マンガオタクの間では話題だったけど、思いの外マンガオタク以外の間では話題にならないので…ちょっと紹介していきたい。
話題になったのは、この「乙女怪獣キャラメリゼ」であるということ。
もうタイトルから「なにこれ」と言う内容なんだけど…読むとこれがまた「なにこれ」なのよ…。
あらすじ
主人公の女の子は感情が高ぶると…体の一部が怪獣になってしまう体質の持ち主。
しかも、突然そうなったというわけじゃなくて…幼い時からこの病気から悩んでいる。
当然、感情を表に出せないし、そもそも(才能ではない方向に)自分が人とは違うため、本人の自己肯定感はすごく低い。
スクールカーストが低いとか、メンヘラとか誤解されたり…している彼女だが、カースト上位の男の子に興味を持たれてしまう。
そんなわけで、デートに出かけることになるわけだが…感情が高ぶった彼女は…デートが終わった時に感情が抑えられなくなって、体の一部とかそういうレベルじゃなくなってしまう。
こんなかっこいい
「私は私をもう止められない」
見たことある!?
これで1話だよ…。
怪獣が出てきたところで、ぼくはもう大爆笑。
しかも、出てきた理由が「デート中に好きな子に対して感情が高ぶったから…とかなんとか」だよ!?
冷静な読者なら
「そんなことでいちいち怪獣になってたら大変じゃん!!」
とツッコミが入りそうなんだけど…このマンガはほんと大変なんだよ。
いや…このマンガだけじゃなく、
「誰かを好きになるって大変なことなんだよ。」
と言う話で、そこがすごく奥が深い。
人を好きになるのは、すごく大変なこと
「怪獣になる少女」
という特殊な話のように見えがちだけど…このマンガの真骨頂はむしろ少女自身の等身大である。
特別なことでも何でもない。
生きるってことは、自分自身の問題がすごく多い。
それが「怪獣」と言う特殊なものに置き換えていることで、誤解されがちだが、むしろその特殊なことに置き換えることで…恋愛のマンガでありながらも、恋愛の話でありながら等身大のことに落とし込んでいる。
おかしなこと言ってるように聞こえるかもしれない。
でも、恋愛の話というのは交際をしない人や自己肯定感が過度に低い人からするとそもそも等身大ではない。
それどころか、浮かれているように見えたり、忌むべき弊害を生んでいるとさえお考えの人もいらっしゃる。
恋愛に共感できるテーマとして考えられる人でも、他人の恋愛を素直に読むのは意外と難しい。
その道のりを他人としてみていると、考えすぎていたり、幼く・卑しく見える。
幼く・卑しく聞こえるようなことこそ、実は真剣に考えた時に出てくるテーマなわけだけども…それをそのまんま言葉にしてしまうと、素直に受け取れる人と、どこか斜に構えてしまう人が出てくる。
例えば…
「ぼくは彼女にとってふさわしい人物なのだろうか?」
「ぼくが彼女を好きになるのはとてもおこがましいことなのではないだろうか?」
という葛藤をするフィクションがあるのだが、これって冷静に考えてみるとすごく幼い。と、同時に本気で幸せになってほしい相手のことをだからこそ考えてしまう。
いや、こんな葛藤は自意識過剰なんだよ?
全部偶然や運でしかない。好きな子に出会ったことも、その人を好きになったことも。運命と言えば運命だし、誰でも良かったと言えば誰でも良かった。
ただ…好きな子ができた時に「運命」だと思ってがんばるかどうかは自分が決めることじゃん?
自分がふがいないやつだろうが、優秀なやつだろうが…好きな子のためにがんばるかどうか決めるのは自分じゃん。
相手に彼氏がいようが、結局交際に至らない停滞した関係だろうが、そんなの相手の都合じゃん。
「好き」でいること、彼女を求め続けるかどうかは…自分の問題であって、彼女の問題ではないでしょ?
冷静に考えたらそれだけの話だよ?
ただ、相手のことを本気で考えたら「自分のエゴで相手の幸せや未来をぶっ壊していいのかな?」とか考える。
そこも含めて自分の問題じゃなくて、相手の問題じゃん。
そもそも、自分がどんだけ本気で考えたとして、金や気遣いを無限にしたとして…相手が幸せに感じることって本人も含めて全員わかんないよね??
通常の恋愛マンガって、この本気をそのまんま描いてしまうからこそ、本気になったことない人・感情移入できない人には伝わらない。
だから、少女は怪獣になる必要があった。
マンガに詳しいやつなんて、マンガ情報集めるためにお金や時間を使ってるんだから…大半は…恋愛に共感しにくい人たちなんだよ。
器用にやりくりできる人や時間もお金も余ってる人ももちろんいるけど…時間は無限ではないから全部に詳しい人なんか早々お目にかかれない。
このマンガが、マンガ好きな人の心を捉えたのは絵がきれいで面白いとか、怪獣×少女漫画とか、上っ面だけじゃない。
むしろ、恋愛の真剣さや強すぎる想いで共感しづらいところ…怪獣マンガのスケールが大きすぎて逆に真実味がない部分…をうまく補い合ってマンガに落とし込んだところ。それが、キャラメリゼの魅力なんだ。
恋愛してることを美化しようってことじゃない。
ただ、恋愛のキレイさや真剣味を他人に伝えるのはそれだけ難しいから、それを斬新な切り口で取り上げたこの作品はすごいよ。
いや…人間なら誰もがする可能性がある共通したテーマが「恋」というだけであって…ありとあらゆる自己実現は想いが強くなりすぎるほど、エゴと正しさの間で板挟みになる。
その板挟みをうまく、わかりやすく、大迫力で描けてるマンガなので、読んだインパクトもさることながら考えれば考えるほど好きになれたよ。