岐路に立っているところも面白い。

才能は誰にでもある程度、なにかはある。
ただ、貪欲に聞きに行く人や、正しい努力を続けていける人、挑戦する人だけが職業にしたり、大金を得るほどの成功を掴む。

そこが描かれてる点がすげーと思う。
しかも、これがジャンプで連載されていて、10代のうちにこの作品を読める人達がいるのは本当に恵まれていると思うからアクタージュを読んでほしい。
せっかく手に触れられるところにこういう作品があるからすごく読んでほしい。

 

 

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